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  • 平成5年度|
  • 第1章 検査結果の概要|
  • 第2節 検査結果の大要

事項等別の検査結果


第1 事項等別の検査結果

 検査の結果、この検査報告に掲記した事項等には、「不当事項」、「意見を表示し又は処置を要求した事項」、「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」、「特に掲記を要すると認めた事項」及び「特定検査対象に関する検査状況」がある。

(ア) 「不当事項」とは、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項である。

(イ) 「意見を表示し又は処置を要求した事項」とは、会計検査院法第34条又は第36条の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項である。

(ウ) 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」とは、本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項である。

(エ) 「特に掲記を要すると認めた事項」とは、検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めた事項である。

(オ) 「特定検査対象に関する検査状況」とは、本院の検査業務のうち特にその検査の状況を報告する必要があると認めたものについて記述するものである。

 これら事項等の総件数は259件である。このうち、上記(ア)から(エ)までの各事項の件数の合計は257件で、その内訳は、「不当事項」235件、「意見を表示し又は処置を要求した事項」3件、「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」18件及び「特に掲記を要すると認めた事項」1件となっている。また、上記(オ)の「特定検査対象に関する検査状況」の件数は2件となっている。

(1)  事項別の検査結果の概要

 事項別の検査結果を省庁等別にみると次表のとおりである。

事項
省庁又は団体名
不当事項 意見を表示し又は処置を要求した事項 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
会計検査院法第34条関係 会計検査院法第36条関係
是正改善の処置を要求したもの 改善の処置を要求したもの

法務省

1

1
大蔵省 1


1
文部省 9

1 10
厚生省 149
2 1 152
農林水産省 8 1
2 11
通商産業省 4


4
運輸省


3 3
郵政省 31


31
労働省 5


5
建設省 6

1 7
住宅金融公庫 3


3
農林漁業金融公庫 4


4
日本道路公団


1 1
首都高速道路公団


1 1
阪神高速道路公団


1 1
住宅・都市整備公団


2 2
労働福祉事業団


1 1
年金福祉事業団 5


5
中小企業事業団 1


1
日本国有鉄道精算事業団


1 1
日本私学振興財団 4


4
日本電信電話株式会社


3 3
北海道旅客鉄道株式会社 1


1
東日本旅客鉄道株式会社 1


1
九州旅客鉄道株式会社 1


1
農業者年金基金 1


1
235 1 2 18 256

 上記の各事項のほかに「特に掲記を要すると認めた事項」が1件あり、それら事項の概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)

 検査の結果、「不当事項」として計235件掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである

1 収入に関するもの(計4件 44億6515万余円)

省庁名 租税 保険料 不正行為

法務省

1

1
大蔵省 1

1
厚生省
1
1
労働省
1
1
1 2 1 4

 

(1)租税
1件 16億1972万余円

 <租税の徴収が適正でなかったもの>

○大蔵省

・租税の徴収に当たり、課税資料の収集・活用が的確でなかったなどのため、徴収額に過不足があったもの

(2)保険料
2件 24億8968万余円

 <保険料の徴収が適正でなかったもの>

○厚生省

・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの届出に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、徴収額が不足していたもの(1件 21億7503万余円)

○労働省

・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告に対する調査確認が十分でなかったため、徴収額に過不足があったもの(1件 3億1465万余円)

(3)不正行為
1件 3億5573万余円

 <現金等が領得されたもの>

○法務省

・法務局で登記事務に従事していた職員が、収入印紙代として預かっていた現金及び未使用の収入印紙を領得したもの

2 支出に関するもの(計200件 57億1071万余円)

省庁又は団体名 工事 保険
給付
医療費 補助金 貸付金 不正
行為

文部省


9

9
厚生省
1 93 54

148
農林水産省


7
1 8
通商産業省


4

4
労働省
3 1


4
建設省


6

6
住宅金融公庫



3
3
農林漁業金融公庫



4
4
年金福祉事業団



5
5
中小企業事業団



1
1
日本私学振興財団


4

4
北海道旅客鉄道株式会社 1




1
東日本旅客鉄道株式会社 1




1
九州旅客鉄道株式会社 1




1
農業者年金基金
1



1
3 5 94 84 13 1 200

 

(1)工事
3件 9222万余円

<予定価格の積算が適切でなかったもの>

○東日本旅客鉄道株式会社

・抑止杭工事の施行に当たり、H形鋼の運送費等の積算を誤ったため、契約額が割高になっているもの(1件 1170万円)

