(275) 都市公園事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、植生工が工事の目的を達していないもの
会計名及び科目
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一般会計
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(組織)国土交通本省
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(項)都市計画事業費
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部局等
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高知県
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補助の根拠
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都市公園法(昭和31年法律第79号)
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補助事業者
(事業主体)
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高知県宿毛市
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補助事業
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都市公園等統合補助
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補助事業の概要
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都市公園内の遊歩道を整備するため、平成17年度から19年度までに植生工等を施工するもの
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事業費
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48,827,100円
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(うち国庫補助対象額48,818,350円)
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上記に対する国庫補助金交付額
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24,409,175円
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不当と認める事業費
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8,488,000円
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(うち国庫補助対象額8,483,000円)
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不当と認める国庫補助金交付額
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4,241,500円
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この補助事業は、高知県宿毛市が、都市公園事業の一環として、同市山奈町地内の宿毛市総合運動公園において、遊歩道(延長1,357.8m、幅員3.0m)を新設するため、地山を掘削した後の法面の植生工等を平成17年度から19年度までに工事費48,827,100円(うち国庫補助対象額48,818,350円、国庫補助金24,409,175円)で実施したものである。
このうち植生工は、地山を掘削した切土法面に植物を繁茂させることによって侵食や風化等を防止するため、植生マット工を9,983m2
施工するものである。この植生マット工は、不織布等で種子や肥料等を挟み込んだ基材とこれを法面に押さえつけるためのネットで構成された植生マットを敷き並べ、アンカーピン等で地山に固定する工法である(参考図参照)
。
同市では、植生工の設計に当たっては「道路土工−のり面工・斜面安定工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)に基づき行っている。指針によると、切土法面においては、植物の根系が土中に伸長できるか否かは土の硬さが関係しているため、土壌硬度(注)
について調査を行うこととなっている。そして、土壌硬度が30mm未満の切土法面では、植物の根系が伸長するために必要な土や肥料等の植生基材を厚さ2cmから3cmに吹き付ける吹付工や植生マット工を採用し、土壌硬度が30mm以上の硬い土壌の切土法面では、植物の根系の伸長がほとんど不可能であり植物の生育に適さないため、土壌硬度が30mm未満の場合より、植生基材を3cmから10cmと厚く吹き付ける吹付工を採用することとなっている。
同市では、切土法面の土壌硬度は植生マット工に適していると判断して設計し、これにより施工していた。
本院は、高知県宿毛市において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図書等の書類及び現地の状況を検査したところ、本件植生マット工の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、指針では土壌硬度を調査し、植生工の工法を選定することとなっているのに、同市では、土壌硬度を調査することなく植生マット工を選定していた。
そして、指針によると、植物生育による成績の判定の目安は、法面を植物が被覆している面積率(以下「植被率」という。)が70%から80%以上の状態となっているものを可としているが、前記9,983m2
のうち2,922.3m2
では、植被率が70%未満の状態となっていた。このため、基材が降雨により流出しネットのみが残って地山が露出していたり、植物が十分生育していなかったりしていた。
そこで、植被率が70%未満となっている上記の法面について土壌硬度を調査したところ、調査した151箇所のうち80箇所が30mm以上となっていて、このように土壌硬度が30mm以上の硬い土壌の切土法面の場合、植被率が70%以上を確保するためには、土壌硬度に応じた工法を採用すべきであった。
このような事態が生じていたのは、同市において、植生工の工法の選定に当たり、法面の土壌硬度を調査すべきであったのにこれを行うことなく植生マット工を採用したことによると認められる。
したがって、本件植生工(工事費相当額8,488,000円、うち国庫補助対象額8,483,000円) は、設計が適切でなかったため、植物が十分に生育しておらず、切土法面に植物を繁茂させることによって侵食や風化等を防止する効果が期待できないものとなっており、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額4,241,500円が不当と認められる。
植生マット工概念図