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  • 平成17年度|
  • 第1章 検査の概要

検査結果の大要


第2節 検査結果の大要

 平成18年次の検査の結果については、第2章以降に記載したとおりであり、このうち第3章及び第4章に掲記した事項等の概要は次のとおりである。

第1 事項等別の検査結果

1 事項等別の概要

 検査の結果、第3章及び第4章に掲記した事項等には、次のものがある。

ア 第3章「個別の検査結果」

(ア)「不当事項」(検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項)
(イ)「意見を表示し又は処置を要求した事項」(会計検査院法第34条又は第36条(注) の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項)
(ウ)「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」(本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項)
(エ)「特に掲記を要すると認めた事項」(検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めた事項)

イ 第4章「国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等」

(ア)「国会及び内閣に対する報告」(会計検査院法第30条の2(注) の規定により国会及び内閣に報告した事項)
(イ)「国会からの検査要請事項に関する報告」(国会法第105条の規定による会計検査の要請を受けて検査した事項について会計検査院法第30条の3(注) の規定により国会に報告した検査の結果)
(ウ)「特定検査対象に関する検査状況」(本院の検査業務のうち、検査報告に掲記する必要があると認めた特定の検査対象に関する検査の状況)

(注)
会計検査院法
 
第30条の2
 会計検査院は、第34条又は第36条の規定により意見を表示し又は処置を要求した事項その他特に必要と認める事項については、随時、国会及び内閣に報告することができる。
 
第30条の3
 会計検査院は、各議院又は各議院の委員会若しくは参議院の調査会から国会法(昭和22年法律第79号)第105条(同法第54条の4第1項において準用する場合を含む。)の規定による要請があったときは、当該要請に係る特定の事項について検査を実施してその結果を報告することができる。
 
第34条
 会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。
 
第36条
 会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。

 これらの事項等の件数、金額は、次表のとおりである。

事項等
件数
指摘金額
(背景金額)
不当事項
390件
141億0805万円
意見を表示し又は処置を要求した事項
第34条
8件

135億8028万円
第34条及び第36条
1件

(15億1185万円)
第36条
5件

1610万円
1兆8755億4680万円
1658億円
44億円
29億円
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
41件
<38件分>
175億9284万円
11億5564万円
22億9039万円
11億1983万円
232億7537万円
219億4671万円
350億円
特に掲記を要すると認めた事項
4件
5028億円
1289億円
835億円
1兆0322億円
事項計
449件
<437件分>
452億9727万円
国会及び内閣に対する報告
5件
国会からの検査要請事項に関する報告
7件
特定検査対象に関する検査状況
14件
総計
473件
<437件分>
452億9727万円

(注1)
 指摘金額・背景金額 指摘金額とは、租税や社会保険料等の徴収不足額、工事や物品調達等に係る過大な支出額、補助金の過大交付額、計算書や財務諸表等に適切に表示されていなかった資産等の額などである。
 背景金額とは、会計経理に関し不適切、不合理な事態が生じている原因が「法令」、「制度」あるいは「行政」にあるような場合や、政策上の問題等から事業が進ちょくせず投資効果が発現していない事態について問題を提起する場合などの、その事態に関する支出額や投資額等である。このような事態における支出等の額は、直ちに不適切な会計経理の額とは言い切れないため、「背景金額」として「指摘金額」と区別している。なお、背景金額は個別の事案ごとにその捉え方が異なるため、金額の合計はしていない。
(注2)
 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」には、指摘金額と背景金額の両方あるものが3件ある。
(注3)
 「国会及び内閣に対する報告」の5件のうち、1件は「意見を表示し又は処置を要求した事項」として、1件は「特に掲記を要すると認めた事項」として、それぞれ第3章の「個別の検査結果」に掲記しており、件数が重複している。
(注4)
 件数の合計に当たっては、上記(注3) の重複分(2件)を控除している。

2 第3章の「個別の検査結果」の概要

 第3章の「個別の検査結果」に掲記した各事項のうち、特に掲記を要すると認めた事項を除く不当事項等について、省庁等別にその件数、金額を示すと次表のとおりである。

事項
省庁又は団体名
不当事項
意見を表示し又は処置を要求した事項
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
裁判所
 
 
1
2740万円
1
2740万円
内閣府
(警察庁)
       
1
9億1286万円
1
9億1286万円
(防衛庁)
9
1億0191万円
〔36〕1
1610万円
3
1億3424万円
13
2億5225万円
総務省
6
1892万円
   
1
9250万円
7
1億1142万円
財務省
2
5億2263万円
       
2
5億2263万円
文部科学省
1
427万円
〔36〕1
(1兆8755億4680万円)
2
43億8264万円
(11億5564万円)
4
43億8691万円
(1兆8755億4680万円)
(11億5564万円)
厚生労働省
266
105億8709万円
〔34〕1
1億3416万円
3
3億8103万円
270
111億0228万円
農林水産省
18
6億5756万円
〔36〕1
(1658億円)
6
18億5709万円
(22億9039万円)
(11億1983万円)
25
25億1465万円
(1658億円)
(22億9039万円)
(11億1983万円)
経済産業省
13
3億5273万円
   
2
3億5209万円
15
7億0482万円
国土交通省
26
2億6961万円
   
6
75億3047万円
32
78億0008万円
環境省
1
1億8500万円
       
1
1億8500万円
住宅金融公庫
       
1
6800万円
1
6800万円
日本私立学校振興・共済事業団
2
289万円
       
2
289万円
日本銀行
       
3
3億8097万円
3
3億8097万円
商工組合中央金庫
       
1
6096万円
1
6096万円
関西国際空港株式会社
1
4828万円
       
1
4828万円
預金保険機構
1
631万円
       
1
631万円
日本郵政公社
35
7億5346万円
       
35
7億5346万円
成田国際空港株式会社
2
2億1667万円
       
2
2億1667万円
独立行政法人情報通信研究機構
2
6172万円
       
2
6172万円
独立行政法人国立美術館
   
〔34〕〔36〕
1
(15億1185万円)
   
1
(15億1185万円)
独立行政法人国立博物館
       
1
2億0026万円
1
2億0026万円
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
       
1
2780万円
1
2780万円
自動車検査独立行政法人
       
1
4883万円
1
4883万円
独立行政法人農畜産業振興機構
1
1127万円
       
1
1127万円
独立行政法人日本貿易振興機構
1
729万円
       
1
729万円
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
       
1
4170万円
1
4170万円
独立行政法人自動車事故対策機構
1
9117万円
       
1
9117万円
独立行政法人労働者健康福祉機構
       
1
(232億7537万円)
1
(232億7537万円)
独立行政法人中小企業基盤整備機構
       
1
(219億4671万円)
1
(219億4671万円)
独立行政法人都市再生機構
       
1
5450万円
1
5450万円
独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構
   
〔34〕1
(注6) 9億1556万円
   
1
9億1556万円
東日本高速道路株式会社
   
〔34〕1
(注6) 2億5070万円
   
1
2億5070万円
首都高速道路株式会社
   
〔34〕1
67億8008万円
1
2330万円
2
68億0338万円
中日本高速道路株式会社
   
〔34〕1
12億2685万円
   
1
12億2685万円
西日本高速道路株式会社
   
〔34〕1
42億5825万円
   
1
42億5825万円
阪神高速道路株式会社
   
〔34〕1
   
1
本州四国連絡高速道路株式会社
   
〔34〕1
1467万円
   
1
1467万円
日本放送協会
1
1995万円
   
1
(350億円)
2
1995万円(350億円)
中部国際空港株式会社
1
1億8923万円
       
1
1億8923万円
東日本電信電話株式会社
   
〔36〕1
(44億円)
1
8460万円
2
8460万円
(44億円)
西日本電信電話株式会社
   
〔36〕1
(29億円)
1
1億5860万円
2
1億5860万円
(29億円)
放送大学学園
       
1
10億0744万円
1
10億0744万円
合計
390
141億0805万円
14
135億9638万円
41
175億9284万円
445
452億9727万円

(注1)
 「意見を表示し又は処置を要求した事項」の件数欄の〔34〕は会計検査院法第34条によるもの、〔36〕は会計検査院法第36条によるものを示している。
(注2)
 ( )内の金額は背景金額であり、個別の事案ごとにその捉え方が異なるため金額の合計はしていない。
(注3)
 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」には、指摘金額と背景金額の両方あるものが3件ある。
(注4)
 厚生労働省のうち1件及び国土交通省のうち1件は、それぞれ同一の事態に係るものであり、両省における指摘金額は万円未満の金額を切り捨てており、その金額については金額の合計の際に集計している。
(注5)
 経済産業省のうち1件及び日本銀行のうち1件は、重複があり、件数及び金額の合計に当たっては、その重複を控除している。
(注6)
 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構、東日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社の各指摘金額は万円未満の金額を切り捨てており、その金額については金額の合計の際に集計している。また、阪神高速道路株式会社の指摘は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構に承継された資産について同会社が価額の算定を誤ったものであり、指摘金額は同機構の金額に含めている。

 また、特に掲記を要すると認めた事項は、4件(背景金額5028億円、1289億円、835億円、1兆0322億円)である。
 以上の各事項計449件について、その概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)

 検査の結果、「不当事項」として計390件掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。なお、「不当事項」として掲記した事態については、「会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した事項」に掲記した事態及び「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」中会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事態と併せ、会計検査院法第31条の規定等による懲戒処分の要求の要否、及び、同法第32条の規定等による弁償責任の検定について検討を行うこととなる。

1 収入に関するもの(計6件 35億7493万余円)

省庁又は団体名
租税
保険料
不正行為
その他
財務省
2
2
厚生労働省
 
2
1
 
3
成田国際空港株式会社
 
 
 
1
1
2
2
1
1
6

(1)租税

2件 5億2263万余円

<租税の徴収が適正でなかったもの>

○財務省

租税の徴収に当たり、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、これを見過ごしたり、課税資料の収集・活用が的確でなかったりなどしていたため、納税者182人からの徴収額に過不足があったもの(1件 5億1574万余円)

相続税に係る連帯納付義務者の財産調査等が十分でないまま滞納処分の執行を停止したため、租税債権が消滅したもの(1件 688万余円)

(2)保険料

2件 30億4189万余円

<保険料の徴収が適正でなかったもの>

○厚生労働省

健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、パートタイム労働者等の短時間就労者を多数使用しているなどの事業主が、常用的に使用している短時間就労者について被保険者資格取得届の提出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、1,111事業主からの徴収額が不足していたもの(1件 27億8787万余円)

労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告書における賃金総額の記載が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、400事業主からの徴収額に過不足があったもの(1件 2億5402万余円)

(3)不正行為

1件 398万余円

<現金が領得されたもの>

○厚生労働省

社会保険事務所の職員が、厚生年金保険料等の収納事務に従事中、滞納事業主から直接現金で受領した同保険料等を国庫に払い込まずに領得したもの(1件 398万余円)

(4)その他

1件 642万円

<土地の賃料を収納していなかったもの>

○成田国際空港株式会社

空港用地の取得に際し用地所有者に提供するため保有している代替地用地のうち、不動産管理会社等に駐車場として整備させ、管理、運営させていた土地について、土地賃貸借契約を締結せず、賃料を収納していないもの(1件 642万円)

2 支出に関するもの(計348件 96億8848万余円)

省庁又は団体名
予算経理
予算経理・不正行為
工事
役務
保険給付
医療費
補助金
不正行為
その他
内閣府(防衛庁)
8
1
9
総務省
           
6
   
6
文部科学省
           
1
   
1
厚生労働省
81
18
 
1
4
2
156
1
 
263
農林水産省
1
   
1
   
16
   
18
経済産業省
     
1
   
12
   
13
国土交通省
           
23
2
1
26
環境省
           
1
   
1
日本私立学校振興・共済事業団
           
2
   
2
関西国際空港株式会社
   
1
           
1
預金保険機構
1
               
1
成田国際空港株式会社
   
1
           
1
独立行政法人情報通信研究機構
     
1
       
1
2
独立行政法人農畜産業振興機構
           
1
   
1
独立行政法人日本貿易振興機構
     
1
         
1
日本放送協会
             
1
 
1
中部国際空港株式会社
   
1
           
1
91
18
3
5
4
2
218
5
2
348

(1)予算経理

91件 57億9550万余円

<会計経理が適正を欠いているもの>

○内閣府(防衛庁)

複数の建設工事を対象とする現場技術業務に係る予算執行において、各対象工事に対応した歳出科目から支出すべきであるのに、誤った歳出科目から支出していて、会計経理が会計法令等に違背し、適正を欠いているもの(8件 9966万余円)

○厚生労働省

労働局において、物品の購入等に当たり、契約した物品が納入されていないのに納入されたこととして虚偽の内容の関係書類を作成するなどの不適正な会計経理を行い、庁費等を支出していたもの(47件 27億0518万余円)

労働局において、物品の購入等に当たり、競争入札が行われたように偽装し、契約の相手方に内定していた業者等と契約を締結していて、会計法令等に違反し、著しく適正を欠いているもの(2件 6億0321万余円)

労働局において、求人情報自己検索システムの取得等に当たり、複数年度にわたる役務の提供等に係る契約を締結するなどして契約の締結年度内に当該経費の全額を支払っていて、会計法令に違反し著しく適正を欠いているもの(32件 23億5846万余円)

○農林水産省

水田農業構造改革対策の事務処理に使用するプログラムの開発委託契約に当たり、国の財産であるプログラムの著作権を支払手段として使用していたり、国有財産として適正に管理していなかったりしていて、会計経理が適正を欠いているもの(1件 2265万余円)

○預金保険機構

旅費請求者が、パック料金や事前購入運賃等で航空券を購入して出張しているのに、実際に支払った金額と異なる航空賃の領収書を旅費の精算のために提出するなどしていて、旅費が過大に支給されているもの(1件 631万余円)

(2)予算経理・不正行為

18件 3億0880万余円

<会計経理が適正を欠いているもの及び現金が領得されたもの>

○厚生労働省

労働局において、虚偽の内容の関係書類を作成し、庁費、謝金、旅費、超過勤務手当等を不正に支出するなどし、これを別途に経理して業務の目的外に使用したり、職員が国庫金を領得したりするなどしていて、会計経理が会計法令等に違反し、著しく適正を欠いているもの(18件 3億0880万余円)

(3)工事

3件 4億4777万余円

<設計が適切でなかったもの>

○関西国際空港株式会社

進入灯点検橋設置工事の実施に当たり、進入灯点検橋を設計する際、支承部に落橋防止構造を設置することとしておらず、設計が適切でなかったため、進入灯点検橋支承部の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 4828万余円)

○成田国際空港株式会社

橋りょうの架替え工事の実施に当たり、落橋防止システムを設計する際、橋軸直角方向の変位制限構造を設置することとしておらず、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 2億1025万余円)

○中部国際空港株式会社

空港の場周警戒システム整備工事の実施に当たり、場周柵にセンサーを取り付けたことにより支柱に作用する荷重が大きくなったのに直ちに支柱の補強をする必要はないとしていて、設計が適切でなかったため、場周柵の所要の強度が確保されていない状態になっているもの(1件 1億8923万余円)

(4)役務

5件 1億6922万余円

<委託費の支払が適切でないもの>

○経済産業省

原子力発電所緊急時連絡網システムの運用に当たり、同報装置が修理されずに放置され機能が回復されないままとなっていたり、ファックスの保守点検が長期間にわたって行われていなかったり、蓄電池の交換作業が実施されていなかったりしているのに、履行を確認しないままそれぞれの契約に係る契約金額を支払っていて適切を欠いているもの(1件 615万余円)