<監督及び検査が適切でなかったもの>

○北海道旅客鉄道株式会社

・法面改良工事の施行に当たり、格子枠工の施工が設計と著しく相違していて、工事の目的を達していないもの(1件 4085万余円)

○九州旅客鉄道株式会社

・橋りょう架け替え工事の施行に当たり、支承部の施工が設計と相違していて、橋りょう上部工が不安定な状態になっているもの(1件 3967万余円)

(2)保険給付
5件 35億6408万余円

<保険の給付が適正でなかったもの>

○厚生省

・厚生年金保険の老齢厚生年金等及び国民年金の老齢基礎年金の支給に当たり、年金の受給権者が被保険者資格を取得した場合の届出等に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 32億5861万余円)

○労働省

・雇用保険の失業給付金の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 6251万余円)

・雇用保険の雇用調整助成金の支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 1億4492万余円)

・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 5217万余円)

○農業者年金基金

・経営移譲年金の支給に当たり、受給権者から提出された裁定請求書の審査・確認及び受給権者の現況の確認が十分でなかったなどのため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 4585万余円)

(3)医療費
94件 7億0185万余円

<医療費の支払が適切でなかったもの>

○厚生省

・処置料、入院時医学管理料、看護料等の診療報酬の支払に当たり、請求に対する審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費の支払が適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるもの(93件 6億1370万余円)

○労働省

・労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関からの請求に対する審査が十分でなかったため、支払が適正に行われていなかったもの(1件 8815万余円)

(4)補助金
84件 8億8869万余円

<補助事業の実施及び経理が不当なもの>

○文部省

・義務教育費国庫負担金の算定において、教職員の標準定数を過大に算定したり、国庫負担の対象にならない教員に係る給与費等を国庫負担対象額に含めたりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたもの(3件 4811万余円)

・公立中学校校舎増築事業等において、補助種目の適用を誤っていたり、補助の対象とは認められないものを補助対象事業費に含めていたりなどしていたもの(6件 3601万余円)

○厚生省

・医療施設運営費等補助金の算定において、へき地中核病院運営事業における医療活動日数を過大に算定するなどしていたため、補助対象事業費が過大に精算されていたもの(4件 2772万余円)

・生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における就労収入等の額を過小に認定していたため、負担金が過大に交付されていたもの(7件 3584万余円)

・老人福祉施設保護費負担金の算定において、老人やその扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの(19件 2612万余円)

・児童保護費等負担金の算定において、児童の扶養義務者からの徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの(20件 2048万余円)

・国民健康保険の普通調整交付金の交付先において、交付額の算定の基礎となる保険料の収納割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと及びこれに対する県の審査が十分でなかったことなどのため、交付金が過大に交付されていたもの(4件 5億0576万余円)

○農林水産省

・地すべり対策事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、排水路工等が工事の目的を達していないもの(1件 643万余円)

・かんがい排水事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋台が不安定な状態に なっているもの(1件 786万余円)

・補助事業で設置したモデル共同利用壮蚕用蚕室を補助の目的外に使用しているもの(1件 797万余円)

・災害関連緊急治山事業及び復旧治山事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、モルタル吹付工が工事の目的を達していないもの(2件 1015万余円)

・漁港改修事業の実施に当たり、施工が設計と著しく相違していたため、護岸工等が不安定な状態になっているもの(1件 866万余円)

・畜産活性化総合対策事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため擁壁が不安定な状態になっているもの(1件 709万余円)

○通商産業省

・補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、設備の設置に必要な長期資金を金融機関から借り入れた後に重複して貸付けを受けたり、設備を貸付対象事業費より低額で設置したりなどしていて、補助の目的に沿わない結果になっていたもの(4件 2327万余円)

○建設省

・公共下水道事業の実施に当たり、管布設工費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているもの(1件 282万余円)

・緊急地方道路整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったためボックスカルバートが不安定な状態になっているもの(1件 879万余円)

・河川改修工事の実施に当たり、仮桟橋等の覆工板の損料の積算を誤ったため、工事費が割高となっているもの(1件 260万余円)

・離島道路改良事業の実施に当たり、間詰床版コンクリートの養生工費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているもの(1件 496万余円)

・海岸環境整備事業の実施に当たり、護岸コンクリートブロックの設計が過大となっていたため、工事費が不経済になっているもの(1件 156万余円)

・橋りょう整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋脚が不安定な状態になっているもの(1件 3536万余円)

○日本私学振興財団

・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、補助金の額の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額には含めないこととされている支出額が計上されるなどした資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大になっていたもの(4件 6105万余円)

