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  • 昭和63年度|
  • 第1章 検査結果の概要

法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項等の概要


第2節 法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項等の概要

 検査の結果、この検査報告に掲記した「法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項」(以下「不当事項」という。)、「意見を表示し又は処置を要求した事項」及び「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」の各事項は、次表のとおり201件であり、また、これらのほか、検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認め、「特に掲記を要すると認めた事項」として掲記したものが1件あり、その総件数は202件である。

事項
省庁又は団体名
不当事項 意見を表示し又は処置を要求した事項 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
会計検査院法第34条関係 会計検査院法第36条関係
是正改善の処置を要求したもの 意見を表示したもの 改善の処置を要求したもの

総理府(北海道開発庁)

1

1
総理府(防衛庁)     1     1
大蔵省 1         1
文部省 14       1 15
厚生省 70 1 1   1 73
農林水産省 6     1 3 10
通商産業省 8         8
運輸省 1       1 2
郵政省 37       1 38
労働省 4 1 1     6
建設省 6       1 7
自治省         1 1
住宅金融公庫         1 1
農林漁業金融公庫 7         7
日本道路公団         2 2
首都高速道路公団         1 1
住宅・都市整備公団         1 1
中小企業事業団 7         7
日本原子力研究所         1 1
日本私学振興財団 3       1 4
日本電信電話株式会社         3 3
北海道旅客鉄道株式会社         1 1
東日本旅客鉄道株式会社         2 2
東海旅客鉄道株式会社         2 2
西日本旅客鉄道株式会社 1       2 3
四国旅客鉄道株式会社         1 1
九州旅客鉄道株式会社 1       1 2
166 2 3 1 29 201

 上記の各事項について、その概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)
 検査の結果、「不当事項」として計166件を掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。

1 収入に関するもの(計5件 24億3170万余円)

省庁名 租税 保険料 その他

大蔵省

1

1
文部省     1 1
厚生省   2   2
労働省   1   1
1 3 1 5

 

(1) 租税
1件 13億2051万余円

 <租税の徴収が適正でなかったもの>

○大蔵省

・租税の徴収に当たり、課税資料の収集、活用が的確でなかったため収入金等を把握していなかったり、法令適用の検討が十分でなかったため税額計算等を誤っていたりなどして、徴収額に過不足を生じたもの

(2) 保険料
3件 11億0656万余円

 <保険料の徴収が適正でなかったもの>

○厚生省

・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、保険料算定の基礎となる被保険者の資格取得年月日等の届出に対する指導及び調査確認が十分でなかったなどのため、徴収額に不足を生じたもの(1件 4億4876万余円)

・船員保険の保険料の徴収に当たり、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬月額等の届出に対する調査確認及び指導が十分でなかったなどのため、徴収額に不足を生じたもの(1件 4212万余円)

○労働省

・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主が行う確定保険料の申告に対する調査確認が十分でなかったため、徴収額に過不足を生じたもの(1件 6億1567万余円)

(3) その他
1件 463万余円

○文部省

・核医学診断に係る診療報酬の請求に当たり、診療部門が放射性医薬品の標準的使用量の変更を料金算定部門に連絡していなかったなどのため、放射性医薬品の薬剤料を過小に算定していて、診療報酬請求額が不足していたもの

2 支出に関するもの(計124件 19億0457万余円)


省庁又は団体名 
工事 保険給付 補助金 貸付金 その他

文部省

13


13
厚生省   3 31   34 68
農林水産省     6     6
通商産業省     8     8
運輸省         1 1
労働省   3       3
建設省     6     6
農林漁業金融公庫       7   7
中小企業事業団       7   7
日本私学振興財団     3     3
西日本旅客鉄道株式会社 1         1
九州旅客鉄道株式会社 1         1
2 6 67 14 35 124

 

(1) 工事
2件 3255万余円

<監督及び検査が適切でなかったもの>

○西日本旅客鉄道株式会社

・法面改良工事の施行に当たり、法面保護工の施工が設計と著しく相違していて、工事の目的を達していないもの(1件 2191万余円)

○九州旅客鉄道株式会社

・法面保護工事の施行に当たり、モルタル吹付工の施工が設計と著しく相違していて、工事の目的を達していないもの(1件 1064万余円)

