(277) 公共下水道事業の実施に当たり、損失の補償の対象とならない消費税額を補償費に計上していたなどのため、補償費が過大となっているもの
会計名及び科目
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一般会計
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(組織)国土交通本省
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(項)都市計画事業費
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部局等
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福岡県
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補助の根拠
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下水道法(昭和33年法律第79号)
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補助事業者
(事業主体)
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北九州市
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補助事業
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北九州市公共下水道
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補助事業の概要
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下水道管きょを築造するため、平成18年度(17年度事業を繰越し)に、支障となる工業用水用送水管の移設補償を行うもの
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事業費
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247,258,000円
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(うち国庫補助対象額240,858,000円)
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上記に対する国庫補助金交付額
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120,429,000円
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不当と認める事業費
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11,774,190円
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(うち国庫補助対象額11,469,429円)
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不当と認める国庫補助金交付額
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5,734,714円
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この補助事業は、北九州市が、北九州市公共下水道事業の一環として、下水道管きょを築造するため、八幡東区中央地内に所在する工業用水用送水管(径1,200mm、延長89.0m。以下「送水管」という。)の移設に要する費用(以下「移設費用」という。)として、平成18年度(17年度事業を繰越し)に247,258,000円(うち国庫補助対象額240,858,000円、国庫補助金120,429,000円)を当該送水管の所有者である会社に補償したものである。この補償金の算定に当たっては、移設費用235,484,620円に、これに係る消費税相当額として11,773,380円を加算している。
消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)は、事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生じるが、生産、流通の各段階で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除(以下、この控除を「仕入税額控除」という。)する仕組みが採られている。
そして、土地等の権利者等が、補償金により建設業者等から資産の譲渡等を受けることも課税仕入れに該当し、上記の仕組みにより確定申告の際に補償金により譲渡等を受けた資産に係る消費税額を仕入税額控除した場合には、土地等の権利者等は当該資産に係る消費税額を実質的に負担していないことになる。
このため、国土交通省都市・地域整備局所管の国庫補助事業の施行に伴う損失の補償においては、消費税について、「建設省の直轄の公共事業の施行に伴う損失の補償等に関する消費税及び地方消費税の取扱いについて」(平成9年建設省経整発第67号の3)に準じ、土地等の権利者等が消費税法(昭和63年法律第108号)上の事業者である場合においては、補助事業の事業主体は、土地等の権利者等から、消費税の確定申告書を収集するなどにより、個別に調査の上、補償金に係る消費税が確定申告時に仕入税額控除の対象となると判断される場合は、消費税は補償金の積算上考慮しないこととされている。
そして、消費税法によれば、事業者の課税売上割合(注)
が95%以上となっている場合、事業者は、課税仕入れに係る消費税の全額を仕入税額控除することができることとなっている。
本院は、北九州市において、合規性等の観点から、補償金の算定が適切に行われているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、この補助事業について、補償契約書等の書類により検査したところ、補償金の算定が次のとおり適切でなかった。
すなわち、この会社は、16年4月から17年3月までの課税期間分の消費税の確定申告書等において、課税売上割合が95%以上であることから、課税仕入れに係る消費税の全額を仕入税額控除することができる消費税法上の事業者となる。したがって、会社は送水管の移設に係る消費税を実質的に負担しないこととなるのに、同市の補償金の算定に当たり消費税相当額を加算していたのは適切とは認められない。なお、この消費税相当額11,773,380円は、その算定過程において、端数処理するなどしていたため、会社が実質的に負担しないこととなる消費税額より少額となっていた。
このような事態が生じていたのは、同市において、補償金の算定に当たり消費税の取扱いについての理解が十分でなかったことによると認められる。 上記により、本件事業に要する適正な移設費用は235,483,810円(うち国庫補助対象額229,388,571円)であり、これに係る消費税額11,774,190円(うち国庫補助対象額11,469,429円)が過大となっており、これに係る国庫補助金相当額5,734,714円が不当と認められる。