○独立行政法人情報通信研究機構

業務委託契約に係る委託費の精算に当たり、業務委託先の会社が、委託業務の実態に基づかずに労務費を算定したもので、同業務に係る従事時間を説明する書類は存在しないとしたため、同契約に係る労務費の確認ができず、委託費の支払が不当と認められるもの(1件 5240万余円)

<委託費の支払が過大となっているもの>

○厚生労働省

雇用安定・創出対策事業等及び緊急地域就職促進プロジェクトに係る委託事業の実施に当たり、委託事業の経費に架空の物品購入費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの(1件 6721万余円)

○農林水産省

森林資源データの分析・利用に関する調査等に係る委託事業の実施に当たり、他の業務に従事していた日数等を含めて人件費を算出したり、事業に要した実支出額によることなく電子計算機の使用料を算出したりしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの(1件 3616万余円)

○独立行政法人日本貿易振興機構

役職員の福利厚生に資する事業に係る委託費について、委託対象となる各種事業の事業費に過不足が生じていたのにこれを反映した変更を行っていなかったため、支払額が過大となっているもの(1件 729万余円)

(5)保険給付

4件 2億7967万余円

<保険の給付が適正でなかったもの>

○厚生労働省

厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給に当たり、受給権者が事業所に常用的に使用されていて、年金の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに、被保険者資格取得届が提出されず、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、535人に対して支給停止の手続が執られず支給が適正でなかったもの(1件 1億9140万余円)

雇用保険の失業等給付金の支給決定に当たり、受給者が再就職していながらその事実を申告書に記載していなかったり、事実と相違する雇入年月日を記載したりなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、293人に対する支給が適正でなかったもの(1件 6466万余円)

雇用保険の特定求職者雇用開発助成金のうち特定就職困難者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書等において、既に事実上雇入れが決定している者に形式的に公共職業安定所の紹介を受けさせ、その紹介により雇い入れたこととしているなど、その記載内容が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、37事業主に対する支給が適正でなかったもの(1件 2014万余円)

雇用保険の地域雇用開発促進助成金等のうち地域高度人材確保奨励金及び沖縄若年者雇用奨励金の支給決定に当たり、事業主が受入れ等申告書等に支給要件に該当しない者を誤って記載していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、2事業主に対する支給が適正でなかったもの(1件 345万余円)

(6)医療費

2件 4億6022万余円

<医療費の支払が適切でなかったもの>

○厚生労働省

老人保健等における医療費の支払に当たり、医療機関及び薬局から入院基本料、在宅医療料、入院基本料等加算等の診療報酬及び調剤報酬の不適正な請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったなどのため、171医療機関及び36薬局に対する支払が適切でなく、これに係る国の負担が不当と認められるもの(1件 4億0992万余円)

労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関が手術料、入院料、指導管理料等を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でなかったため、279医療機関に対する支払が適正でなかったもの(1件 5029万余円)

(7)補助金

218件 21億6652万余円

<補助事業の実施及び経理が不当なもの>

○総務省

情報通信格差是正事業等の実施及び経理において、交付決定の内容に含まれていないシステムの整備費や必要のない試験費を補助対象事業費に含めていたり、補助対象経費を単独事業との割合であん分して算定していなかったりなどしていたため、補助対象事業費が過大に精算されるなどしているもの(6件 1892万余円)

○文部科学省

公立学校等施設整備費補助金の経理において、小学校校舎の耐震補強工事の工事費が過大となっていて補助対象事業費が過大に算定されていたため、補助金が過大に交付されているもの(1件 427万円)

○厚生労働省

医療施設近代化施設整備事業による電子カルテシステム等の整備において、ソフトウェアに係る作業の遅れからシステムの一部が稼働しておらず、導入されたシステム機器が撤去されることとなっていて、事業の一部が実施されていないもの(1件 2085万余円)

保健衛生施設等施設・設備整備費国庫補助金の経理において、同一建物内に整備した他の福祉施設との共用部分に係る費用を適正にあん分していなかったなどのため、補助対象事業費が過大に精算されているもの(1件 794万余円)

早期再就職者支援基金事業における早期再就職者支援金の支給決定に当たり、受給者が申請書に事実と相違した雇入年月日を記載するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、25人に対する支給が適正でなかったもの(1件 1059万余円)

在宅福祉事業費補助金の算定において、一般財源により措置されている補助事業に従事する者の給料や手当等の人件費を補助対象経費の実支出額に計上するなどしていたため、補助金が過大に交付されているもの(8件 3804万余円)

児童保護費等補助金(産休等代替職員制度事業分)の算定において、従前から勤務する常勤職員を臨時的に任用したとしていたり、産休等職員と同一の資格を有していない者を任用していたりしていたため、補助金が過大に交付されているもの(8件 2546万余円)

児童保護費等負担金の経理において、児童の扶養義務者の所得税額等を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定したり、保育単価の適用を誤るなどして費用の額を過大に算定したりしていたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されているもの(36件 5020万余円)

児童扶養手当給付費負担金の交付に当たり、受給者である母が、所得制限限度額以上の所得がある扶養義務者と同一の住居に居住しているなどして生計を同じくしているのに、両者は生計を同じくしていないとして手当を支給していたため、負担金が過大に交付されているもの(8件 1億1054万余円)

生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における就労収入等の額を過小に認定するなどして保護費の額を決定していたため、負担金が過大に交付されているもの(14件 6867万余円)

精神保健対策費補助金の経理において、補助の対象とはならない施設整備の費用や入所者個人の生活に必要な給食費等を補助対象経費に含めるなどしていたため、補助対象事業費が過大に精算されているもの(4件 2247万余円)

介護保険の普通調整交付金の算定において、介護給付費等の額や所得段階別の被保険者数を誤るなどして調整基準標準給付費額や普通調整交付金交付割合を過大に算出していたため、交付金が過大に交付されているもの(3件 1672万余円)

国民健康保険の療養給付費負担金の交付に当たり、市町村において、遡及して退職被保険者等となった者に係る医療給付費を一般被保険者に係る医療給付費から控除していなかったり、基礎資料からの転記を誤り一般被保険者に係る医療給付費を過大に算定したりしていたため、負担金が過大に交付されているもの(18件 1億5921万余円)

国民健康保険の財政調整交付金の交付に当たり、市区町村において、調整対象需要額を過大に算定したり調整対象収入額を過小に算定したりなどしていたため、交付金が過大に交付されているもの(54件 2億1942万余円)

○農林水産省

畑地帯総合農地整備事業の実施に当たり、環境保全型ブロックを用いた護岸工を施工する際、スリットが設けられているブロック前面等に中詰材として粒径の大きな石材を充てんする必要があったのに、粒径が非常に細かい土砂を使用したため、中詰材の一部がスリット等から流出していて、流出の進行に伴い護岸が転倒等するおそれがあり、工事の目的を達していないもの(1件 346万余円)

国営造成施設県管理費補助事業の実施に当たり、土地改良施設の運転操作を行う操作員の直接人件費を積算する際に、各操作員が勤務条件どおりに休日をとりながら交替勤務により配置されることに対応する経費を計上していることから、休日手当の対象となる休日勤務の配置は生じないのに、休日手当を計上するなどしていたため、委託契約額が割高となっているもの(1件 1135万余円)

トレーサビリティシステム導入促進対策事業の実施に当たり、導入した機器等の一部しか設置しておらず、設置した機器等についても十分利用しないままシステムの運用を停止し、そのほとんどを撤去していて、補助の目的を達していないもの(1件 5668万円)

トレーサビリティシステム導入促進対策事業の実施に当たり、補助事業で導入したシステムと別のシステムとを連携させて運用することとしていたが、別システムの開発の見通しが立たず、本件システムが運用されずに停止していて、補助の目的を達していないもの(1件 873万余円)

トレーサビリティシステム導入促進対策事業の実施に当たり、事業主体の構成員相互間で取引価格等の調整がつかなかったことから、消費者へシステムを利用した米の販売を行えないままその運用を停止していて、導入した機器等が使用されておらず、補助の目的を達していないもの(1件 149万余円)

食品産業機能高度化特別対策事業の実施に当たり、補助事業年度に伝統野菜を原料とした焼酎を新たに製造するための醸造機器を設置しておらず、事業を実施していなかったことから、補助の対象とならないもの(1件 286万余円)

復旧治山事業の実施に当たり、鋼製土留工を設計する際、中詰材の確実な流出防止対策を講じておらず、設計が適切でなかったため、鋼製土留工の不安定土砂の滑落を抑止する機能が損なわれるおそれがあり、工事の目的を達していないもの(1件 656万余円)

漁港施設災害復旧事業の実施に当たり、防波堤の波止板を設計する際、波力に対する応力計算を行っておらず、設計が適切でなかったため、波止板の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 242万余円)

農村総合整備モデル事業の実施に当たり、道路網整備の一環として整備した農道について、起点に接続する里道の拡幅工事が行われず車両の通行ができないままとなっていたり、終点が出入口の施錠されている町営グラウンドを介して町道に接続されていたりしていることなどから、長期間にわたり車両が自由に通行できない状況となっていて、補助の目的を達していないもの(1件 9888万円)

農地情報管理システム整備事業の実施に当たり、補助事業年度にデータ入力等を委託する業者の選定を行わず、事業を実施していなかったことから、補助の対象とならないもの(1件 668万余円)

農用地利用調整特別事業の実施に当たり、事業主体が農作業受委託支援システムに必要な情報を把握しておらず、情報を全く入力しないままシステムを活用していなかったため、補助の目的を達していないもの(1件 344万余円)

経営体質強化施設整備事業の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(1件 605万円)

畜産環境総合整備事業の実施に当たり、発酵施設を設計する際、誤って、家畜排せつ物による積載荷重を過小に計算したり、使用する主鉄筋の種類を強度の小さいものとしたりしていて、設計が適切でなかったため、発酵施設の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 6232万余円)

国際林業協力事業の実施に当たり、他の業務に従事していた日数等を含めるなどして人件費を算出したり、事業に要した実支出額によることなく電子計算機の使用料を算出したりしていたため、補助対象事業費が過大に精算されているもの(1件 7359万余円)

漁船及び漁具のスクラップ処分等を行った者に助成金を交付する不要漁船・漁具処理対策事業の実施に当たり、助成金交付の要件である残存漁業者等の資金の負担が行われていないのに、残存漁業者等の負担を軽減するための補助金が交付されているもの(1件 2億5067万余円)

水産物安全・安心対策事業及び漁協系統組織・事業改革促進事業の実施に当たり、交付要綱に定められている補助率を上回って補助金の額を算定していたため補助金が過大に交付されたり、事業費に自らが負担していない経費を含めていたため補助対象事業費が過大に精算されたりしているもの(1件 352万余円)

○経済産業省

中小企業経営革新等対策費補助金等の経理において、事業主体が負担していない機械装置の購入費等を補助対象事業費に含めたり、補助金の交付決定前に発注した事業を補助の対象としたりなどしていたため、補助対象事業費が過大に精算されるなどしているもの(10件 6021万余円)

電源立地地域対策交付金事業の実施に当たり、建設する保育所を設計する際、遊戯室の小屋組の真束(しんつか)と陸梁(ろくばり)との接合部に生ずるせん断力に対する耐力の検討等をしていなかったり、施工の際、耐力壁を構成する筋かいに所定の寸法より断面積の小さな木材を使用していたりなどしていて、設計、施工等が適切でなかったため、所要の安全度が確保されておらず、工事の目的を達していないもの(1件 2億7659万余円)

エネルギー使用合理化技術開発事業の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(1件 977万余円)

○国土交通省

公営住宅家賃対策補助金の経理において、補助基本額の算定基礎となる近傍住宅家賃を過大に算定していたり、補助基本額の減額要素となる入居者負担基準額を過小に算定していたりしたため、補助金が過大に交付されているもの(10件 8078万余円)

土地区画整理事業の実施に当たり、橋台の基礎工であるPC—壁体を設計する際、有効プレストレスと地震時の許容曲げ引張応力度の数値にA種のPC—壁体の数値を用いるべきであるのに、誤って、これらの数値がA種より高いB種の数値を用いていて、設計が適切でなかったため、橋台等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 3551万余円)

道路災害防除対策事業の実施に当たり、法面工を新設するものであることから、共通仮設費率等の算出に適用する工種区分に「道路改良工事」を適用しなければならないのに、誤って「道路維持工事」を選定し、これにより共通仮設費率等を算定したため、工事費が割高となっているもの(1件 312万余円)

道路改築事業の実施に当たり、橋りょうの落橋防止システムを設計する際、誤って、落橋防止構造を設置しておらず、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 2273万余円)

緊急地方道路整備事業の実施に当たり、ボックスカルバートの基礎部を設計する際、必要なボーリング調査等を実施していなかったなどのため、ボックスカルバートに不等沈下が生じ、ボックスカルバート内の水路の目地部に隙間が発生しており、出水時等には水路の目地部の隙間から舗装下の土砂が吸い出されたりするなど、水路及び農道としての機能を損なうおそれがあり、工事の目的を達していないもの(1件 1458万余円)

港湾改修事業の実施に当たり、漁業権の消滅等に対し既往年度に先行補償した額のうち臨港道路に係る分に要した費用を支払う際、誤って利子支払額を過大に算定していたため、補助金が過大に交付されているもの(1件 916万余円)

地方道路交付金事業の実施に当たり、橋脚を設計する際、底版下面の主鉄筋の配置が設計条件を満足していないことが明確になっているのに、これにより配筋図を作成していて、設計が適切でなかったため、橋脚の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 1547万余円)

除雪事業の実施に当たり、凍結防止剤散布工事の共通仮設費率等を算出する際、数箇月にわたる工事全体を一つの工事として算出すべきであるのに、工事を構成する各作業が1日ごとに完了する工事として、共通仮設費率等の上限値を適用して算出するなどしたため、工事費が割高となっているもの(1件 217万円)

都市公園事業の実施に当たり、擁壁の配筋図を作成する際、誤って、つま先版の下面側に配置する主鉄筋について設計計算で安全とされていた鉄筋より細い径の鉄筋を配置することとしていて、設計が適切でなかったため、擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 1622万余円)

街路事業の実施に当たり、橋りょうの変位制限構造を設計する際、誤った設計水平震度により地震力を算出していて、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 2307万余円)

公共下水道事業の実施に当たり、吐出槽の底版の配筋図を作成する際、誤って、隅角部の底版上面側に配置する主鉄筋について設計計算で安全とされていた間隔の2倍の間隔で配置するなどしていて、設計が適切でなかったため、吐出槽の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 1401万余円)

都市下水路事業の実施に当たり、ボックスカルバートの配筋図を作成する際、誤って、頂版の下面側及び底版の上面側に配置する主鉄筋について設計計算で安全とされていた間隔の2倍の間隔で配置することとしていて、設計が適切でなかったため、ボックスカルバートの所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 395万余円)

公営住宅家賃収入補助金の経理において、収入超過者の基準額を誤り、収入超過者入居戸数を過小に算出していたため、補助金が過大に交付されているもの(1件 305万余円)

道路改築事業の実施に当たり、建物等の移転に係る補償金を算定する際、仕入税額控除により実質的に負担しないこととなる消費税は積算上考慮しないこととされているのに、消費税額を加算していたため、補償費が過大となっているもの(1件 474万余円)

○環境省

二酸化炭素排出抑制対策事業において、設置した小型風力発電機の発電量が消費電力量を下回っていたため、二酸化炭素排出量が削減されず、交付金交付の目的を達していないもの(1件 1億8500万円)