(2) 保険給付
6件 2億9454万余円

 <保険の給付が適正でなかったもの>

○厚生省

・健康保険及び船員保険の傷病手当金の支給に当たり、手当金の請求に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 4094万余円)

・厚生年金保険の老齢厚生年金等の支給に当たり、事業主から提出された届出等に対する調査確認及び指導が十分でなかったり、事務処理が適切でなかったりしたため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 2890万余円)

・国民年金の母子年金の支給に当たり、年金の裁定請求等に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 8379万余円)

○労働省

・雇用保険の失業給付金の支給に当たり、失業認定の申告等に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 9905万余円)

・雇用保険の雇用調整助成金の支給に当たり、事業主の申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 3184万余円)

・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給に当たり、事業主の申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 1001万余円)

(3) 補助金
67件 10億6871万余円

 <補助事業の実施及び経理が不当なもの>

○文部省

・義務教育費国庫負担金等の算定において、教職員の毎月の実数を過小に算定していて実数が国庫負担限度定数を超過する程度が過小となっていたなどのため、負担金等が過大に交付されていたもの(9件 1億0281万余円)

・公立中学校校舎増築事業等において、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたもの及び補助種目の適用を誤っていたもの(4件 4549万余円)

○厚生省

・国民健康保険の普通調整交付金の交付先において、保険料収納割合を実際より引き上げて交付申請を行っていたなどのため、交付額が過大になっていたもの(1件 7億0651万余円)

・老人福祉施設保護事業及び生活保護事業において、事業費を過大に精算していたもの及び事業の実施が適切でなかったもの(30件 6798万余円)

○農林水産省

・農業近代化資金利子補給事業、山村等振興対策事業等において、補助の目的を達していないもの、工事の設計又は施工が適切でないものなど(6件 5600万余円)

○通商産業省

・補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、設備を貸付対象事業費より低額で設置したり、中古品を設置したりしていたものなど補助の目的に沿わない結果になっていたもの(8件 2185万余円)

○建設省

・道路事業及び河川事業において、工事の設計が適切でなかったもの及び工事の施工が設計と相違していたもの(6件 4259万余円)

○日本私学振興財団

・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、補助金算定の対象とはならない教職員を含めた資料に基づき補助金の額を算定したため、交付額が過大になっていたもの(3件 2545万余円)

(4) 貸付金
14件 2億9753万余円

 <貸付金の経理が不当なもの>

○農林漁業金融公庫

・農業基盤整備資金等の貸付けにおいて、貸付金額を過大に算定していたもの及び貸付対象施設の処分に伴う貸付金の繰上償還の措置を執っていなかったもの(7件 6316万余円)

○中小企業事業団

・中小企業高度化資金の貸付けにおいて、貸付けの対象とならないものに貸し付けていたもの、貸付対象施設が貸付けの目的外に使用されていたものなど(7件 2億3436万余円)

(5) その他
35件 2億1123万余円

○厚生省

・児童扶養手当の支給に当たり、請求等に対する指導及び調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 1812万余円)

・国の負担の対象となる医療費の支払において、医療機関から不適正な診療報酬の請求があったのに、これに対する審査等が十分でなかったなどのため、診療報酬の支払が不適切となっていたもの(33件 1億7016万余円)

○運輸省

・船員離職者職業転換等給付金の支給に当たり、再就職に関する申告等に対する調査確認が十分でなかったなどのため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 2294万余円)

3 収入支出以外のもの(計37件 5億0499万余円)

省庁名 不正行為

郵政省

37

 

不正行為
37件 5億0499万余円

 <現金等を領得されたもの>

○郵政省

・郵便局の出納官吏、出納員等が、郵便貯金の預入金、簡易生命保険の保険料等を領得したもの

(意見を表示し又は処置を要求した事項)

会計検査院法第34条又は第36条の規定により平成元年中に関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項を「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計6件掲記した。

1 会計検査院法第34条の規定によるもの
2件

○厚生省

・定数を超過して入院させている保険医療機関の把握について

都道府県が、許可病床数等を一定数上回って入院患者を収容している病院を把握していないなどのため、相当数の保険医療機関において診療報酬の請求に当たり、定数超過病院に該当しているのに室料等について所定の減額を行わないで医療費を過大に請求し医療給付費の支払を受けている不適切な事態が見受けられるので、定数超過入院の状況にある保険医療機関の把握の具体的な方法を都道府県に指示するなどして、健康保険法等の適正な運用を図る要がある。