(5)貸付金
13件 4億6140万余円

<貸付金の経理が不当なもの>

○住宅金融公庫

・団地住宅購入資金の貸付けにおいて、貸付けの対象とならない者に対して貸し付けられていたり、住宅が貸付けの目的外に使用されていたりしていたもの(3件 5647万余円)

○農林漁業金融公庫

・農地等取得資金等の貸付けにおいて、貸付金額を過大に算定するなどしていたもの(4件 2億4201万余円)

○年金福祉事業団

・福祉施設設置整備資金の貸付けにおいて、資金が過大に貸し付けられるなどしていたもの(5件 1億3796万余円)

○中小企業事業団

・中小企業高度化資金の貸付けにおいて、貸付金額を過大に算定していたもの(1件 2494万余円)

(6)不正行為
1件 244万余円

<現金が領得されたもの>

○農林水産省

・家畜衛生試験場鶏病支場の資金前渡官吏の補助者が、資金前渡官吏を受取人とする小切手を作成し現金化するなどして前渡資金を領得したもの

3 収入支出以外のもの(計31件 2億0261万余円)

省庁名 不正行為

郵政省

31
31

 

不正行為
31件 2億0261万余円

<現金等が領得されたもの>

○郵政省

・郵便局の出納官吏、出納員等が、郵便貯金の預入金、簡易生命保険の保険料等を領得したもの 

(意見を表示し又は処置を要求した事項)

「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計3件掲記した。

1 会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した事項
1件

○農林水産省

・飼料用外国産小麦の売渡しによるふすまの増産について

農林水産省では、家畜飼料のふすまを増産するため、主食用小麦と異ならない外国産小麦を飼料用に輸入し、所定の率以上の歩留りでふすまを生産することなどの条件を付して、主食用小麦より低い価格で加工工場に売り渡している。そこで、加工工場が売渡条件に従い適正にふすまの生産を行っているか調査したところ、売渡条件に反して、飼料用小麦の一部を主食用に転用したり、低い歩留りでふすまを生産したりしている事態が見受けられた。そして、一部の加工工場では、その不足分について実物の伴わない取引等を行うことにより、所定量のふすまの生産が行われたかのようにしていた。したがって、同省は、加工工場に対する指導体制の確立等及び現行制度における売渡数量、売渡条件等の見直しの措置を早急に講ずるとともに、中長期的観点からふすま増産制度全体の在り方等について抜本的な見直しを行う要がある。

2 会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した事項
2件

○厚生省

・児童保護費等負担金(保育所分)の算定における児童の属する世帯の階層区分について

厚生省では、保育に欠ける児童を保育所に入所させ保育する市町村に対し、その保育に要する費用から児童の扶養義務者からの徴収金の額を控除した額の一部を負担するため児童保護費等負担金を交付している。この徴収金の額は、児童の扶養義務者の負担能力に応じたものとなるよう、児童の属する世帯の市町村民税や所得税の課税額等を基に設定した階層区分に応じた基準額により算定することとなっている。しかし、調査したところ、同じ前年分の所得税の課税世帯であって同程度の負担能力があると認められるのに、前年度分の市町村民税の非課税世帯と課税世帯との間で徴収金の額に開差を生ずる取扱いとなっていた。したがって、同省は、世帯の階層区分について前年の所得を考慮した合理的なものとなるよう交付基準を改め、国庫負担の適正を期する要がある。

・年金の支給に係る過誤払の防止について

社会保険庁では、年金の受給権者が死亡したにもかかわらず届出義務者からその届出がない場合には、現況の届出がなされないことにより支払を差し止めるまでの間、引き続き年金を支給している。検査したところ、この年金の過誤払に係る返納金債権が多額に上っていて、これらの大部分は長期間回収されずに累積されていた。このことから、こうした返納金債権を発生させないために、提出されない死亡届を待つことなく、厚生省大臣官房に提出されている市町村住民の死亡に関する情報を活用する方策を講じる要があり、この死亡者情報の活用ができれば、死亡後2箇月を超える期間についての過誤払の発生を未然に防止することが可能である。したがって、同庁は、厚生省大臣官房に提出された死亡者情報を速やかに活用できる事務処理体制の整備を図り、年金支給の適正化を図る要がある。

(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項)

