(262) 街路事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
会計名及び科目
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道路整備特別会計
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(項)道路環境整備事業費
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部局等
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埼玉県
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補助の根拠
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道路法(昭和27年法律第180号)
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補助事業者
(事業主体)
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埼玉県入間市
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補助事業
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都市計画道路3.4.9号久保稲荷線道路整備
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補助事業の概要
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橋りょうを架け替えるため、平成17、18両年度に橋台、上部工等を施工するもの
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事業費
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89,250,000円
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(うち国庫補助対象額89,000,000円)
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上記に対する国庫補助金交付額
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44,500,000円
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不当と認める事業費
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53,167,000円
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(うち国庫補助対象額52,917,000円)
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不当と認める国庫補助金交付額
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26,458,500円
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この補助事業は、埼玉県入間市が、都市計画道路3.4.9号久保稲荷線の街路事業の一環として、同市大字下藤沢地内において、不老川に架かる橋りょうを新橋(橋長13.5m、幅員16.6m)に架け替えるため、平成17、18両年度に、橋台2 基の築造、プレストレストコンクリート桁の製作、架設等を工事費89,250,000円(うち国庫補助対象額89,000,000円、国庫補助金44,500,000円)で実施したものである。
このうち橋台は、掘削した地盤上に直接築造する逆T式橋台であり、左岸側橋台は高さ5.9m、底版幅5m、右岸側橋台は高さ5.2m、底版幅4.5mの鉄筋コンクリート構造となっている。
本件橋台の設計に当たっては、「道路橋示方書・同解説」(平成14年3月社団法人日本道路協会編)等に基づき、基礎底面地盤の許容鉛直支持力(注1)
の計算等を行っている。これによると、この基礎底面地盤の許容鉛直支持力の計算の際には、基礎底面より上部の長期的に安定している地盤面から基礎底面まで(以下、この深さを「基礎の有効根入れ深さ」という。)の基礎前面側の土の重量を上載荷重として考慮して良いこととされている。
そして、本件橋台の設計の基となっている設計計算書によると、基礎の有効根入れ深さを左岸側橋台で2.4m、右岸側橋台で2.6mとして上載荷重を算出するなどして安定計算を行った結果、地震時(注2)
における橋台の基礎底面地盤の許容鉛直支持力が地盤に対して作用する鉛直力(注1)
を上回っていることから、安全であるとして、これにより施工していた(参考図参照)
。
本院は、埼玉県入間市において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類により検査したところ、本件橋台の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、本件工事における長期的に安定している地盤面は河川改修計画上設定された計画河床面となることから、本件橋台の安定計算に当たり用いるべき基礎の有効根入れ深さは、計画河床面から基礎底面までの深さであり、これによると基礎の有効根入れ深さは、左岸側橋台で0m、右岸側橋台で0.1mとなるが、同市では、計画高水位から基礎底面までの深さを誤って基礎の有効根入れ深さとしていた(参考図参照)
。
そこで、基礎の有効根入れ深さを正しい深さとして改めて安定計算等の詳細な報告を求め、その報告内容を確認するなどした。その計算結果によると、橋台の基礎底面地盤の許容鉛直支持力は、地震時において、左岸側橋台で4,336.8kN、右岸側橋台で4,042.8kNとなり、地盤に対して作用するそれぞれの鉛直力10,033.9kN、8,268.8kNを大幅に下回っている。
このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件橋台は設計が適切でなかったため、橋台2基及びこれに架設されたプレストレストコンクリート桁等(これらの工事費相当額53,167,000円、うち国庫補助対象額52,917,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額26,458,500円が不当と認められる。
基礎底面地盤の許容鉛直支持力・鉛直力 「鉛直力」とは、構造物の自重等が地盤に対し鉛直方向に働く力をいい、鉛直力を基礎底面地盤が支えることのできる設計上許される限度を「基礎底面地盤の許容鉛直支持力」という。
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地震時 橋りょうの供用期間中に発生する確率が高い地震を考慮する場合をいう。
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橋りょう概念図