○労働省

・雇用保険の再就職手当の支給について

雇用保険の再就職手当の支給に当たり、労働省において支給要件を満たしているか否かの確認の取扱いに関し具体的な運用について指針を示していなかったため、公共職業安定所において受給資格者が就職日の前日までの期間について失業の認定を受けずに支給申請を行っているのに安易に例外的取扱いを拠り所として手当の支給決定をしていて、手当が過大に支給されている事態が見受けられるので、手当の支給が適切に行われるよう方策を樹立するなどの措置を講じ、手当支給の適正化を図る要がある。

2 会計検査院法第36条の規定によるもの
4件

(ア) 意見を表示した事項

○総理府(防衛庁)

・防衛大学校を卒業した幹部候補者に対する退職手当の支給について

防衛大学校を卒業した幹部候補者に対する退職手当の算定上、卒業後引き続いて自衛官に任用されたことのみを、学生としての在職期間を通算する場合の要件としているため、自衛官に任用後6箇月未満の短期間のうちに退職した者は、防衛大学校で修得した知識等を自衛官としての職務にほとんど生かしていないという点で、退職手当が支給されない非任官者と同様と認められるのに退職手当を支給するという不合理な取扱いとなっているので、退職手当の支給に当たっては自衛官としての在職期間を考慮するなどの措置を講じ、もって退職手当の支給を合理的なものとするよう適切な処置を講ずる要がある。

○厚生省

・医療用の酸素に係る診療報酬請求について

保険医療機関等が行う医療用酸素の診療報酬請求について、診療報酬点数表では購入価格を10円で除して得た点数により診療報酬を請求することと定められているにすぎず、他方、購入単価が容器により区々となっているため、調査対象病院の大多数において、購入単価の割高な圧縮酸素の購入価格や近隣の病院に問い合わせて独自に設定した価格により請求するなど取扱いが区々となっていて、過半の病院が超過請求となっているので、酸素に係る請求価格の具体的算定方法を明確にするなど診療報酬請求の適正化、合理化を図る措置を講ずる要がある。

○労働省

・競走事業従事者に係る雇用保険の取扱いについて

雇用保険の日雇労働求職者給付金の支給に当たり、法令等で日雇労働被保険者の対象となる日雇労働者について雇用期間のみに着目した形式的要件しか定めていないなどのため、雇用の実態としては継続雇用的な性格を有している競馬、競輪等の競走事業に従事する者に対し、競走事業が開催されない日は失業しているとして給付金を支給していて、制度の趣旨に沿わない事態が見受けられるので、競走事業に従事する者の雇用関係等の実態などについて十分把握、検討し雇用保険の取扱いが適正なものとなるよう所要の措置を講じ、制度の適正な運営を図る要がある。

(イ) 改善の処置を要求した事項

○農林水産省

・農業改良資金の貸付事業の運営について

農業改良資金の貸付事業において、農林水産省が、法改正の趣旨を周知徹底していなかったこと、繰上償還等について適切な指導が足りなかったことなどのため、事業主体である都道府県において、多額の余剰資金が生じているのに国への繰上償還等を行っていない県がある一方で、資金造成がいまだ十分でない県があるなど県間で資金の偏在を生じていて法改正の趣旨に沿わなくなっている事態や、農業改良資金の特別会計で保有する余裕金を他の会計と合わせて運用して得た運用益を適正に特別会計に計上しておらず貸付事業に生かされていないなどの事態が見受けられた。したがって、農林水産省において、都道府県に対し、法律の趣旨の周知徹底を図り、実態に即した適切な貸付事業計画を策定するよう指導を強化するなどして、農業改良資金の効率的かつ適切な運用を図る要がある。

(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項)

本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項を「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計29件掲記した。

○総理府(北海道開発庁)

・防波堤工事等に使用する作業船の回航費の積算について

作業船のぎ装及び回航における乗組員の賃金等の積算の基準が近年のぎ装及び回航の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○文部省

・国立大学におけるガス料金の支払について

国立大学におけるガス料金の支払において、同一構内に設置された複数のガスメーターについてはその使用料を合算して算定することが可能であるのに、ガス供給者がガスメーターごとに算定した請求額を支払っていたため、ガス料金が不経済になったので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○厚生省

