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  • 第1節 検査活動の概況

検査結果の大要


第2節 検査結果の大要

 平成16年次の検査の結果については、「第2章 決算の確認」並びに「第3章 個別の検査結果」、「第4章 特定検査対象に関する検査状況」及び「第5章 会計事務職員に対する検定」に記載したとおりであり、このうち第3章及び第4章に掲記した事項等の概要は次のとおりである。

第1 事項等別の検査結果

1 事項等別の概要

 検査の結果、第3章及び第4章に掲記した事項等には、次のものがある。

ア 第3章の「個別の検査結果」に掲記した事項

(ア)「不当事項」(検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項)
(イ)「意見を表示し又は処置を要求した事項」(会計検査院法第34条又は第36条(注) の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項)
(ウ)「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」(本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項)
(エ)「特に掲記を要すると認めた事項」(検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めた事項)

イ 第4章の「特定検査対象に関する検査状況」(本院の検査業務のうち、検査報告に掲記する必要があると認めた特定の検査対象に関する検査の状況)

(注) 会計検査院法
  第34条  会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。
  第36条  会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。

 これらの事項等の件数、金額は、次表のとおりである。

事項等 件数 指摘金額
〔背景金額〕
不当事項 219件 126億4139万円
意見を表示し又は処置を要求した事項
第34条
1件

(122億1739万円)
第36条
10件

3億5112万円
694億6956万円
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 (注2)
47件
<33件分>
303億7079万円
109億0515万円
31億2064万円
219億7151万円
44億0433万円
60億6976万円
6億3983万円
17億0032万円
372億1380万円
977億8097万円
5億5921万円
15億6292万円
7841万円
82億5056万円
4億4475万円
4億7098万円
特に掲記を要すると認めた事項 8件
663億円
7112億円
95億円
2334億円
4965億円
756億円
820億円
2915億円
事項計 285件
<252件分>
430億1218万円
特定検査対象に関する検査状況 20件
総計 305件
<252件分>
430億1218万円
(注1) 指摘金額・背景金額 指摘金額とは、租税や社会保険料等の徴収不足額、工事や物品調達等に係る過大な支出額、補助金の過大交付額、計算書や財務諸表等に適切に表示されていなかった資産等の額などである。
背景金額とは、会計経理に関し不適切、不合理な事態が生じている原因が「法令」、「制度」あるいは「行政」にあるような場合や、政策上の問題等から事業が進ちょくせず投資効果が発現していない事態について問題を提起する場合などの、その事態に関する支出額や投資額等である。このような事態における支出等の額は、直ちに不適切な会計経理の額とは言い切れないため、「背景金額」として「指摘金額」と区別している。なお、背景金額は個別の事案ごとにその捉え方が異なるため、金額の合計はしていない。
(注2) 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」には、指摘金額と背景金額の両方あるものが1件ある。

2 第3章の「個別の検査結果」の概要

 第3章の「個別の検査結果」に掲記した各事項のうち、特に掲記を要すると認めた事項を除く不当事項等について、省庁等別にその件数、金額を示すと次表のとおりである。

事項

省庁又は団体名
不当事項 意見を表示し又は処置を要求した事項 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
国会
(国立国会図書館)
   
1
(109億0515万円)
1
(109億0515万円)
内閣府
(防衛庁)
1 847万円     2 25億6865万円 3 25億7712万円
総務省 3 1695万円     (注3)
2
58億0080万円
(31億2064万円)
5 58億1775万円
(31億2064万円)
法務省         1 9億9219万円 1 9億9219万円
外務省 2 1111万円 〔34〕1 (122億1739万円) 1 2億2249万円 4 2億3360万円
(122億1739万円)
財務省 3 8億5558万円     1 6730万円 4 9億2288万円
文部科学省 2 26億5011万円 〔36〕9 (3億5112万円) 2 4億1067万円
(219億7151万円)
13 30億6078万円
(3億5112万円)
(219億7151万円)
厚生労働省 124 82億7533万円     3 76億5598万円
(44億0433万円)
127 159億3131万円
(44億0433万円)
農林水産省 14 1億1925万円     6 95億7943万円
(60億6976万円)
(6億3983万円)
20 96億9868万円
(60億6976万円)
(6億3983万円)
経済産業省 14 4708万円     3 6億1218万円
(17億0032万円)
17 6億5926万円
(17億0032万円)
国土交通省 15 2億3809万円     3 8673万円
(372億1380万円)
(977億8097万円)
18 3億2482万円
(372億1380万円)
(977億8097万円)
環境省 4 1825万円     1 6312万円 5 8137万円
日本道路公団 1 1272万円         1 1272万円
首都高速道路公団         1 3600万円 1 3600万円
都市基盤整備公団 1 611万円     1 (5億5921万円) 2 611万円
(5億5921万円)
日本私立学校振興・共済事業団 4 1216万円     1 (15億6292万円) 5 1216万円
(15億6292万円)
奄美群島振興開発基金         1 (7841万円) 1 (7841万円)
核燃料サイクル開発機構 1 417万円         1 417万円
日本郵政公社 23 3億0199万円         23 3億0199万円
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構         1 18億1760万円 1 18億1760万円
自動車検査独立行政法人 1 302万円         1 302万円
独立行政法人農畜産業振興機構 3 897万円         3 897万円
独立行政法人科学技術振興機構     〔36〕1 (694億6956万円)     1 (694億6956万円)
独立行政法人日本貿易振興機構         1 (82億5056万円) 1 (82億5056万円)
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構         1 3600万円 1 3600万円
日本放送協会 3 5196万円         3 5196万円
北海道旅客鉄道株式会社         2 5673万円 2 5673万円
四国旅客鉄道株式会社         2 4993万円 2 4993万円
九州旅客鉄道株式会社         2 5959万円 2 5959万円
東日本電信電話株式会社         2 3930万円
(4億4475万円)
2 3930万円
(4億4475万円)
西日本電信電話株式会社         4 1億3770万円
(4億7098万円)
4 1億3770万円
(4億7098万円)
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社         1 2200万円 1 2200万円
株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ         1 5640万円 1 5640万円
合計 219 126億4139万円 11   47 303億7079万円 277 430億1218万円
(注1) 「意見を表示し又は処置を要求した事項」の件数欄の〔34〕は会計検査院法第34条によるもの、〔36〕は会計検査院法第36条によるものを示している。
(注2) ( )内の金額は背景金額であり、個別の事案ごとにその捉え方が異なるため金額の合計はしていない。
(注3) 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」には、指摘金額と背景金額の両方あるものが1件ある。

 また、特に掲記を要すると認めた事項は、8件(背景金額663億円、7112億円、95億円、2334億円、4965億円、756億円、820億円、2915億円)である。
 以上の各事項計285件について、その概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)

 検査の結果、「不当事項」として計219件掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。

1 収入に関するもの(計8件37億2162万余円)

省庁又は団体名 租税 保険料 不正行為 その他
財務省
1

1

1

3
厚生労働省   2 1   3
自動車検査
独立行政法人
      1 1
日本放送協会     1   1
1 2 3 2 8

(1)租税 1件 8億4901万余円

<租税の徴収が適正でなかったもの>

〇財務省

租税の徴収に当たり、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりなどしていたため、納税者163人からの徴収額に過不足があったもの

(2)保険料 2件 28億4353万余円

<保険料の徴収が適正でなかったもの>

〇厚生労働省

健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、パートタイム労働者等の短時間就労者を多数使用しているなどの事業主が、常用的に使用している短時間就労者について被保険者資格取得届の提出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、1,055事業主からの徴収額が不足していたもの(1件 25億7716万余円)

労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告書における賃金総額の記載が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、487事業主からの徴収額に過不足があったもの(1件 2億6636万余円)

(3)不正行為 3件 2334万余円

<現金が領得されたもの>

〇財務省

税務署の職員が、源泉徴収義務者に対する指導・調査に関する事務に従事中、源泉所得税を収納する権限がないのにこれを受領して領得したもの(1件 385万余円)

〇厚生労働省

労働局等の職員が、労働保険料の収納事務に従事中、滞納事業主から受領した同保険料を国庫に払い込まずに領得したもの(1件 1740万余円)

〇日本放送協会

放送局の職員が、受信料収納の事務に従事中、支払を受けた受信料を領得したもの(1件 208万余円)

(4)その他 2件 572万余円

<庁舎の使用料の徴収が適切でなかったもの>

〇財務省

国の庁舎の使用料の算定に当たり、庁舎が民有地上にあるのに、誤って、国有地上にあるものとして算定していたため、使用料が低額となっているもの(1件 270万余円)

<消費税の申告が適切でなかったもの>

〇自動車検査独立行政法人

消費税の申告に当たり、同一の敷地内に所在する国の機関に係る水道等の使用料について、水道事業者等に支払った後に国から徴収した額を課税仕入れに計上すべきであるのに、これを計上しておらず、課税仕入れの額を過小に算出していたため、還付を受けた消費税の額が過小となっているもの(1件 302万余円)

2 支出に関するもの(計187件86億0945万余円)

省庁又は団体名 予算経理 役務 保険給付 医療費 補助金 貸付金 不正行為 不正行為・予算経理 その他
総務省
3

3
外務省               2   2
文部科学省 1           1     2
厚生労働省 2 1 3 2 111   1   1 121
農林水産省         14         14
経済産業省         11 3       14
国土交通省         14   1     15
環境省         4         4
日本道路公団             1     1
都市基盤整備公団                 1 1
日本私立学校振興・共済事業団         4         4
核燃料サイクル開発機構             1     1
日本郵政公社             1     1
独立行政法人農畜産業振興機構         3         3
日本放送協会             1     1
3 1 3 2 164 3 7 2 2 187

(1)予算経理 3件 32億6221万余円

<会計経理が適正を欠いているもの>

〇文部科学省

医薬品等の購入などに係る予算執行において、当該年度に行うべき支出負担行為等の会計事務処理を行わず、日付欄が空白の請求書を業者に提出させ、これに翌年度、適当な日付を記入するなどして翌年度の予算から代金を支払っていて、会計経理が会計法令等に違背し適正を欠いているもの(1件 26億4270万余円)

〇厚生労働省

物品を購入したように書類を偽装するなどして庁費、委託費等から不正に支出し、これを別途に経理して目的外の用途に使用するなどしていて、会計経理が会計法令等に違背し、著しく不当と認められるもの(1件 1億7302万余円)

国民年金事業に使用する金銭登録機の購入に当たり、当該金銭登録機は大量に調達するものであり、また、複数の会社により販売されるなどしているのに、本庁で一括して調達することなく各社会保険事務局等で小口に分割して随意契約により調達するなどしていて、契約の公正性、透明性、競争性、経済性等が確保されておらず、一般競争契約を原則としている会計法令の趣旨に反し適切でないもの(1件 4億4648万余円)

(2)役務 1件 22億7136万余円

<契約の必要がなかったもの>

〇厚生労働省

社会保険業務に関する多種類の届出書等を印刷供給するための印刷システムの提供を受ける役務契約に当たり、その必要性及び代替手段を十分検討しなかったため、印刷システムがほとんど使用されていない状況となっていて、印刷システム導入の必要性がなく不当と認められるもの

(3)保険給付 3件 4億8035万余円

<保険の給付が適正でなかったもの>

〇厚生労働省

厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給に当たり、受給権者が事業所に常用的に使用されていて、年金の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに、被保険者資格取得届が提出されず、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、596人に対して支給停止の手続が執られず支給が適正でなかったもの(1件 3億2417万余円)

雇用保険の失業等給付金の支給決定に当たり、受給者が、再就職していながらその事実を申告書に記載していなかったり、事実と相違する雇入年月日を記載したりなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、431人に対する支給が適正でなかったもの(1件 1億2850万余円)

雇用保険の特定求職者雇用開発助成金のうち特定就職困難者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書等において既に雇い入れている者を新たに雇い入れたこととしているなど、その記載内容が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、59事業主に対する支給が適正でなかったもの(1件 2768万余円)

(4)医療費 2件 10億4770万余円

<医療費の支払が適切でなかったもの>

〇厚生労働省

老人保健等における医療費の支払に当たり、医療機関及び薬局から入院基本料、入院基本料等加算、初診料・再診料等及び調剤報酬の不適正な請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったなどのため、260医療機関及び84薬局に対する支払が適切でなく、これに係る国の負担が不当と認められるもの(1件 10億1123万余円)

労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関が手術料、入院料等を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でなかったため、199医療機関に対する支払が適正でなかったもの(1件 3647万余円)

(5)補助金 164件 13億5060万余円

<補助事業の実施及び経理が不当なもの>

〇総務省

電気通信格差是正事業等の実施及び経理において、補助の対象とはならない設備の購入費等を補助対象事業費に含めていたり、共同で敷設した光ファイバケーブルの材料費等の負担額を適切に算定していなかったりなどしていたため、補助金が過大に交付されるなどしているもの(3件 1695万余円)

〇厚生労働省

血液確保事業等補助金等の経理において、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(1件 1億0427万余円)

医療施設運営費等補助金の経理において、補助の対象とはならない施設整備に要した借入資金に係る借入利息を総事業費に含めるなどしていたため、補助対象事業費が過大に精算されているもの(1件 776万余円)

保健事業費等負担金の算定において、基本健康診査が民間検診団体により集団検診の方法で実施されているのに、誤って、医療機関において診査が実施された場合の基準単価を適用していたため、負担金が過大に交付されているもの(1件 1606万余円)

医療施設等施設整備費補助金の交付を受けて取得した理学療法士等養成所の校舎を無断で担保に供するなどしていて、補助金の交付条件に違背しているもの(1件 1億3967万余円)

保健衛生施設等施設整備費補助金の経理において、他の補助金と重複して交付を受けていたり、補助事業により取得した建物を無断で担保に供していたりなどしているもの(3件 3785万余円)

