(281) 河川改修事業の実施に当たり、建物等移転補償に要する費用の算定が適切でなかったなどのため、補償費が過大となっているもの
会計名及び科目
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治水特別会計(治水勘定)
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(項)河川事業費
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部局等
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鹿児島県
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補助の根拠
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河川法(昭和39年法律第167号)
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補助事業者
(事業主体)
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鹿児島県
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補助事業
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建物等移転補償
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補助事業の概要
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放水路等を新設するため必要となる土地の取得に当たり、平成14、15両年度に、支障となる建物等の移転補償を行うもの
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補償費
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(1)
(2)
(3)
計
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47,464,066円
35,150,920円
36,811,061円
119,426,047円
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上記に対する国庫補助金交付額
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59,713,024円
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不当と認める事業費
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25,815,626円
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不当と認める国庫補助金交付額
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12,907,813円
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この補助事業は、鹿児島県が、稲荷川基幹河川改修事業の一環として、放水路等を新設するため必要となる土地の取得に当たり、支障となる鹿児島市稲荷町地内の鉄筋コンクリート造り4階建ての共同住宅を移転させるため、平成14、15両年度に(1)47,464,066円、(2)35,150,920円、(3)36,811,061円、計119,426,047円(国庫補助金59,713,024円)で、その所有者3人に建物等移転補償を行ったものである。
同県では、公共事業の施行に伴う損失の補償については、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年閣議決定)に基づき同県が制定した「公共用地の取得に伴う損失補償基準」(昭和39年告示第130号)及び「損失補償基準標準書」(平成14年九州地区用地対策連絡会)等(以下、これらを「損失基準等」という。)に基づいて行うこととされている。
損失基準等によれば、事業者が事業の実施に当たって取得する土地の上に存在する建物等を補償するに際しては、事業者が当該建物等を取得せず又は使用しないときは、当該建物等を通常妥当と認められる移転先に、通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償するものとされている。
そして、同県では、本件建物等移転補償費(以下「補償費」という。)について、損失基準等に基づき調査、積算することを補償コンサルタントに委託して、その成果品を検査して受領し、補償費を算定していた。
補償費のうち補償の対象となった建物の基礎杭に係る補償費についてみると、外径1.5m、杭長33.1mの場所打杭10本であるとして、専門業者からの見積書により杭1本当たりの単価を2,107,000円とし、これに基礎杭の本数、諸経費率等を乗じ、同県は基礎杭の補償費を28,466,555円としていた。
本院は、鹿児島県において、合規性等の観点から、補償費の算定が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件建物等移転補償について、建物等移転補償契約書等の書類により検査したところ、補償費の算定が次のとおり適切でなかった。
すなわち、同県が検査して受領した成果品によれば、本件建物の基礎杭は、前記の外径1.5m、杭長33.1mの場所打杭10本ではなく、外径0.4m、杭長4.0mの既製杭24本であり、その補償費は3,032,802円となっていて、本件の基礎杭の補償費は25,433,753円過大となっていた。
このような事態が生じていたのは、同県において、用地交渉の公正を確保するため原則として2人以上の職員で用地交渉に当たらせることとしているのに本件では担当者1人で用地交渉に当たらせていて、この担当者が、成果品の検査を終えた後、早期に建物等の移転補償を実現するため補償費の水増しを図り、成果品を水増しした補償内容のものに差し替えていたのに、これを看過していたことなどによると認められる。
したがって、本件建物等移転補償に要する適正な費用は93,610,421円となり、前記契約額119,426,047円との差額25,815,626円が過大となっており、これに係る国庫補助金相当額12,907,813円が不当と認められる。