・へき地中核病院運営事業における巡回診療の対象となる無医地区の把握等について

へき地中核病院運営事業において、近年、交通の利便性が確保されるなどしていて事業の対象となる無医地区とするのは適切でないのにその実態の把握が十分でなかったり、人件費の算出方法が明確にされていなかったりなどしているため、無医地区に該当しない地区の巡回診療を事業の対象としたり、医師等の人件費の算出が適切でなかったりなどしていて、国庫補助金が適切に交付されていなかったので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○農林水産省

・農林水産業地域改善対策事業の実施体制について

農林水産業地域改善対策事業において、市町村及び県が事業計画の策定や承認に当たり事業実施に必要な基本的事項について調査や審査等を十分行わなかったり、地方農政局及び水産庁が事業計画の承認に係る協議の際の審査及び指導を十分行っていなかったりなどしているため、設置された施設が無断で処分されたり、貸し付けられたり、遊休化したりなどしていて、補助金交付の目的を達していなかったので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・漁業の調査、取締り等のために借り上げる船舶の用船料の算定について

漁業の調査、取締り等のために借り上げる船舶の用船契約に当たり、水産庁が定めている人件費の単価等について、契約の相手方である事業者に雇用される乗組員の給与体系の変化等に応じた見直しを適時適切に行わなかったことなどのため、用船料が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・畜産振興事業団の助成により実施されている搾乳牛選抜奨励金交付事業について

畜産振興事業団の助成により実施されている搾乳牛選抜奨励金交付事業において、農林水産省が、実施対象の要件を近年の検査機器の進歩に対応したものとするよう事業団を十分指導していなかったことなどのため、奨励金交付の対象となる個体乳質検査を実施した搾乳牛のうちに、国の補助事業である乳成分検査と同一の検査項目の検査を実施していたものが多数見受けられ、事業の実施が効果的でないと認められたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○運輸省

・自動車輸送統計調査業務について

自動車輸送統計調査業務の実施に当たり、運輸本省において地方運輸局及び陸運支局に対する指導を十分行っていなかったり、陸運支局において個々の調査員について現実にすべての調査対象者を訪問することが困難な調査対象区域を設定していたりなどしていたため、原則として訪問により行うこととなっている統計調査票の配付・回収をすべて郵送で行っている調査員が多数見受けられ、これら郵送による調査票の回収実績は訪問による場合に比べて著しく低率になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○郵政省

・防犯通報装置を構成する各機器の購入及び取付けについて

特定郵便局に設置する防犯通報装置の購入及び取付けに当たり、設置対象の郵便局ごとに作成する仕様書を当該局舎の構造等に適合したものとするために必要な具体的指針を郵政本省で明示していなかったことなどのため、購入が過大になっていたり、取付箇所が適切でなく機能が効果的に発現されていなかったりしていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○建設省

・国の補助を受けて設置された自転車駐車場の管理運営等について

国の補助を受けて駅周辺に設置された自転車駐車場において、事業主体である地方公共団体がその利用促進を図るための広報活動を十分行っていなかったり、建設省が地方公共団体に対する指導を十分行っていなかったりなどしていたため、利用されていない駐車スペースがあるにもかかわらず、駅周辺の路上等に多数の自転車が放置されていて事業の効果が十分に発現していないと認められたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○自治省

・交通安全対策特別交付金の使途について

自治省が都道府県等に交付した交通安全対策特別交付金について、同省が都道府県に報告させている事業施行実績調べが、交付金を使用した事業を特定するものとなっておらず、交付金をすべて交通安全対策経費に充当しているかどうかを確認することができないものとなっていることなどのため、報告された事業の中に交付金の充当対象事業として認められないものが多数見受けられ、実施した充当対象事業の事業費が交付金の額を下回っているものがあったので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○住宅金融公庫

・公庫貸付けを受けて購入した市街地再開発事業等に係る住宅等の第三者賃貸等の防止について

借入者が自ら居住する住宅についてその購入費用を融通する貸付けにおいて、審査が十分でなかったり、貸付契約の内容が借入者の不誠実な行為を十分抑制するものとなっていなかったりなどしていたため、当該住宅が第三者に賃貸されるなどしていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○日本道路公団

