近年、我が国の社会経済は、急速に進行する少子高齢化や本格的な人口減少、潜在成長率の停滞、自然災害の頻発化・激甚化等への対応といった難しい課題に直面している。また、コロナ禍からの正常化が進んでいる一方で、世界的な物価高騰、行政のデジタル化の遅れなどへの対応が課題となっている。一方、我が国の財政状況をみると、公債残高は、連年の公債発行により増加の一途をたどっており、財政健全化が課題となっている。また、国会においては、国会による財政統制を充実し強化する観点から、予算の執行結果を把握して次の予算に反映させることの重要性等が議論されている。
このような中で、本院は、その使命を的確に果たすために毎年次策定している会計検査の基本方針に従って、我が国の社会経済の動向、財政の現状、行政における様々な取組等を踏まえて国民の期待に応える検査に努めており、特に、国会等で議論された事項、新聞等で報道された事項その他の国民の関心の高い事項については、必要に応じて機動的、弾力的な検査を行うなど、適時適切に対応することとしている。
国民の関心の高い事項等としては、新型コロナウイルス感染症対策、物価高騰対策、少子高齢化等を背景とした社会保障、デジタル、自然災害の頻発化・激甚化等により関心が一層高まっている国民生活の安全性の確保といった分野が挙げられる。また、厳しい財政の現状等を踏まえて、予算・経理の適正な執行はもとより、制度・事業の効果、資産、基金等のストック等に対する国民の関心は引き続き高いものとなっている。
これら国民の関心の高い事項等について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の多角的な観点から検査を行った結果、「第3章 個別の検査結果」及び「第4章 国会及び内閣に対する報告並びに特定検査対象に関する検査状況等」に掲記した主なものを示すと、次のとおりである。
上記に示したものを含めた「新型コロナウイルス感染症対策関係経費等に関するもの」の一覧については、別表のとおりである。
(1)のほか、参議院(決算委員会)から国会法第105条の規定による会計検査及びその結果の報告を求める要請を受諾した事項のうち、令和6年10月までに報告を行っていない事項は「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う旅行振興策の実施状況等について」(5年6月13日受諾)、「官民ファンドにおける業務運営の状況について」(同日受諾)、「国庫補助金等により独立行政法人、基金法人及び都道府県に設置造成された基金について」(6年6月11日受諾)、「有償援助(FMS)による防衛装備品等の調達の状況について」(同日受諾)及び「マイナポイント事業の実施状況等について」(同日受諾)の5件であり、これらについて検査を実施している。
本院は、今後も我が国の社会経済の動向、財政の現状等を踏まえて国民の期待に応える検査に努めるために、国会等で議論された事項等の国民の関心の高い事項については、必要に応じて機動的、弾力的な検査を行うなど、適時適切に対応するとともに、我が国の財政健全化に向けた様々な取組について留意しながら検査を行っていくこととする。
別表 新型コロナウイルス感染症対策関係経費等に関する検査報告掲記事項の一覧
番号 |
府省等名
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掲記区分
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事項 | ページ |
1 |
総務省
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不当
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新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の交付対象事業費を過大に精算するなどしていたもの | リンク参照 |
2 |
財務省
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処置済
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交付要綱等において使途が明らかでないなどの補助金等収入について、各府省庁と連携を図るなどして、特別会計を設けて事業を行う国及び地方公共団体並びに公共・公益法人等にその消費税法上の取扱いなどについて周知する仕組みを整備するとともに、税務署等においてチェックシートを活用するなどして、消費税の調整計算に係る申告審理が適切に行われるよう改善させたもの | リンク参照 |
3 |
厚生労働省
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不当
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新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G―MIS)の構築、運用等一式に係る契約において、医療機関等からの問合せ対応を行うコールセンターの運営について業務に従事した実態のない人数等に係る金額が請求されるなどしていたのに、確認が十分でなかったことなどのため、支払額が過大となっていたもの | リンク参照 |
4 |
厚生労働省
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不当
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インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金(インフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業及びインフルエンザ流行期に備えた発熱患者の外来診療・検査体制確保事業実施医療機関支援事業)が過大に交付されていたもの | リンク参照 |
5 |
厚生労働省
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不当
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新型コロナウイルス感染症患者等入院受入医療機関緊急支援事業補助金が過大に交付されていたもの | リンク参照 |
6 |
厚生労働省
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不当
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新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症対策事業及び新型コロナウイルス感染症重点医療機関体制整備事業に係る分)が過大に交付されていたもの | リンク参照 |
7 |
厚生労働省
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不当
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新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症患者等入院医療機関設備整備事業に係る分)が過大に交付されていたなどのもの | リンク参照 |
8 |
厚生労働省
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不当
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新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(帰国者・接触者外来等設備整備事業に係る分)が過大に交付されていたもの | リンク参照 |
9 |
厚生労働省
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不当
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新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(感染症検査機関等設備整備事業に係る分)が過大に交付されていたもの | リンク参照 |
10 |
厚生労働省
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不当
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新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症重点医療機関等設備整備事業に係る分)が過大に交付されていたもの | リンク参照 |
11 |
厚生労働省
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不当
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新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルス感染症を疑う患者受入れのための救急・周産期・小児医療体制確保事業に係る分)が過大に交付されていたもの | リンク参照 |
12 |
厚生労働省
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不当
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新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金(医療分)(新型コロナウイルスワクチン接種体制支援事業に係る分)が過大に交付されていたもの | リンク参照 |
13 |
厚生労働省
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意見表示
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新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の実施に当たり、フォローアップ支援について、都道府県社会福祉協議会と市町村社会福祉協議会等との役割や役割に応じた実施方法を整理し、明確にして、委託等によりフォローアップ支援を実施する場合には、役割に応じた実施方法を委託契約書、仕様書等に明示するよう都道府県社会福祉協議会を指導するとともに、フォローアップ支援等の事業を適切に実施していくことができるよう、都道府県等において、適時適切に債権管理積立額の状況等を確認し、検証するなどの体制を整備するよう意見を表示したもの | リンク参照 |
14 |
独立行政法人中小企業基盤整備機構
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不当
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実質的還元による不正が行われたことなどにより、サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金が過大に交付されていたもの | リンク参照 |
15 |
独立行政法人中小企業基盤整備機構
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不当
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中小企業等事業再構築促進補助金の補助対象事業費に対象とならない経費を含めていたもの | リンク参照 |
16 |
経済産業省、独立行政法人中小企業基盤整備機構
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意見
表示 ・ 処置 要求 |
サービス等生産性向上IT導入支援事業の実施に当たり、実質的還元等により過大に交付された補助金について返還手続を行わせるよう適宜の処置を要求し、並びに同種同様の不正な事態の有無を調査して必要な場合には補助金の返還、IT導入支援事業者の登録取消しの手続等を速やかに行わせるとともに、各種審査等における不正防止策等が適時適切に行われるための指針等を整備し、また、事業主体がITツールを解約した場合に交付決定の取消しや残存簿価分の納付が適切に行われるための仕組みを整備するよう改善の処置を要求し、及び補助事業の効果を正確に把握できるような確認体制を整備するなどするよう意見を表示したもの | リンク参照 |
17 |
8府省等
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特定
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一般会計の補正予算の執行状況等について | リンク参照 |
18 |
2府省等
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特定
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新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金による事業の実施状況について | リンク参照 |
19 |
2府省等
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特定
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子育て世帯及び低所得世帯向け給付金事業の実施状況について | リンク参照 |