(257) 通常砂防事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
会計名及び科目
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治水特別会計(治水勘定)
道路整備特別会計
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(項)砂防事業費
(項)道路事業費
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部局等
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宮城県
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補助の根拠
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砂防法(明治30年法律第29号)、予算補助
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補助事業者
(事業主体)
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宮城県
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補助事業
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通常砂防
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補助事業の概要
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流路の築造に伴い、橋りょうを架け替えるため、平成17、18両年度に橋りょう上部工の製作、架設等を行うもの
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事業費
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108,770,550円
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(うち国庫補助対象額108,723,300円)
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上記に対する国庫補助金交付額
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54,361,650円
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不当と認める事業費
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14,561,000円
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(全額国庫補助対象額)
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不当と認める国庫補助金交付額
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7,280,500円
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この補助事業は、宮城県が、通常砂防事業の一環として、気仙沼市赤岩羽田地内において、普通河川羽田川に架かる市道羽田線の橋りょうを新橋(橋長16.14m、幅員5.5m)に架け替えるため、平成17、18両年度に、橋台2基の築造及び橋りょう上部工としてプレストレストコンクリート桁(以下「PC桁」という。)の製作、架設等を工事費108,770,550円(うち国庫補助対象額108,723,300円、国庫補助金54,361,650円)で実施したものである。そして、この橋りょうは、橋軸と支承の中心線とのなす角が60度の斜橋となっている(参考図参照)
。
この橋りょうの設計は、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づいて行っている。そして、示方書によると、設計で想定されない地震動が作用するなどした場合でも上部構造の落下を防止することができるように、落橋防止システムを設けることとされている。この落橋防止システムの構成は、落橋防止構造、桁かかり長(注)
等の中から、橋りょうの形式、地盤条件等に応じ適切に選定することとされている。
このうち落橋防止構造は、上部構造の両端が剛性の高い橋台に支持され、上部構造の長さが25m以下の橋りょうについては、橋軸方向の変位が生じにくい橋りょうに該当し、その設置を省略することができることとされている。
同県では、本件橋りょうは、PC桁の両端が剛性の高い橋台に支持されていること、PC桁の長さが16.08mであることから、橋軸方向の変位が生じにくい橋りょうに該当するので、落橋防止構造の設置を省略しても耐震設計上安全であるとして、これにより施工していた。
本院は、宮城県において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類により検査したところ、落橋防止システムの設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、示方書によると、落橋防止構造を省略することができるとされている橋りょうであっても、斜橋の場合には、予期しない大きな変位が生じることがあるためその必要性を所定の判定式により判定しなければならないとされている。しかし、本件橋りょうの設計に当たっては、この判定を行っていなかった。
そこで、この判定式に本件橋りょうのPC桁の長さや幅員の条件を当てはめて計算すると落橋防止構造を設置する必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、同県との協議により本件橋りょうの設計業務を行うことになった本件橋りょうの管理者である気仙沼市が委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、同県において、同市から引渡しを受ける際、これに対する確認が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件橋りょう上部工等(これらの工事費相当額14,561,000円)は、設計が適切でなかったため落橋防止構造が設置されておらず、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額7,280,500円が不当と認められる。
(参考例)