○日本私立学校振興・共済事業団

私立大学等経常費補助金の交付に当たり、学校法人から提出された資料に、特別補助の対象とならない学生等の数が含まれるなどしていたのに、この資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大となっているもの(2件 289万余円)

○独立行政法人農畜産業振興機構

酪農ヘルパー利用拡大推進事業において、事業主体が酪農ヘルパーを利用した酪農経営者に対して交付すべき補助金を交付しておらず、事業が実施されていないもの(1件 1127万余円)

(8)不正行為

5件 3742万余円

<現金が領得されたもの>

○内閣府(防衛庁)

海上自衛隊の職員が、小切手の作成等の事務に従事中、会計機関印等を無断で使用して小切手を作成し、これを現金化するなどして領得したもの(1件 224万余円)

○厚生労働省

職員が、消耗品の購入に関する事務に従事中、販売業者に作成させた架空の請求書等に基づき虚偽の支出関係書類を作成し、同販売業者の銀行口座に振り込ませた支出金の一部を領得するなどしたもの(1件 824万余円)

○国土交通省

地方運輸局の職員が、資金前渡官吏の補助者として小切手の作成等の事務に従事中、非常勤職員に対して支払う給与の額を水増しした支払決議書等により小切手を作成し、これを現金化して領得したもの(1件 447万余円)

河川事務所等の職員が、構造物の写真撮影等の発注事務に従事中、架空の業務を発注し、架空の支払額等に相当する額の金券を受け取るなどして、国に損害を与えたもの(1件 249万余円)

○日本放送協会

職員が、本部及び放送局において、旅費等の支払請求に関する事務に従事中、出張を要する用務があるように装って本人の銀行口座に旅費等を振り込ませるなどして領得したもの(1件 1995万余円)

(9)その他

2件 2333万余円

<分担金等の支払が適切でないもの>

○国土交通省

航空機に対する地上作業を監視する業務に係る分担金の支払に当たり、分担金の対象とならない監視時間を含めて算定していたため、支払額が過大となっているもの(1件 1401万余円)

○独立行政法人情報通信研究機構

高齢者・障害者向け通信・放送サービス充実研究開発助成事業の実施に当たり、外注費が実績報告書の額より低額で支払われていたのに、これに対する審査・確認が十分でなかったため、助成対象事業費が過大に精算されているもの(1件 932万円)

3 収入支出以外に関するもの(計36件 8億4463万余円)

省庁又は団体名
物件
不正行為
日本郵政公社
35
35
独立行政法人自動車事故対策機構
1
 
1
1
35
36

(1)物件

1件 9117万余円

<取得の目的が達成されていないもの>

○独立行政法人自動車事故対策機構

自動車事故患者の治療のために国からの出資金により取得した核医学画像診断装置について、取得から5年間一度も入院患者の治療に用いられていない状況が継続していたにもかかわらず外部患者の検査の受託など有効活用を図るための対策が執られず、また、機能を維持するための適切な管理が行われていなかったことから、診断装置が遊休化していて、取得の目的が達成されていないもの(1件 9117万余円)

(2)不正行為

35件 7億5346万余円

<現金等が領得されたもの>

○日本郵政公社

郵便局の職員が、預金者から受領した郵便貯金預入金、郵便局で保管していた資金、契約者から受領した保険料等を領得したもの(35件 7億5346万余円)

(意見を表示し又は処置を要求した事項)

「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計14件掲記した。

ア 会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した事項

8件

○厚生労働省

独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構に出資された物品の時価評価額の算定について

社会保険庁では、年金の福祉施設及び政府管掌健康保険の保健・福祉施設を設置・運営してきた。これら年金・健康保険福祉施設については、近年の年金制度等を取り巻く厳しい財政状況等にかんがみ整理合理化を行うこととされ、平成17年10月に設立された独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構において譲渡等を行うため、機構へ出資することとされた。そして、機構成立時において政府から出資される政府出資金の額は、機構の成立の日現在の時価評価額とするとされた。しかし、機構へ出資される国有の物品の時価評価額を算定するに当たり、減価償却を行わない資産に該当するとしていた美術品等について、耐用年数を経過したものとして、残存価格(10%)までの減価償却の計算が行われたため、時価評価額が過小となっており、機構に対する政府出資金の額及び機構の財務諸表等における資本金等の額が正しく表示されていないなどの事態が生じていた。したがって、社会保険庁において、本院の指摘により判明した時価評価額に係る誤りを修正して適正なものにするとともに、修正した時価評価額を基に評価委員による再評価を受けるなどして政府出資金の額等を適切なものに改めるなどの処置を講ずる要がある。

(指摘金額 1億3416万円)

○独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構、東日本高速道路株式会社、首都高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社

民営化に伴う資産の承継・評価について(7件)

道路関係4公団の民営化に伴って承継された資産について検査したところ、承継資産の価額が過大又は過小に算定されていたり、資産の承継先が適切でなかったり、機構と道路会社との間で生じた土地の使用に係る権利関係が整理されないままとなっていたりしている事態が見受けられた。したがって、機構及び道路会社においては、資産の価額を修正し、資産の承継先を適切なものとする措置を講じ、正確な資産の価額を計上した財務諸表を作成するなどするとともに、今後とも、新たに取得される資産についても、その把握・管理が適切に行われるよう、決算及び資産管理に係る事務処理を適切に行うための体制の整備を図る要がある。

(指摘金額 計134億4612万円)

イ 会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求し及び同法第36条の規定により改善の意見を表示した事項

1件

○独立行政法人国立美術館

独立行政法人国立美術館における随意契約の適正化等について

物品の購入、業務委託等の契約の実施に当たり、競争性のある契約であるにもかかわらず、随契限度額を1000万円と高額に設定したため、競争性のある契約に占める少額随契の割合が95%超となっており、その後随契限度額を500万円に引き下げても競争性を確保する上で十分な水準となっていない事態が見受けられた。また、同一の美術館において見積書を徴取すべき複数の業者が存在していて見積書の比較検討ができるのに、その検討が十分でなかったため、多くの随意契約において1者からしか見積書を徴取していない事態が見受けられた。したがって、国立美術館においては、〔1〕随契限度額の設定について、業務の効率的実施と競争の利益を享受できなくなるデメリットとを比較検討した上で適切な水準になるよう、改めて検討を行い、また、〔2〕見積書を徴取すべき業者が複数存在しているかについて、同一の美術館において同種の契約実績等を十分確認するなどして、見積書の徴取を会計規則の趣旨に照らして適切に行う要がある。

背景金額
15億1185万円
(少額を理由とした随意契約における予定価格の限度額を見直すなどの要があると認められる契約の金額)

ウ 会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示し又は改善の処置を要求した事項

5件


(ア)改善の意見を表示したもの

(4件)


○内閣府(防衛庁)

任期制自衛官に係る退職手当制度について

退職手当の支給を受けた陸上自衛隊の任期制自衛官の職務への従事状況を検査したところ、育児休業等により職務に従事していない期間のある任期制自衛官に対して退職手当を減額することなく支給している状況が見受けられ、任用期間の全期間にわたり職務に従事した任期制自衛官と不均衡を生じていた。このことは海上自衛隊及び航空自衛隊においても同様であると認められる。したがって、防衛庁においては、任期制自衛官に係る退職手当制度について職務に従事しない期間を退職手当の算定上考慮するよう適切な処置を講ずる要がある。

(指摘金額1610万円)

○文部科学省

国立大学法人の附属病院に係るセグメント情報について

国立大学法人の財務諸表として開示されている附属病院に係るセグメント情報に記載された業務費用、業務収益、帰属資産の額が統一的な方法で把握され表示されているかなどについて検査した。その結果、附属病院において診療を行っている教員の人件費について、附属病院所属の教員のみを計上している国立大学法人が14法人、医学部等所属の教員(診療従事者)の手当等一部の人件費を加えて計上している法人が9法人、診療従事者のすべての人件費を加えて計上している法人が2法人あるなど、附属病院に係るセグメント情報として開示されている業務費用、業務収益及び帰属資産の計上内容が国立大学法人ごとに区々となっている状況が見受けられ、国立大学法人会計基準等が求めている財務情報の比較可能性が十分に確保されていないと認められる。したがって、文部科学省において、指針等の整備を行うことも含め、統一的な取扱い及び適切な処理を行うための情報提供を積極的に行うなどして、今後の国立大学法人の適正かつ健全な会計経理を一層推進する要がある。

背景金額
1兆8755億4680万円
(統一的な取扱いが行われないまま開示されているセグメント情報の額)

○東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社

第1種公衆電話の設置及び管理等について(2件)

公衆電話の利用度にかかわらず、社会生活上の安全及び戸外において最低限の通信手段を確保することを目的とした第1種公衆電話の配置や設置場所が効率的となっているか、役割を有効に果たしているかなどについて検査したところ、第1種公衆電話1台を設置することが目安とされている各都道府県の基準地域メッシュ又は二分の一地域メッシュの同一メッシュ内に第1種公衆電話が複数設置されているメッシュがある一方で、第2種公衆電話のみが設置されているメッシュや公衆電話が全く設置されていないメッシュも相当数ある状況となっていた。また、24時間利用が可能な設置状況となっておらず、不特定多数の者にいつでも利用できるように供されているとは認められない状況となっている第1種公衆電話が見受けられた。そして、第1種公衆電話に関する情報については、都道府県ごとの設置台数は公表されているものの、その他の情報については提供されていない状況であった。したがって、第1種公衆電話に係るサービスが効率的に実施され、その役割を有効に果たしていくためには、利用状況等を勘案して第1種公衆電話等の適正な配置等について検討したり、設置場所を見直したりするとともに、情報の公開をより一層進める要がある。

背景金額
東日本電信電話株式会社
44億円
西日本電信電話株式会社
29億円
(第1種公衆電話に係る平成17年度の営業費用)

(イ)改善の処置を要求したもの

(1件)

○農林水産省

土地改良負担金総合償還対策事業における土地改良負担金対策資金の資金規模について

農林水産省では、土地改良負担金総合償還対策事業を実施するに当たり、財団法人全国土地改良資金協会を事業主体として、資金協会に土地改良負担金対策資金を造成し、土地改良負担金に係る借入金の償還が困難な土地改良区等を対象に、借換資金の利子補給を行うなどしている。資金協会に対しては、平成2年度から12年度までの間に計2000億円の国庫補助金が交付されており、16年度末の対策資金の資金残高は1658億余円となっている一方で、17年度以降に資金協会から交付される利子補給金等は330億余円と推計されることなどから、対策資金の資金規模が資金需要を上回っていると認められる。したがって、農林水産省においては、資金需要に対応した対策資金の資金規模の把握を行うことや、多額の余裕資金の発生が想定される場合には対策資金の資金規模の縮小を図ることなどの処置を講ずる要がある。

背景金額
1658億円
(資金需要に対応した資金規模となっていない対策資金の残高に係る国庫補助金)

〔本件については、会計検査院法第30条の2の規定により、平成18年7月13日に、国会及び内閣に報告している。〕

(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項)

「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計41件掲記した。

○裁判所

裁判所における通勤手当の支給について

自動車等を使用して通勤する職員等に対する通勤手当の支給に当たり、法令等で定められた認定基準が十分に理解されていなかったことなどのため、経路や距離の認定が適切に行われていなかったり、これらについての事後の確認が十分行われていなかったりしていて、通勤手当が過大に支給されていた。

(指摘金額 2740万円)

○内閣府(警察庁)

偽造クレジットカード解析システムの運用状況について

偽造クレジットカード犯罪の取締りを強化するための偽造クレジットカード解析システムについて、その運用状況が著しく低調となっていたのに、システムの運用実態を十分把握していなかったことなどのため、運用の継続の可否も含め抜本的な見直しを行わないまま、システムの運用を従来と同様に続けていた。

(指摘金額 9億1286万円)

○内閣府(防衛庁)

陸上、海上、航空各自衛隊が使用する食器の調達について

陸上、海上、航空各自衛隊が駐屯地、基地等で使用する食器の調達に当たり、各自衛隊の食器の仕様を統一して共通の食器を使用することについての検討が十分でなかったため、各自衛隊ごとに仕様を定め別個に契約していて、経済的な調達が行われていなかった。

(指摘金額 5881万円)

部隊輸送の経費に使用する旅行券について

部隊及び隊員の輸送に利用する航空券等を調達するために購入した旅行券について、当該年度内に使用できないような多額の旅行券を年度末に購入して翌年度へ繰り越していたり、旅費の類の予算科目から経費を支出すべき一般的な業務出張の移動等に旅行券を使用していたりなどしていて、予算統制上適切でない事態が生じていた。

(指摘金額 6061万円)

インマルサットサービス使用契約における割引サービスの適用について

海上自衛隊の艦艇が利用しているインマルサットサービスの使用契約について、海上幕僚監部においてインマルサットサービス使用に係る経済的な支払を行うよう十分指導していなかったなどのため、通話等料金に関する割引サービスの適用を受けておらず、通話等料金が不経済となっていた。

(指摘金額 1482万円)

○総務省

市町村合併により遊休化している設備等の利活用について

地域イントラネット基盤施設整備事業等により整備した設備等について、市町村合併により当初の目的どおり使用されなくなった場合に、当該設備等の利活用を図ることについての取扱いが定められていなかったり、事業主体における認識が十分でなかったりしていたため、整備された設備等が使用されず遊休化していて、効率的な利活用が図られていなかった。

(指摘金額 9250万円)

○文部科学省

私立高等学校等経常費助成費補助金に係る加算単価の算定について

私立高等学校等経常費助成費補助金の算定に当たり、交付要綱、配分通知等で示している加算事由の内容が必ずしも明確でなかったなどのため、都府県が加算単価の対象となる特定の事由に該当する施策を行っていない私立学校の生徒等数を含めるなどして報告していたり、文部科学省が加算単価の対象となる生徒等数を誤っていたりしていて、加算単価が過大に算定されていた。

(指摘金額 41億6390万円)

科学研究費補助金の経理について

科学研究費補助金の管理を行っている研究機関において、研究用物品の購入に当たり、研究用物品の納品検査に係る事務処理体制の整備が十分でなかったことなどのため、業者が保管している納品書(控)等の日付と研究機関が管理している納品書等の日付とが30日を超えてかい離しており、この中には、補助事業の期間外に納品されていて補助の対象とならない研究用物品も含まれていて、事実と異なる会計経理が行われていた。

(指摘金額 2億1874万円)

背景金額
11億5564万円
(納品検査が適切に行われていなかった研究機関に対する国庫補助金交付額)

○厚生労働省

生活保護における他法他施策の活用について

生活保護の実施に当たり、事業主体において、年金の受給資格の調査及び精神保健法第32条に基づく公費負担医療の適用についての指導等が十分でなかったことなどのため、被保護者が年金受給権を有していたのに、裁定請求手続が行われず、年金を受給していなかったり、公費負担医療の対象となり得るのに、その適用を受けていなかったりなどしていて、年金受給及び公費負担医療について他法他施策の活用が十分に図られておらず、生活保護に係る負担金の交付が適切なものとなっていなかった。

(指摘金額 3億0040万円)

独立行政法人労働者健康福祉機構が受け入れた貸付金の回収金等について

厚生労働省が、労働福祉事業団の行っていた貸付金の債権管理及び回収業務を独立行政法人労働者健康福祉機構に行わせるに当たり、受け入れた貸付金の回収金等を国庫に納付させることとしているのに、国庫に納付すべき時期について適切な指示を行っていなかったため、回収金等が国庫に納付されない事態が継続していた。

(指摘金額 7805万円)