緊急雇用創出特別基金事業における新規・成長分野雇用奨励金の支給決定に当たり、事業主が申請書等において既に雇い入れている者を新たに雇い入れたこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、6事業主に対する支給が適正でなかったもの(1件 420万円)

早期再就職者支援基金事業における早期再就職者支援金の支給決定に当たり、受給者が申請書に事実と相違した雇入年月日を記載するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、20人に対する支給が適正でなかったもの(1件 727万余円)

在宅福祉事業費補助金の算定において、在宅介護支援センターに配置することとされている社会福祉士等の有資格職員ではない者等の人件費を補助対象経費の実支出額に含めるなどしていたため、補助金が過大に交付されているもの(5件 1714万余円)

社会福祉施設等施設整備費補助金等の算定において、補助の対象となった特別養護老人ホームとは別の施設の工事費を補助対象経費に含めるなどしていたため、補助金等が過大に交付されているもの(5件 1247万余円)

児童保護費等負担金の経理において、児童の扶養義務者の所得税額等を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定したり、保育単価の適用を誤るなどして費用の額を過大に算定したりしていたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されているもの(19件 4281万余円)

生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における就労収入等の額を過小に認定するなどして保護費の額を決定していたため、負担金が過大に交付されているもの(8件 4532万余円)

精神保健対策費補助金の経理において、備品購入費等の額を過大に計上したり、補助の対象とはならない営業事業に要する光熱水費等を補助対象経費に含めたりなどしていたため、補助対象事業費が過大に精算されているもの(4件 1658万余円)

介護保険事務費交付金の算定において、要介護認定等申請者数の中に、介護保険の被保険者でない者が介護扶助を受けるために必要な審査判定の申請を行った数を含めたり、要介護認定等事務処理に要する費用の中に、要介護認定等の事務処理に要するとは認められないシステムの保守委託に要する費用などを含めたりしていたため、交付金が過大に交付されているもの(2件 612万余円)

介護保険の普通調整交付金の算定において、介護給付費等の額や対象となる被保険者数を誤るなどして調整基準標準給付費額や普通調整交付金交付割合を過大に算定していたため、交付金が過大に交付されているもの(8件 3842万余円)

国民健康保険の療養給付費負担金の交付に当たり、市区町村において、遡及して退職被保険者等となった者に係る医療給付費を一般被保険者に係る医療給付費から控除せずに交付申請等を行っていたため、負担金が過大に交付されているもの(9件 1億5375万余円)

国民健康保険の財政調整交付金の交付に当たり、市区町村において、調整対象需要額を過大に算定したり調整対象収入額を過小に算定したりなどして交付申請等を行っていたため、交付金が過大に交付されているもの(38件 2億4507万余円)

水道施設整備費補助金の経理において、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(4件 1365万余円)

〇農林水産省

復旧治山事業の実施に当たり、護岸工費を積算する際、巨石をそのまま積み上げる場合に適用する歩掛かりを適用すべきであったのに、誤って、胴込コンクリート等を打設して巨石を積み上げる場合に適用する歩掛かりを適用していたため、工事費が割高となっているもの(1件 173万余円)

経営構造整備事業の実施に当たり、事業主体でない者が取得したホイールローダを補助の対象としているもの(1件 400万余円)

農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業の実施に当たり、ブロック積護岸の基礎である底版を設計する際、引張力は底版の上面側に発生するのに、誤って、下面側に発生するとして下面側に主鉄筋を配置していて、設計が適切でなかったため、底版等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 1244万余円)

中山間農地保全対策事業の実施に当たり、補助金の交付申請前に既に自力により導入を完了していて、補助の対象とならないコンバインを補助の対象としているもの(1件 733万余円)

森林保全整備事業の実施に当たり、法面保護のためのコンクリートの吹付け厚さが不足していたり、コンクリートが地山に密着していなかったりなどしていて、施工が設計と著しく相違していたため、コンクリート吹付工が工事の目的を達していないもの(1件 726万余円)

新山村振興等農林漁業特別対策事業の実施に当たり、もたれ式コンクリート擁壁を設計する際、背面からの土圧及び電気滅菌室の荷重が作用することになるのに、安定計算を行っておらず、設計が適切でなかったため、もたれ式コンクリート擁壁等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 201万余円)

食品リサイクルモデル整備事業の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(1件 594万余円)

農業生産総合対策条件整備事業の実施に当たり、補助金交付決定時に既に自力により導入を完了していて、補助の対象とならない葉たばこ乾燥調製の作業用機器等を補助の対象としているもの(1件 783万余円)

地域農業経営確立支援事業の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(1件238万余円)

経営体質強化施設整備事業の実施に当たり、農家台帳のデータを整備する際、収穫量等の主要な項目のデータが入力されていなかったため、農地等のデータを蓄積して担い手への土地の集積を図るという補助の目的を達していないもの(1件 280万余円)

小規模零細地域営農確立促進対策事業の実施に当たり、導入する農業用機械施設を利用することについての十分な合意形成が図られないまま事業実施計画を策定したため、導入した機械施設の一部が利用されないこととなるもの(1件 192万余円)

地域用水環境整備事業の実施に当たり、洪水吐の橋りょう設置部を設計する際、載荷重として橋りょう、盛土等の荷重を考慮しておらず、設計が適切でなかったため、洪水吐、橋りょう等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 2370万余円)

中山間総合整備事業の実施に当たり、橋りょうの落橋防止システムを設計する際、誤って、落橋防止構造を設置しておらず、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 2562万余円)

小規模零細地域営農確立促進対策事業の実施に当たり、ほ場の整備工事を実績報告書記載の事業費より低額で施行していたため、補助対象事業費が過大に精算されているもの(1件 1422万余円)

〇経済産業省

地域活性化創造技術研究開発費補助金等の経理において、補助対象事業の全部又は一部を実施していなかったり、補助対象の機械装置を実際には購入していなかったりなどしていたため、補助対象事業費が過大に精算されるなどしているもの(11件 3960万余円)

〇国土交通省

公営住宅家賃対策補助金の経理において、建設時に土地の取得費の補助金の交付を受けた公営住宅については、補助基本額の算定に当たり、その減額要素となる入居者負担基準額に所定の額を加算することとされているのに、この加算をしておらず、入居者負担基準額を過小に算定するなどしていたため、補助金が過大に交付されているもの(1件 7801万余円)

道路改築事業の実施に当たり、共通仮設費率等の算出に適用する工種区分を選定する際、主たる工種に対応した工種区分(海岸工事)とは異なる工種区分(道路改良工事)を選定し、これにより共通仮設費等を算定したため、工事費が割高となっているもの(1件 281万余円)

道路改築事業の実施に当たり、ボックスカルバート上部の地覆・壁高欄を設計及び施工する際、設計図にひび割れを防ぐための伸縮目地の位置や構造を明示しておらず、また、請負者も伸縮目地を設置しておらず、設計及び施工が適切でなかったため、ひび割れが多数生じており、地覆・壁高欄が工事の目的を達していないもの(1件 214万余円)

公営住宅家賃対策補助金の経理において、補助基本額の算定基礎となる近傍住宅家賃を過大に算定していたため、補助金が過大に交付されているもの(1件 555万余円)

道路改築事業の実施に当たり、高架橋の詳細設計業務費の積算をする際、鋼橋上部工等の設計を大幅に変更しているのに、変更した詳細設計業務の内容に対応した直接人件費の積算の見直しを行っていなかったため、事業費が割高となっているもの(1件 243万余円)

港湾環境整備事業の実施に当たり、共通仮設費を積算する際、工場製作される大型遊具の製品価格は、共通仮設費の算出の対象となる直接工事費に含めないこととされているのに、誤って、これを直接工事費に含めていたため、工事費が割高となっているもの(1件 190万余円)

緊急地方道路整備事業の実施に当たり、建物等の移転に係る営業補償費を算定する際、移転の対象となった店舗の休業期間中の損失のみを対象とすべきであるのに、誤って、移転の対象となっていない他の地域に所在する店舗の減価償却費等を含めるなどしていたため、補償費が過大となっているもの(1件 927万余円)

緊急地方道路整備事業の実施に当たり、パイプカルバートの管種及び基礎形式について誤った選定図を適用していて、設計が適切でなかったため、パイプカルバート等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 346万余円)

公営住宅整備事業費補助金の算定において、補助金の交付決定後に、補助対象となる住戸の平均床面積の変更等をしているのに、変更前の平均床面積を基にするなどして国庫補助基本額を算定していたため、補助金が過大に交付されているもの(1件 352万円)

空港整備事業の実施に当たり、進入灯橋りょうの橋脚等の受台部を施工する際、設計では受台部に配置する主鉄筋と鋼管杭に設置する鉄筋受プレートを溶接することとしていたのに、誤ってプレートを主鉄筋から離れた位置に設置するなどして主鉄筋と溶接しておらず、施工が設計と相違していたため、橋脚等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 4931万余円)

土地区画整理事業の実施に当たり、ボックスカルバートに作用する活荷重を過小に計算していたり、配筋図を作成する際、誤って、設計計算で安全とされていた鉄筋より細い径の鉄筋を配置することとしていたりしていて、設計が適切でなかったため、ボックスカルバートの所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 2653万余円)

公共下水道事業の実施に当たり、汚泥混合槽の配筋図を作成する際、誤って、隅角部等に配置する主鉄筋について設計計算で安全とされていた鉄筋より細い径の鉄筋を配置することとするなどしていて、設計が適切でなかったため、汚泥混合槽の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 1751万余円)

公共下水道事業の実施に当たり、ポンプ室の配筋図を作成する際、誤って、側壁に配置する主鉄筋について設計計算で安全とされていた鉄筋より細い径の鉄筋を配置することとしていて、設計が適切でなかったため、ポンプ室の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 1520万余円)

河川改修事業の実施に当たり、樋門の底版を設計する際、荷重条件及び底版の厚さを誤って応力計算を行っていて、設計が適切でなかったため、樋門等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 921万余円)

〇環境省

廃棄物処理施設整備費国庫補助金の交付額の算定において、事務費を交付要綱に定められた方法に従って算出していなかったり、過年度の交付要綱で定められていた事務費率を適用したりしたため、補助金が過大に交付されているもの(4件 1825万余円)

〇日本私立学校振興・共済事業団

私立大学等経常費補助金の交付に当たり、学校法人から提出された資料に、補助金の算定の対象となる専任職員の数に対象とならない専任職員の数を含めて記入するなどしているのに、この資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大となっているもの(4件 1216万余円)

〇独立行政法人農畜産業振興機構

国産牛肉等需要回復緊急対策事業の実施に当たり、通常の販売価格から値引いて販売することなどが補助金交付の要件となっているのに、値引き販売を実施していないものに対して補助金が交付されているもの(2件 443万余円)

肉用子牛の生産者補給金の交付に当たり、交付対象は生年月日とみなされる導入日から起算して満2月齢に達する日までに個体登録の申込みをした子牛とされているのに、契約生産者が家畜市場発行の伝票の記載を書き換えて申込みを行っていたため、満2月齢を超えた後に申込みがされた子牛について補給金が交付されているもの(1件 453万余円)

(6)貸付金 3件 747万余円

<貸付金の経理が不当なもの>

〇経済産業省

小規模企業者等設備導入資金の貸付けにおいて、借主が、設備を無断で売却したり、貸付対象事業費より低額で設置したりしていて、これに係る国の貸付金相当額が貸付けの目的に沿わない結果となっているもの

(7)不正行為 7件 1億0912万余円

<現金が領得されたもの>

〇文部科学省

国立大学の職員が、物品の発注等の事務に従事中、正規の調達を装ってパーソナルコンピュータ等の物品を発注し、国にその購入代金を支出させ、受領した同物品を転売するなどしたもの(1件 741万余円)

〇厚生労働省

労働局の職員が、予算執行事務に従事中、支出官等の決裁を受けることなく小切手等を作成し、自ら開設するなどした他人名義の金融機関口座に国庫金を振り込ませるなどして領得したもの(1件 2359万余円)

〇国土交通省

北海道開発局の職員が、図面作成等業務の発注事務に従事中、架空の業務を発注するなどして業務代金を領得するなどしたもの(1件 1118万余円)

〇日本道路公団

管理事務所の職員が、物品の発注等の事務に従事中、事務用消耗品等の購入を装ってパーソナルコンピュータ等を発注して自ら受領し、公団にその代金を支出させて損害を与えたもの(1件 1272万余円)

〇核燃料サイクル開発機構

職員が、本社及び事業所において、物品等の調達要求の事務に従事中、無断で契約の相手方に契約内容の変更を指示し、自らが使用する目的でパーソナルコンピュータ等を納品させこれを受領するなどして、機構に損害を与えたもの(1件 417万余円)

〇日本郵政公社

郵便局の職員が、歳出金の支払事務に従事中、郵便振替で払込みをするため交付を受けた歳出金を領得したもの(1件 115万余円)

〇日本放送協会

職員が、本部及び放送局において、番組制作費の支払決定に関する事務に従事中、知人と共謀し知人の銀行口座に番組制作費を振り込ませて領得するなどしたもの(1件 4888万余円)

(8)不正行為・予算経理 2件 1111万余円

<現金が領得されたもの及び会計経理が適正を欠いているもの>

〇外務省

在外公館において、現地職員が業者への支払のために預かった現金等を領得したり、副領事が自らを受取人とする小切手を振り出すなどして現金を領得したりしており、また、当該在外公館では、現金預金残高と帳簿残高とが一致していなかったり、現金預金残高の確認を十分行っていなかったりなどしていて、会計経理が適正を欠いているもの