「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計18件掲記した。

○文部省

・高等学校産業教育のための特別装置整備事業における国庫負担対象経費の算定について

高等学校の産業教育のための実験実習に必要な装置等を整備する補助事業において、負担対象経費の算定方法を明確に指示していなかったことなどのため、契約業者からの購入価格ではなく、購入価格に一定の率を乗じるなどした額を購入価格に加えた額により負担対象経費を算定していて、国庫負担金が過大に交付されていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。

○厚生省

・季節的業務に従事する酒造従業員に対する健康保険及び厚生年金保険の適用について

清酒製造業者が雇用する酒造従業員について、清酒製造業者の健康保険及び厚生年金保険に対する認識が十分でないことにより被保険者資格取得届が提出されていなかったり、社会保険事務所で雇用期間の確認を行わないまま保険適用を除外する承認を行ったりしたため、両保険が適用されておらず、保険料が徴収されていなかった。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。

○農林水産省

・家畜伝染病予防事業及び家畜衛生対策事業に係る経理について

家畜伝染病予防事業及び家畜衛生対策事業に係る補助事業において、補助対象経費の範囲を明確に示していなかったことなどのため、経費を事業ごとに区分経理しておらず、事業と関係のない経費等を補助の対象とするなどしていて、補助金が過大に交付されていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた。

・ブルドーザによる掘削押土費の積算について

補助事業で行う林道等の開設工事において、ブルドーザにより掘削押土作業を行う場合、掘削と押土の各作業を一連の作業として積算することについて積算の基準が明確でなかったため、掘削押土費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

○運輸省

・地下高速鉄道建設費補助金の算定について

地下高速鉄道事業を営む地方公共団体等に対し新線建設費を補助する事業において、補助対象建設費の算定の取扱いを明確に定めていなかったため、補助対象建設費から控除することとされている土地の売却収入が控除されておらず、補助金が過大に交付されていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

・岩盤の浚渫工事における破砕岩の運搬費の積算について

補助事業で行う岩盤の浚渫工事において、浚渫した破砕岩の運搬作業に使用する土運船等の規格に係る積算の基準が、砕岩浚渫船の作業能力等に即したものとなっていなかったため、破砕岩の運搬費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

・空港に連絡する道路等に設置されている街路灯の点検作業について

空港に連絡する道路等に設置されている街路灯の点検、清掃等を行う工事において、電球等の性能が向上し、定期点検の周期を延ばすことが可能となっているのに、設置基準等を見直す配慮が欠けていたため、街路灯定期点検費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

○建設省

・下水道終末処理場建設工事における床掘り費の積算について

補助事業で行う下水道終末処理場建設工事において、地盤の床掘りが人力でなく機械を主体として施工されている実態を積算に反映させるよう措置していなかったため、床掘り費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

○日本道路公団

・長大トンネル工事において使用する集じん機の損料の積算について

長大トンネル工事において、近年、性能の向上した集じん機が普及し、積算の基準で想定している標準供用日数等を超えて使用されているのに、この実態を積算に反映させる配慮が十分でなかったため、集じん機の損料の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

○首都高速道路公団

・高架橋等の基礎工事における現場打ち鉄筋コンクリート杭の工事費の積算について

高架橋等の基礎工事において、現場打ち鉄筋コンクリート杭の施工に必要な水道水の使用量に係る積算の基準が実際の使用量に適合していなかったり、排出する泥水の処理に係る歩掛かりがなかったりしたため、水道料金及び泥水処理費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

○阪神高速道路公団

・深礎杭工事における岩石破砕費の積算について

橋台、橋脚の基礎杭等として深礎杭を築造するなどの工事において、岩石破砕作業についてブレーカを装着したバックホウ等の機械を使用して効率的な施工が行われているのに、積算の基準にこれに適合した歩掛かりがなかったため、岩石破砕費の積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

○住宅・都市整備公団

・コンピュータヘのデータ入力の業務委託契約における入力作業の仕様について

コンピュータヘのデータ入力作業の委託に当たり、データ入力装置にデータ入力を効率的に行う機能があるのに、作業の仕様を定める際にこの機能を活用することの検討が十分でなかったため、委託費が不経済になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

・随意契約により追加発注される土木工事に係る共通仮設費の積算について

先行して発注された土木工事と随意契約により追加発注される土木工事に係る共通仮設費について、積算の基準における減額の調整の取扱いが工事の施行の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

○労働福祉事業団

・労災病院の病棟等の建築工事における鉄筋の加工組立費の積算について

労災病院の病棟等の建築工事において、鉄筋の加工組立費の積算が鉄筋の径別の使用割合の実態に即したものとなっていなかったため、積算額が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

