ページトップ
  • 昭和54年度|
  • 第1章 検査結果の概要

不当事項等の概要


第2節 不当事項等の概要

 検査の結果について、「不当事項」、「意見を表示し又は処置を要求した事項」、「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」及び「特に掲記を要すると認めた事項」の各事項に区分して、その概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)

 検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を「不当事項」として、計157件を掲記した。これを態様別に説明すると、次のとおりである。

1 収入に関するもの(計5件 17億7950万余円)

所管名 租税 保険 不正行為
法務省


1

1
大蔵省 1     1
厚生省   2   2
労働省   1   1
1 3 1 5

(1)租税 1件 12億4338万余円

○大蔵省

・租税を徴収するに当たって、当局が課税資料の収集や活用を適確にしていなかったり、法令適用の検討が十分でなかったり、納税者から提出された申告書に記載されている所得金額や税額の計算が誤っていたのにこれを見過ごしたりするなど調査が十分でなかったことによって、徴収額に過不足を生じたもの

(2)保険 3件 5億1616万余円

○厚生省

・健康保険及び厚生年金保険の保険料を徴収するに当たって、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬についての調査が十分でなかったなどのため、徴収額に不足を生じたもの(1件 1億3042万余円) 

・船員保険の保険料の徴収に当たって、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬についての調査が十分でなかったなどのため、徴収額に不足を生じたもの(1件 4451万余円)

○労働省

・労働保険の保険料を徴収するに当たって、事業主が提出する確定保険料申告書の内容についての調査が十分でなかったため、徴収額に過不足を生じたもの(1件 3億4121万余円)

(3)不正行為 1件 1996万余円

○法務省

・法務局出張所の所長が、登記申請書に他の登記申請書からはぎ取った消印済みの収入印紙をはり付けるなどの方法により、便宜預かった登録免許税相当額の現金及び未消印の収入印紙を領得したもの

2 支出に関するもの(計134件 210億8158万余円)

所管又は団体名 予算経理 工事 物件 役務 保険 補助金 貸付金 不正行為 その他
総理府(防衛庁)


2







2
法務省       1           1
外務省       1           1
文部省           6       6
厚生省           38       38
農林水産省           17       17
通商産業省           17       17
運輸省       2           2
労働省 1       2         3
建設省   1       18       19
日本国有鉄道   1               1
日本電信電話公社 3 2           5   10
中小企業金融公庫             8     8
日本住宅公団               1   1
日本鉄道建設公団   1             1  2
中小企業振興事業団             1     1
動力炉・核燃料開発事業団     1 1           2
日本私学振興財団           3       3
4 5 3 5 2 99 9 6 1 134

(1)予算経理  4件 198億2858万余円

<架空の賃金、旅費又は会議費を別途に経理していたものなど>

  3件 13億8344万余円

○労働省

・架空に賃金を支払い、これを別途に経理し会食等の経費に使用していたもの (1件 5069万余円)

○日本電信電話公社

・架空の名目によって旅費を支出して、これを別途に経理し会食等の経費に使用したり、職員に支給したりしていたもの(1件 3億8735万余円)

・架空の名目によって会議費を支出して、これを別途に経理し会食等の経費に使用したり、正規の手続を執らないで実施していた会食の経費などに充当していたもの(1件 9億4539万余円)

 

<給与の支出及びその決算処理が不当と認められるもの> 

1件 184億4513万余円

○日本電信電話公社

・職員給与の支出及びその決算処理が不当と認められるもの

(2)工事 5件 7100万余円
<予定価格の積算が適切でなかったもの>  2件 4700万余円

○日本国有鉄道

・連絡設備新設工事の施行に当たり、鉄骨架設費及び覆工板敷設撤去費の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの(1件 2520万余円)

○日本鉄道建設公団

・バラスト軌道新設工事の施行に当たり、道床バラスト製作散布工事費等の積算を誤ったため、契約額が割高になったもの(1件 2180万余円)