(9)その他 2件 6949万余円

<介護給付費の支払が適切でなかったもの>

〇厚生労働省

介護保険における介護給付費の支払に当たり、介護サービスを提供する事業者において、個室又は2人部屋の提供により要介護者から特別料金を徴収している場合の減算をして算定していないなど不適正な請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったなどのため、31事業者に対する支払が適切でなく、これに係る国の負担が不当と認められるもの(1件 6337万余円)

<補償費の支払が適切でなかったもの>

〇都市基盤整備公団

送電線路等の移設補償費の支払に当たり、実際に要した工事費により補償費の精算金額を確定して支払うべきであるのに、工事予定金額により確定して支払っていたため、補償費の支払額が過大となっているもの(1件 611万余円)

3 収入支出以外のもの(計24件3億1031万余円)

省庁又は団体名 不正行為
内閣府(防衛庁)
1
日本郵政公社 22
日本放送協会 1
24

不正行為 24件 3億1031万余円

<現金等が領得されたもの>

〇内閣府(防衛庁)

陸上自衛隊の職員が、国有財産の維持及び保存の事務に従事中、権限がないのに立木を民間業者に伐採させ国に損害を与えたもの(1件 847万余円)

〇日本郵政公社

郵便局の職員が、郵便局で保管していた資金、預金者から預かった貯金証書を使用して交付を受けた通常郵便貯金払戻金、契約者から受領した保険料等を領得したもの(22件 3億0083万余円)

〇日本放送協会

放送局の職員が、現金及び預金の出納事務に従事中、不正に現金を引き出すなどして領得したもの(1件 100万円)

(意見を表示し又は処置を要求した事項)

「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計11件掲記した。

ア 会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した事項
1件

〇外務省

在外公館における出納事務の執行について

在外公館における出納事務の執行に当たり、歳入徴収官、資金前渡官吏及び検査員が自ら行うべき事務が当該者により行われていなかったり、資金前渡官吏の指揮命令下にない館員等が前渡資金の支払を行っているなど会計事務を補助する職員及びその事務の範囲が明確でないまま公金が取り扱われていたり、実際の現金の出納と現金出納簿への登記とが相違しているなど会計法令等に従った会計事務の処理が行われていなかったりしている事態が見受けられた。したがって、外務省において、内部統制、相互牽制を十分機能させ、会計法令等に従って適切及び適正に出納事務を執行するよう、在外公館における出納官吏等や補助職員が行うべき事務の範囲を明確にして徹底したり、出納事務に関する規定の見直しをするなどして在外公館を適切に指導監督したり、出納官吏等への研修等の措置を更に充実させたりするなどの処置を講ずる要があると認められる。

背景金額 122億1739万円
(検査の対象とした歳入金及び前渡資金の額)

イ 会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示し又は改善の処置を要求した事項
10件

(ア)改善の意見を表示したもの

〇独立行政法人科学技術振興機構

文献情報提供事業について

科学技術振興機構では、内外の科学技術に関する文献情報の提供などを行う文献情報提供業務を行っており、同業務については、毎事業年度、損失が発生して累積欠損金が増こうしている状況となっていた。そこで、同業務で提供する各商品の収支等の状況や、収支改善計画に沿って業務を行うことにより収支が改善され累積欠損金の解消が見込めるかなどについて検査した。その結果、売上げの過半を占めるオンライン情報サービスにおいて、各商品ごとの費用収益が的確に把握されていないため、商品ごとに収支改善計画が策定できないものとなっていたり、策定された収支改善計画の見直しに当たって、事業収入が2箇年間も減少し続けているのに、収入の伸びを見込んだ収支改善計画を策定するなど、楽観的な見込みに基づいた計画を策定したりなどしている事態が見受けられた。したがって、科学技術振興機構において、利用者の需要動向等を的確に把握しその需要に即したサービスの開発、提供に努めるなどするとともに、提供する商品ごとの売上状況、収支状況、利用状況等を的確に把握するなどして、事業の実績を適切に反映するように収支改善計画を見直し、収益性の向上を図る要がある。

背景金額 694億6956万円
(平成15事業年度末文献情報提供勘定累積欠損金)

(イ)改善の処置を要求したもの

〇文部科学省

教員等個人あて寄附金の経理について(9件)

国立大学法人化前の北海道大学ほか8国立大学において、所属する教員等が受けた教員等個人あての寄附金があらためて大学に寄附されず歳入に計上されていない事態が見受けられた。そして、法人化後の国立大学法人北海道大学ほか8国立大学法人では、当該寄附金を受け入れて適切に経理するための学内規程等が整備されていないなどの事態となっていた。しかし、国立大学法人においては、当該寄附金の目的となる教員等の職務上の教育・研究について事務上の管理責任があることなどから、教員等個人あての寄附金を適切に経理するため、教員等が教員等個人あての寄附金を受けたときはあらためて国立大学法人に寄附しなければならない旨を明確にして学内規程等を整備し、その周知徹底を図るなどの要がある。

背景金額 計3億5112万円
(平成14、15両年度において歳入に計上されていなかった寄附金の額)

(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項)

「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計47件掲記した。

〇国会(国立国会図書館)

物品・役務調達契約における契約事務について

物品・役務の調達に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保についての検討や特定調達契約の手続についての理解が十分でなかったなどのため、競争に付すべきものを随意契約としていたり、契約内容の官報による公告・公示をしていなかったりしていて、契約事務が適切なものとなっていなかった。

背景金額 109億0515万円
(適切な契約事務を実施する要があると認められた契約金額)

〇内閣府(防衛庁)

アメリカ合衆国政府の有償援助による装備品等の調達に係る残余資金について

アメリカ合衆国政府の有償援助(FMS)による装備品等の調達に当たり、合衆国政府が業者との間の債務を見積もることによって同調達に係る前払金の精算が完了したものについて、その後の合衆国政府と業者との間の債務の精算額が見積額を下回って残余資金が発生しているのに、防衛庁において当該資金についての認識が十分でなく、その返還を受ける体制が整備されていなかったため、合衆国政府に対して返還を請求しておらず、歳入として国庫に収納していなかった。 

(指摘金額 5億4686万円)

国際連合平和維持活動に伴う国際連合からの償還金について

国際連合平和維持活動(PKO)に自衛隊を派遣したことに伴う国連からの償還金について、国連から本邦の銀行に到着しているのに、遅滞なく歳入として国庫に収納する体制が整備されていなかったため、多額の償還金が長期間国庫に収納されずに滞留していた。

(指摘金額 20億2179万円)

〇総務省

アナログ周波数変更対策業務の実施について

アナログ周波数変更対策業務の実施に当たり、放送機の改修等を行う送信対策において、放送事業者から提出される申請書にそれぞれの改修方法を採る理由が明記されておらず、工事の内容及び費用が必要最小限のものとなっているかの審査が十分に行われていなかったなどのため、放送機の転活用を図るなど経済的な実施について十分な検討が行われていなかったり、受信アンテナ等の交換等を行う受信対策において、材料単価の算定に実勢販売価格を適切に反映させていなかったため、積算額が過大となっていたりしていた。

(指摘金額 2億1770万円)
背景金額 31億2064万円
(送信対策において転活用を図るなどの検討の対象となる放送機器費)

物品の管理について

機械等の重要物品の管理に当たり、物品管理に対する認識が十分でなかったなどのため、物品管理法等の趣旨に沿った取得、処分等の手続が行われていなかったり、帳簿への記録等が物品の現況を反映した正確なものとなっていなかったりしていて、物品の管理が適正に行われていなかった。

(指摘金額 55億8310万円)

〇法務省

増改築等工事に伴う建物等の国有財産台帳への価格登録について

増改築等工事で新設した収容棟などの建物及び工作物を国有財産台帳に登録するに当たり、請負金額のうち価格登録の対象となる費用の具体的な範囲について矯正施設に対する指導が十分でなかったことなどのため、台帳登録価格に登録すべき共通費を計上していなかったり、登録すべきでない解体費等を計上したりしていて、国有財産台帳への価格登録が適正なものとなっていなかった。

(指摘金額 9億9219万円)

〇外務省

在外公館に配備された爆発物探知装置の活用について

在外公館に配備された爆発物探知装置について、ソフトウェアがインストールされていなかったり、警備担当者が装置の利用方法を十分習得していなかったり、在外公館において装置の利用の重要性や必要性に対する認識が十分でなかったりしたことなどのため、装置が活用されておらず、在外公館の安全を強化するという目的が十分に達成されていなかった。

(指摘金額 2億2249万円)

〇財務省

合同宿舎の維持管理業務に係る委託費の積算について

合同宿舎の維持管理業務に係る委託費の積算に当たり、管理人が実際に管理している宿舎の戸数を積算基準に的確に反映させていなかったため、委託費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 6730万円)

〇文部科学省

教育情報衛星通信ネットワークにおける送受信設備の活用等について

教育情報衛星通信ネットワークにおいて、送受信局の設置された教育センターで番組を制作し情報を発信することの意識や意欲が乏しかったり、受信局の設置された社会教育施設等で番組を有効活用するための取組を行っていなかったりなどしたため、送受信設備が十分活用されていないなどしていて、補助事業等の効果が十分発現していなかった。

(指摘金額 4億1067万円)

廃校等施設及びへき地教員宿舎の有効活用等について

廃校等となった公立の小学校及び中学校の学校施設並びに入居者のいないへき地教員宿舎について、市区町村等において、地域住民の共通の財産として有効に活用することについての認識が十分でなかったことなどのため、全く活用されていなかったり、これらの施設の有効活用を促進する見地から簡素化された転用の手続及びその趣旨が周知されていないため、転用に当たりその手続が適切に行われていなかったりしていた。

背景金額 219億7151万円
(活用されていなかったり、転用の手続が適切に行われていなかったりしていた廃校等施設及びへき地教員宿舎に係る国庫補助金)

〇厚生労働省

国民健康保険の収納特別対策事業に係る特別調整交付金の交付について

国民健康保険の収納特別対策事業に係る特別調整交付金の交付に当たり、事業を適正かつ効果的に実施するための交付金の交付方法について十分検討していなかったなどのため、交付金の交付を受けた市町村において、滞納未然防止対策が進んでいなかったり、法令等に定める滞納者対策を的確に行っていなかったり、事業の実施が滞納発生後の滞納整理に偏っていたりしていて、交付金の交付が効果的なものとなっていなかった。

背景金額 44億0433万円
(収納特別対策事業が効果的なものとなっていない市町村に対する特別調整交付金交付額)

医薬品等の購入に係る予算執行について

国立病院等における医薬品等購入費に係る予算の執行状況についての把握が十分でなかったなどのため、国立病院等において、医薬品等の購入に係る予算執行額が示達額の範囲内に収まるよう、納入させた医薬品等の一部について当該年度に行うべき支出負担行為等の会計事務処理を行わず、日付欄が空白の請求書を納入業者に提出させ、これに翌年度、適当な日付を記入するなどして翌年度の予算から購入代金を支払っていて、会計経理が適正に行われていなかった。

(指摘金額 76億0126万円)

中小規模事業場健康づくり事業の実施について

中小規模事業場健康づくり事業の実施に当たり、健康測定の医学的検査に係る経費の支払をする際、同事業において負担する内容を明確にさせていなかったため、事業者の負担で実施されている定期健康診断の経費に含まれるとすべきである血液検査に係る経費を別途に支払うなどしていて、支払額が過大となっていた。

(指摘金額 5472万円)

〇農林水産省

緊急食糧支援事業費補助金の経理について

緊急食糧支援事業費補助金の経理において、実施要綱等で補助金に余剰が生じた場合に事業主体の会計の中で繰り越すこととするなどの規定が定められていたことなどのため、実際に要した経費ではなく、交付決定額と同額で額の確定を行い、差額について精算する手続を執っていなかったり、実施されていない支援について資金を造成していて、補助金が事業の目的に沿っていなかったりしていて、その経理が適正を欠いており、多額の資金が滞留していた。

(指摘金額 64億5055万円)

農作物被害防止施設の設置について

生産振興総合対策事業等の実施に当たり、農作物被害防止施設の設置対象となる団地の定義を明確にしていなかったことなどのため、点在していて所定の農家戸数や受益面積の要件に合致しない農地に防霜ファンや防風網が設置されていて、作付けの団地化等を図るという事業の趣旨に沿わないものとなっていた。

(指摘金額 7億8897万円)

中山間ふるさと・水と土保全対策事業の実施について

中山間ふるさと・水と土保全対策事業の実施に当たり、具体的な事業内容等を明らかにした実施計画を策定していなかったり、事業を実施要綱に基づき適切かつ効果的に実施するという認識が欠けていたりしていたことなどから、事業に対する取組が十分でなく、造成した基金が有効に活用されておらず、また、事業量等に応じて基金を減額又は廃止するシステムがないことから、事業量が減少するなどした場合の基金の取扱いについて、適切な処置が執れるようになっていなかった。

背景金額 60億6976万円
(基金を造成するために24道県に交付した国庫補助金交付額)

畜産環境総合整備事業等により整備したたい肥化施設の管理等について

畜産環境総合整備事業等により整備したたい肥化施設について、その整備目的を十分に認識していなかったり、利用状況を十分把握していなかったりしていたなどのため、家畜排せつ物が野積みされていたり、たい肥化施設が未利用又は低利用となっていたりなどしていて、補助事業の効果が十分発現していなかった。

(指摘金額 21億9994万円)

漁業共済事業の運営について

国が漁業者の共済掛金の一部を補助し、また、漁業共済組合の事務費を補助している漁業共済事業の運営において、共済組合から事務の委託を受けた漁業協同組合が、漁業者に異常の事象又は不慮の事故により生じた損失を補てんするための共済金を交付する際、共済組合から事務委託手数料を受領しているのに、共済事業に係る事務に要する費用に充てるなどとして当該漁業者から独自に手数料を徴収していて、漁業者の漁業再生産の阻害の防止及び漁業経営の安定に資するという漁業災害補償制度の趣旨に沿わないものとなっていた。

