事項別の検査結果を省庁等別にみると次表のとおりである。
事項
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省庁又は団体名 |
不当事項 | 意見を表示し又は処置を要求した事項 | 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 | 計 | |
会計検査院法第34条関係 | 会計検査院法第36条関係 | ||||
是正改善の処置を要求したもの | 改善の意見を表示したもの | ||||
裁判所 |
件 3 |
件 | 件 | 件 | 件 3 |
総理府(防衛庁) | 1 | 1 | |||
総理府(科学技術庁) | 1 | 1 | |||
法務省 | 1 | 1 | |||
大蔵省 | 2 | 2 | |||
文部省 | 19 | 1 | 20 | ||
厚生省 | 146 | 1 | 1 | 148 | |
農林水産省 | 1 | 1 | 2 | 4 | |
通商産業省 | 3 | 3 | |||
運輸省 | 1 | 1 | |||
郵政省 | 46 | 1 | 47 | ||
労働省 | 5 | 1 | 6 | ||
建設省 | 5 | 2 | 7 | ||
住宅金融公庫 | 3 | 3 | |||
農林漁業金融公庫 | 7 | 7 | |||
日本道路公団 | 1 | 1 | |||
住宅・都市整備公団 | 1 | 1 | |||
年金福祉事業団 | 4 | 4 | |||
社会福祉・医療事業団 | 1 | 1 | |||
日本私学振興財団 | 6 | 6 | |||
日本電信電話株式会社 | 2 | 2 | |||
北海道旅客鉄道株式会社 | 1 | 1 | |||
東海旅客鉄道株式会社 | 1 | 1 | |||
西日本旅客鉄道株式会社 | 1 | 1 | |||
計 | 252 | 5 | 1 | 14 | 272 |
上記の各事項について、その概要を示すと次のとおりである。
検査の結果、「不当事項」として計252件掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。
省庁名 | 租税 | 保険料 | 不正行為 | 計 |
大蔵省 |
件 2 |
件 | 件 | 件 2 |
文部省 | 1 | 1 | ||
厚生省 | 1 | 1 | 2 | |
労働省 | 1 | 1 | ||
計 | 2 | 2 | 2 | 6 |
○大蔵省
・租税の徴収に当たり、課税資料の収集・活用が的確でなかったなどのため、徴収額に過不足があったもの (1件 16億1056万余円)
・法人税の還付金を支払うに当たり、支払事務が適切でなかったため、同一の納税者に対し還付金を重複して支払っていたもの (1件 1億0206万余円)
○厚生省
・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの届出に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、徴収額が不足していたもの (1件 12億5144万余円)
○労働省
・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告に対する調査確認が十分でなかったため、徴収額に過不足があったもの (1件 2億8124万余円)
○文部省
・国立大学医学部附属病院の分任収入官吏所属出納員が、診療収入として受領した現金を領得したもの (1件569万余円)
○厚生省
・国立病院で歳入金の出納事務に従事していた職員が、診療収入として受領した現金を領得したもの(1件 600万円)
省庁又は団体名 | 工事 | 保険給付 | 医療費 | 補助金 | 貸付金 | 不正行為 | 計 |
裁判所 |
件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 1 |
件 1 |
文部省 | 17 | 17 | |||||
厚生省 | 1 | 100 | 43 | 144 | |||
通商産業省 | 3 | 3 | |||||
運輸省 | 1 | 1 | |||||
労働省 | 3 | 1 | 4 | ||||
建設省 | 5 | 5 | |||||
住宅金融公庫 | 3 | 3 | |||||
農林漁業金融公庫 | 7 | 7 | |||||
住宅・都市整備公団 | 1 | 1 | |||||
年金福祉事業団 | 4 | 4 | |||||
日本私学振興財団 | 6 | 6 | |||||
計 |
1 | 4 | 101 | 75 | 14 | 1 | 196 |
<予定価格の積算が適切でなかったもの>
○住宅・都市整備公団
・歩行者専用道路等の整備工事の施行に当たり、舗装用タイルの材料費等の積算を誤ったため、契約額が割高になっているもの
○厚生省
○労働省
・雇用保険の失業給付金の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの (1件 1億0851万余円)