<監督、検査が適切でなかったもの> 3件 2400万余円

○建設省

・道路の災害防止工事の施行に当たり、雪崩(なだれ)抑止ぐいを設計と相違して施工したもの(1件 634万余円)

○日本電信電話公社

・通信用ケーブル収容管路の耐火防護工の施行に当たり、吹付け石綿等を設計と相違して施工したもの(2件 1766万余円)

(3)物件 3件 4265万余円
<物品の購入計画等が適切でなかったもの> 3件 4265万余円

○総理府(防衛庁)

・P−2J型対潜哨(しょう)戒機等用プロペラ部品を過大に調達したため、不経済になったもの(1件 2890万余円)

・断線式警報装置の購入に当たり、導線の規格の検討が適切でなかったため、不経済になったもの(1件 450万余円)

○動力炉・核燃料開発事業団

・潤滑油の購入に当たり、適性試験の結果適切でないことが判明している品種を選定したため、不経済になったもの(1件 925万円)

(4)役務 5件 4720万余円
<契約処置が適切でなかったもの> 5件 4720万余円

○法務省

・汚水処理施設の維持管理委託契約に当たり、契約方法が適切でなかったなどのため、支払額が過大になったもの(1件 310万余円)

○外務省

・契約電力が電力の使用実績に比べ著しく過大となっているのに、契約電力変更の処置を執らなかったため、電気料金が不経済に支払われていたもの(1件 1090万余円)

○運輸省

・契約電力が電力の使用実績に比べ著しく過大となっているのに、契約電力変更の処置を執らなかったため、電気料金が不経済に支払われていたもの(2件 1660万余円)

○動力炉・核燃料開発事業団

・電気需給契約の更改に当たり、契約電力の算定が適切でなかったため、電気料金が不経済に支払われていたもの(1件 1660万余円)

(5)保険 2件 1億1652万余円

○労働省

・雇用保険の失業給付金の支給に当たって、支給の原因となる事実についての調査が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 9960万余円)

・雇用保険の中高年齢者雇用開発給付金の支給に当たって、支給の原因となる事実についての調査が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 1691万余円)

(6)補助金 99件 4億7981万余円

○文部省

・公立文教施設整備事業において、補助の対象とは認められないものを補助事業に含めていたもの、事業費を過大に精算していたもの及び工事の施工が設計と相違していたもの(6件 5868万余円)

○厚生省

・保健衛生関係補助金、老人福祉施設保護費補助金及び保育所措置費補助金に係る補助対象事業費の精算が過大となっていたもの(38件 6855万余円)

○農林水産省

・ほ場、農道、漁業近代化施設の整備等の公共事業において、事業費を過大に精算していたもの、工事の施工が設計と相違していたもの及び事業を取りやめているのにすべて完成したとして補助金の交付を受けていたもの(6件 2836万余円)

・青果物等生産流通対策事業、農業就業改善総合対策事業等において、補助の対象とは認められないものを補助事業に含めていたもの、設置した施設を他用途に転用していて補助の目的を達していなかったものなど(11件 3619万余円)

○通商産業省

・中小企業設備近代化資金の貸付けが適切でなく、補助の目的に沿わない結果になっていたもの(17件 3380万余円)

○建 設 省

・下水道施設、道路の改良及び河川改修等の公共事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったもの、工事の施工が設計と相違していたもの及び事業を実施していないのに完了したとして補助金の交付を受けていたものなど(18件 1億9155万余円)

○日本私学振興財団

・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、経常的経費と認められない支出額を経常的支出に含めていたり、実績報告書に補助の対象とならない経費を含めていたりなどして、補助金が過大に交付されていたもの(3件 6266万余円)

(7)貸付金 9件 1億5759万余円

○中小企業金融公庫

・中小企業者の事業用資産の取得等に要する設備資金の貸付けが、貸付けの目的に沿わない結果となっていたもの(8件 6774万余円)