背景金額 6億3983万円
(制度の趣旨に沿わない手数料の徴収が行われていた共済金支払額に係る国庫補助金相当額)

土地利用型酪農推進事業における飼料基盤強化奨励金の交付について

土地利用型酪農推進事業における飼料基盤強化奨励金の交付に当たり、飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者に対する奨励金の交付は飼料基盤に立脚した酪農経営を支援するものとはなっていないのに、交付要件の見直しを行うことなくこれらの酪農経営者を交付対象者とし続けていたため、奨励金の交付が事業の趣旨に沿ったものとなっていなかった。

(指摘金額 1億3997万円)

〇経済産業省

技術開発関連補助事業における実績確認業務の実施について

中小企業者等が都道府県を通じて国庫補助金を受けて実施する技術開発関連補助事業について都道府県が行う実績確認業務において、実施時期が年度末に集中していることなどから、態勢強化を図る要があるのに、関係部署の応援を求めるなど連携を図る対策が十分に執られていなかったり、検査マニュアル等に基づき確認事項の漏れ等がないよう総合的に業務を行うことについての認識が必ずしも十分ではなく、その活用について十分に検討されていなかったりしたことなどのため、実績確認業務の実施が適切なものとなっていなかった。

背景金額 17億0032万円
(検査した28都府県に対して平成14年度に交付された技術開発関連補助事業に係る国庫補助金交付額)

石油製品品質確保事業における試買分析業務に要する経費の算定について

石油製品品質確保事業における補助対象経費の算定に当たり、給油所から購入した揮発油等の試料の分析業務に要する経費の算定方針を定めていなかったなどのため、疑義が生じた場合にだけ行う分析をすべての試料について行うことと想定しているなど、同業務の経費の算定が実態を反映しておらず、補助金の交付額が過大に算定されていた。

(指摘金額 4億6140万円)

出願適正化等指導事業等の委託契約における人件費の算定方法について

出願適正化等指導事業等の委託契約において、委託先の職員等は委託事業以外の複数の業務に従事する勤務体制となっているのに、人件費の算定方法が年間を通して委託事業に専念して従事する勤務体制を前提としていたことなどのため、委託事業に該当しない業務に係る分を含む当該年度中の基本給等のすべてを委託事業に係る支払実績額として人件費を算定していて、委託費が不経済となっていた。

(指摘金額 1億5078万円)

〇国土交通省

自動車損害賠償保障事業に係る定期分納者の債権管理について

自動車損害賠償保障事業において被害者に保証金を支払い代位取得した債権のうち、定期分納者に対する債権について、債務者の弁済状況等を適時適切に把握していなかったり、弁済が滞った債務者に対して弁済が滞った期間等を考慮した督促等を行っていなかったりなどしていて、その債権管理が適切なものとなっていなかった。

背景金額 372億1380万円
(平成16年6月末現在において弁済が滞っている定期分納者に係る債権)

廃棄物埋立護岸の整備事業における補助率の算定等について

廃棄物埋立護岸の整備事業の実施に当たり、廃棄物の受入計画に基づく補助率の算定について、算定方法の変更が考慮されていなかったり、埋立地の売却等により収益が生じた場合の補助金相当額の収益納付について、港湾管理者の関係書類の保存や収入支出の把握、整理が適切に行われていないため正確な収益計算ができなくなっていたりしていた。

背景金額 977億8097万円
(補助率の算定又は収益計算が適切に行われていなかった10港に対する国庫補助金交付額)

航空保安施設の予備品の積算について

航空保安施設の新設、更新等に伴い購入するレーダー装置等各種装置の予備品の積算に当たり、各種装置の製造実績単価を製造メーカーから提出させていなかったこと及び各種装置と予備品のそれぞれの積算担当部門間で単価についての連絡が十分でなく単価の比較検討が行われていなかったことのため、予備品の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 8673万円)

〇環境省

都道府県への施行委任により実施する国立公園整備事業における最低制限価格の設定について

都道府県が国からの施行委任を受けて国立公園整備事業を実施する場合には、国の会計法令が準用され、入札の際、最低制限価格を設定することができないのに、環境省が適切な指導を行ってこなかったなどのため、都道県が最低制限価格を設定し、これを下回る価格で入札した業者を失格として排除していて、契約額が割高となっていた。

(指摘金額 6312万円)

〇首都高速道路公団

床組構造改築工事における炭素繊維シート貼付工の材料費の積算について

床組構造改築工事における炭素繊維シート貼付工の材料費の積算に当たり、設計図書等及び施工の実態を十分検討していなかったため、設計数量に対して生ずるシートの損失の割合を基に算定する割増係数が施工の実態等を反映したものとなっておらず、材料費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 3600万円)

〇都市基盤整備公団

事務所等の清掃業務委託契約における契約事務について

事務所等の清掃業務の委託契約に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保についての検討や特定調達契約の手続についての理解が十分でなかったなどのため、競争契約に付すべきものを随意契約としていたり、契約内容の官報による公示をしていなかったりしていて、契約事務が適切なものとなっていなかった。

背景金額 5億5921万円
(適切な契約事務を実施する要があると認められた契約金額)

〇日本私立学校振興・共済事業団

地方高等教育機関の活性化に係る特別補助について

地域の社会的要請にこたえる特色ある教育研究を実施している私立大学等に対する特別補助において、補助金額の算定方法が大学等における地域社会との連携・交流に対する取組姿勢の度合いを反映させるものとなっていなかったなどのため、特色ある教育研究の実施をより一層促進するものとなっていなかった。

背景金額 15億6292万円
(検査した38学校法人(49大学等)に対する地方高等教育機関の活性化に係る特別補助の補助金交付額)

〇奄美群島振興開発基金

延滞貸付金に係る保証債務の管理について

延滞貸付金に係る保証債務の管理に当たり、貸付金に係る債務が延滞した場合については事故報告書の提出事由として明確にされていなかったなどのため、延滞が相当期間継続しているのに事故報告書の提出が遅延していたり、債務者等の実態把握等が十分でなかったため、債務履行の正常化が困難となっていたものについて期限の利益を喪失させる事務処理に相当期間を要していたりしていて、金融機関に多額の未収利息が発生し、これについて代位弁済が行われていた。

背景金額 7841万円
(延滞後180日で期限の利益を喪失させたとした場合との未収利息に係る代位弁済額の開差額)

〇独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構

研究用機器等及び建物附属設備等の資産計上について

施設整備費補助金により取得した研究用機器等及び建物附属設備等の資産計上に当たり、資産の分類が一般的な会計慣行と異なるなどしていて、貸借対照表の有形固定資産の各資産項目の計上額及びこれに伴う減価償却累計額の算定が適正なものとなっていなかった。

(指摘金額 18億1760万円)

〇独立行政法人日本貿易振興機構

FAZ支援センターの運営について

輸入促進地域(FAZ)に設置したFAZ支援センターの運営において、業務の重点が輸入促進から対日投資促進へと移行してきているのに運営方法についての検討が十分なされていなかったことなどのため、業務運営が重点業務に対応していなかったり、運営費用を賄う資金として第3セクターへ預託した保証金の債権保全が十分でなかったり、事前に第3セクターに支払ったセンターの建物の維持管理費用について実績額との開差の精算ができなかったりしていた。

背景金額 82億5056万円
(検査した7FAZ支援センターの設置に要した金額)

〇独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構

新幹線施設の建設のため取得した残地の売却について

新幹線施設の建設のために取得した残地について、その売却に係る事務を新幹線の開業後に行い、また、売却は残工事期間中に行うこととしていて、新幹線施設の工事の進ちょく状況を踏まえて早期に残地の売却を図るための事務処理体制が整備されていなかったため、早期の売却が図られておらず、早期に売却した場合と実際との売却価格に開差が生ずることとなっているものがあった。

(指摘金額 3600万円)

〇北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社

鉄道施設の改良・修繕工事における一般管理費の積算について

請負業者を特定して定期・計画的に発注する鉄道施設の改良・修繕工事における一般管理費の積算に当たり、施工管理上等の制約から複数の工事に分割している工事は1つの契約とみなして一般管理費率を算出しても支障はないのに、その取扱いの検討が十分でなかったため、個々の契約ごとの工事原価に応じた一般管理費率により一般管理費を算出していて、積算額が過大となっていた。

(指摘金額 計8820万円)

乗車券類等を発売するためのマルス端末装置の調達について

管内の駅等において乗車券類等を予約、発行等するための旅客販売総合システム(マルス)の端末装置の調達に当たり、マルス端末装置を構成する機器に類似した機能、品質を有している市販品や同形式の市販品があるにもかかわらず、マルス端末装置はすべての機器が特別な仕様であり、セットとしてしか調達できないなどとして、市販品を考慮せずに調達の基準価格を設定していたなどのため、調達額が割高となっていた。

(指摘金額 計7805万円)

〇東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社

研究開発に係る試験研究費の附帯事業への配賦について

研究開発に係る試験研究費の配賦に当たり、一部の分野の研究開発のテーマに附帯事業として商用化することが可能であるものが含まれてきていて、研究開発の成果を附帯事業に活用しているのに、配賦基準の見直しが行われていなかったため、当該分野に係る試験研究費の全額が電気通信事業に配賦されていて、附帯事業の損益の状況が適切に表示されないこととなっていた。

背景金額  東日本電信電話株式会社 4億4475万円
  西日本電信電話株式会社 4億7098万円
(試験研究費の配賦基準の見直しにより増加した営業費用)

〇東日本電信電話株式会社

建物等への入館・入室を管理する業務の委託について

建物等への入館・入室を管理する業務の委託に当たり、清掃業務等のため入館・入室することができる者の登録が当該清掃業務等の実態等に即したものとなっていなかったため、過大な登録人数に基づき費用を算定していて、委託費が不経済となっていた。

(指摘金額 3930万円)

〇西日本電信電話株式会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社

社員食堂で使用する物品の賃借料について

社員食堂で使用する物品の賃借に当たり、法定耐用年数経過時に引き続き使用に耐え得ると判断した物品については買い受けることができることとされているのに、これを行わず法定耐用年数経過後も継続して賃借していたため、賃借料の支払が不経済となっていた。

(指摘金額 計6220万円)

〇西日本電信電話株式会社

インターネット接続サービスに係る加入者収容パッケージの購入について

インターネット接続サービスに係る加入者収容パッケージの購入に当たり、ビジネスタイプで使用するために搭載したパッケージで加入者がおらず使用されていないものが多数あるのに、これを他のサービス種別に転用することとしていなかったため、パッケージの購入費が不経済となっていた。

(指摘金額 4140万円)

建物等への入館・入室を管理する業務の委託費の算定について

建物等への入館・入室を管理する業務の委託費を算定するに当たり、業務の実態に基づいて1ゲート当たりの作業件数を見直していなかったり、深夜割増しの趣旨等を十分理解しないまま労務費を算定していたりしたため、費用を過大に算定していて、委託費が不経済となっていた。

(指摘金額 5610万円)

〇株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ

無線基地局と交換局を接続する専用回線に係る契約について

第2世代携帯電話用及び第3世代携帯電話用の無線装置を併設し、交換局の交換機との間の接続にそれぞれの専用回線を使用している無線基地局において、関係部門間の連絡調整が十分に行われていなかったことなどのため、技術的な条件を満たしていたのに回線が集約されておらず、専用回線に係る使用料金が不経済となっていた。

(指摘金額 5640万円)

(特に掲記を要すると認めた事項)

「特に掲記を要すると認めた事項」として8件掲記した。

(1)海上自衛隊舞鶴航空基地及びSH−60J型哨戒ヘリコプターの活用について

防衛庁では、京都府舞鶴市に所在する海上自衛隊舞鶴地区に、海上自衛隊で日本海側唯一の航空基地となる舞鶴航空基地を平成13年3月に開設している。また、7年11月に決定された「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」等において舞鶴地方隊が受け持つ警備区域にも沿岸哨戒ヘリ部隊を編成することとされ、沿岸哨戒ヘリ部隊が保有する哨戒ヘリSH−60Jの調達を舞鶴の同部隊に必要とされている7機を含め15年度までに完了している。そこで、同航空基地及び調達済のSH−60Jについて検査したところ、同航空基地は、防衛庁が、地元に対し艦載ヘリ支援基地として使用すると説明して基地整備を進めてきた経緯を考慮してきたなどのため、沿岸哨戒ヘリ部隊が編成されておらず、また、舞鶴の同部隊分の哨戒ヘリ7機は、遠隔地の他の航空部隊で保有されていて、有効に活用されていない状況となっていた。そして、同航空基地は、最大12機までのヘリに対応可能な規模を有しているのに対し、実際のヘリに対する支援状況は、平均で1日当たり約4機となっていて、沿岸哨戒ヘリ部隊の編成にも対応可能であるなど、より多くのヘリの運用に対応できる規模を有していると認められた。したがって、防衛庁においては、今後の防衛力の在り方を踏まえ、防衛力の整備に資するものとなるよう、地元に対して協力を要請するなどして、舞鶴航空基地及び調達された哨戒ヘリを有効に活用するために必要な措置を講ずることが望まれる。

背景金額 663億円
(航空基地の施設整備費等の額及びヘリコプターの調達額)