・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの (1件 4813万余円)
・雇用保険の地域雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの (1件 4億4180万余円)
○厚生省
○労働省
・労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関からの請求に対する審査が十分でなかったため、支払が適正に行われていなかったもの (1件 5343万余円)
○文部省
・公立小学校校舎増築事業等において、補助種目の適用を誤っていたり、補助金を過大に交付していたりなどしていたもの(5件 1609万余円)
○厚生省
・生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における就労収入等の額を過小に認定していたため、負担金が過大に交付されていたもの (7件 3690万余円)
・老人福祉施設保護費負担金の算定において、老人やその扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの (10件 1085万余円)
・児童保護費等負担金の算定において、児童の扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの (18件 1928万余円)
○通商産業省
○運輸省
・高潮対策事業の実施に当たり、鋼矢板式護岸の施工が設計と著しく相違していて、工事の目的を達していないもの (1件 1215万余円)
○建設省
・橋りょう整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋台等が不安定な状態になっているもの (1件 3045万余円)
・緊急地方道路整備事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、モルタル吹付工が工事の目的を達していないもの (1件 311万余円)
・緊急地方道路整備事業の実施に当たり、橋台の設計が適切でなかったため、堤防に欠陥をもたらすおそれがあるもの (1件 406万余円)
・橋りょう整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋脚が不安定な状態になっているもの (1件 1735万余円)
・緊急地方道路整備事業の実施に当たり、設計及び施工が適切でなかったため擁壁が不安定な状態になっているもの (1件 347万余円)
○日本私学振興財団
○住宅金融公庫
・団地住宅購入資金、公社分譲住宅購入資金の貸付けにおいて、貸付けの対象とならない者に対して貸し付けられていたり、住宅が貸付けの目的外に使用されていたりしていたもの(3件 4583万余円)
○農林漁業金融公庫
・総合施設資金等の貸付けにおいて、貸付金額を過大に算定していたもの(7件 6828万余円)
○年金福祉事業団
・福祉施設設置整備資金等の貸付けにおいて、資金が過大に貸し付けられていたり、貸付対象施設が貸付けの目的外に使用されていたりしていたものなど(4件 1億 5215万余円)
○裁判所
省庁名 | 不正行為 |
裁判所 | 件 2 |
法務省 | 1 |
文部省 | 1 |
郵政省 | 46 |
計 | 50 |
○裁判所
・裁判所の歳入歳出外現金出納官吏等が、民事執行予納金等の保管金を領得したもの (2件 213万余円)
○法務省
・法務局で登記等の事務に従事していた職員が、未使用の収入印紙及び収入印紙代として受領した現金を領得したもの (1件 8508万余円)
○文部省
・国立大学の歳入歳出外現金出納官吏が、奨学寄附金として受け入れ保管中の委任経理金を領得したもの (1件 763万余円)
○郵政省
・郵便局の出納官吏、出納員等が、郵便貯金の預入金、簡易生命保険の保険料等を領得したもの (46件 6億7509万余円)
「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計6件掲記した。
○文部省
国立大学の附属病院では、患者の診療に使用するため、医薬品等を大量に購入しているが、その購入に当たっては、国の会計法令及び予算の定めるところに従い、予算の範囲内で、適正な会計手続により行わなければならないこととなっている。これについて調査したところ、年度内に購入した医薬品等について、予算の範囲を超えることになったため、年度を越えて翌年度又は翌々年度において会計事務処理がなされ、当該年度の予算から支払われている事態が多数見受けられた。したがって、同省は、大学病院に対し正規の会計手続に従った適切な事務処理が行われるよう、また、診療部門と事務部門との連絡調整を密にして予算の範囲内で計画的な予算執行がなされるよう指導するなどの処置を執る要がある。
○厚生省