〇農林水産省

中山間地域等直接支払制度の実施について

中山間地域等直接支払制度の実施に当たり、市町村において制度の内容の理解や農業生産活動等の実施状況の現地確認が十分でなかったなどのため、協定農用地の中に交付金の交付対象とならない農用地が含まれていたり、集落協定において取り組むこととされていた農業生産活動等が適切に行われていなかったりなどしていて、制度の適切かつ効果的な実施が確保されていなかった。

(指摘金額 1億0415万円)

農村総合整備事業等により整備した施設用地について

農村総合整備事業等により公共施設等の建設のため整備した施設用地について、事業計画の作成に当たり公共施設等の建設の確実性についての検証が十分でなかったなどのため、整備した施設用地に公共施設等が建設されておらず施設用地が遊休していて、事業効果が十分に発現していなかった。

(指摘金額 1億2383万円)

ほ場整備事業等により整備された農地の維持・保全等について

ほ場整備事業等により整備された農地について、現状把握が十分に行われていなかったり、遊休農地を解消等するための農家の営農に関する意向の把握が十分に行われていなかったり、違反転用農地に係る府県への報告が適切に行われていなかったりなどしていたため、優良農地が、遊休していたり、違反転用されていたりしていて、良好な状態で維持・保全されておらず、有効に利用されていなかった。

(指摘金額 12億9161万円)

緑の雇用担い手育成対策事業における委託事業費の算定及び物品・役務調達の契約手続について

緑の雇用担い手育成対策事業において、実地研修の実態の把握や実施方法についての理解が十分でなかったなどのため、収益事業地で実施された実地研修の委託事業費を非収益事業地での実地研修を想定して設定された標準単価を基に算定していたり、実地研修で作業員が講師を務めた際の講師等謝金を森林組合の現場監督職員の給与水準を踏まえて設定された標準単価を基に算定したりしていた。また、物品・役務の調達に係る契約手続について、全国森林組合連合会に会計規程等が整備されておらず、補助事業の適正かつ経済的な執行を期する上で適切なものとなっていなかった。

(指摘金額 4911万円)

背景金額
22億9039万円
(収益事業地で実施された実地研修に係る国庫補助金交付額及び手続上適切を欠いた物品・役務調達契約に係る国庫補助金交付額)

農地情報管理システム整備事業等の実施及び農地情報管理システムの活用を図るための情報の更新について

農地情報管理システム整備事業等の実施に当たり、補助の対象となる経費が明確にされていなかったことなどのため、補助の対象とならない経費を事業費に含めるなどしていて補助事業が適切に行われていなかったり、農地情報管理システムに入力された農地・農家等に関する情報が適時適切に更新されていなかったりしていた。

(指摘金額 1億2279万円)

背景金額
11億1983万円
(入力された情報が適時適切に更新されていなかった農地情報管理システム整備に係る国庫補助金相当額)

学校給食用食肉流通・消費改善対策事業の実施について

学校給食用食肉流通・消費改善対策事業について、牛肉の輸入自由化に伴い懸念された学校給食用輸入牛肉の価格の高騰は生じておらず、また、学校給食会等から給食実施校への輸入牛肉の供給量が減少し、給食用物資全体の供給量に占める輸入牛肉の割合も著しく低くなっているなど、学校給食を取り巻く環境が変化しているのに、検討が十分でなかったため、事業の終了を含めた抜本的な見直しが行われていなかった。

(指摘金額 1億6560万円)

○経済産業省

調査・研究等に係る委託事業の委託費の算定について

調査・研究等に係る委託事業の委託費の算定について、委託事業の従事者が他の団体から給与等が支払われている出向者等である場合の人件費の算定や従事者が同時期に他の用務にも従事する場合の業務日誌の記載等の取扱いを経済産業省において明確に示していなかったなどのため、委託先の実支出額を反映していなかったり、従事者の勤務実態を反映していなかったりしていて、人件費が過大に算定されていた。

(指摘金額 7517万円)

経済産業省 及び 日本銀行

・貿易再保険事業における外貨建回収金等を邦貨建てにする際の外国為替取引手数料について

貿易再保険事業における外貨建回収金等を邦貨建てにする際、経済産業省において外貨建回収金の邦貨換算率についての検討が十分でなかったり、外貨建代位取得債権収入等を邦貨に交換する際の外国為替レートについて日本銀行本店と経済産業省との間で相互に連携、協力して検討が行われていなかったりしていたため、外国為替取引手数料が市中の取引慣行を踏まえた経済的なものとなっていなかった。

(指摘金額 2億7692万円)

〇国土交通省

地籍簿の数値情報化経費の積算について

地籍簿の数値情報化経費の積算に当たり、事業主体である市町村において、固定資産課税台帳等に電磁的に記録された情報を電子媒体で請負業者等に貸与していたことなどから、安価なデジタル形式の単価で積算することが可能であったのに、作業内容についての認識が十分でなく、また、その場合にデジタル形式の単価で積算できることが明示されていなかったなどのため、アナログ形式の単価を適用して積算していて、積算額が過大となっていた。

(指摘金額 5690万円)

補助金の交付等を受けて取得していながら公営住宅等が建設されていない土地について

公営住宅等供給促進緊急助成事業費補助金の交付等を受けて取得した公営住宅等用地について、事業主体である地方公共団体において住宅事情等を踏まえた計画の見直しを行っていなかったり、国土交通省において建設状況を把握していなかったりなどしたため、事業計画における建設開始予定時期を経過するなどしているのに、公営住宅等が建設されていなかった。

(指摘金額 70億9178万円)

公共交通移動円滑化設備整備費補助金等の算定について

公共交通移動円滑化設備整備費補助金等の算定に当たり、補助対象経費から通常車両価格を控除する際、補助対象経費に消費税額を含めた場合には通常車両価格にも消費税額を含めるべきであるのに、このことを運用方針に明示していなかったことなどのため、公営バス事業者において、消費税額を含めた補助対象経費から消費税額が含まれていない通常車両価格をそのまま控除するなどしていて、補助金が過大に交付されていた。

(指摘金額 1億2358万円)

除雪工事において使用する凍結防止剤の購入費の積算について

除雪工事において使用する凍結防止剤の購入費の積算に当たり、特別調査を行って単価を決定すれば市場価格をより的確に把握できるのに、事業主体である道県において、業者からの見積りによって単価を決定していて、市場価格の把握、検討が十分でなかったため、凍結防止剤の購入費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 1億3190万円)

滑走路等に設置された管路等の埋設深さについて

切削・打換え工法を用いる滑走路等の補修工事に伴い実施された管路等の撤去・再設置工事において、再設置する管路等の設計に当たり、埋設深さが適切でなかったため、将来の滑走路等の補修工事において再び撤去・再設置工事を実施する必要が生じていて、適切かつ経済的な設計となっていなかった。

(指摘金額 1億0790万円)

国土交通省厚生労働省

・港湾EDIシステムの稼働に必要な設備の提供等のサービスを受けるための費用の積算について(2件)

港湾諸手続を電子申請化するための港湾EDIシステムの稼働に必要な設備の提供等のサービスを受けるための費用の積算に当たり、このサービスが専門業者によって一般の顧客に対して行われているなどの近年の状況に対する認識が十分でなかったり、このサービスに係る市場価格を適切に把握していなかったりなどしたため、積算額が過大となっていた。

(指摘金額 計2100万円)

○住宅金融公庫

特約火災保険の解約返還保険料について

貸付金債権の償却に当たり、任意売却された建築物に付されている特約火災保険を解約すれば、解約返還保険料を残債権に充当できることが見込まれるのに、債権の回収を図ることについての認識が十分でなかったことなどのため、その解約手続を行っておらず、償却に係る債権の回収が適切に行われていなかった。

(指摘金額 6800万円)

○日本銀行

航空機を利用した出張旅費に係る会計経理について

航空機を利用した出張旅費について、現に支払った航空賃を証明する書類により実費額を確認するなどの審査方法が内部規程において定められていなかったことなどのため、出張者が実際には旅費支給額と異なる割安な航空賃の航空券を購入するなどしていたのに、旅費の精算が適正に行われておらず、出張旅費が過大に支給されていた。

(指摘金額 7372万円)

銀行券自動鑑査機等の保守契約に係る保守料について

銀行券自動鑑査機等の保守料について、保守作業の実績及び保守対象機器の範囲に応じて基本料金を減額する条項等が契約上定められていなかったため、保守員が日常保守時間帯に日常保守以外の作業を長時間行っていたり、保守対象に無償保守期間中の鑑査機が含まれていたりしているのに、基本料金がそのまま支払われていた。

(指摘金額 7280万円)

○商工組合中央金庫

貸付金の繰上償還に伴う期限前弁済手数料の徴求について

貸付金の繰上償還に伴う期限前弁済手数料の徴求に当たり、手数料の計算システムが計算方式の適用及び計算要素の入力を自動的に行うような機能を有していなかったことなどのため、計算方式の適用又は計算要素の入力を誤るなどし、手数料の徴求に過不足が生じていて、適正に徴求されていなかった。

(指摘金額 6096万円)

○独立行政法人国立博物館

有形固定資産の認識・計上について

財務諸表の作成に当たり、会計基準等に準拠した会計処理に対する理解が十分でなかったため、工事で取得した資産及びファイナンス・リース取引によるリース資産を有形固定資産として貸借対照表に計上しておらず、また、資産の製作・取得に要した設計料を有形固定資産の取得原価に含めていなかったことから財務諸表の表示が適正なものとなっていなかった。

(指摘金額 2億0026万円)

○独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構

電気設備、機械設備等に係る運転保守管理業務における労務費の積算について

電気設備、機械設備等に係る運転保守管理業務における労務費の積算に当たり、常駐技術者の業務の実態の把握等が十分でなかったことなどのため、仮眠をとっている時間について適切に減額した単価としていなかったり、深夜割増しの基礎となる賃金に算入しない手当等を含んだ単価に割増率を乗じていたりなどしていて、労務費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 2780万円)

○自動車検査独立行政法人

自動車検査用機械器具の定期点検に係る予定価格の積算について

自動車検査用機械器具の定期点検に係る予定価格の積算に当たり、検討が十分でなかったため、作業単価を算定する過程で請負業者に発生しない経費が含まれており、定期点検に係る予定価格の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 4883万円)

○独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構

開削トンネル等の築造工事に使用するコンクリートの仕様について

地下高速鉄道等における開削トンネル等の築造工事に使用するコンクリートの仕様について、開削トンネルのコンクリートに高炉セメントB種を使用しても支障がないのにこれより高価なセメントを使用することとしたり、シールドトンネル内側の基礎コンクリートに必要以上の圧縮強度を有するコンクリートを使用することとしたりしていたため、コンクリート材料費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 4170万円)

○独立行政法人労働者健康福祉機構

未払賃金立替払事業における事業主等に対する求償債権の管理事務について

未払賃金立替払事業の実施に当たり、事実上の倒産と認定された事案における事業主に対する求償債権について、その管理に係る事務処理要領が整備されていなかったことなどのため、事業主の資産保有状況に対する調査確認等が十分に行われていなかったり、内部決裁を経ることなく求償債権の管理事務が停止されたりするなどしていて、債権管理が適切なものとなっていなかった。

背景金額
232億7537万円
(労働基準監督署長が認定した倒産に係る機構の平成17年度末現在の求償債権の残高)

○独立行政法人中小企業基盤整備機構

普通預金等で保有している資金について

一般勘定(一般経理)の資金の管理及び運用に当たり、保有している資金の状況を適時適切に把握して資金収支を的確に予測するための取扱基準を整備していなかったり、資金管理の担当部門と、各部門、各支部等との相互の連絡、調整が十分にできるような体制を整備していなかったりなどしていたため、資金需要に比べて常時多額の資金を普通預金として保有しており、効率的な運用が行われていなかった。

背景金額
219億4671万円
(一般勘定(一般経理)において多額に保有されていた普通預金の平均残高)

○独立行政法人都市再生機構

境界ブロック等の基礎コンクリートに係る型枠工費の積算について

境界ブロック等の基礎コンクリートに係る型枠工費の積算に当たり、型枠の形状や施工の実態が擁壁等の基礎部の均しコンクリートに係る型枠の工事と差異があるとは認められないことなどから、均し基礎コンクリート型枠の歩掛かりを適用すべきなのに、施工の実態を積算に反映させるための検討が十分でなかったため、小型構造物型枠の歩掛かりを適用していて、型枠工費の積算額が過大になっていた。

(指摘金額 5450万円)

○首都高速道路株式会社

用地保全工事における防じん処理工費の積算について

用地保全工事における防じん処理工費の積算に当たり、用地の面積、形状等の現場条件に応じて機械を使用している施工の実態を積算に反映させていなかったため、防じん処理工費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 2330万円)

○日本放送協会

事業所等におけるテレビジョン受信機の設置状況の把握について

事業所等との受信契約の締結に当たり、官公庁等について、協会本部の法人営業センターと地方放送局等との担当区分が明確となっていなかったことなどのため、受信機の設置状況の把握の手段としているテレビ調査票が保管されていなかったり、その記載内容が十分なものとなっていなかったりしており、また、ホテル等について、協会本部の指導による統一的な取組が行われていなかったため、ホテルグループ等の契約率が区々となっているなどしていて、テレビジョン受信機の設置状況が適切に把握されていなかった。

背景金額
350億円
(事業所との受信契約に係る推計受信料収入額)

○東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社

ひかり電話対応機器等を加入者宅に配送する業務について(2件)

ひかり電話対応機器等をひかり電話の加入者宅に配送する業務において、設備部門と営業部門との間で配送方法についての調整が行われていなかったことなどのため、加入の状況に応じた経済的な配送が行われておらず、ひかり電話対応機器等の配送費が不経済となっていた。

(指摘金額 計2億4320万円)

○放送大学学園

放送大学の運営に必要な業務の委託契約について

業務委託契約の締結に当たり、契約の相手方が受託業務の大半を再委託先に実施させていて当該業務の履行能力が十分でないにもかかわらず、契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして随意契約方式により契約を締結していて、契約方式が適切なものとなっていなかった。

(指摘金額 10億0744万円)

(特に掲記を要すると認めた事項)

「特に掲記を要すると認めた事項」として4件掲記した。

(1)相続税物納制度において、物納申請された財産に係る収納・引受事務及び引受け後の処分が長期化しており、処理未済事案が累積しているなどの事態について

物納申請された財産に係る事務処理の状況を税務署等及び財務局等において検査したところ、物納不動産について収納・引受事務が長期化していて処理未済事案が累積していたり、物納不動産のうち権利付財産や物納有価証券のうち非公開株式の引受け後の処分が長期化していて、長期間経過したものが多数保有されたりしているなどの事態が見受けられた。このような事態は、相続税の納税処理が長期にわたり完結せず、物納財産の収納・引受け後の国有財産としての利活用や売却等の機会が遅延するとともに、納税者間の公平性を損なうことにもつながる。ついては、早期処理の重要性について物納申請者等の関係者に理解を求めるとともに、税務署等及び財務局等の関係部門において、今後、より緊密な連携のもとに的確な進行管理を行うなど、早期処理に向けて一層の事務処理の促進に努めることが必要である。

背景金額
5028億円
(引受済みの物納不動産の収納価額、処理未済の物納申請不動産の収納見込価額及び物納により引き受けた非公開株式の台帳価格の合計額)