(2)国営かんがい排水事業及びこれに関連する附帯事業の実施について

農林水産省では、農業生産性の向上等を図ることを目的として、基幹的な農業用用排水施設等の整備を行う国営かんがい排水事業を実施しており、これにより整備された幹線用排水路等に接続する用排水路等の整備等が都道府県等の事業主体によって附帯事業として実施されている。これらの事業の実施状況等について検査したところ、事業完了後5年以上経過している国営事業36地区において、附帯事業の進ちょくが大幅に遅れている地区のほか、社会経済情勢の変化等により、受益農家が事業参加に消極的となっていて、未だ受益農家からの実施の申請がない附帯事業の未着手地区が多数存在しており、中には事業実施の見通しが立っていない地区も見受けられた。このような状況で推移すると、かんがい排水事業全体としての効果の発現までには、なお相当の期間を要するばかりでなく、投資効率が低下したり、国営事業で予定していた事業効果が発現される前に基幹的施設が老朽化し更新事業が実施される地区が増加したりすることも懸念される。したがって、農林水産省及び地方公共団体においては、附帯事業の継続地区については引き続き予算の重点配分に努めるとともに、再評価システムを活用して事業の継続・中止等の方針を決定し、未着手地区については他の事業を活用して整備を促進したり、受益農家の意向を踏まえて段階的な整備を一層推進したりなどして、事業効果の早期発現に努める要がある。また、農林水産省においては、事業実施の見通しが立っていない未着手地区については、地方公共団体と連携を図り、国営事業完了地区のフォローアップ調査等を実施する際に未着手地区における諸課題を把握し、受益地の見直しなどを弾力的に行い、農業用水及び基幹的施設の有効的な利活用を図ることが望まれる。

背景金額 7112億円
(事業完了後5年以上経過しているのに附帯事業の未着手地区がある国営事業に要した事業費)

(3)特定優良賃貸住宅供給促進事業の実施について

特定優良賃貸住宅供給促進事業は、中堅所得者等のための居住環境が良好な賃貸住宅の供給の促進を図ることを目的として、平成5年度より実施されている。同事業により供給された優良賃貸住宅の空家状況等について検査したところ、低金利等住宅を取り巻く環境が変化する中、持ち家取得の傾向が強まっていたり、周辺の賃貸住宅の家賃相場下落により家賃の割安感が薄れていたりなどしていることから空家が多数発生し、空家率は10.9%となっていて、中には新築後3年以上経過しても一度も入居の実績がない住戸も見受けられた。一方、国土交通省においては、家賃方式の変更を可能としたり、公営住宅等への転用を可能としたりするなど、各種の対策を執ったところであるが、空家の解消等には、国土交通省や地方公共団体の努力のほか、所有者等の理解と協力が必要である。したがって、所有者等の理解と協力の下、国土交通省においては、上記の対策が十分講じられるよう都道府県等に対し周知徹底を図るなどとともに、地方公共団体においては、長期にわたり空家となっている住戸について適切な対応をとるなど、優良賃貸住宅の管理等のより一層の適正化を図ることが望まれる。

背景金額 95億円
(検査した25都道府県において供給された優良賃貸住宅のうち1年以上空家となっている戸数に要した建設費補助金)

(4)橋りょうの耐震化対策の実施状況について

国土交通省では、地震時に救助活動及び避難者への緊急物資の供給等に必要な輸送等の安全を確保するため、既設の橋りょうの耐震性を向上させる耐震補強工事等を実施している。一方、地震防災対策上特に重要となる緊急輸送を確保するための道路とされている緊急輸送道路が震災時にその機能を果たすためにはネットワークとしての耐震性が確保されることが必要となることから、各種の防災計画においては、緊急輸送道路ネットワークの耐震化を重点的かつ計画的に推進するとしている。そこで、緊急輸送道路内の橋りょうの耐震補強工事の実施状況及び推進体制等について検査したところ、橋脚補強及び落橋防止構造等の耐震補強工事が完了した橋りょうの割合は、緊急度の高いこ線橋等が直轄事務所38.8%、都道府県等38.0%、緊急度の高い河川橋が同16.3%、18.0%などであり、また、関係機関との調整、連携等の枠組みが十分でないなど、地震発生時において、地震の規模等によっては、災害対策の円滑な実施を図るための緊急輸送道路としての機能が十分に発揮できなくなるおそれがあると思料される状況が見受けられた。したがって、国土交通省において、各地域における橋りょうの耐震化についての具体的な中長期計画等を定め、関係機関との調整、連携等の枠組みを強化するなどとともに、都道府県等の橋りょうの耐震化の進ちょく状況を適時適切に把握し、防災計画に基づく緊急輸送道路の耐震化の推進が円滑に行われるよう、必要な措置を講じ、緊急輸送道路ネットワークに耐震化の効果が早期に現れるように、橋りょうの耐震補強を計画的、効果的に実施することが望まれる。

背景金額 2334億円
(検査した57直轄事務所及び59都道府県等が管理する橋りょうの平成7年度から15年度までの耐震補強工事に係る国費の額)

(5)高規格堤防整備事業の実施について

国土交通省では、計画規模の洪水による災害を未然に防ぐため、従来から一般河川改修事業等を実施している。一方、人口、資産の集中、さらには中枢機能の集積の著しい東京、大阪等大都市地域の6河川においては、計画規模の洪水を上回る超過洪水等に対して、破堤による壊滅的な被害を回避し、治水安全度の向上を図ることなどを目的として、通常堤防より大幅に広い幅員をもつ高規格堤防の整備事業を実施している(昭和62年度〜平成15年度の事業費累計4965億円)。この6河川の高規格堤防要整備区間における一般河川改修事業等及び高規格堤防整備事業の進ちょく状況を検査したところ、通常堤防の整備については、完成堤防57.3%、暫定完成堤防26.1%、未完成堤防及び未施工16.4%となっていて、治水上、早期の完成が望まれる状況となっている。そして、高規格堤防の整備については土地区画整理事業等との共同事業により実施する方法がとられていることなどから、想定被害額の大きい箇所について連続的、集中的に実施される状況とはなっておらず、想定被害額に対応したものとはなっていない面が見受けられた。また、市街化調整等区域においては、共同事業の実施がほとんど期待できない状況となっていた。したがって、国土交通省において、6河川においては、一般河川改修事業等の一層の進ちょくを図り、高規格堤防整備事業の計画策定に当たっては、一般河川改修事業等の進ちょくを踏まえつつ、治水上重要な箇所において整備をより一層重点的に実施するなど、地区ごとの位置付けを明確にしていくよう、沿川自治体に働きかけること及びその実施に当たっては、土地区画整理事業等が治水上重要な箇所において進展するよう、種々の方策を沿川自治体等と協議、検討し、市街化調整等区域については治水上重要な箇所について事業が進展するよう農業関係機関等を交えるなどして整備手法の一層の協議、検討を進めることなどの方策を講ずることが望まれる。

背景金額 4965億円
(高規格堤防整備事業費の累計)

(6)小企業等経営改善資金融資制度の実施状況について

小企業等経営改善資金の融資は、商工会議所等の推薦団体が小企業者等に対して実施する経営指導を国民生活金融公庫が金融面から補完するため、無担保・無保証人、低利で貸付けを実施するものである。公庫は、専ら推薦団体から提出された推薦書等に記載された事項により融資の最終判断を行っている。そこで、検査したところ、推薦団体の経営指導員が虚偽の内容を記載した推薦書等を作成していたものや、事実関係からみて推薦時の審査が十分でなかった可能性のあるものが見受けられた。また、中小企業庁では、貸付事故の防止のために、日本商工会議所等に通達を発し注意を喚起しているが、この趣旨が推薦団体に十分浸透していない面もある。そして、本件融資については、ここ数年100億円を超える償却を行っており、経済情勢の推移により今後も多額の償却が生じた場合、本件融資に係る収支において赤字が継続することが懸念される。ついては、公庫は、必要に応じて直接申込者から追加資料を徴するなどして、申込者の経営状況等を的確に把握できるように努めるとともに、関係機関が定期的に情報を交換するなど連携を図り、貸付事故防止のための有効な改善策をより適切に実施できるような体制の整備を図るなど対策を強化して、不適正な貸付けの発生防止に努め、もって公庫の本件融資の収支を改善することが望まれる。

背景金額 756億円
(平成15年度末延滞債権額及び14、15両年度貸付金償却額の合計)

(7)中小企業信用補完制度における保証審査等について

信用保証協会では、中小企業者の金融機関からの借入れについてその債務を保証する信用保証を、また、中小企業総合事業団信用保険部門では、協会の行う債務保証を包括的に保険する信用保険を実施しており、これらは併せて中小企業信用補完制度と呼ばれている。そして、協会の保証審査においては、粉飾決算、融通手形操作、税金等滞納及び高利借入を行う中小企業者については企業倒産のリスクが高いことなどから原則として保証しないこととしている。しかし、検査したところ、協会の保証審査において粉飾決算等が把握できずに保証が行われ、その後、当該企業が倒産等に至り、保険事故により事業団から協会に保険金が支払われたものが見受けられた。協会が管理するデータだけでは正確な事実の把握には限界があり、保証審査の充実のためには、企業の経営内容の情報を的確に把握できる立場にある金融機関に対し、事前審査の充実や情報提供等に関して協力を求めることが必要となってきている。そして、事態を抜本的に打開するためには、金融機関のリスク分担の問題を含めて、信用保証制度のあり方にまで踏み込んだ検討が必要であり、なお相当の期間を要するものと認められるが、当面、中小企業庁等においては、制度の趣旨に沿った適切な運用を図るべく、協会に対し、保証審査の一層の充実を図るため、審査能力の向上を図り、もって審査機能を高めるよう関係機関の協力を得るなどして指導、助言等を行うことが望まれる。

背景金額 820億円
(検査の対象とした事業団の信用保証協会に対する保険金支払額)

(8)地方都市開発整備事業の実施について

地域振興整備公団は、大都市及びその周辺地域以外の地域で地方都市開発整備事業を実施してきたが、特殊法人の整理合理化により、平成16年7月以降、新規事業は行わないこととされ、これまでの事業は都市再生機構に承継された。そこで、公団がこれまで20地区で実施した同事業について検査したところ、事業実施中の16地区では、事業資産の合計額が多額に上っており、今後も事業完了まで大量の宅地を譲渡していく必要があるが、地価の下落が続いている状況下では事業の長期化は事業収支の悪化要因となることから一層機動的な運営が必要となっている。また、20地区の宅地譲渡の進ちょく状況及び事業の採算性等についてみると、事業開始後20年以上経過してなお多くの譲渡予定面積が残っていて事業効果の発現が著しく遅延している地区が見受けられたり、譲渡価格が原価を大幅に下回っているなどして多額の損失の発生が見込まれたりする地区が見受けられ、現状の地価水準が今後も継続する場合、事業全体の採算性を確保することが困難となり、多額の損失を生じるおそれがある。したがって、機構においては、〔1〕事業効果の発現が遅延している地区については、土地利用種別の変更等を検討し、地方公共団体の協力を求めたり、宅地譲渡方法の多様化に努めたりすること、〔2〕多額の損失が見込まれる地区については、事業内容の見直しや事業費の削減に努めるなどして見込まれる損失の軽減を図ることなどにより、街並みの熟成を図りつつ、早期にかつ計画的に譲渡が完了するよう努めることが望まれる。

背景金額 2915億円
(地方都市開発整備事業を実施中の16地区における平成15年度末の宅地等事業資産の額)

3 第4章の「特定検査対象に関する検査状況」の概要

第4章の「特定検査対象に関する検査状況」に掲記したものは次の20件である。

(1)都道府県警察等における捜査費及び活動旅費の経理について

 平成15年末以降、一部の都道府県警察等における捜査費及び旅費についての告発等を受けて警察当局による内部調査が行われた結果、不適正な経理が行われていたとの中間報告等がなされ、16年末を目途に、道県警察全体についてなお調査が継続して行われている状況にある。そこで、都道府県警察等の捜査費及び活動旅費の経理について支払のための手続や内容及び使途等に着眼して、重点的に検査を行った。
 捜査費の経理について、秘匿性の要件を利用して慣行的、組織的に不適正な会計経理が行われていたことは極めて遺憾であり、その事態の重大さに鑑み、厳正な対処が望まれる。特に、会計実地検査の際、組織的に虚偽の領収書等を用いて説明が行われたり、その後の説明のために資料が偽造されたりしたことは極めて憂慮すべき事態であり、この重大性を認識して、警察が説明責任を果たし得る健全な体制であるか内部監査などにより点検する必要がある。また、領収書等の証拠書類等が保存期限内に廃棄されていた事態等を踏まえ、会計書類の徴取や保管・管理の体制の整備を図ることが肝要である。
 警察庁においては、不適正経理の発覚以来、改善策を講じてきたが、今後、警察庁における事態の全容解明と原因究明、さらにこれらを踏まえた上での再発防止策の構築が必要であり、本院としても引き続き捜査費等に関する検査を実施し、警察当局において調査中の事案についてもその調査結果の報告を踏まえた上で内容を検証していくこととする。

(2)株式会社りそな銀行及び株式会社足利銀行に対する金融危機対応措置の実施について

 りそな銀行の前身である大和及びあさひ両銀行並びに足利銀行に対しては、平成10年3月以降、公的資金による資本増強措置が実施されてきたが、りそな銀行及び足利銀行の財務状況が悪化し、15年度においてそれぞれ預金保険法に基づく金融危機対応措置が実施された。この措置によりりそな銀行に関しては普通株式等の引受けのため再び公的資金(1兆9600億円)を使用することとなり、足利銀行に関しては16年6月時点で公的資金は使用されていないが、同銀行の持株会社であるあしぎんフィナンシャルグループが資産の大部分を失い、過去に使用した公的資金(優先株式分1050億円)のき損が避けられない状況となった。
 今回の金融危機対応措置が実施されるまでの間、金融庁では大和及びあさひ両銀行並びに足利銀行に対し経営健全化計画の見直しを行わせるなどの監督上の措置を講じてきたが、各銀行において経営の健全化に向けた取組が十分行われていたとは言い難い面もあった。
 今後、金融庁及び預金保険機構では、取得したりそなホールディングスの株式等の価値が保全され、公的資金を使用した効果が最大限発現されるよう経営健全化計画の履行状況等に十分に留意していく必要がある。また、足利銀行については今後予定されている資金援助等においてコストの最小化が図られるよう、資産の管理や経営に関して適切な措置を講ずる必要がある。
 さらに、足利銀行の場合、自己査定による償却・引当額と金融検査による償却・引当額が大きくかい離していた。自己査定及びそれに基づく償却・引当てが適切に行われない状況では、早期是正措置の発動が適切になされずに結果として公的資金がき損したり、公的資金による資本増強措置の効果が十分に発現しなかったりするおそれがある。金融庁においては、資本増強措置を受けている他の金融機関について、自己査定及びそれに基づく償却・引当てが適切に行われるよう対処する必要がある。
 また、預金保険機構及び整理回収機構が保有するあしぎんフィナンシャルグループの優先株式等については、今後、同会社の会社更生手続の結果如何によりそのき損額が確定することから、株主として関与する両機構では、国民負担の回避という観点から、適切に対応する必要がある。