厚生省では、医療給付の一環として行われる療養費の支給について、その費用の一部を負担している。そして、柔道整復に係る施術料に対しては、この療養費が支給されているが、この場合、柔道整復師が患者の委任を受けて保険者等に療養費の請求を行い受領することが認められている。この柔道整復師の療養費の請求について調査したところ、医療機関の治療を受けているため療養費の支給対象とならない負傷部位や、施術の対象とならない内因性疾患について請求したり、患者の療養上必要な範囲及び限度を超えた施術で請求内容に疑義があったりしている事態が見受けられた。したがって、同省は、柔道整復師、保険者等に対し、制度の趣旨を周知徹底するとともに、療養費の算定基準を改正し、併せて審査体制の整備を図るなどの要がある。
○農林水産省
農林水産省では、水田農業確立対策を実施するに当たり、農業者に対し転作等の面積に応じて水田農業確立助成補助金を交付している。この補助金には、地域の水田農業確立を計画的に推進するために加算される地域営農加算額があり、農業協同組合等において、この加算額と農業者が拠出した資金とを合わせるなどして基金を造成し、小規模な土地基盤整備事業等を実施する場合の財源としている。この事業が制度の趣旨に沿っているか検査したところ、加算額が、計画の策定、基金の造成などの交付要件を充足していない区域に対して交付されていたり、交付目的に沿って適切に使用されていなかったりしている事態が多数見受けられた。したがって、同省は、要綱等において、農業者、農協及び市町村の三者それぞれの役割・責任を明確にし、基金の拠出、使途に関する規定を整備するとともに、制度の趣旨、目的、交付要件等を周知徹底するなどの処置を執る要がある。
○労働省
・労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費における入院室料加算の算定及び審査について
労働省では、労働者災害補償保険の指定医療機関が、個室又は2人部屋で、容態を常時監視できる設備又は構造の要件を満たすとして都道府県知事の承認を受けた特定病床、又はそれに準じた設備又は構造を備えた病床に傷病労働者を収容した場合に、入院室料加算を算定・請求できることとしている。しかし、指定医療機関において、特定病床でない病床、あるいは特定病床に準じた設備又は構造を備えていない個室又は2人部屋に傷病労働者を収容しているのに、入院室料加算を算定・請求している事態が見受けられた。したがって、同省は、設備又は構造の要件やその確認の方法等を具体的に示すとともに、的確な審査を行い、入院室料加算の算定及び支払の適正化を図る要がある。
○社会福祉・医療事業団
社会福祉・医療事業団では、民間の社会福祉施設等の職員の待遇改善策の一環として、被共済職員であった者に退職手当金を支給する退職共済事業を行っている。この共済事業の掛金等の納付及び退職手当金の支給について調査したところ、被共済職員として加入させなければならないのに加入手続を執っていないため掛金等が納付されていなかったり、受給資格のない職員に対して退職手当金を支給していたり、退職手当金を過大に算定し支給していたりなどしている事態が多数見受けられた。したがって、同事業団は、退職共済事業の仕組み、手続について周知徹底を図るとともに、審査体制を整備し、事業の適切な実施を図る要がある。
○農林水産省
農林水産省では、農地の集団化その他農地保有の合理化を促進するため、農地保有合理化法人等が行う農地保有合理化促進事業に対して国庫補助金を交付している。この事業は、経営規模拡大の目標面積を定め、経営規模を縮小する農家から農用地を買い入れ、これを目標面積を達成する見込みのある規模拡大農家に売り渡したり、未墾地等を買い入れて、国等による農用地開発事業に参加して農用地を造成し、規模拡大農家に売り渡したりなどする事業である。これらの事業が農業経営の規模拡大に寄与しているか調査したところ、売渡し相手方において経営面積が目標面積に達していなかったり、農用地開発事業により造成され換地処分された農用地が売り渡されないままとなっていたりなどしている事態が見受けられた。したがって、同省は、農地保有合理化法人等に対し、経営面積の目標の達成時期を具体的に定めその達成状況を把握させるとともに、売渡し相手方の営農計画の審査を十分行わせ、また、農用地の売渡しを促進するよう適切な指導を行うなどして、事業効果が十分発現するよう努める要がある。
「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計14件掲記した。
○総理府(防衛庁)
護衛艦に搭載する砲のオーバーホールを実施するに当たり、搭載に間に合うようオーバーホール期間を短縮するため、あらかじめ組部品を調達して、業者に官給することとしていたが、オーバーホールの契約業務を簡素化することによっても期間を短縮でき、これによれば組部品を調達する要はなかった。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
○総理府(科学技術庁)
放射線医学総合研究所が設置する病院において、特2類看護料を請求できる看護を行っていたと認められるにもかかわらず、特2類看護の承認を得ていなかったため、これより低額な特1類看護料しか請求していなかった。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
○厚生省
・政府管掌健康保険成人病予防健診事業における委託費の支払方法について