・路面排水施設工事におけるロールドガッタの設計について

路面排水施設として中央分離帯に設屋するロールドガッタについて、雨水等の流入量に見合った適切な通水断面のものに設計するための手順が明確に示されていなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・高速道路等の管理に要する業務に係る委託料の支払時期について

高速道路等の管理のため行っている各種業務委託において、各月分の委託料の支払時期が適切でなかったため、委託料の支払額相当額の道路債券に係る利息等の経費が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○首都高速道路公団

・地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算について

地中連続壁の施工に使用する建設機械の機械損料の積算が施工の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○住宅・都市整備公団

・宅地造成工事等における土砂の埋戻し費の積算について

鉄筋コンクリート擁壁等を築造する際の土砂の埋戻し作業について、積算方法が積算の基準に明確に定められていなかったため、積算が作業の実態に適合しておらず、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○日本原子力研究所

・建築工事における鉄筋の加工組立費の積算について

原子力の開発に関する研究等を行うための施設の建築工事において、鉄筋の加工組立費の積算が鉄筋の径別重量構成比の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○日本私学振興財団

・医学部を設置する私立大学における補助対象となる専任職員の数の算定について

私立大学等経常費補助金の額の算定に当たり、医学部を設置する私立大学について、補助対象となる専任職員の数を算定する際に、教員や学生の教育又は研究とは直接かかわりのない診療業務に付随する事務に主として従事している者を適切に控除して算定していなかったため、補助金が適切に交付されていなかったので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○日本電信電話株式会社

・卓上形公衆電話のキャビネット及びスタンドに係る業務委託について

卓上形公衆電話のキャビネット及びスタンドに係る業務の委託に当たり、業務の実態を十分把握していなかったり、委託費の支払方法について経済的な配慮が十分でなかったりなどしていたため、委託する必要がないと認められる業務を委託内容に含めていて支払額が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・第三者の車両事故等により折損したコンクリート製電柱に係る損害賠償請求について

第三者の車両事故等により折損したコンクリート製電柱に係る損害賠償請求について、折損電柱を産業廃棄物として処理するための運搬及び破砕などに係る費用相当額を損害額に含めて算定するよう規定していなかったことなどのため、損害賠償請求額が低額になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・新ガス圧遠隔監視システムの設計について

新ガス圧遠隔監視システムの設計に当たり、システムの構成機器の機能を十分に活用した設計を行う必要があるのにその具体的な設計方法を示していなかったことなどのため、機器の購入が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社

・構内旅客営業における自動販売機及び委託公衆電話に係る営業料金について

構内営業を行う営業者が設置した自動販売機及び委託公衆電話に係る営業料金の算定に当たり、営業者の管理運営の実態把握が十分でなく営業料金算定の基礎となる営業料率について抜本的な見直しを行っていなかったことなどのため、営業料金が低額になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社

・起床装置の導入等による休養管理業務に係る経費の節減について

乗務員休養室で休養する乗務員を起床させるなどの休養管理業務について、所定の時刻に就寝中の者を起床させる装置の導入等により同業務の請負を廃止し経費を節減できると認められたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

(特に掲記を要すると認めた事項)

以上のほか、検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めたものが1件あり、これを掲記した。

・政府開発援助の実施について

我が国の政府開発援助は、開発途上国の経済開発及び福祉の向上に寄与することを主たる目的として実施されているが、直接借款の貸付対象となった機材等が十分稼働していなかったり、直接借款の貸付対象となった機材の一部が長期間未利用となっていたり、無償資金協力の対象となった施設が十分活用されていなかったり、プロジェクト方式技術協力の対象となった技術の移転が遅延していたりしているものが見受けられた。このような事態を生じているのは、内貨予算が不足していたことなど主として相手国における事情によるものであるが、我が国援助実施機関が相手国の自助努力を前提とした対応をとっていたこと及び現行制度の枠内での対応には限度があったことなどにもよると認められることから、我が国全体として、必要に応じて、相手国における内貨予算不足による事業の遅延に対して我が国が執り得る措置についての検討を行ったり、我が国援助実施機関相互の間、あるいは我が国援助実施機関と相手国との間の一層の連携強化に努めたりなどするとともに、事業全体の状況を一層的確に把握することなどができるよう援助実施体制の整備・拡充を図り、もって政府開発援助がより効果的・効率的に実施されることが望まれる。