(3)政府開発援助について

 政府開発援助について、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、13箇国の102事業について現地調査を実施した。その結果、無償資金協力において乾期畑作のかんがい面積拡大の進ちょくが遅れていたり、かんがい用水路等の一部が洪水により崩壊して機能が十分に活用できていなかったり、技術協力プロジェクトにおいて移転された鉱山公害防止管理技術が十分に活用されていなかったりなどしていて、援助の効果が十分発現していないと認められるものがあった。また、ノン・プロジェクト無償資金協力において供与された資金等の一部が相当期間使用されないまま残っているなどの事態が見受けられ、円借款事業において事業効果発現を妨げる要因等を検討しモニタリングを効率的に行うなど留意すべき点があると認められるものがあった。したがって、我が国援助実施機関においては、状況を的確に把握するなどして、相手国政府等に対して適時適切な助言を行うなどの要がある。
 さらに、外務省が実施するNGO補助事業において、学校施設の建設のうち、補助対象の建設工事等は行われたが、残りの工事が中断したため施設が完成しておらず、事業の効果が十分発現していないと認められるものがあった。したがって、外務省においては、事業の効果が十分発現するようNGOに対し、事業が完了するまで適時適切な指導又は助言等を行う要がある。

(4)租税特別措置(社会保険診療報酬の所得計算の特例)の実施状況について

 租税特別措置は、特定の政策目的を実現するために、公平・中立・簡素という税制の基本理念の例外措置として設けられているものであり、また、厳しい財政状況の下で減収をもたらすものである。そこで、社会保険診療報酬の所得計算の特例(平成15年度における減収見込額220億円)について、その適用状況、検証状況及び課税の執行状況について検査したところ、〔1〕適用状況については、医業又は歯科医業を営む個人における適用率は38.6%であり、特例適用者の平均所得金額(特例適用前)は特例非適用者の平均所得金額を大きく上回っていた。そして、特例適用者の平均概算経費率と平均実際経費率との差は18.3%、平均軽減税額は139万余円であるが、各特例適用者の軽減税額には大きな開差が認められた。〔2〕検証状況については、税制改正の要望の際の検証では、厚生労働省は、限られた既存の資料に基づいて政策効果等の検証を行い、特例存続の要望書を提出していたが、この検証には、減税見込額の算定などに課題等が見受けられた。また、政策評価による検証では、厚生労働省は特例を評価の対象とはしていなかった。厚生労働省においては、特例の検証について、より一層内容を充実し、政策の実効性を高めていくとともに国民に対する説明責任を果たしていくことが望まれる。財務省においては、関係省庁に対して要望書における検証等について指導するなどとともに、特別措置について今後とも十分に検証していくことが望まれる。〔3〕課税の執行状況については、特例を適用した場合の青色申告特別控除額計算の誤りなどが多く見受けられた。国税庁においては、特別措置に係る課税の執行について、より適正に行うことが望まれる。

(5)国立大学病院及び国立病院における寝具の賃貸借等契約に係る入札談合について

 8都府県に所在する国立大学病院、国立病院等における寝具賃貸借等契約について、公正取引委員会は、関係業者が入札談合を行ったとして、平成13年に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)に基づき勧告を行い、関係業者は、これを応諾し、課徴金の納付命令を受けた。
 近年の入札談合に係る損害賠償請求訴訟の状況を見ると、裁判所の職権により損害額を認定した判例の蓄積が進んできており、また、本件勧告に関係する地方公共団体の過半では、受注者に対して損害の賠償請求を行っており、受注者はいずれもこれに応じている。このような状況を踏まえ、入札談合によって被った損害の回復を図る要はないか、入札談合に対する有効な対応策は執られているかなどに着眼して、本件勧告等に関係する4国立大学病院及び36国立病院のうち、4国立大学病院及び6国立病院(これらの病院における課徴金納付命令対象契約31件7億9593万円)を検査した。
 検査したところ、これらの病院では損害が発生しているという認識がないことなどから本件勧告等の対象となった業者に対して損害賠償請求を行っておらず、また、国立大学では入札談合に対する賠償金についての特約条項を契約書等に明記していない状況であった。したがって、16年4月に法人化された国立大学及び国立病院においては、近年の判例や地方公共団体における状況等を十分に把握・認識し、本件入札談合において被ったと認められる損害額について、その回復を図ることの必要性を検討すること、また、法人化後の国立大学においては、入札談合があった場合は賠償金を支払うよう受注者に義務付ける旨の特約条項を契約書に設けるなどの措置を講ずることが望まれる。

(6)介護保険制度の実施状況について

 介護保険制度は、平成12年4月の制度開始以来、多額の国庫負担金等が交付されており、12年度から14年度までの第1期事業運営期間が終了したこと、介護保険法が定める5年ごとの介護保険制度全般にわたる見直しの時期を迎えていることなどから、全国の市町村における介護保険制度の実施状況等について検査した。
 その結果、厚生労働省において、市町村を指導することとされている都道府県に対する助言等に関し、〔1〕低所得者に対して保険料の全額を免除しているなど被保険者の公平な費用負担という原則を遵守していない市町や介護保険財政に不足が生じた場合の支援策として設けられている財政安定化基金を活用しないで一般財源から繰入れを行っている市町村に対する介護保険財政の健全な運営のための指導の実施、〔2〕被保険者自らの選択による介護サービス利用の実現のための多様な介護サービス事業者の参入促進策等の実施、〔3〕都道府県や市町村における介護サービス事業者に対する介護給付費の点検業務の強化や指導など介護給付費適正化のための支援の実施、〔4〕高齢者が自立した生活を営めるよう介護予防等に関する事業を行っている在宅介護支援センターが十分に本来業務を実施できる体制づくりや、介護予防や生活支援に有効と考えられる各種の事業の推進、〔5〕第1期事業運営期間における介護保険の実施状況や都道府県、市町村における評価及び介護保険制度等に関する市町村の意見を踏まえた介護保険制度全般にわたる見直しの実施に留意していくことが望まれる。

(7)国民年金事業の実施状況について

 国民年金事業については、平成12年度以降、従来市区町村が行っていた事務を国が直接執行するなど、その体制が大きく変更されている。そこで、市区町村等から国民年金事務の移管が適切に行われているか、事業運営が適切に実施されているか、その結果としての国民年金制度の現状はどのようになっているかなどに着眼して検査した。その結果、被保険者の適用に関する事務については、第2号被保険者資格喪失者で第1号被保険者の資格取得届等の届出が行われていない者(未届者)に対する被保険者資格の職権適用は一部の社会保険事務所等でしか行っておらず、基礎年金番号による管理が行われていない被保険者(未加入者)については社会保険事務所等で住民基本台帳等と国民年金原簿との突合ができず、届出をすべき事由が発生した者が把握できないため、届出の勧奨すらできない状況となっていて、相当数の未届者及び未加入者が存在していると考えられる。また、保険料に関する事務については、電話番号情報の不明者が多く電話納付督励の実施率が低いなど納付督励が未納者全員に速やかに行えなかったり、他の納付督励と連携がとれなかったりなどしていて効率的とはいえない状況となっている。そして、未納者数は年々増加している状況となっており、また、受給資格の状況については、現在被保険者である60歳未満の者について、未納期間により老齢基礎年金の受給資格がないと認定される件数が相当数存在していると推測される状況である。さらに、国民年金事業の収支状況については、被保険者数は増加しているが、未納者が増加したことなどから、保険料収入は増加しておらず(15年度の保険料債権5兆1029億円、うち収納済額1兆9626億円、時効による不納欠損額8475億円、未納保険料2兆2926億円。保険料収納額割合38%)、14年度から国民年金勘定積立金から補足せざるを得ない状況となっている。このように、未届、未加入及び未納が増加すると、公的年金の受給権を得られない者等が増加し、また、基礎年金の給付に要する費用の負担は、保険料納付者だけではなく他の被用者年金の保険者の負担の増大をも招く結果となる。
 したがって、厚生労働省及び社会保険庁において、多数の無年金者が生ずることのないようにするとともに、保険料収納額等の増大を図るため、被保険者資格の職権適用を行うようにすること、状況に応じた納付督励を行える体制を整備し、保険料の徴収を効率化することについて検討するなどして適切な事業運営を図ることが望まれる。

(8)公共工事の多様な入札・契約制度、特に総合評価落札方式等の民間の技術力を活用する方式の導入状況について

 公共工事の入札・契約制度については、透明性・客観性及び競争性を確保しつつ、品質の確保、コスト縮減等を図るため、一般競争入札等の新入札制度や総合評価落札方式等の民間技術力活用方式の導入が求められていることから、国土交通省及び農林水産省が所管する直轄、公団等、都道府県等の公共工事におけるその導入状況等について検査した。その結果、新入札制度の導入等についてはおおむねその拡大が図られてきているものの、民間技術力活用方式については、公団等及び都道府県等においては、未だ低調となっている。一方、両省においては、民間技術力活用方式の導入は図られてきているが、入札参加者の選定過程においてより多くの優れたVE提案を活用するための方策や、総合評価落札方式における評価項目の選定、予定価格への総合評価管理費の計上方法等について課題が見受けられた。
 したがって、両省、公団等及び都道府県等においては、引き続き新入札制度の導入等の拡大に努めるとともに、両省においては、〔1〕民間技術力活用方式のうち入札時VE方式等を実施するに当たっては提出されたVE提案の内容を十分活用できるような体制とすること、〔2〕総合評価落札方式については評価内容の拡充に努め、総合評価管理費を計上する工事の実施事例の増加及び多様化を図ること、また、公団等及び都道府県等においては、〔1〕民間技術力活用方式の導入が図られていない発注者については、導入初期の方式としてなじみやすい契約後VE方式の導入を早急に図ること、〔2〕国土交通省の事例集等の内容を徹底するなど民間技術力活用方式の導入に向けた意識改革に努め、試行等を通じてその導入に努めることなどにより、多様な入札契約制度の導入を図っていくことが望まれる。

(9)国有林野事業の抜本的改革の実施状況について

 林野庁では、国有林野事業の危機的な財務状況に対処してその財政の健全性を回復するとともに、国有林野を将来にわたって適切かつ効率的に管理経営する体制を確立するため、平成10年10月から抜本的改革を開始し、15年度末までの期間において集中的な改革に取り組んできた。そこで、その実施状況について、特に財務状況の改善に寄与するものとなっているかに着眼して検査したところ、改革の実施状況については一定の進ちょくが認められ、財務面においては、人件費が大幅に減少したことなどにより新規借入金が大幅に減少するなどの成果も見受けられた。一方、林産物の売払収入等の自己収入が減少していることなどもあって、11年度以降においても毎年度400億円を超える損失を計上しており(15年度末繰越欠損金1973億円)、現在までのところ損失の大幅削減という財務構造の改善には至っておらず、財政の健全化という面から見ると、改革の努力は、木材市況が低迷していることもあって必ずしも十分な成果に結び付いたとは認められない状況である。
 国有林野事業を取り巻く環境は依然として厳しい状況にあるが、公益的機能を重視する立場から引き続き適切に運営していく必要があること、今後とも一般会計からの多額の繰入れが見込まれること、累積債務の償還に向けて引き続き財政状況の改善が要請されていることなどから、業務の委託化を一層推進することなどにより、より効率的、効果的な事業運営が行われることが望まれる。

(10)産業再配置促進費補助金について

 産業再配置促進費補助金は、工業の集積の高い地域から低い地域への工場の移転等、工業の再配置を促進することなどを目的として交付されるもので、工業と地域社会との融和を図る上で一定の役割を果たしてきたと考えられる。一方、本件補助制度は、昭和48年度の発足以来30年が経過し、国土開発や工場立地をとり巻く環境は大きく変化している。これらを踏まえ、本件補助金の役割や成果を検証するとともに、工場立地等に対する企業や地方公共団体等の動向、工業再配置に係る各種施策のその後の状況等について検査した。
 検査したところ、本件補助金の交付実績は、平成14年度までの累計では1266億円となっているが、この間、昭和50年をピークとして減少傾向が続き、本件補助金以外の工業再配置関連施策はほぼ終了している状況となっている。また、新たな工業再配置計画は、前計画の終了後未だに策定されていない状況である。さらに、制度発足当初に比べ工場誘致に力を入れる地方公共団体が増加するなど、工業再配置に対する住民、企業、地方公共団体それぞれの意識や対応には変化がみられる状況となっている。
 したがって、本件補助金は、関係各方面の意見等も踏まえつつ、その有効性について十分検討するとともに、各種の施策・事業をより効率化・重点化する観点から、適切な評価を行い、今後の経済産業省における地域経済施策に反映させていくことが肝要である。