政府管掌健康保険の被保険者等を対象とする成人病予防健診事業において、検査項目の一部が実施されなかった場合に、委託費を減額して実施機関に支払うことなどが実施要綱に定められていなかったため、実施されなかった検査項目に係る委託費が過大に支払われていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
○農林水産省
・肉用牛産地拡大推進事業の助成金の交付及び対象牛の年齢の取扱いについて
繁殖雌牛の規模拡大等を行う畜産農家等で構成する生産集団に対して助成金を交付する事業において、実施要綱等で確認内容等について具体的な取扱方法を示していなかったことなどのため、実際の増加頭数を上回る頭数を助成の対象としたり、繁殖の用に適さない高年齢の雌牛を助成の対象としたりしていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
輸入麦を本船からサイロヘ搬入するに当たり、近年、輸入港における接岸サイロの収容能力が逐次増大していることから、収容余力がある場合には割高なはしけ取りに代えて経済的な接岸取りの方法を採ることとすれば、受渡業務費を節減できたと認められた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
○郵政省
預金者が郵便貯金自動預払機等を利用した際に、郵便局で預払状況と現金とを照合確認したり、預金者が利用内容を確認したりするための複写式伝票の調達に当たり、積算基準が印刷加工の方法等に対応したものでなかったなどのため、印刷加工費等の積算が適切でなく、調達費用が不経済になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
○建設省
公営住宅等の家賃負担軽減のため地方公共団体の経費の一部を補助する事業において、補助金交付要綱で交付額の算定方法を明確に示していなかったなどのため、交付額の算定の基礎となる家賃限度額を誤って算出したり、収入超過者が入居していて補助対象とならない戸数を補助対象としたりして、補助金が過大に交付されていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
都道府県等が鉄道と道路の平面交差踏切を除去するために補助事業で行う立体交差事業において、鉄道の高架化工事を施行する鉄道事業者に負担金を支払うに当たり、両者の協定で定めるべき事項を具体的に示していなかったなどのため、工事の内容や出来高を十分確認しておらず、負担金が過大に支払われる結果となっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
○日本道路公団
・橋脚等のコンクリート構造物における使用コンクリートについて
橋脚等のコンクリート構造物に使用するコンクリートについて、国等で構造物の設計において準拠している指針が改訂され、使用するセメントの種類に経済的な高炉セメントが追加されるなどしているのに、仕様書等においてその使用を考慮していなかったため、積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
○日本電信電話株式会社
加入者回線のアナログ信号をディジタル信号に変換する回路を組み込んだディジタル交換機の回路基板の購入に当たり、同一ビル内に併設されている他の交換機の使用されていない回路を活用することとすれば、購入数量を削減できたと認められた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
加入電話があり、公衆電話の管理を委託されている者に対して、公衆電話の通話料金の請求書と加入電話の請求書とを郵送するに当たり、一括送付の取扱いとする認識が十分でなかったり、コンピュータで一括送付とするための処理が適切に行われていなかったりしたため、郵便料金等が不経済になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
○北海道旅客鉄道株式会社
札幌鉄道病院の一部の病棟において、特3類看護料を請求できる看護を行っていたと認められるにもかかわらず、特3類看護の承認を得ていなかったため、これより低額な特2類看護料しか請求していなかった。これにっいて指摘したところ改善の処置が執られた。
○東海旅客鉄道株式会社
・地中送電線路改良工事におけるケーブル取替え工事費の積算について
地中送電線の取替え工事の施行に当たり、積算の基準にケーブル間調整に関する歩掛かりがなく、他の歩掛かりを適用したため、積算が施工の実態に適合しておらず、ケーブル間調整費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。
○西日本旅客鉄道株式会社
高架橋床版コンクリート等の表面の補修、塗装等を行う工事において、積算の基準に定める枠組足場の数量の算定方法が施工の実態に適合したものとなっていなかったため、仮設足場費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。