○中小企業振興事業団

・中小企業を営む者の設備共同廃棄事業資金の貸付けが、貸付けの目的に沿わない結果となっていたもの(1件 8985万余円)

(8)不正行為 6件 8130万余円

○日本電信電話公社

・電気通信局等の旅費事務担当者が、架空の旅行命令簿兼旅費支給調書を作成し旅費を受領して資金を領得したものなど(5件 6475万余円)

○日本住宅公団

・公団本社の職員が、業務に必要な会議を実施したとして架空の請求書を作成するなどして資金を領得したもの(1件 1655万余円)

(9)その他 1件 2億5690万余円

○日本鉄道建設公団

・ずい道工事に伴う飲料水の渇水対策補償費の支払が適切でなかったもの

3 収入、支出以外のもの(計18件 1億5334万余円)

所管名 不正行為
文部省
1
郵政省 17
18
不正行為 18件 1億5334万余円

○文部省

・大学の病院部の分任物品管理官の補助者が、保管中のX線フィルム現像用定着液等を領得したもの(1件 700万余円)

○郵政省

・郵便局の出納員が、郵便貯金の預入金等を領得したもの(17件 1億4633万余円)

(意見を表示し又は処置を要求した事項)

 会計検査院法第34条又は第36条の規定により、昭和55年中に関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項を「意見を表示し又は処置を要求した事項」として、計9件を掲記した。

1 会計検査院法第34条の規定によるもの 8件

○大蔵省

・10円青銅貨幣の回収後の取扱いに関するもの

○農林水産省

・補助事業の実施及び経理の適正化に関するもの

○通商産業省

・中小企業設備貸与事業における繰上げ貸与料の取扱いに関するもの

○郵政省

・第三種郵便物の取扱いに関するもの

○建設省

・補助事業の実施及び経理の適正化に関するもの

・除雪用機械の購入費補助に関するもの

○中小企業金融公庫

・中小企業設備貸与事業における繰上げ貸与料の取扱いに関するもの

○日本道路公団

・高速道路等の新設工事における岩石土工工事費の積算に関するもの

2 会計検査院法第36条の規定によるもの

1件

○農林水産省

・農村地域の生活環境施設の設置に関するもの

(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を請じた事項)

本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項として、計13件を掲記した。

○総理府(北海道開発庁)

・低水流量観測業務の実施に関するもの

○同(防衛庁)

・物品増減及び現在額報告書の記載漏れ等に関するもの

○通商産業省

・石炭技術振興費補助金により取得した処分制限財産の処分に係る収入金の徴収に関するもの

○日本専売公社

・建築工事におけるコンクリートのポンプ車による配管打設経費の積算に関するもの

○日本国有鉄道

・プレストレストコンクリート箱けたの製作及び架設工事におけるPC鋼棒等の組立て費の積算に関するもの

・空気調整設備工事における矩(く)形ダクトの製作取付け費の積算に関するもの

○北海道東北開発公庫

・船舶資金の貸付けに関するもの

○日本住宅公団

・宅地造成工事における機械土工費の積算に関するもの

・募集案内書等の配布業務の委託手数料の算定に関するもの

○日本道路公団

・高速道路等の新設工事における鋼矢板の打ち込み及び引き抜き費の積算に関するもの

○日本鉄道建設公団

・青函ずい道建設工事において貸与している蓄電池機関車の機械損料の積算に関するもの

○年金福祉事業団

・業務委託手数料の算定に関するもの

○日本中央競馬会

・トータリゼータシステム保守整備料の積算に関するもの

(特に掲記を要すると認めた事項)

 以上の不当事項、意見を表示し又は処置を要求した事項、及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項のほか、事業効果等の見地から問題を提起して事態の進展を図るため、「特に掲記を要すると認めた事項」として、2件を掲記した。

○農林水産省

・国営農地開発事業によって造成した農地の利用に関するもの

○森林開発公団

・大規模林業圏開発林道の施行に関するもの