(280) 緊急地方道路整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
会計名及び科目
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道路整備特別会計
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(項)地方道路整備臨時交付金
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部局等
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熊本県
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補助の根拠
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道路整備費の財源等の特例に関する法律(昭和33年法律第34号)
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補助事業者
(事業主体)
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熊本県
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補助事業
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五和中央線緊急地方道路整備
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補助事業の概要
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橋りょうを新設するため、平成17、18両年度に橋台、上部工等を施工するもの
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事業費
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158,881,077円
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上記に対する国庫補助金交付額
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87,384,592円
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不当と認める事業費
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130,770,077円
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不当と認める国庫補助金交付額
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71,923,542円
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この補助事業は、熊本県が、市道五和中央線(起点天草市五和町城河原、終点同町鬼池)の緊急地方道路整備事業の一環として、天草市五和町地内において、橋りょう(橋長39.5m、幅員7.7m〜8.0m)を新設するため、平成17、18両年度に、下部工として橋台2 基の築造、基礎杭の打設等及び上部工としてプレストレストコンクリート桁の製作・架設等を工事費計158,881,077円(国庫補助金87,384,592円)で実施したものである。
このうち、橋台の基礎杭は、杭径100cmのオールケーシング工法による場所打ち鉄筋コンクリート杭(以下「場所打杭」という。)とし、起点側の橋台(以下「A1橋台」という。)については杭長8.0mで12本、終点側の橋台(以下「A2橋台」という。)については杭長8.5mで8本、計20本打設するものである(参考図参照)
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本件場所打杭の設計については、「道路橋示方書・同解説」及び「杭基礎設計便覧」(いずれも社団法人日本道路協会編)等(以下、これらを「示方書等」という。)に基づき、コンクリートの設計基準強度(注1)
を一般に採用されている24N/mm2
とし、これを基に設計計算を行い、曲げ圧縮応力度(注2)
が許容曲げ圧縮応力度(注2)
を下回ることなどから、応力計算上安全であるとしていた。
本院は、熊本県において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計計算書、契約図書等の書類により検査したところ、本件場所打杭の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、示方書等によると、泥水中などでコンクリートの打込みが行われるオールケーシング工法による場所打杭において使用するコンクリートは、打込みの際にある程度分離するのは避けられず、また、打込み後の締め固め作業も困難であることから、大気中で施工するコンクリートに比べ強度のばらつきが大きく平均強度も低くなるため、設計基準強度を24N/mm2
とする場合は呼び強度(注1)
30のコンクリートを使用することとされている。そして、同県では、設計基準強度を24N/mm2
とし、呼び強度を30とする設計計算書を建設コンサルタントより受領していた。
しかし、同県では、契約図書等のうち、工事に使用する材料の数量、仕様等を請負人に示す総括情報表に、場所打杭のコンクリートの呼び強度を誤って24と記載していた。そして、請負人はこれにより施工していた。
そこで、改めて本件場所打杭について、示方書等に基づく再計算等の詳細な報告を求め、その報告内容を確認するなどした。その計算結果によると、地震時において、A2橋台の場所打杭に生ずる曲げ圧縮応力度は10.9N/mm2
となり、許容曲げ圧縮応力度9.0N/mm2
を大幅に上回り、応力計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。また、A1橋台においても許容値を上回っていた。
このような事態が生じていたのは、同県において、示方書等についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件橋りょうは、設計が適切でなかったため、両橋台及びこれらに架設された上部工等(工事費相当額130,770,077円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額71,923,542円が不当と認められる。
設計基準強度・呼び強度 「設計基準強度」とは、応力計算上でのコンクリート強度である。「呼び強度」とは、使用するコンクリートの強度を示す呼称である。
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曲げ圧縮応力度・許容曲げ圧縮応力度 「曲げ圧縮応力度」とは、材の外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力のうち圧縮側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ圧縮応力度」という。
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