(2)道路工事を鉄道事業者に委託するに当たって、委託後の事業の進ちょく状況等の把握を適切に行う必要がある事態について

道路工事を鉄道事業者に委託するに当たって、道路管理者は国等の会計制度に基づいた会計処理及び予算執行を行うこととされ、また、国土交通省では、平成16年7月の透明性通知により、工事の内容、費用等について協議、把握するよう通知している。そこで、道路管理者が鉄道事業者に工事を委託して行っている場合の委託費の支払状況等を検査したところ、〔1〕検査した1,039件のうち336件において1回目の概算払の額が委託費の額の9割以上となっているなど、委託費の支払について、概算払に当たって付された条件である事業の進ちょくに応じたものとなっていなかったり、〔2〕委託内容の把握について、工事内容、工事費を把握するための詳細な設計内訳書、進ちょく状況を把握するための出来高調書等の資料の提出が十分でなかったり、〔3〕委託費に係る消費税の取扱いにおいて、課税対象外として処理すべきものを課税対象として整理していたり、〔4〕道路整備特別会計における消費税の取扱いにおいて、仕入税額控除の対象とならない非課税等対象額が課税仕入れに計上されていたりしている事態が見受けられた。このような事態に対し、国土交通省では、所要の処置を講じて対応を図っているところである。しかし、従前からの慣行もあって、必要とされた資料の鉄道事業者からの提出は依然として進んでおらず、なお十分ではない状況であった。ついては、国土交通省において、委託事業の実施に当たって、鉄道事業者に対し、国等の会計制度について積極的に説明し、十分な理解を求めるなどして、事業の進ちょくに応じた概算払を行うための出来高予定調書、消費税対象額が明確に把握できる資料等の提出を適時に受けるなど十分な協力を求めることが重要である。そして、これに基づいた適切な会計処理を行い、事業の透明性の確保及び効率的な予算の執行を確保することが必要である。

背景金額
1289億円
(150事業主体の平成13年度から17年度までの鉄道事業者に委託した道路工事に係る国費の額)

(3)道路管理者が整備した有料駐車場が低利用となっているなどのため、駐車場の利用方法の改善等について検討することが必要な事態について

国土交通省では、地方生活圏中心都市等において、駐車需要の増大に対処するとともに、無秩序な路上駐車を解消し、周辺道路の安全かつ円滑な交通を確保するため、有料駐車場を整備する道路管理者に対し融資事業や補助事業を実施しているが、道路交通法の改正による違法路上駐車対策の取組強化や地方自治法による公共施設の指定管理者制度の創設など有料駐車場を取り巻く環境が著しく変化してきている。そこで、有料駐車場は事業目的に沿って有効に利用されているか、収支の実績について、特に融資事業においては償還計画に影響を及ぼすことからどのような状況になっているか、道路管理者は有料駐車場を取り巻く環境の変化に対応してどのような対策を執っているかなどについて検査した。検査したところ、137有料駐車場中73有料駐車場(整備に係る貸付金額549億円、同補助金額286億円)において、利用台数等の実績が計画に比べ50%に満たず低利用となっていたり、収支が悪化していて料金収入で維持管理費さえも賄えなかったり、利用者の立場に沿った細やかなサービスの提供が図られていなかったりしている事態が見受けられた。利用状況等が十分でない駐車場が存在する背景には、大規模店舗の撤退による集客力の低下なども大きな要因となっていて、国土交通省、地方公共団体等の取組のみでは有料駐車場の利用状況等を改善することは困難であると認められる。したがって、道路管理者、交通管理者、地元商店街、駐車場利用者等の関係者が一体となって取り組み、一層の利用促進が図られることが必要である。また、有料駐車場行政を取り巻く環境が著しく変化してきていることから、これらの状況を的確に把握して利用向上のための改善策を講じていくことが必要である。

背景金額
835億円
(73駐車場における貸付金及び国庫補助金の合計額)

(4)関西国際空港の経営において、長期有利子債務の確実な償還を図り、安定的な経営基盤を確立するため、経営改善に努めることが必要な事態について

関西国際空港株式会社においては、平成6年の関西国際空港開港当初から約1兆円の長期有利子債務があり、累積損失が多額に上っていた(14年度末で2068億円)。このようなことから、国は、14年の財務大臣と国土交通大臣の合意に基づき、同会社の経営改善を進め、補給金制度を創設して、15年度から毎年度90億円の政府補給金を交付している。また、同会社では、上記の合意を踏まえ、15年度から17年度までの3箇年を経営改善集中期間として運営経費の削減や収入の増加を図るなどの経営改善計画を策定している。そこで、経営改善計画の達成状況、長期有利子債務の償還実績等について検査したところ、運営経費の削減については目標を達成しているものの、経営改善集中期間終了後の18年度の収支見通しについては、目標の達成が困難な状況となっていた。また、補給金制度導入後の16、17両年度における長期有利子債務の減少額は、制度導入時の予測を下回っていて(減少額と予測額との差16年度105億円、17年度165億円)、同会社が18年4月に公表した新中期計画の業績目標に基づく長期有利子債務の減少額もこの予測を下回ることが見込まれる。したがって、同会社においては、〔1〕長期有利子債務の償還計画を策定した上で、これに対する償還状況を的確に把握し、確実な償還に努めること、〔2〕新中期計画に基づき、経費の削減に努めるとともに、地方公共団体等との連携を図りつつ、新規需要の開拓等により収入の増加を図るなど、引き続き経営改善に努めること、〔3〕2期事業のうち、先送りした施設の整備は、需要動向等を十分見極めながら、必要不可欠なものについて行うことといった方策を講ずるなどして、長期有利子債務の確実な償還を図り、もって政府補給金等に頼る必要のない安定的な経営基盤を確立することが必要である。

背景金額
1兆0322億円
(関西国際空港株式会社の平成17年度末における長期有利子債務残高及び同会社に対する15年度から17年度までの政府補給金交付額の合計額)

〔本件については、会計検査院法第30条の2の規定により、平成18年10月11日に、国会及び内閣に報告している。〕

3 第4章の「国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等」の概要

(国会及び内閣に対する報告)

 会計検査院法第30条の2の規定により国会及び内閣に対して報告したものは5件である。このうち、「第4章国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等」にその概要を記載したものは、「第3章個別の検査結果」に掲記した2件(注) を除く次の3件である。



(1)高速道路の建設事業に係る入札・契約制度の見直しの状況等について

 東日本高速道路株式会社ほか4高速道路会社等が実施する高速道路の建設事業に係る入札・契約制度について、日本道路公団の鋼橋上部工工事での談合事件を契機として実施された見直しの状況等を検査したところ、次のような状況が見受けられた。〔1〕見直し後においては、入札者が多いほど落札率が低下している傾向が見受けられる。また、入札者数については、見直し後に減少している状況が見受けられるが、入札参加資格の要件は変更されていない。〔2〕総合評価落札方式については、実績の拡大を図ることとしているが、実質的には試行段階である。〔3〕工事費内訳書等の確認については、公正な入札の確保に効果があると認められるが、比較的簡易な確認に止まっている状況も見受けられる。〔4〕工事発注単位の設定については、民営化され債務負担行為に関する年限等の制約がなくなり、より柔軟な発注工期の設定が可能となっている。
 したがって、各会社においては、入札・契約制度の見直し策の内容等を確実に実施するとともに、更に有効なものとするため、〔1〕入札参加資格の要件については、適切な施工の確保を図ることに十分配慮しつつ、更に競争性の高い入札となることを指向して、その見直しについて検討すること、〔2〕総合評価落札方式の実施に当たっては、実績の増加を図っていくとともに、導入目的に沿った効果が得られるよう、実施方法等にも十分配慮して適用していくこと、〔3〕工事費内訳書等については、事務負担を考慮した上で、より効果的な活用方法を検討すること、〔4〕工事発注単位の設定に当たっては、工事の実態を考慮しつつ、民営化の利点を生かしたより弾力的かつ経済的な発注単位を検討することが望まれる。さらに、談合事件により被ったと認められる損害については、まだ違約金等の請求を行っていない契約について適時に適正な違約金等の請求を行い、その速やかな回復に努める要があると認められる。

(2)成田国際空港株式会社における空港施設等の整備事業に係る入札・契約の実施状況等について

 成田国際空港株式会社では、平成17年12月に、受変電設備工事の発注に関し競売入札妨害罪で社員2名が逮捕、起訴されるという事件の発生を受け、「工事発注事務の適正化策」を策定し、公表した。このような状況を踏まえ、空港施設等の整備に係る工事の入札・契約の実施状況等について検査したところ、受変電設備工事については、主要機器について自ら製作することを競争参加の条件としているため、入札者が限定的となっていた。また、受変電設備工事の予定価格の積算で使用する見積りの値引率については、その根拠資料がなく、実勢価格を反映した値引率となっているかを確認できない状況であった。そして、18年1月に上記の適正化策を実施するまで、違約金条項を契約書に明記する措置を執っていなかった。
 したがって、同会社においては、適正化策を確実に実施すること、上記の事件に係る3件(契約金額計7億6576万円)の工事について損害賠償の請求を検討すること、契約事務等に係る国の通知等に対しては適時適切に対応することはもとより、〔1〕受変電設備工事の入札に当たっては、競争性を高めるため、参加条件の見直しをするなどして競争参加者の一層の拡大に努めること、〔2〕予定価格の積算のうち受変電設備工事における機器費の算定については、定期的に物価調査会社等に価格調査を依頼するなどして、より実勢価格を反映できる積算方法を検討することが望まれる。

(3)財投機関における財政投融資改革後の財務状況と特殊法人等改革に伴う財務処理の状況について

 本院は、平成12年度決算検査報告において、「財投機関の決算分析について」を掲記している。その後、財投機関とそれを取り巻く環境は、財政投融資改革や特殊法人等改革等により大きく変化した。そこで、39法人を対象として財政投融資改革後の財務状況と特殊法人等改革に伴う財務処理の状況について検査したところ、〔1〕旧法人の資産等を承継した新規設立法人では、資産評価等による新たな損失が発生しており、こうした損失や承継前の累積欠損金を政府出資金の償却(2兆1106億円)等で解消した法人がある一方、累積欠損金が更に拡大した法人もある。また、廃止事業については、最終の決算において総額で3560億円の欠損金が発生し、2988億円の政府出資金が回収不能となっている。さらに、廃止予定事業については、16年度決算で総額945億円の累積欠損金が計上されている。〔2〕財政投融資改革により、財投機関における資金調達方法も多様化し、検査対象とした財投機関に対する財政投融資は改革前の約5割(12年度20兆7302億円に対し、16年度11兆3539億円)の水準まで低下する一方、財投機関債の発行による市場からの資金調達は約3倍(13年度1兆0004億円に対し、16年度3兆3019億円)に拡大した。また、財投機関債は、その発行自体が新たなコストの増加要因になるとともに、法人の事業スキーム等の相違によりその発行金利には格差が生じている。〔3〕財投機関が抱える債務償還リスクへの対応についてみると、独立行政法人化に際して発生した損失の多くは資産等の承継の過程で処理され、また、政策金融法人に係る繰上償還リスクについてリスク回避のための取組もなされているが、総じて基本的なリスク構造には大きな変化はない。
 したがって、〔1〕新規設立法人については、将来更なる財政負担が生ずることのないよう効率的な事業運営に努めることが重要である。今後組織改革や財投事業の廃止が予定されている法人については、改廃に伴う財政負担の有無の状況を含め、今後の事業の運営状況及び収支の推移について注視していくこととする。また、〔2〕今後の財投機関債の発行に当たっては、資金調達コストを可能な限り抑えるよう努めることが重要であり、その発行状況と併せて、法人の事業運営等の状況を注視していくこととする。さらに、〔3〕今後の社会経済情勢の変化に伴ってリスクが増大するおそれはないか、引き続き注視していくこととする。

(国会からの検査要請事項に関する報告)

 国会から国会法第105条の規定による会計検査の要請を受けて検査を実施し、会計検査院法第30条の3の規定により検査の結果を報告したものは次の7件である。

(1)政府開発援助(ODA)に関する会計検査の結果について

 本院は、参議院からの検査要請を受け、政府開発援助(ODA)に関し、〔1〕開発コンサルタント、NPO等への委託契約の状況、〔2〕草の根・人間の安全保障無償援助の実施状況、〔3〕スマトラ沖地震の緊急援助の実施状況について検査を実施した。
 検査したところ、〔1〕については、独立行政法人国際協力機構等との契約に基づきコンサルタントが実施した調査において、再委託契約の精算に当たり適正を欠くなどの事態があった(コンサルタントによる不正請求等の額計3966万余円)。ついては、同機構等において、再委託契約を伴うコンサルタントとの委託契約について適正な契約の履行の確保に徹底を期する必要がある。また、今回の検査によって、同機構の委託契約に係る再委託契約で経理処理等が事実と異なっていることが判明した案件(11箇国13案件)については、同機構による精査の結果の報告を踏まえ、引き続き検査を実施し、取りまとめが出来次第報告することとする。
 〔2〕については、贈与契約上の終了期日までに終了していないものが多く見受けられたり、現場の視察による終了時の確認が十分に実施されていないものがあったりするなどの事態が見受けられた。また、本院の調査時において当初の目的に即して利用されているとは認められなかった事業も見受けられた(4事業計3163万余円)。したがって、贈与契約の締結等の際には、被供与団体に対し制度の趣旨を一層周知徹底することなどについて、外務本省において在外公館に対し指示を徹底し、また、在外公館においては、今後の業務運営等に当たり更に留意することが必要である。本院としては、今後とも草の根・人間の安全保障無償援助が制度の趣旨に沿って適切に実施されているかなどについて注視していくこととする。
 〔3〕については、被災国に対するノン・プロジェクト無償資金協力事業において、施設の工事に係る契約が多く、契約締結及び工事完了までに時間を要し、工事の進ちょくに応じて資金を支払うことになっていることから、資金供与額に対する支払済額の割合である支払率は、18年3月末現在、インドネシア共和国では20.5%、モルディブ共和国では30.2%、スリランカ共和国では42.8%となっていた。本件事業は緊急援助として実施されたものであるため、速やかに災害復旧・復興のために使用されることが必要である。したがって本院としては、資金の執行状況について引き続き検査を実施し、取りまとめが出来次第報告することとする。

(2)独立行政法人中小企業基盤整備機構(旧・中小企業総合事業団)の実施する高度化事業に関する会計検査の結果について

 本院は、参議院からの検査要請を受け、独立行政法人中小企業基盤整備機構の実施する高度化事業に関し、〔1〕中小企業者による制度利用の状況、〔2〕貸付条件の状況、〔3〕中小企業者に対する貸付金の返済状況、〔4〕余裕金の発生及び資金運用状況について検査を実施した。検査したところ、中小企業者にとって貸付事務手続等が煩雑であること、民間金融機関からも低金利で融資を受けられる状況にあること、都道府県にとって貸付時又はその後の事務負担が大きく、その取組が消極化していることなどから、新規の貸付けが減少している(平成11年度805億円に対し17年度110億円)。一方、繰上償還の増加に伴って償還金が毎年度多額に上り(11年度から17年度まで、毎年度810億円から1582億円)、貸付残高が急激に減少(11年度末1兆1421億円に対し17年度末6113億円)していることから、貸付財源と貸付残高との間にかい離が生じ、余裕金が増加(預金及び有価証券の16年7月から18年3月までの間の増加額922億円、18年3月末の残高3839億円)している。また、貸付残高に占める不良債権の割合が依然として上昇傾向にある。
 したがって、制度利用者の立場に立った貸付手続の一層の簡素化を図ることはもとより、機構が都道府県を介さず直接中小企業者等に貸付けを行う方式の適用拡大を検討するなどして制度の利用促進に努めるとともに、都道府県の取組が消極化しないようにするための支援体制の整備が可能か否かを含め、都道府県の担うべき役割を検討していくことが必要である。加えて、債権管理態勢のより一層の整備を図り、多額に上っている不良債権の処理を促進することが急務である。そして、余裕金については、解消が困難と見込まれる場合には、事業の実施状況に見合った財源の規模とするような措置を執ることも必要である。ついては、高度化事業に対する貸付制度の運営状況等について引き続き注視していくこととする。