(11)タウンマネージメント機関(TMO)による中心市街地の商業活性化対策について

 中小企業庁では、中心市街地における商業等の活性化を図るなどのため、中小小売商業高度化事業を平成10年度から実施しており、この事業の推進主体として認定を受けた商工会・商工会議所等のTMO等に多額の国庫補助金等(14年度までの交付額は94億円)を投じてきたが、中心市街地において空き店舗等が増加するなどその空洞化にますます拍車がかかる状況となっている。こうした状況を踏まえ、〔1〕TMOが本来の趣旨に沿って、合意形成等のコーディネーター的役割を適切に果たし、総合的なマネージメント機能を十分発揮できているか、〔2〕商業集積としての競争力の根幹であるテナントミックス事業等に積極的に取り組んでいるかなどに着眼して検査した。その結果、テナントミックス事業等を実施する上で十分な人的体制と財政的な基盤がTMOに備わっていないことや、TMOの理念そのものが十分浸透していないこともあり、現状では、TMOに期待される本来の機能がいまだ十分に発揮されていない状況となっていた。
 したがって、今後は、中心市街地活性化の困難性にかんがみ、本件施策におけるTMOの趣旨を十分理解するとともに、ハード事業と各種ソフト事業の有機的連携を図りつつ、地域の特性に十分配慮した街づくりのコンセプトを確立し、更に意欲を持った有能な人材を配するなどTMOによる街づくりのポテンシャルの高い地域をモデル地区として選定し、優先的に支援していく必要があり、これにより確実に成功事例を増やしていくなど限られた予算の効果的な執行が望まれる。

(12)公的支援を受けた事業を実施している地方住宅供給公社の状況について

 地方住宅供給公社は、住宅金融公庫等の融資や国及び地方公共団体の補助金の交付を受けた事業を実施しているが、バブル崩壊後、住宅需要の変化や地価の下落傾向の長期化等により、公社の経営環境は大きく変化していて、一部の公社は特定調停の申立てをするに至っている。そこで、27公社(住宅金融公庫の平成14年度末融資残高合計5535億円、12年度から14年度までの国庫補助金交付額合計295億円)を対象として、公的支援を受け実施している分譲住宅事業、宅地造成事業及び賃貸住宅事業の実績や、公社の財務状況等について検査又は調査した。その結果、事業の実績においては、市場価格の下落によって分譲価格が市場価格より割高になったことなどにより、分譲住宅が売れ残っていたり、宅地の造成・供給が進んでいなかったり、設定家賃が市場家賃とかい離していたことなどにより、賃貸住宅の空家率が20%を超えていたりしている状況などが見受けられた。また、財務状況等においては、分譲事業で資産の時価が著しく下落したことによる評価損計上が結果的に損失を拡大させたり、賃貸管理事業で土地所有者等が建設した賃貸住宅を一括借上方式で管理している場合に空家の増加により損失が発生したりしていることなどから、内部留保が減少している公社が見受けられた。
(12)公社の経営健全化等の取組については、各公社及び各設立団体においてそれぞれ責任を負うべきものであるが、国においては、各公社の現況を踏まえた各設立団体の意向に十分配慮しながら、引き続き、公社の業務運営の在り方についての検討を進めていくことが望まれる。また、公庫においては、引き続き、公社全体の事業計画や財務状況等についての詳細な調査、分析を行うなどして、公社向け融資に係る審査及び債権管理を実施していくことが望まれる。

(13)道路関係四公団における土地及び物品の資産管理について

 道路関係四公団(日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び本州四国連絡橋公団)は高速道路等を建設・管理するなどして社会資本を整備する役割を遂行してきたが、業務の抜本的見直しとコストの削減を図るため、平成17年度中に民営化されることとなった。各公団においては、新組織への円滑・確実な移行に向けて、承継される資産の確定や資産の効率的な管理が要請されていることから、資産管理について様々な視点から検査した。
 検査したところ、道水路の付替えに係る土地の財産整理については、作業が長期化しており、関係機関と協議を進めながら、権利関係等を早急に整理していく要があると認められた。また、代替地及び未利用地の保有状況については、提供や処分等に至らないまま多数保有しており、現状を十分把握し、その活用あるいは処分のための方策等を検討し実施していく要があると認められた。そして、物品の管理及び資産計上については、現品と台帳等の記載が一致していなかったり、資産が過大又は過小計上されていたりしていて、適切な管理体制をより一層構築していく要があると認められた。また、新直轄方式等の新たな諸施策が財務に及ぼす影響については、その内容、状況等を今後より積極的に開示していく要があると認められた。
 本院としては、従来より高速道路等の整備が産業発展の不可欠の基盤であると位置付けられ、今後も必要な道路を早期に、かつできるだけ少ない国民負担の下で建設するとされていることから、道路関係四公団の民営化に係る諸施策を踏まえつつ、高速道路等に係る資産管理のあり方について引き続き検査していくこととする。

(14)日本郵政公社の管理する債権について

 日本郵政公社は、平成15年4月の設立に当たって、旧郵政省、郵政事業庁当時に発生し回収が進まないままとなっている債権を多数承継している。そこで、公社の置かれている経営環境等の変化を踏まえ、これらの債権の管理・回収状況はどのようなものになっているか、また、公社化後の債権の取扱いに留意すべき点はないかなどに着眼して、主に5年以降に発生し回収の終わっていない元本50万円以上の債権361億円を対象に検査した。その結果、回収が進まないままとなっている債権の中には、職員の不正行為や過誤払い等により発生した債権が多数あり、公社では、これらの債権について引き続き回収に努めているところであるが、その回収状況は低調となっているばかりでなく、公社化後も新たに過誤払い等により発生した債権が少なからず見受けられた。
 したがって、公社においては、これまで講じてきた各種の施策のうち、特に、債権管理事務の遵守を徹底するとともに具体的かつきめ細かな回収策を実施し回収の実を上げること、債権の発生原因の分析に基づき支社及び郵便局間の情報連絡を密にするなどして類似事態の未然防止に努めることを更に徹底するなどして事態の改善を図ることが望まれる。

(15)独立行政法人における還付消費税の処理及び納付消費税の会計処理について

 平成13、14両年度内に設立された独立行政法人(先行法人)が、設立に際し国から受けた建物、構築物等の現物出資については、消費税の課税対象である資産の譲渡等として扱われ、この消費税額の大半が控除対象仕入税額となったため、先行法人は多額の還付消費税を受領することとなった。そこで、この還付消費税が、各先行法人に保有されたままとなっている事態が予想されたため、還付消費税が適正に国庫に納付されることになるか、法人間で国庫納付額に不公平が生じないか、運営費交付金の収益化と納付消費税の費用化に係る会計処理が適切に行われているかに着眼して検査した。その結果、次のとおりとなっていた。
〔1〕 還付消費税の処理については、税込経理方式を採用している先行法人が保有する額は、各法人の中期目標期間が終了した際、国庫へ納付される見込みであるが、税抜経理方式を採用している先行法人が保有する額の一部について、取扱いが確定していない。また、国庫納付等の対象とすべき額は、現物出資に係る仕入控除額がないとして消費税を計算した場合に生ずる納付消費税額又は還付消費税額を、実際に受領した還付消費税額にそれぞれ加算又は控除した額とするのが適切である。
〔2〕 納付消費税の会計処理については、税込経理方式の場合、納付消費税額を運営費交付金の対象事業経費に含めると、納付消費税額分の運営費交付金が事業の用に供されないまま利益に計上されることになる。
 したがって、還付消費税額の国庫納付等の対象額が適正に算定され、国庫納付等の処理方針の策定が適切に行われること、また、納付消費税について、当期利益が税抜きで算定され、運営費交付金がすべて有効に利用されるような会計処理が執られることなどが望まれる。

(16)石炭会社等に対する貸付金等債権の管理・回収等の実施状況について

 石炭鉱業は、戦後、主要な国産エネルギーとして産業の発展等に大きく貢献してきたがその後の石油の世界的な過剰傾向等により構造的不況に陥ったことから、政府は、石炭鉱業合理化事業団等を通じて石炭会社等に対して炭鉱の近代化に必要な貸付事業等を実施してきたが、平成13事業年度をもって新規の貸付け等を終了した。そして、事業団等の業務を引き継いでいる独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構では、石炭会社等に対する貸付金債権の管理・回収等業務を行っているが、同業務は必ずしも順調に進んでいるとはいえない状況にある。
 そこで、同業務の実施状況について検査したところ、貸付金等債権については13事業年度末に1428億円であったものが、その後の経営破綻等により、その6割を超える額が償却されていた。また、一部の貸付金債権については、土地の売却収入等による長期分割返済で回収することとされているが、当該土地の売却は順調に進んでいるとはいえない状況となっていた。
 石炭政策は、多額の国費を投じて長年にわたり実施されてきた国家事業であり、機構が現在行っている上記の業務は、その最終的な整理段階の一つに位置付けられるものであることから、本院としては、同業務の実施状況等について引き続き注視していくこととする。

(17)H−IIAロケットの開発等について

 独立行政法人宇宙航空研究開発機構においては、H−IIAロケットの開発及び打上げに要した費用が1823億円となっているなど、宇宙開発に多額の財政資金を投入しているが、平成15年10月から12月にかけてH−IIAロケット6号機の打上げ失敗の事故等が連続して発生したことは、これらの開発に要した多額の財政資金に見合う成果が発現していないだけではなく、機構の開発技術の信頼性を揺るがせ、我が国の宇宙開発に対する国民の理解と信頼を得ることが困難になりかねない状況である。
 検査したところ、機構においては、〔1〕開発過程における不具合発生箇所等に対するリスク評価体制を見直し、機構の開発技術の信頼性確保に向けた体制の強化を図る、〔2〕H−IIAロケットの開発過程等から生じた各種の技術的課題のうち、現在までに解決していない課題について、確実かつ早期の解決に努める、〔3〕H−IIAロケットの信頼性向上を図り、1機当たりの打上げ費用を低減させ、国際競争力の確保に努める、〔4〕宇宙開発に係る各種リスクを適切に管理し、その内容を国民に対して積極的に説明することにより、理解と信頼を得るよう努めるなどして、ロケット等の開発を確実に実施し、国から投入される財政資金が有効かつ効率的に活用されるよう業務について所要の見直しを図ることが望まれる。

(18)財団法人民間都市開発推進機構における土地取得・譲渡業務の実施状況について

 財団法人民間都市開発推進機構では、民間都市開発事業を推進するため、国の財政援助等により、事業見込地を土地所有者(売主)から取得し、事業の企画・立案、立ち上げ支援等を行った上で当該事業見込地を事業施行者に譲渡する土地取得・譲渡業務を行っている(国の平成15年度末政府保証借入金残高6960億円、15年度末無利子貸付金残高1097億円、6年度から15年度までの補給金等交付額185億円)。同業務の実施状況や事業収支の状況等について検査したところ、バブル経済の崩壊後の厳しい経済情勢の中で、相応の成果を収めていると認められるものの、機構が取得した事業見込地の中には、事業施行予定者が事業を断念したことにより事業が実施されないまま売主に買い戻されたもののほか、事業化の動きが停滞しているものも見受けられた。また、財務状況については、これまでのところ全体的な事業収支と財務の安定性は維持されているが、個別の事業収支をみると、売主が事業施行予定者となっている場合において、売主の経営破綻などにより機構に譲渡損失が発生したものがあり、これらの譲渡損失の処理等については決算書等において特段の表記はされていない。このほか、売主が経営破綻し、更生手続等を行っているものもあり、今後の動向によっては、機構において新たな損失が発生するおそれがあるものもある。
 したがって、機構において、事業見込地の取得に当たっては、開発可能性や事業化後の採算性の検討及び事業施行予定者の開発意欲や経営状況等の審査を一層厳格に行い、取得した事業見込地については、積極的に事業の立ち上げ支援を行うとともに、事業化の動きが停滞しているものについては、個々の状況を考慮した上、現状での開発可能性の見極めや事業構想の見直しなどの対応策を講じることが望まれる。また、発生する譲渡損失及びその処理について、決算書等の中で何らかの形で表記することにより、より一層の透明性の向上を図るとともに、今後の新たな譲渡損失の発生に備えて、業務運営の合理化や経費の節減等により財務基盤の一層の強化を図ることが望まれる。

(19)国が発注している調査研究事業について

 国が行う調査研究事業については、近年の社会経済情勢の変化や行政組織等の減量化等に伴い、高度な技術や専門性を有した外部機関に発注して実施しているものが多数あり、これに係る契約金額も多額に上っている。そこで、各府省等が発注している調査研究事業について検査したところ、競争契約の割合は極めて低く、随意契約においても企画競争を実施しているものは少ない状況となっていた。また、予定価格の積算については、相手方から徴した参考見積書により算定しているものが相当程度見受けられ、概算契約における額の確定においては契約金額と同額で精算されているものが多い状況となっていた。さらに、成果物については、半数以上がその内容を公表しているが、近年普及してきたインターネットにより公表されているものは低い割合にとどまっているなどの状況となっていた。
 したがって、各府省等においては、〔1〕業務内容を仕様書等において具体的に提示することや履行が可能な複数の業者を把握することに努めて競争契約の拡大を図ったり、仕様書等の具体的な提示が困難なものについて随意契約によらざるを得ない場合は企画競争の可能性を検討したりすること、〔2〕相手方から徴した参考見積書により予定価格の積算を行う場合が多いことも踏まえ、積算の合理性の向上に努め、また、契約締結後においては、再委託の状況等を十分把握するとともに、事業終了後の額の確定を一層適正に行うこと、〔3〕成果物については、個人情報の保護、機密保持等に十分留意しつつ、一層積極的に公表を進めるとともに、インターネットでの公表の拡大等、事業の成果が関係府省等のみならず国民にもより広く活用できるような方途を講じることなどに留意して、より経済的、効率的に事業を実施するとともに、事業の一層の透明性の向上を図ることが望まれる。