○日本国有鉄道清算事業団

・土地追跡調査に係る請負業務の内容について

所有権の移転禁止等の条件を付して売却した土地について、その履行状況の追跡調査を請負により行わせるに当たり、近年、条件に違反する件数が極めて少なくなっているのに、請負業務の内容及び請負費の積算にこの実態を反映させることの検討が十分でなかったため、請負費が過大になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

○日本電信電話株式会社

・支障移転工事費の算定における標準単価の適用対象について

土地所有者等からの申請に基づき電柱、線路等の設備を移転する支障移転工事において、標準単価の適用対象の定めが申請者及び申請理由を考慮したものとなっていなかったため、標準単価をすべての申請に適用して、移転費用を実際に要した費用よりも低く算定していて、移転費用の収納額が低額になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

・電話帳に掲載する情報の確認作業の委託について

電話帳に掲載する情報を確認する作業の契約に当たり、既に情報の確認が行われているものなどを作業の対象から除外しなかったため、委託費が不経済になっていた。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

・専用回線遠隔試験システムの試験装置に搭載された回線接続盤について

専用回線の故障の回復を行う遠隔試験システムにおいて、具体的な収容計画を策定していなかったため、試験装置に搭載された回線接続盤に未使用の回路が多数あるのに、専用回線を収容しておらず、多数の回路が遊休していて有効に利用されていなかった。これについて指摘したところ改善の処置が執られた

(特に掲記を要すると認めた事項)

「特に掲記を要すると認めた事項」として1件掲記した。

・国営羊角湾土地改良事業の実施について

国営羊角湾土地改良事業は、干拓事業及び総合農地開発事業により、農地を造成するとともに、両事業に係る水源施設を整備するものである。本件事業については、過去の決算検査報告に、工事が休止するなどして事業効果が発現していない事態を掲記したが、今回検査したところ次のようになっていた。すなわち、本件事業のうち、干拓事業については、漁業補償問題が解決していないため、依然として工事再開の目途が立っていない。そして、事業の長期化等に伴う事業費の増大等により、造成農地の取得者の負担金の増大が見込まれ、地元の農業情勢が著しく変化している状況下で、今後工事を再開したとしても、計画どおりに干拓地での営農が行われることは相当困難な状況である。また、総合農地開発事業については、農地造成が完了しているにもかかわらず、水源施設の工事が漁業補償問題が未解決で休止しているため、事業完了ができないままとなっていて、造成農地に係る受益者負担金が国庫に償還されていないなどの事態となっている。ついては、農業情勢等を総合的に勘案し、農林水産省において関係機関等と協議するなどして、対策が着実に実施され、事態の改善が図られることが望まれる

(2) 特定検査対象に関する検査状況の概要

特定検査対象に関する検査状況」として計2件掲記した。

(ア)政府開発援助について

 我が国は、開発途上国の健全な経済発展を実現することを目的として、その自助努力を支援するため、政府開発援助を実施している。その額は無償資金協力や直接借款などいずれも毎年度多額に上っている。この政府開発援助について、本院は、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、平成6年中に、5箇国の65事業について現地調査を実施した。これらの援助に対する検査は、相手国に対して本院の検査権限が及ばないことや事業現場が海外にあることなどの制約の下で実施したものであるが、現地調査を行った事業の大部分については、おおむね順調に推移していると認められた。しかし、相手国が自国予算で建設する分の施設が完成していなかったり、移転された技術が十分活用されていなかったりなどしていて、援助の効果が十分発現していない事態が見受けられることから、今後も相手国の自助努力を絶えず促すとともに、相手国が実施する事業に対する支援のための措置をより一層充実させることが重要である

(イ)中央省庁発注の印刷物の調達について

 昨年、厚生省社会保険庁発注の支払通知書等貼付用シールを含む国の印刷物調達の適正を図るという観点から、定型的で大量かつ継続的に調達される印刷物について横断的に検査を実施した。検査したところ、大部分の契約については特に問題となる事態は見受けられなかったが、社会保険庁発注の支払通知書等貼付用シールの調達契約等については、割高な積算額に基づいて調達契約が締結されているなどの事態が見受けられた。しかし、社会保険庁において、不当利得の返還を求める民事訴訟を提起する準備を進めていたこととの関連で、検査業務は平成4年度決算検査報告の作成時点で完結できなかった。
その後、社会保険庁で上記の民事訴訟を5年12月17日に提起したものの、結審に至っておらず係争中であるため、同庁に対する検査業務は、現時点においても完結していない