(3)特別会計の状況に関する会計検査の結果について

 本院は、参議院からの検査要請を受け、各府省が所管する各特別会計に関し、〔1〕情報公開等、透明性の状況、〔2〕繰越額・不用額、決算剰余金、積立金等残高の推移、〔3〕電源開発促進対策等3特別会計における予算の執行状況、〔4〕産業投資等2特別会計における政府出資法人への出資の状況、〔5〕財政統制の状況について検査を実施した。検査したところ、〔1〕財政状況の透明性の確保が十分に図られていなかったり、〔2〕多額の繰越額・不用額、決算剰余金が継続して発生していたり、〔3〕積立金等の保有規模に関する基準が具体的に定められていなかったり、〔4〕予算積算と執行実績とがかい離している状態が継続していたり、〔5〕出資法人において繰越欠損金を抱えていたりしているなどの、財政統制上の課題が見受けられた。
 したがって、一般会計の厳しい財政の現状にかんがみ、特別会計を所管している各府省において、〔1〕更に分かりやすい情報提供に努め、各特別会計の透明性の向上を図ること、〔2〕予算の執行状況や決算の精査、分析を一層徹底し、その結果を的確に予算に反映させること、〔3〕決算剰余金及び積立金等の内容や残高に留意し、各特別会計やその財源の性格、事業に対する需要の動向等からみて可能な場合は、一般会計への繰入れも含めてその有効活用を図るなどの検討を行うこと、〔4〕事務事業の適切な管理を図り、歳出の合理化に向けた予算執行管理を徹底すること、〔5〕出資法人に対して、新規事業の採択の適正性、財務状況等について常に注視するなど出資者として適切な管理を行うことに留意して見直しを進めるとともに、政府一体として、財政状況の一覧性の確保、剰余金及び積立金の縮減等現在行っている特別会計の改革を着実に実施し、各特別会計における財政統制をより実効あるものにしていくことが重要である。本院としては、各特別会計における財政統制の状況について、今後とも多角的な観点から検査を実施していくこととする。

(4)地方財政の状況に関する会計検査の結果について

 本院は、参議院からの検査要請を受け、地方財政の状況に関し、総務省の資料等を活用して〔1〕地方財政計画の歳出の種類ごとの決算額の状況、〔2〕決算額に関するその他の事項として、職員に対する特殊勤務手当等の状況、職員の福利厚生事業への支出状況、職員の病気休暇等の制度の状況について、総務省、15道府県及び176市町村に赴くなどして検査を実施した。検査したところ、〔1〕地方財政計画額と普通会計決算額を歳出の区分別に昭和62年度から平成15年度まで比べると、一般行政経費については2年度以降決算額が6兆円以上、給与関係経費については恒常的に決算額が1兆円から2兆円、それぞれ計画額を上回るかい離が生じており、投資的経費(単独)については11年度以降決算額が5兆円以上計画額を下回るかい離が生じている。〔2〕職員に対する特殊勤務手当等の状況については、国家公務員に設けられていないもの(政令指定都市を除く市町村で、2,539手当、135億余円)、他の手当や給料で措置されている勤務内容に対して重複しているもの(同534手当、33億余円)、業務に従事した場合ごとにではなく月額支給等となっているもの(同1,441手当、91億余円)といった、検討を要すると思われる手当が支給されている。職員の福利厚生事業への支出状況については、ほとんどの地方公共団体で職員互助組合等に対して補助金が交付されており、現金給付のほか、商品券、旅行券、記念品等の物品給付が補助の対象となっている。職員の病気休暇等の制度の状況については、病気休暇では国と同様の制度である団体が全体の21%となっており、特別休暇等では国より多くの特別休暇等を設けている団体が全体の90%となっている。
 したがって、〔1〕地方財政計画額と普通会計決算額のかい離の縮小を図るために、単独事業の地方財政計画額は、地方における標準的な経費の実態を十分に踏まえて計上することが求められる。また、〔2〕地方公務員に係る特殊勤務手当等、福利厚生事業への支出、病気休暇等の制度については、時代の変化を踏まえて必要性及び妥当性を改めて点検し、住民の理解が得られるものとなるよう見直しを実施するとともに、これらの事項の具体的内容や実施状況等を住民に対してより積極的に開示し公表することが求められる。本院としては、地方公共団体の決算の状況について、引き続き検査していくこととする。

(5)各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について

 本院は、参議院からの検査要請を受け、各府省等におけるコンピュータシステムに関し、主として、〔1〕契約の競争性、〔2〕システムの利用、〔3〕情報セキュリティ対策、〔4〕最適化計画の効果について検査を実施した(検査において分析の対象とした16年度の国の情報システム関係の支払金額4773億円)。検査したところ、〔1〕契約の競争性が低く、また、予定価格の算定において契約後の事後検証が必ずしも十分でない、〔2〕電子申請等関係システムの利用率が低調となっている、〔3〕情報セキュリティの管理体制が必ずしも十分でない、〔4〕業務・システムの最適化に当たって、最適化計画で算定されている効果を実現させるための課題があるなどの状況が見受けられた。
 したがって、〔1〕情報システム関係の契約に当たり、仕様書の記載内容をより具体化するなどして契約の競争性、透明性を向上させること、また、契約後の事後検証を的確に行うなどして積算の合理性の向上を図ること、〔2〕電子申請等関係システムについて、オンライン利用促進行動計画に沿った方策を着実に実行していくなどしてシステムの利用の拡大を図り、もって国民の利便性の向上に努めること、〔3〕情報セキュリティ対策に当たって、各セキュリティ対策の強化を図るとともに、そのための管理体制の整備を図ること、〔4〕業務・システムの最適化に向けて、最適化計画で示された経費削減効果が実現できるよう、最適化の実施状況を的確に管理するなどしてこれを円滑に進めるとともに、最適化計画が状況の変化に対応したものになっているかについても常に留意することなどにより、国の情報システム関係予算の経済的、効率的、効果的な執行を図ることが必要と考えられる。本院としては、国のコンピュータシステムについて、今後とも多角的な観点から検査を実施していくこととする。

(6)社会保障費支出の現状に関する会計検査の結果について

 本院は、参議院からの検査要請を受け、社会保障費支出の現状に関し、〔1〕医療保険等、〔2〕介護保険、〔3〕生活保護の状況について検査を実施した。検査したところ、〔1〕医療保険等についてみると、財政状況については、市町村が運営する国民健康保険において16年度で2,531保険者のうち204保険者の各年度の赤字額が保険給付費の5%を超える状態が続いているなど厳しい状況にあるものが多くなっている。保険給付の状況については、老人医療費を中心として増加傾向にある。地域格差の状況については、都道府県間で1人当たり医療費にかなりの格差(15年度で老人の場合、最高92万余円、最低61万余円)がみられ、その格差は固定化してきている。そして、この格差と病床数などの医療提供体制との間に相関が認められる。〔2〕介護保険についてみると、財政状況については、16年度において実質的な収支がプラスの市町村が870、マイナスの市町村が1,377などとなっている。保険給付の状況については、介護給付費が12年度(3兆2291億余円)から16年度(5兆5220億余円)までの間に1.7倍となるなど大きく増加している。地域格差については、認定率、1人当たり給付費及び第1号保険料それぞれについて格差(16年度の都道府県別の認定率、最高20.3%、最低11.9%)がある。〔3〕生活保護についてみると、16年度の都道府県別の保護率については、最高(23.1‰)が最低(2.1‰)の10.7倍となっているなど、地域格差がみられる。また、保護の実施体制及び実施状況についても格差がみられる。そして、保護率と完全失業率などの経済的要因及び高齢者単身世帯割合などの社会的要因との間に相関がみられた。
 このような状況にかんがみ、〔1〕医療保険等については、財政状況改善のために、保険料の収納率向上や医療費適正化など収支両面にわたって一層の取組に努めること、負担の公平等の観点から、医療費や医療提供体制の地域格差の縮小に努めること、医療費適正化の努力が関係者の負担軽減につながるような仕組みを検討することが望まれる。本院としては、医療保険等の財政状況等について、今後も引き続き注視しながら検査していくこととする。〔2〕介護保険については、将来も安定的に介護保険財政を維持するため、利用者の動向等をより的確に把握し、適時適切な対策をとる必要がある。介護給付費は、将来的には増加傾向になることが予想されていることから、介護サービスの利用動向を今後とも注視していく必要がある。認定率等の地域格差の拡大は好ましいものとは思料されず、過度のサービス提供や極端な地域間の施設サービスの偏在等に起因する場合には是正を図る必要がある。本院としては、制度全般にわたる動向について、引き続き注視しながら検査していくこととする。〔3〕生活保護については、経済的要因及び社会的要因が生活保護の動向に与える影響を踏まえて各種の施策を実施機関との十分な連携のもとに的確に講じていくこと、保護の実施体制及び実施状況について事業主体間の格差を縮小することが望まれる。本院としては、本制度の適正な運用はもとより、生活保護の動向について引き続き注視しながら検査していくこととする。

(7)中心市街地活性化プロジェクトの実施状況に関する会計検査の結果について

 本院は、参議院からの検査要請を受け、中心市街地活性化プロジェクトに関し、〔1〕平成10年度以降の省庁別事業費、国費負担額及び実施状況、〔2〕プロジェクト実施機関の人的体制・財政基盤、〔3〕中小企業の活性化等プロジェクトの有効性について検査を実施した。検査したところ、〔1〕10年度から16年度までの省庁別事業費(内閣府ほか8省)は5兆0183億円、国費負担額は2兆0028億円となっていた。そして、実施状況等については、10年度から12年度までに基本計画が作成された455地区のうち、137地区において計画作成に当たり市町村が地域住民等の意向を把握していなかったり、年間商品販売額等の具体的な数値目標を設定している地区が25地区にとどまっていたりなどしていた。また、新たな市街地を整備することとしている地区があったり、基本計画作成後5年以内に着手できるとした事業を定めているほとんどの地区において、関係者等の合意形成が図られていないことなどのため、5年を経過しても着手していない事業が含まれていた。〔2〕プロジェクト実施機関の人的体制・財政基盤については、市区町村における民間組織との連携を円滑にするための協議会の設置が5割程度にとどまっているなどしていた。また、タウンマネージメント機関(TMO)では、専任従事者を1人も置いていないものが6割以上となっており、その活動に係る支出の5割以上を国等の補助で賄っている商工会等TMOが7割あるなどしていた。〔3〕中小企業の活性化等プロジェクトの有効性については、人口、事業所数、年間小売商品販売額等の指標のプロジェクト実施前後の増加率とプロジェクト事業費の関係を比較するなどして分析したところ、人口以外の指標については一部の地区を除いて下げ止まりがみられるとはいえない状況となっていた。そしてプロジェクトの有効性には、実施される事業の種別、用途地域の状況、大規模小売店舗や公共・公益施設の立地状況など地区の特性等が影響を与えていると思料された。
 したがって、改正後のまちづくり三法及び新基本方針に基づく中心市街地活性化施策の実施に当たっては、〔1〕市区町村において、地域の実情に応じた適切かつ具体的な基本計画を作成し、施策を確実に実現するための体制の整備・充実を図り、明確な目標を定めて施策を実現していくこと、〔2〕国等において、中心市街地活性化のための取組を適切に評価する仕組みを整備し、都市機能の増進、経済活力の向上、「にぎわい」の回復等のための一体的な取組が効果的になされるよう効率的な国費等の投入を行っていくことが望まれる。本院としては、今後とも中心市街地活性化施策の効果が発現しているか引き続き注視していくこととする。

(特定検査対象に関する検査状況)

特定検査対象に関する検査状況として14件掲記した。

(1)防衛施設庁における建設工事及び委託業務に係る入札・契約の実施状況について

 防衛施設庁では、毎年度多額の事業費を投入して各自衛隊及び在日米軍が使用する防衛施設等の各種建設工事を実施している。今回、防衛施設庁における官製談合事件を踏まえ、建設工事及び委託業務に係る入札・契約状況について検査したところ、建設工事では、18年3月の入札・契約手続の再開後の平均落札率が同年2月までと比べ約10ポイント程度下がっていたり、複数回入札が行われた場合、最初に1位で応札した業者が落札に至るまで1位となっていたものが98.5%に上っていたりしている状況であった。また、複数の入札参加業者が提出した工事費内訳明細書に共通の誤字があるなど不自然な規則性が見受けられたり、特別な機器類を設置する設備工事等の予定価格の積算に当たり、当該工事の施工可能な業者を指名した後にその指名業者からのみ見積りを徴していたりするなどの事態が見受けられた。さらに、委託業務では、防衛施設庁と財団法人防衛施設技術協会との契約はすべて随意契約となっており、これらのうち一部の業務が防衛施設庁に無断で再委託されていたり、現場技術業務の委託費の積算に当たり、必要な技術者の職階及び人員も明示することなく同技術協会からの見積りによっていたりするなどの事態が見受けられた。
 したがって、防衛施設庁において、今回の官製談合事件によって失った国民の信頼を回復するために、国が被った損害の回復に努めるとともに、防衛本庁に設置された検討会の報告書にまとめられた新たな入札手続等を確実に実施し、併せて今回の検査結果を踏まえ、工事費内訳明細書の効果的な活用方法を検討したり、技術協会に随意契約で委託していた業務が競争契約となることから、委託方法、積算方法等を検討したりするなど適切な対応を図っていく必要がある。

(2)政府開発援助の状況について

 政府開発援助について、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、6箇国の32事業について現地調査を実施し、特に、独立行政法人国際協力機構が実施している技術協力プロジェクトに関し、相手国の執るべき諸措置の実施状況について検査したところ、相手国が執るべき諸措置が執られずにプロジェクトの効果が十分に発現していなかったり、供与した機材等が十分に活用されていないまま他の方途で事業が実施されていたりしたものが3事業あり、その事業執行に改善すべき点があると認められた。これらに関し、機構では、相手国が執るべき諸措置の実施状況を適時的確に把握していなかったり、相手国が執るべき諸措置が具体的に特定される文書を相手国と取り交わしていなかったりしていた。また、相手国が執るべき諸措置の実施を促すため、機構が相手国側に系統立てた働きかけを行ったかについて、本院は、確認することができなかった。
 したがって、機構においては、〔1〕相手国が執るべき諸措置の実施状況について、事業終了後においても適時的確に把握し、援助効果の発現に有効な対策を検討すること、〔2〕相手国が執るべき諸措置について具体的な内容を記録に留め、必要に応じ相手国と文書で確認するなどすること、〔3〕相手国が執るべき諸措置が実施されていない場合、相手国に対して系統立てた働きかけを行うこと、また、相手国との交渉の経緯を継続的に記録することに留意し、より着実に事業を執行することが必要である。

