(269) 災害関連緊急砂防等事業の実施に当たり、鉄線籠型多段積護岸の設計及び施工が適切でなかったため、工事の目的を達していないもの
会計名及び科目
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一般会計
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(組織)国土交通本省
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(項)河川等災害関連事業費
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治水特別会計(治水勘定)
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(項)砂防事業費
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部局等
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新潟県
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補助の根拠
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砂防法(明治30年法律第29号)
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補助事業者
(事業主体)
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新潟県
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補助事業
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災害関連緊急砂防等
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補助事業の概要
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土砂が下流域に流出するのを防止するため平成15年度から17年度までにえん堤工、護岸工等を施工するもの
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事業費
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94,862,250円
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上記に対する国庫補助金交付額
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62,572,825円
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不当と認める事業費
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2,788,000円
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不当と認める国庫補助金交付額
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1,858,666円
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この補助事業は、新潟県が、小千谷市真人町地内の小真人沢において、土砂が下流域に流出するのを防止するため、平成15年度から17年度までに、えん堤工、護岸工等を工事費94,862,250円(国庫補助金62,572,825円)で実施したものである。
このうち、護岸工は、洪水時に流水が河岸に強く当たる左岸側に、割栗石を中に詰めて製作した鉄線籠(縦0.5m、横1.0m、長さ1.0m又は2.0m)を多段に積み重ねるなどして連結した一体構造とし、高さ0.5m〜2.0mの鉄線籠型多段積護岸(延長34.0m。以下「多段積護岸」という。)を築造するものである。
同県では、多段積護岸の設計及び施工については、「河川災害復旧護岸工法技術指針(案)」(社団法人全国防災協会編)及び同県制定の「鉄線籠型多段積護岸工法設計施工の留意事項」(以下、これらを「技術指針等」という。)等によることとしている。そして、技術指針等に基づき、多段積護岸の基礎部の前面河床が洗掘されると、護岸全体の安定が損なわれるおそれがあることから、基礎部の保護工法については、鉄線籠を多段積護岸本体の前面に並べて接するように設置する並列式として設計し、施工していた。
また、多段積護岸本体の鉄線籠各段の連結の方法は、コイル(らせん状に巻いた鉄線)式として施工していた。
本院は、新潟県において、合規性等の観点から、設計及び施工が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、本件工事について、設計図書、設計計算書等の書類により検査したところ、多段積護岸の設計及び施工が、次のとおり適切でなかった。
すなわち、技術指針等では、多段積護岸の基礎部の保護工法を並列式とする場合には、多段積護岸本体に影響を与えないために前面に並べて設置する鉄線籠と多段積護岸本体との連結を避け、分離して設けることとされていた(参考図1参照)
。しかし、同県では設計図書において誤って連結する構造としていた(参考図2参照)
。
また、技術指針等では、多段積護岸本体の鉄線籠各段の連結の方法はコイル式とし、接続する長さは鉄線籠の全延長とされていた(参考図1参照)
。しかし、同県では設計図書において連結方法を明確に示しておらず、さらに、請負人は多段積護岸についての理解が十分でなかったため、多段積護岸本体の鉄線籠各段の接続する長さについて同県に確認を行わず、鉄線籠の全延長の2分の1の長さしか接続していなかった(参考図2参照)
。
このため、基礎部の保護工である鉄線籠と多段積護岸本体とが一体となっていたり、多段積護岸本体の鉄線籠各段の接続する長さが十分でなかったりしている状況であることから、河床が洗掘を受け基礎部の保護工である鉄線籠に沈下等の変状が生ずると、多段積護岸本体に影響を及ぼし、護岸全体の安定が損なわれるおそれがあると認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、設計図書作成の際に多段積護岸の基礎部の保護工法等についての検討が十分でなかったこと及び設計図書に多段積護岸の連結方法を明確に記載していなかったこと、また、請負人が多段積護岸についての理解が十分でないまま施工していたのに、これに対する同県の監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件多段積護岸(工事費相当額2,788,000円)は設計及び施工が適切でなかったため、その安定が損なわれるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額1,858,666円が不当と認められる。
技術指針等による多段積護岸の基礎部の保護工法(並列式)及び多段積護岸本体
実際の施工図