会計名及び科目
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道路整備特別会計
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(項)地方道路整備臨時交付金
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部局等
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千葉県
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補助の根拠
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道路整備費の財源等の特例に関する法律(昭和33年法律第34号)
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補助事業者
(事業主体)
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千葉市
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補助事業
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都市計画道路新港横戸町線整備
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補助事業の概要
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都市計画道路を整備するため、平成17、18両年度に、擁壁工、舗装工等を施工するもの
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事業費
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164,757,600円
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(うち国庫補助対象額164,667,600円)
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上記に対する国庫補助金交付額
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90,567,180円
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不当と認める事業費
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18,953,000円
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(うち国庫補助対象額18,943,000円)
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不当と認める国庫補助金交付額
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10,418,650円
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この補助事業は、千葉市が、街路事業の一環として、同市稲毛区穴川地内において、都市計画道路新港横戸町線(起点美浜区新港、終点花見川区横戸町)を整備するため、平成17、18両年度に、擁壁工、舗装工等を工事費164,757,600円(うち国庫補助対象額164,667,600円、国庫補助金90,567,180円)で実施したものである。
本件道路を整備するに当たっては、既存道路の下に立体交差させる必要があることから、地中に並行した連続の壁面を構築した上で、壁面間の道路となる部分を掘削等することとしている。
本件補助事業のうち擁壁工は、等辺四角柱状の高強度プレストレストコンクリート杭(縦、横ともに0.6m、長さ13m又は14m。以下「PC−壁体(注1)
」という。)を道路の右側(起点から終点に向かって右側をいう。以下同じ。)に56本(延長34.1m)、左側(起点から終点に向かって左側をいう。以下同じ。)に33本(延長20.1m)、計89本連続して地中に打ち込み、上記の壁面を構築するものである。上記の壁面間の道路となる部分の掘削については、19年度に発注を予定している別途工事において行うこととしている(参考図参照)
。
そして、PC−壁体については、設計図面によると、右側、左側いずれもB種のPC−壁体を使用することとしており、これにより施工していた。
本院は、千葉市において、合規性等の観点から、設計が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図面、設計計算書等の書類により検査したところ、本件擁壁の設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、本件擁壁の設計の基礎となっている設計計算書によれば、本件擁壁については、壁面間の道路となる部分を路床下面まで掘削したとき(以下「路床掘削時」という。)に壁高が最大となるため、路床掘削時においてPC−壁体に生ずる曲げ引張応力度(注2)
を算出していた。そして、路床掘削時の壁高は、右側で6.83mから7.89m、左側が6.81mから7.36mであり、このうち7.30m未満の区間については、B種のPC−壁体を、7.30m以上となる区間については、B種より強度の高いC種のPC−壁体をそれぞれ使用すれば、路床掘削時においてPC−壁体に生ずる曲げ引張応力度が許容曲げ引張応力度(注2)
を下回ることなどから、応力計算上安全であるとしていた。
しかし、設計図面を作成する際、路床掘削時の壁高が7.30m以上となる区間について、誤ってB種のPC−壁体を使用することとしていた。
そこで、PC−壁体を上記の区間で実際に使用したB種のPC−壁体として改めて応力計算等の詳細な報告を求め、その報告内容を確認するなどした。その計算結果によると、当初の設計では考慮していなかったPC−壁体と背面側の土砂との摩擦力による土圧の減少を考慮するなどしても、壁高が7.47m以上となる右側の28本(延長17.0m)は、路床掘削時において、PC−壁体に生ずる曲げ引張応力度が許容曲げ引張応力度を上回り、応力計算上安全とされる範囲に収まらないこととなる。特に、壁高が最大となる7.89mの箇所では、PC−壁体に生ずる曲げ引張応力度が−2.9N/mm2
(曲げ引張応力度の数字のマイナス表示は引張が生じていることを示している。)となり、B種の許容曲げ引張応力度−1.5N/mm2
を大幅に上回ることとなる。
このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件擁壁の延長17.0m(工事費相当額18,953,000円、うち国庫補助対象額18,943,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額10,418,650円が不当と認められる。
PC−壁体 壁体の引張強度を高めるため、あらかじめ緊張したPC鋼材を配置することにより、コンクリートに圧縮応力を与え、引張応力を打ち消すように設計された等辺四角柱状のコンクリート杭。A種、B種及びC種の3種類がある。
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曲げ引張応力度・許容曲げ引張応力度 「曲げ引張応力度」とは、材の外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力のうち引張側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ引張応力度」という。
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擁壁概要図