(3)公益法人の営む収益事業に対する法人税の課税状況について

 公益法人制度は、民法の制定以来、抜本的な見直しが行われておらず、従来から公益法人の在り方に対する批判や問題点の指摘が行われてきた。平成18年5月に公益法人制度改革関連3法が成立し、新たな公益法人制度での具体的な税制については、政府等において上記3法の施行日までに検討することとなっている。そこで、公益法人が営む収益事業に対する現行の法人税の課税がどのような状況になっているかについて、997法人を抽出して検査したところ、〔1〕公益法人が営んでいる収益事業の業種は、請負業、物品販売業、不動産貸付業等となっており、業種を確認できた978法人のうち半数の公益法人が2業種以上を営んでいた。〔2〕収入に占める収益事業の割合が100%となっている法人が20法人見受けられた。〔3〕みなし寄附金の規定を適用した公益法人487法人の中には、実質的な法人税負担割合が22%よりも軽減されているものが434法人見受けられた。〔4〕非収益事業会計への繰入れがある487法人の収支の状況をみると、153法人において収益事業会計の収支が0又は赤字となっており、88法人において非収益事業会計に繰越剰余金が生じていた。〔5〕非課税とされている事業等に係る収入についてみると、法人数が最も多いのは受取利息・配当金、金額が最も多いのは有価証券売却収入となっていた。〔6〕収益事業会計及び非収益事業会計の両会計の貸借対照表等を提出していた538法人の1法人当たりの平均総資産額は、社団法人962億余円、財団法人129億余円となっていた。
 今回の公益法人制度改革は、民法に基づく公益法人制度に代えて新たな非営利法人制度を創設したものであり、今後は新たな制度への円滑な移行に向けて、必要な準備がなされ、みなし寄附金など現行の公益法人における税制上の措置の適用状況の把握に努めつつ、専門的な検討が進められることが重要である。

(4)租税特別措置(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)の適用状況等について

 租税特別措置は、特定の政策目的を達成するための手段として、公平・中立・簡素という税制の基本理念の例外として設けられているものであり、また、厳しい財政状況の下で減収をもたらすものである。そこで、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(平成17年度における減収見込額810億円)について、その適用状況及び検証状況について検査した。その結果、適用状況については、〔1〕減額された課税価格の地域別平均をみると、東京都(23区)が政令指定都市の2.4倍、その他の市の4.6倍、町村の10.6倍となっており、地価の高い地域ほど減額された課税価格は大きくなっている。〔2〕事業の継続状況をみると、特定事業用宅地等の適用相続人及びその他事業用宅地等の適用相続人のうち、相続した事業用宅地等を譲渡するなどしている適用相続人も7.7%いる。〔3〕事業の規模をみると、小規模な事業(事業と称するに至らないような不動産の貸付けなどを含む。)も見受けられる。〔4〕居住継続等の要件を満たす相続人との共同相続により、要件を満たさない相続人が減額割合が80%である特定居住用宅地等などとして適用しているもので、当該相続人の適用面積が特定居住用宅地等などの適用面積全体の大部分又はすべてを占めているものが32件見受けられた。〔5〕1棟の建物の敷地の一部が特定居住用宅地等に該当することにより、相続人が居住を継続するなどしている居住用部分以外の貸付用等部分に対応する敷地部分を含めたその敷地全体に特定居住用宅地等として適用しているものが83件見受けられた。〔6〕譲渡された小規模宅地等が193件見受けられ、このうち相続税の申告期限までの保有継続の要件があったものは30件あり、30件のうち申告期限の翌日以後12箇月以内に譲渡されたものが19件ある。
 また、検証状況については、税制改正の要望の際の検証では、適用状況に関するデータなどによる具体的な政策効果の分析を行っていないなどの課題が見受けられた。また、政策評価では、小規模宅地等の特例については17年度まではいずれの施策にも含まれておらず、政策評価においては検証を行っていなかった。経済産業省においては、小規模宅地等の特例の検証について、その内容をより一層充実することにより、政策の実効性を高めていくとともに国民に対する説明責任を果たしていくことが肝要である。また、財務省においても、小規模宅地等の特例について今後とも十分に検証していくことが肝要である。

(5)都道府県労働局の会計経理の状況について

 本院では、広島、兵庫両労働局の不正経理を念頭に置き、17年次及び18年次の2箇年にわたり、都道府県労働局の会計経理について重点的な検査を行った。その結果、25労働局において、庁費、謝金、旅費等を不正に支出するなどしており、そのうち16労働局では、不正支出等によりねん出した資金を別途に経理するなどしていた。また、物品の購入等に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成するなどの事実と異なる不適正な会計処理を行い、庁費等を支出していた事態は、47労働局のすべてで見受けられた。さらに、超過勤務手当の不適正支給の事態、求人情報自己検索システムの取得等に当たり会計法令に違反して契約の締結及び経費の支払をしていた事態、競争入札の実施を偽装して契約を締結していた事態などが見受けられた。協議会に対する委託費についても、協議会事務局が設置された労働局において委託費を不正に支払い、別途に経理するなどしていた事態が見受けられた。
 労働局では、会計法令及び基本的な会計事務手続等を遵守し、もって適正な会計経理の規律を確保することの重要性が十分認識されておらず、従前からの違法又は不正な会計経理が慣行的に行われていた。本院では、労働局の会計経理の適正化、規律の確保の状況等を注視しつつ、会計経理を監督し、その是正を図り、もって不正な会計経理等の根絶を図るなどの使命を果たすべく、引き続き厳正に検査を実施していくこととする。

(6)国民年金保険料の申請免除及び若年者の免除特例の実施状況について

 社会保険庁では、国民年金法に基づき、国民年金事業を運営している。同事業の被保険者は、保険料を納付しなければならないが、一定の要件の下に保険料の全額又は半額の保険料の納付を要しない申請免除及び若年者の免除特例等が認められている。平成18年2月に、第1号被保険者からの申請がないまま免除等の承認を行っていた事態が社会保険庁の調査により判明し、5月に至り、国民年金保険料の免除等に係る不適正な処理の事態が新聞等で報道され、国会でも取り上げられた。本院においても事態の重要性にかんがみ、社会保険庁による全件調査等と並行して、社会保険庁の調査において適正な処理とされている申請書の中に不適切に処理されている申請書がないかなどについて検査したところ、申請免除等の審査に当たり、法令等に定められた要件を満たしていないのに承認するなど事務処理等が適切を欠いていた事態が180件(免除保険料相当額2385万円)見受けられた。
 社会保険庁では、本院の検査において適切を欠くと認められた事態については、第3次調査報告書において、改善を図っていくとしている。
 国民年金事業は今後も健全な国民生活の維持及び向上に寄与するために存続させなければならず、その前提として、本事業に対する国民の信頼を維持することが肝要である。そのためには法令等を遵守した事務処理の徹底が強く求められており、社会保険庁においては、上記報告書における改善策を着実に実施する必要がある。本院としては、今後、国民年金保険料の申請免除等を適切に実施するために社会保険庁が執ることとしている改善策の実施状況について注視しながら検査していくこととする。

(7)社会保険庁が設置した年金・健康保険福祉施設の整理合理化の実施状況について

 社会保険庁では、年金の福祉施設及び政府管掌健康保険の保健・福祉施設を設置・運営してきたが、この年金・健康保険福祉施設は、近年の年金制度等を取り巻く厳しい財政状況、施設を取り巻く社会環境、国民のニーズの変化等を踏まえ整理合理化を行うこととされた。このため、社会保険庁では平成17年3月に整理合理化計画を取りまとめ、独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構を同年10月に設立した上で、これに整理合理化の対象となる年金・健康保険福祉施設を出資し、機構成立後5年以内に民間等に譲渡し又は廃止することとした。そこで、機構への出資価額の算定状況、機構における年金・健康保険福祉施設の廃止、譲渡状況等について分析するとともに、今後の機構における年金・健康保険福祉施設の譲渡等に当たり留意すべき点がないかなどについて検査を実施した。
 検査したところ、機構成立時に出資された年金・健康保険福祉施設に係る政府出資金の額(1921億円)は、年金・健康保険福祉施設の台帳価格(6651億円)を下回り、厚生保険特別会計及び国民年金特別会計において多額の固定資産承継損を生じている。また、出資された年金・健康保険福祉施設には、敷地内に旧法定外公共物が存在するものが10施設あるなど、今後の譲渡に影響を与えると考えられる要因を含むものが見受けられた。一方、機構における18年4月までの譲渡状況については、出資された288施設等のうち入札を実施したものは21施設等であり、そのうち落札されたものは10施設等にとどまっていた。
 したがって、社会保険庁においては、〔1〕年金資金等への損失の最小化の観点から、機構において適正な価格での譲渡が実施されるために必要な情報提供等の支援、〔2〕敷地内に旧法定外公共物が存在する年金・健康保険福祉施設等について、機構において必要となる業務の支援、〔3〕今後の落札状況の推移について注視し、その上で必要となる入札方法の改善等についての助言等、〔4〕今後予定されている、社会保険診療所、保養ホーム等の医療関係施設や終身利用老人ホーム等の施設の譲渡に際し必要な情報提供等の支援について取組を検討する必要があると認められる。また、機構においては、今後の譲渡に影響を与えると考えられる要因を含む資産について適切に対応するとともに、施設の特性に応じた適時適切な譲渡を行うことが望まれる。

(8)外国産米の在庫及び損益の状況について

 農林水産省では、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づき、国内における米穀の需給に関係なく、平成7年度からミニマム・アクセス米を輸入している。そして、毎年度の売渡数量が買入数量を下回っているため、17年度末現在の在庫数量は181万tとなっている。その保管料が170億円と多額に上っているなどのため、ミニマム・アクセス米に係る損益については、17年度に207億円の損失が生じている。そこで、ミニマム・アクセス米に係る損失の発生原因に留意しつつ、在庫数量を削減して保管料を節減することができないかなどについて検査したところ、米政策改革が推進され、農業者等が主体的に需要に応じた生産に取り組む需給調整に移行している中で、在庫数量を削減するために主食用としてミニマム・アクセス米を販売することは、困難な状況となっていた。また、加工用途については、需要量の減少傾向にある中では今後大幅な売渡数量の増加が見込めず、援助用途についても、売渡数量の増加が必ずしも望める状況とはなっていなかった。このような需要状況の中、主食用又は加工用の需要が見込めないミニマム・アクセス米については、年度末の在庫評価に当たり、援助用等の評価単価で評価するため、買入単価を大幅に下回り、評価損が発生していた。しかも、17年度には評価損を考慮しなくても43億円の損失が生じていた。
 したがって、農林水産省においては、今後もガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づくミニマム・アクセス米の受入れに当たっては、ミニマム・アクセス米に係る損益の悪化要因に対応して、保管料の節減、新規需要の拡大等損益の健全化に向けた更なる努力が望まれる。

(9)中小企業金融安定化特別保証制度の実施状況について

 中小企業金融安定化特別保証制度は、いわゆる貸し渋りにより中小企業の資金繰りが悪化したことなどの対策の一環として、平成10年10月から13年3月までの間に30兆円の保証規模を確保するべく、臨時異例の措置として創設された。国は、同制度の運営に必要となる財政負担額を算定するに当たり、保証枠25兆円に係る事故率を10%、残り5兆円に係る事故率を8%とし、回収率については、一般保証と同様の50%として、その損失額を1兆4500億円と設計した。そして、中小企業金融公庫に対し1兆1599億円を出資するとともに、全国52の信用保証協会に対しては、都道府県等を通じて計2900億円を特別基金として出えんした。同制度の取扱終了後5年が経過したことなどから、制度設計上想定した事故率及び回収率と実績とのかい離等について検査したところ、17年度末現在で、事故率は8.1%と想定した率に近いものの、回収率は12.1%と想定した率を著しく下回っていた。この結果、公庫においては、同制度に係る保険収支は11年度以降毎年度大幅な赤字を計上し続け、累計で1兆4489億円となっていて、前記の出資金1兆1599億円を2889億円上回っている。一方、52協会においては、各協会ごとに事故率、回収率に著しい差があることなどにより、特別基金を既に全額取り崩している協会が10協会あるものの、残りの42協会では計560億円の残高を保有しており、保証債務残高等から判断すると、その相当部分が将来長期にわたって取り崩されることなく保有されるものと見込まれる。
 したがって、国等においては、協会の特別基金の最終的な処理方針を検討すること、また、今後、協会に対して補助する場合は、各協会の保証承諾額などに応じた適切な補助金額の配分に努めるとともに、あらかじめ補助金の返還などについて規定しておくことなどの対応を図っていくことが重要である。

(10)農林漁業金融公庫における林業公社の分収林事業に対する貸付け等の状況について

 農林漁業金融公庫では、林業公社の分収林事業に対し多額の貸付けを行っている(平成17年度末現在の貸付金残高4171億円)が、昨今、多額の債務を抱えるなど厳しい財務状況下にある林業公社が多数に上っている。そこで、林業公社の分収林事業に対する貸付け等の状況について検査したところ、木材価格の低迷等の林業情勢が大きく変化する中、木材販売収入により公庫等の借入金を返済するという分収林事業の前提は崩れる状況となっており、各林業公社の16年度決算に基づき公庫が作成した長期収支計画では、39林業公社のうち過半の林業公社において、将来の伐採時の木材販売収入では公庫や都府県等からの借入金を償還できない財務状況にあることが見込まれている。したがって、今後も、公庫の既往の貸付金について施業転換資金への借換えや任意繰上償還が増加して、一般会計からの補給金が増加する要因となったり、損失補償契約を締結している都府県等から返済猶予等を求められることにより、公庫の資金運用等に影響が出たりすることも懸念される。
 ついては、公庫及び関係機関において、より適切な長期収支計画を基にした林業公社の財務状況等の検証、それらを踏まえた業務運営が行われることが望まれる。

(11)長岡郵便局等における別後納郵便物の料金の不適正な収納等に関する検査状況について

 日本郵政公社では、料金適正収納マニュアル等において、別後納郵便物の取扱いについて定めており、同一形状かつ同一重量の郵便物ごとに重量を計測し、この重量を1通当たりの平均重量で除して全体の差出通数を算出する方法である重量換算などにより差出通数を確認し、その料金については、差出日に収納することなどとしている。公社が、平成18年5月に、多数の郵便局において別後納郵便物に係る料金不適正収納事案が発生したことを公表したことなどから、郵便局における別後納郵便物についての差出通数の確認や料金の収納は適切かなどについて検査した。検査したところ、料金不適正収納事案が発生したとして公社が公表した長岡郵便局ほか3局においては、マニュアル等に定められた基本的な手続を逸脱した取扱いが常態化していたことが判明し、その中で郵便物を不適正に引き受けていたり、郵便料金を不適正に割り引いていたりするなどの事態が生じていた。また、他の郵便局においても、別納料金を後日に収納していたり、形状・重量が同一でない郵便物をまとめて重量換算により通数確認を行っていたりするなどの事態が多数見受けられた。このような状況を放置すれば、他の郵便局でも同様の不適正な事態が生じる可能性が高くなると認められる。
 したがって、公社においては、別後納郵便物の引受け及び料金収納を含め、郵便事業における法令等の遵守の徹底、マニュアル等に定められた手続の徹底等に従来にも増して取り組む必要がある。