(20)一般会計歳出予算の執行状況について

 我が国の財政は依然厳しい状況が続いており、各般の施策を推進していく上でも効率的な予算執行の重要性は一層高まっている。そこで、一般会計歳出予算の執行状況について検査したところ、本院で比較相対的な概念として設定した経費の区分でみると、裁量性の高い経費を多く含むものを中心に年度末に支出率が高くなっているとともに、これらの中には不用率が低くなっているものも見受けられた。そして、本省支出官に係る契約のうち、物品購入や施設整備についてその時期をみたところ、年度末に契約件数が増加している状況となっていた。また、予算の区分を変更し経費を融通する移流用が同じ科目において2箇年度続いて行われていたり、会計年度独立の原則の例外である繰越しにおいて、全く支出負担行為が行われずに全額明許繰越がなされている事項が相当数見受けられたりした。
 各府省等においては、歳出予算の執行に当たって、引き続き、国の各般の需要を的確に把握して一層効率的、効果的な執行を行うとともに、法令及び予算に従った執行に努めることが重要である。また、法令及び予算制度の原則に沿って予算執行を行いつつ、原則どおりに執行することがかえって非効率になるような場合には、今後とも、移流用、繰越し等の制度を適切に活用することにより、効率的な執行に努めることが必要である。そして、決算を予算に反映していくことの重要性がますます高まっていることを踏まえ、予算の執行状況の検証及び決算の分析を十分に行って予算への反映を実効あるものにし、更に今後の効率的、効果的な予算執行に資することが望まれる。

第2 観点別の検査結果

 会計検査院は、前節に記載した「平成16年次会計検査の基本方針」のとおり、正確性の観点、合規性の観点、経済性・効率性の観点、有効性の観点といった多角的な観点から検査を実施した。その結果は「第1 事項等別の検査結果」で述べたとおりであるが、このうち「第3章 個別の検査結果」に掲記した事項について、検査の観点に即して事例を挙げると次のとおりである。

1 主に予算執行や財産管理の状況が計算書や財務諸表に正確に表示されているかに着眼したもの

 検査対象機関は、その執行した予算や管理する財産について、法令や各種会計基準に従って、適正に経理処理を行うとともに、その状況を適切に計算書や財務諸表に表示しなければならない。この経理処理が適正に行われ、予算執行や財産管理の状況が計算書や財務諸表に適切に表示されているかに着眼した検査の結果として次のようなものがある。

(ア)国の所有する財産が国有財産台帳や物品管理簿に適切に計上されているかを検査した。その結果、「矯正施設の収容棟等の増改築等工事により国有財産台帳に登録する建物及び工作物の価格登録が適正に行われるよう改善させたもの」 及び「物品の管理に当たり、取得、処分等の手続を適正に行うとともに、帳簿への記録等が物品の現況を反映した正確なものとなるよう改善させたもの」 を掲記した。

(イ)政府出資法人において、その所有する資産の貸借対照表への計上や減価償却が適切に行われ、その現況が適切に表示されているかを検査した。その結果、「施設整備費補助金により取得した研究用機器等及び建物附属設備等の資産計上に当たり、資産の分類等を適切に行い、貸借対照表の有形固定資産の各資産科目の計上額とこれに伴う減価償却額の算定を適正に行うよう改善させたもの」 を掲記した。

2 主に業務が予算、法令等に従って適正に実施されているかに着眼したもの

 検査対象機関は、予算、法令等に従って適正に業務を実施しなければならない。この業務の執行に際し、予算、法令等が守られているか、さらには予算、法令等の趣旨に適合した制度の運用が行われているかに着眼した検査の結果として次のようなものがある。

(ア)会計に関する事務を処理する職員は、予算や会計法令等の定めるところに従って、収入金の受入、支出金の支払、契約手続等の事務を適正に行うとともに、その経理処理を確実に行うべきものであるので、これらが予算や会計法令等に従って適正確実に行われているか、また、適正確実に行うような事務処理体制が執られているかを検査した。その結果、「在外公館における会計経理が適正を欠くと認められるもの」「医薬品等の購入などに係る予算執行について、当該年度に行うべき会計事務処理を行わず、翌年度において事実と異なる不適正な会計経理を行って代金を支払っているもの」「物品を購入したように書類を偽装するなどして庁費、委託費等から支出し、これを別途に経理して目的外の用途に使用するなどしていたもの」「国民年金事業に使用する金銭登録機の購入契約が会計法令の趣旨に反し適切でなかったもの」「国際連合平和維持活動に伴う国際連合からの償還金について、遅滞なく歳入として国庫に収納するための体制を整備するよう改善させたもの」 を掲記し、「在外公館における出納事務の執行について」 として是正改善の処置を要求した。

(イ)租税及び保険料は法令等に従って適正に徴収すべきものであるので、個々の徴収額に過不足がないかを検査した。その結果、「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」 及び「労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」 を掲記した。

(ウ)老齢厚生年金等の支給が適正なものとなっているかを検査した。その結果、「厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの」 を掲記した。

(エ)雇用対策のための給付金や助成金の支給が適正なものとなっているかを検査した。その結果、「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」「雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったもの」 を掲記した。

(オ)医療機関からの診療報酬や労災診療費の請求に対する支払が適正かを検査した。その結果、「医療費に係る国の負担が不当と認められるもの」「労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの」 を掲記した。

(カ)介護サービスを提供する事業者からの介護給付費の請求に対する支払が適正かを検査した。その結果、「介護給付費に係る国の負担が不当と認められるもの」 を掲記した。

(キ)工事の請負や物品、役務の調達に当たり、公正性、競争性が確保されるよう契約事務が適切に行われているかを検査した。その結果、「物品・役務の調達に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保を図るため、競争に付するなど契約事務を適切に実施するよう改善させたもの」「都道府県への施行委任により実施する国立公園整備事業の工事請負契約の入札については最低制限価格が設定できないものであることを明確にするよう改善させたもの」「事務所等の清掃業務の委託に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保を図るため、契約方式を競争契約に改めるなど契約事務を適切に実施するよう改善させたもの」 を掲記した。

(ク)補助金の交付申請や実績報告に係る経理が適正に行われているか、また、補助事業が適正に実施されているかを検査した。その結果、「国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの」「緊急食糧支援事業に係る国庫補助金の経理を適正に行うとともに、滞留している資金を国に返還するよう改善させたもの」「地域活性化創造技術研究開発費補助金等の経理が不当と認められるもの」「廃棄物埋立護岸の整備事業において、審査、確認等の体制の強化を図ることなどにより、補助率の算定及び収益納付を適切に行うよう改善させたもの」 を掲記した。

(ケ)貸付金が貸付目的に従って適正に使用されているかを検査した。その結果、「小規模企業者等設備導入資金の貸付けが不当と認められるもの」 を掲記した。

3 主に業務が経済的・効率的に実施されているかに着眼したもの

 検査対象機関の業務は、その事業目的を達成する上で、経済的・効率的に実施されなければならない。すなわち、経費は節減できないか、同じ費用でより大きな成果が得られないかという観点であるが、この点に着眼した検査の結果として次のようなものがある。

(ア)我が国の科学技術の振興を図るために産業投資特別会計より出資を受けて実施されている文献情報提供業務の各商品の収支等の状況や収支改善の見込みなどに着眼して検査した。その結果、「文献情報提供事業について」 として改善の意見を表示した。

(イ)国等からの補助金や助成金等が合理的に算定されているか、事務・事業の実施に対して必要以上に交付されることとなっていないかに着眼して検査した。その結果、「地上デジタルテレビジョン放送の開始に伴うアナログ周波数変更対策業務について、放送機の転活用を図ることなどにより経済的に実施するとともに、受信アンテナ等の材料費の積算を適切なものとするよう改善させたもの」「石油製品品質確保事業における試買分析業務に要する経費の算定が業務の実態を反映した適切なものとなるよう改善させたもの」 を掲記した。

(ウ)工事費の積算が経済的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「床組構造改築工事における炭素繊維シート貼付工の材料費の積算を施工の実態等に適合するよう改善させたもの」「鉄道施設の改良・修繕工事において、請負業者を特定して定期・計画的に発注する場合の一般管理費の積算を適切なものとするよう改善させたもの」 を掲記した。

(エ)物件の調達が経済的・効率的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「航空保安施設の新設、更新等に伴い購入するレーダー装置等各種装置の予備品の購入契約に当たり、各種装置の製造実績単価を把握するなどして、予備品の積算を適切なものとするよう改善させたもの」「光ファイバケーブルを利用したインターネット接続サービスの提供に当たり、加入者がおらず使用されていない加入者収容パッケージを他に転用することにより、購入費の節減を図るよう改善させたもの」 を掲記した。

(オ)役務の仕様や積算が経済的・効率的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「合同宿舎の維持管理業務の委託において、管理人が実際に管理する宿舎の戸数を委託費の積算に的確に反映させるよう改善させたもの」「出願適正化等指導事業等の委託における人件費の算定方法に職員等の勤務実態を反映させることにより委託費の節減を図るよう改善させたもの」「建物等に入館・入室することができる者の登録を業務の実態等に即して見直すことにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの」 を掲記した。

(カ)不要となっている資産について適時、適切な売却が行われているかに着眼して検査した。その結果、「新幹線施設の建設のため取得した残地の売却に係る事務を速やかに行う事務処理体制を整備することにより、その早期の売却を図るよう改善させたもの」 を掲記した。

(キ)国の出資法人が実施している融資業務、保証業務、保証に対する保険業務について、融資や保証を行う際の審査が適切に行われているか、代位弁済が適切に行われているかなどに着眼して検査した。その結果、「延滞貸付金に係る保証債務の管理に関する事務を適切に行うよう改善させたもの」「小企業等経営改善資金融資制度の実施状況について」「中小企業信用補完制度における保証審査等について」 を掲記した。

(ク)アメリカ合衆国政府の有償援助による自衛隊の装備品等の調達について、調達に係る前払金の精算が適切に行われているかに着眼して検査した。その結果、「アメリカ合衆国政府の有償援助による装備品等の調達に係る残余資金について、速やかに歳入として国庫に収納するための体制を整備するよう改善させたもの」 を掲記した。

4 主に事業が所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼したもの

 検査対象機関の事業の中には、一定の目的の下に、社会資本を整備したり、財政援助・助成措置を講じたり、財産を保有・活用したりなどしているものがあるが、これらが所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼した検査の結果として次のようなものがある。

(ア)海上自衛隊で日本海側唯一の航空基地である舞鶴航空基地及び調達された哨戒ヘリコプターが有効に活用されているかに着眼して検査した。その結果、「海上自衛隊舞鶴航空基地及びSH−60J型哨戒ヘリコプターの活用について」 を掲記した。

(イ)爆弾テロが世界で現実のリスクとなっていることを踏まえて我が国の在外公館の安全を強化するために配備された爆発物探知装置が適切に利用されているかに着眼して検査した。その結果、「在外公館において、その警備を強化するため、配備された爆発物探知装置を十分活用するよう改善させたもの」 を掲記した。

(ウ)近年における少子化等を反映して生じている公立小・中学校の廃校施設等の有効活用が十分に図られているかなどに着眼して検査した。その結果、「廃校等施設及びへき地教員宿舎の転用による有効活用が適切に促進されるよう改善させたもの」 を掲記した。

(エ)大都市からの人口及び産業の地方への分散と地域の開発発展を図ることを目的として実施されてきた地方都市開発整備事業について、バブル経済の崩壊後、地価の下落が続いている状況の下、宅地譲渡が進ちょくして事業効果が発現しているかなどに着眼して検査した。その結果、「地方都市開発整備事業の実施について」 を掲記した。

(オ)国の直轄事業又は補助事業により整備した施設や設備が適切に管理され、計画に沿って利用されているか、また、その目的を達しているかなどに着眼して検査した。その結果、「教育情報衛星通信ネットワークにおける送受信設備の有効活用等を図るよう改善させたもの」「畜産環境総合整備事業等により整備したたい肥化施設において、家畜排せつ物の管理を適切に行うことなどにより、事業効果の発現を図るよう改善させたもの」「国営かんがい排水事業及びこれに関連する附帯事業の実施について」「特定優良賃貸住宅供給促進事業の実施について」「橋りょうの耐震化対策の実施状況について」「高規格堤防整備事業の実施について」 を掲記した。

(カ)中山間地域等の活性化を図るため国から補助金の交付を受けて基金を造成して実施されている事業が、適切に実施され事業目的に資するものとなっているかなどに着眼して検査した。その結果、「中山間ふるさと・水と土保全対策事業において、事業が適切かつ効果的に実施されるとともに、事業量等に応じた基金の適切な取扱いを行うよう改善させたもの」 を掲記した。

(キ)補助金の算定方法が補助の目的の達成に資するものになっているかなどに着眼して検査した。その結果、「滞納を未然に防止するための事業の実施を促進するなど、国民健康保険の収納特別対策事業に係る特別調整交付金の交付が効果的なものとなるよう改善させたもの」「土地利用型酪農推進事業における飼料基盤強化奨励金の交付に当たり、飼料作物の作付けを実施していない酪農経営者を奨励金交付の対象から除外するよう改善させたもの」「地方高等教育機関の活性化に係る特別補助が、私立大学等における地域の社会的要請にこたえる特色ある教育研究の実施をより一層促進するものとなるよう改善させたもの」 を掲記した。

(ク)国から補助金の交付を受けて運営されている漁業共済事業の事務の執行が制度の趣旨に沿って行われているかに着眼して検査した。その結果、「漁業共済事業の実施に当たり、制度の趣旨に沿わない手数料の徴収をしないこととするなど、事業の適切な運営が図られるよう改善させたもの」 を掲記した。