(12)郵便貯金における預金者ごとの貯金総額の管理状況について

 日本郵政公社では、郵便貯金法で定められた預金者ごとの預入限度額について、定期的に預金者ごとの名寄せを行い、預入限度額の超過者に対する減額処理の手続を定めて貯金総額の管理を行っている。この預入限度額制度の適切な運用は公社の重要な課題であるとともに、公社の民営・分社化後においては、郵便貯金の大部分は独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構に承継され、政府保証が継続されることから、それらの郵便貯金に預入限度額の超過分が含まれることがないよう、貯金総額を適切に管理することが必要となっている。そこで、公社が行っている預金者ごとの貯金総額の管理に関し、違法な事態の是正は適正かつ効率的に行われているか、実施に当たって留意すべき点はないか、預入限度額を超過した貯金に関し、その募集に際して職員等に支給された手当等の返納処理が適切に行われているかなどについて検査した。検査したところ、なお減額処理が未済となっている超過者が個人預金者、法人等預金者のいずれにおいても多数見受けられ、その超過額も多額(個人預金者18年3月末現在2131億円、法人等預金者18年4月末現在377億円)に上っている状況である。そして、これらの処理未済者への減額要請の実施状況をみると、催告書を発送する必要があるなど厳正な対応が必要な者が見受けられるのに、その発送に必要な事務が手続どおり行われていなかった。また、貯金総額の現在の管理方法では、なお新たな超過者が発生する場合があり、さらに、職員等に支給された手当等も返納の要否等をほとんど検証できない状況となっている。
 したがって、公社においては、今後、貯金総額の管理を適正に実施していくため、催告書の発送手続を迅速に進めるなどして超過者の解消を図るとともに、名寄せの精度を高めたり、新たな超過者の発生を防止したりするなどの施策を一層推進することが必要である。

(13)株式会社産業再生機構による事業再生支援の実施状況について

 産業再生機構は、我が国の産業の再生を図るとともに、金融機関等の不良債権の処理の促進による信用秩序の維持を図るため、15年4月に設立された時限的な組織である。同年5月の営業開始以降、産業再生機構は41案件の支援決定を行い、政府保証が付された金融機関からの借入金等を原資として、債権買取り、新規融資及び出資等(計9763億円)により支援対象事業者の再生支援を実施した。産業再生機構は、18年6月までに再生支援が終了した34案件に係る債権等について、すべて回収又は処分を行っており、また、再生支援は不良債権処理の促進に貢献してきた。そして、産業再生機構の財務状況の推移をみると、解散時において国民負担が生じる可能性は相対的に低くなっているものと思料される。
 本院としては、同年同月末時点で、産業再生機構に、回収又は処分していかなければならない7案件に係る債権等が残っていることから、産業再生機構の再生支援の状況、保有している債権等の処分等の状況及び財務の状況について、引き続き注視していく。また、本来であれば民間で実施すべき事業再生を、産業再生機構が実施したことをかんがみると、我が国の事業再生において、産業再生機構に蓄積された債権者間調整及び事業再生の手法に関する知見が十分に活用されることが肝要である。

(14)政府出資法人における内部監査等の状況について

 内部統制の充実強化はすべての政府出資法人に求められており、内部監査にはその一端を担うことが期待されている。そこで、政府出資法人における内部監査の実施体制や実施状況、他の監査組織の活動と監査組織間の連携、業務リスクの監査への取り込み状況等について、50法人を対象に検査した。検査したところ、〔1〕内部監査組織が会計部門など特定部門に所属している、監査権限等を定めた規程等が整備されていない、内部監査職員が自ら兼任する業務を監査していたり監事監査業務を実質的に補助する場合に日常業務の大半が監事監査業務に費やされていたりしている事態が見受けられた。また、〔2〕会計士監査を含めた監査組織間の連携が図られていなかったり、業務リスクを取り込んだ監査や本院の指摘事項、法人で発生した不祥事に対応した監査等が十分に行われていなかったりしている事態も見受けられた。さらに、〔3〕監査結果の周知や改善措置の定着状況の確認が十分でない法人や、〔4〕職員数や支出規模が小さいなどの事情から、内部監査組織を設置していない法人も見受けられた。
 したがって、各法人においては、〔1〕内部監査業務における独立性、客観性を確保するため、内部監査組織を監査対象部署から独立させるとともに、規程等において監査権限等を明確化すること、内部監査職員が現在兼任する業務等に対する監査には一定の配慮をするほか、監事監査業務を実質的に補助する場合などには両監査の役割等の相違に留意すること、〔2〕効率的、効果的な内部監査等を実施するため、業務リスク等を踏まえて適切な監査計画を策定すること、必要な監査水準を確保するなどのためマニュアル等を整備すること、他の監査組織と必要な連携を図り監査の品質向上等に努めること、本院の指摘や重大な不祥事を受けての監査等を適切に実施するとともに、講じられた措置の有効性についても監査すること、〔3〕内部監査等の有効性を確保するため、監査結果を法人組織内に周知するとともに、改善措置の定着状況を確認すること、〔4〕内部監査組織を設置していない法人においては、内部牽制の充実や業務リスクへの適切な対応等を含めて内部統制の有効性の確保に一層留意することが望まれる。

第2 観点別の検査結果

 会計検査院は、前節に記載した「平成18年次会計検査の基本方針」のとおり、正確性の観点、合規性の観点、経済性・効率性の観点、有効性の観点等の多角的な観点から検査を実施した。その結果は「第1 事項等別の検査結果」で述べたとおりであるが、このうち「第3章 個別の検査結果」に掲記した事項について、検査の観点に即して事例を挙げると次のとおりである。

1 主に正確性の観点から検査したもの

 検査対象機関は、その執行した予算や管理する財産について、法令や各種会計基準に従って、適正に経理処理を行うとともに、その状況を適切に計算書や財務諸表に表示しなければならない。この経理処理が適正に行われ、予算執行や財産管理の状況が計算書や財務諸表に適切に表示されているかという正確性の観点から検査した結果として次のようなものがある。

〔1〕 独立行政法人に出資された国有物品の時価評価額や公団の民営化に伴って承継された資産の価額が適切に算定されているかなどに着眼して検査した。その結果、 「独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構に出資された物品の時価評価額の算定について」「民営化に伴う資産の承継・評価について」 として是正改善の処置を要求した。

〔2〕 国の出資法人の財政状態及び運営状況が財務諸表に適切に表示され、財務諸表の真実性が確保されているかに着眼して検査した。その結果、 「有形固定資産の認識・計上処理を適切に行い財務諸表を適正な表示に是正させたもの」 を掲記した。

2 主に合規性の観点から検査したもの

 検査対象機関は、予算、法令等に従って適正に業務を実施しなければならない。業務の実施に際し、予算、法令等が守られているか、さらには予算、法令等の趣旨に適合した制度の運用が行われているかという合規性の観点から検査した結果として次のようなものがある。

〔1〕 会計に関する事務を処理する職員は、予算や会計法令等の定めるところに従って、収入金の受入、支出金の支払、契約手続等の事務を適正に行うとともに、その経理処理を確実に行うべきものであるので、これらが予算や会計法令等に従って適正確実に行われているか、また、適正確実に行うような事務処理体制が執られているかに着眼して検査した。その結果、 「現場技術業務に係る予算執行が会計法令等に違背し、誤った歳出科目から支出しているもの」「研究機関における研究用物品の納品検査に係る事務処理体制を整備することなどにより、科学研究費補助金の経理の適正化が図られるよう改善させたもの」「物品の購入等に当たり、競争入札の実施を偽装して契約を締結していたもの」「虚偽の内容の関係書類を作成し、庁費、謝金、旅費、超過勤務手当等を不正に支出するなどし、これを別途に経理して業務の目的外の用途に使用したり、職員が国庫金を領得したりするなどしていたもの」「航空機を利用した出張に係る旅費の精算手続及び審査を適切に行うための規定を整備するなどして、旅費の支給が適正に行われるよう改善させたもの」 を掲記した。

〔2〕 租税及び保険料は適正に徴収すべきものであるので、個々の徴収額に過不足がないかに着眼して検査した。その結果、 「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」や 「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」、 「労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」 を掲記した。

〔3〕 老齢厚生年金、失業等給付金等の支給は適正なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、 「厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの」や、 「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」「雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったもの」 を掲記した。

〔4〕 医療機関からの診療報酬や労災診療費の請求に対する支払が適正かに着眼して検査した。その結果、 「医療費に係る国の負担が不当と認められるもの」や 「労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの」を掲記した。

〔5〕 役務の調達に当たり、支払額が適正なものとなっているか、また、公正性、競争性が確保されるよう契約事務が適切に行われているかに着眼して検査した。その結果、 「雇用安定・創出対策事業等及び緊急地域就職促進プロジェクトに係る委託事業の実施に当たり、委託事業の経費に架空の物品購入費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの」「調査・研究等に係る委託事業の委託費の算定について、事業に従事する者の人件費が委託先の実支出額や勤務実態を反映した適正なものとなるよう改善させたもの」、 「業務委託契約に係る委託費の精算に当たり、労務費の計上が適切を欠いたため、委託費の支払が不当と認められるもの」「大学運営に必要な業務の委託に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保を図るため、契約方式を競争契約に改めるなど契約事務を適切に実施するよう改善させたもの」 を掲記した。

〔6〕 補助金の交付申請や実績報告に係る経理が適正に行われているか、また、補助事業が適正に実施されているかに着眼して検査した。その結果、 「私立高等学校等経常費助成費補助金の加算単価の対象となる生徒等数の確認を適切に行うことにより、補助金の算定を適正なものとするよう改善させたもの」「国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの」「不要漁船・漁具処理対策事業の実施に当たり、事業の要件とされている残存漁業者等の資金負担が行われていないものに対して補助金が交付されているもの」「中小企業経営革新等対策費補助金等の経理が不当と認められるもの」「公営住宅家賃対策補助金の経理が不当と認められるもの」「公共交通移動円滑化設備整備費補助金等の算定に当たり、公営バス事業者が補助対象経費に消費税額を含めた場合の通常車両価格に係る消費税額の取扱いを適切に行うよう改善させたもの」 を掲記した。

〔7〕 貸付金について、繰上償還の際に期限前弁済手数料の徴求対象であるかの確認等が適切に行われているかに着眼して検査した。その結果、 「貸付金の繰上償還に伴う期限前弁済手数料を適正に徴求するよう改善させたもの」 を掲記した。

3 主に経済性・効率性の観点から検査したもの

 検査対象機関は、その業務を経済的・効率的に実施しなければならない。業務の実施に際し、経費は節減できないか、同じ費用でより大きな成果が得られないかという経済性・効率性の観点から検査した結果として次のようなものがある。

〔1〕 貿易再保険事業において、外貨建回収金及び外貨建代位取得債権収入等を邦貨建てにする際の外国為替取引手数料の節減を図ることができないかに着眼して検査した。その結果、 「貿易再保険事業における外貨建回収金等を邦貨建てにする際に市中の取引慣行を踏まえて外国為替取引手数料の節減を図るよう改善させたもの」 などを掲記した。

〔2〕 工事の設計や積算は経済的・効率的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、 「国が設置及び管理する空港の滑走路等に設置された管路等の埋設深さを切削・打換え工法を用いる補修工事に対応した適切かつ経済的な設計とするよう改善させたもの」や 「境界ブロック等の基礎コンクリートに係る型枠工費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの」 を掲記した。

〔3〕 物品の調達は経済的・効率的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、 「陸上、海上、航空各自衛隊が使用する食器の調達に当たり、仕様を統一し数量を合わせて一本化して調達することにより、調達額の節減を図るよう改善させたもの」を掲記した。

〔4〕 役務の仕様や積算は経済的・効率的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、 「銀行券自動鑑査機等の保守契約について、保守作業の実績及び保守対象機器の範囲に応じて基本料金を減額する条項等を定めることにより、保守料の節減を図るよう改善させたもの」や 「ひかり電話対応機器等を加入者宅に配送する業務について、加入の状況に応じて、事業便又は宅配便のいずれかを使用する方法に見直すことにより、配送費の節減を図るよう改善させたもの」「電気設備、機械設備等に係る運転保守管理業務における労務費の積算について、業務の実態に適合させるなどして適切なものとするよう改善させたもの」「自動車検査用機械器具の定期点検に当たり、合理的な方法で費用を計上して作業単価を算定することにより経済的な積算を行うよう改善させたもの」 を掲記した。

〔5〕 国等からの補助金や助成金等が合理的に算定されているか、事務・事業の実施に対して必要以上に交付されることとなっていないか、国の補助事業により整備した設備等が効率的に利活用されているかに着眼して検査した。その結果、 「地籍簿の数値情報化経費の積算に当たり、既存の電磁的記録を利用することにより、経費の低減を図るよう改善させたもの」「除雪工事において使用する凍結防止剤の購入費の積算を市場価格調査を行うなどして適切なものとするよう改善させたもの」「市町村合併により遊休化している、地域イントラネット基盤施設整備事業等で整備した設備等について効率的な利活用を図るよう改善させたもの」 を掲記した。

〔6〕 事業に対して貸し付ける資金が適切に管理され効率的に運用されているか、受け入れた貸付金の回収金等の国庫納付が適時適切に行われているかに着眼して検査した。その結果、 「貸付事業等の業務を経理する一般勘定(一般経理)において、普通預金等で保有している資金を適切に管理することにより、効率的な資金運用を行うよう改善させたもの」「厚生労働省において独立行政法人労働者健康福祉機構が受け入れた貸付金の回収金等を速やかに国庫に納付させるよう改善させたもの」 を掲記した。

4 主に有効性の観点から検査したもの

 検査対象機関の事業の中には、一定の目的の下に、社会資本を整備したり、財政援助・助成措置を講じたり、財産を保有・活用したりなどしているものがあるが、これらが所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどの有効性の観点から検査した結果として次のようなものがある。

〔1〕 多額の資金を投下して実施した事業がその目的を達成しているか、事業が投資効果を発現しているかに着眼して検査した。その結果、 「農村総合整備モデル事業の実施に当たり、整備した農道が通行可能な道路に接続していないため、補助の目的を達していないもの」や 「公営住宅等供給促進緊急助成事業費補助金の交付又は公営住宅供給促進緊急助成事業無利子貸付金の貸付けを受けて取得していながら公営住宅等が建設されていない土地について、住宅事情等を踏まえた公営住宅等の供給が行われるなどするよう改善させたもの」「二酸化炭素排出抑制対策事業で設置した小型風力発電機の発電量が消費電力量を下回っていたため、二酸化炭素排出量が削減されず、交付金交付の目的を達していないもの」 を掲記した。

〔2〕 事業を取り巻く環境や状況の変化を踏まえつつ事業が適切に実施されているかに着眼して検査した。その結果、 「偽造クレジットカード解析システムの運用状況が著しく低調となっていたため、その運用の廃止を行うなどの改善をさせたもの」や 「学校給食用食肉流通・消費改善対策事業について、学校給食を取り巻く環境の変化を踏まえて事業を終了し基金の残額を返還するよう改善させたもの」 を掲記し、 「土地改良負担金総合償還対策事業における土地改良負担金対策資金の資金規模について」 として改善の処置を要求した。

〔3〕 事業により整備した施設、設備等について、適切に管理され、計画に沿って有効に利活用されているかに着眼して検査した。その結果、 「トレーサビリティシステム導入促進対策事業で構築したシステムが運用されず、停止していて補助の目的を達していないもの」「農村総合整備事業等の実施に当たり、事業計画を適切に作成するなどして公共施設等の建設のため整備する施設用地の遊休化を防止し、事業効果が発現するよう改善させたもの」「ほ場整備事業等により整備された農地が良好な状態で維持・保全され、その有効利用が図られるよう改善させたもの」「農地情報管理システム整備事業等を適切に実施させるとともに、農地情報管理システムの活用を図るため、当該システムに入力された情報を適時適切に更新するよう改善させたもの」「自動車事故患者の治療のために国からの出資金により取得した医療機器が、長期間一度も使用されていない状況が継続していたにもかかわらず有効活用を図るための対策が執られず、また、適切な維持管理が行われないまま、遊休化していたもの」「道路管理者が整備した有料駐車場が低利用となっているなどのため、駐車場の利用方法の改善等について検討することが必要な事態について」 を掲記した。

 なお、上記のほか、第4章の「国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等」においても、前記の各観点から検査を実施しその結果又は状況を掲記している。