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  • 昭和56年度|
  • 第1章 検査結果の概要|
  • 第2節 不当事項等の概要

不当事項等の概要


 検査の結果について、「不当事項」、「意見を表示し又は処置を要求した事項」、「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」及び「特に掲記を要すると認めた事項」の各事項に区分して、その概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)

 検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を「不当事項」として、計184件を掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。

1 収入に関するもの(計9件 22億3708万余円)

省庁又は団体名
租税
保険
不正行為

大蔵省

2

1

3
厚生省   2   2
労働省   1   1
日本国有鉄道     2 2
日本電信電話公社     1 1
2 3 4 9

 

(1)租税 2件 13億5033万余円
<租税の徴収が適正でなかったもの> 1件 13億2960万余円

○大蔵省

・租税の徴収に当たり、申告内容の誤りを見過ごしたり、所得計算における経費の額や税額の計算を誤ったりなどして、徴収額に過不足を生じたもの

<租税の滞納処分が適切でなかったもの> 1件 2072万余円

○大蔵省

・酒税の滞納処分に当たり、関係部局に対する連絡が適切でなかったため、滞納者へ法人税還付金が支払われ、還付金相当額を徴収する機会を失したもの

(2)保険 3件 8億5937万余円
<保険料の徴収が適正でなかったもの>

○厚生省

・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、保険料算定の基礎となる被保険者の資格取得年月日についての調査が十分でなかったなどのため、徴収額に不足を生じたもの(1件1億6273万余円)

・船員保険の保険料の徴収に当たり、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬についての調査が十分でなかったなどのため、徴収額に不足を生じたもの(1件6729万余円)

○労働省

・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主が提出する確定保険料申告書の内容についての調査が十分でなかったため、徴収額に過不足を生じたもの(1件6億2935万余円)

(3)不正行為 4件 2737万余円
<現金が領得されたもの>

○大蔵省

・税務署の出納官吏が、国税収納金として収納した現金を領得したもの(1件1650万円)

○日本国有鉄道

・駅の出納員が、乗車券発売機から収入金を領得したものなど(2件460万円)

○日本電信電話公社

・電話局の社員が、電話加入申込者から便宜預った加入料、設備料等を領得したもの(1件627万余円)

2 支出に関するもの(計143件 18億2566万余円)

省庁又は団体名
予算経理
工事
物件
保険
補助金
貸付金
その他

文部省

2

5

7
厚生省       1 56     57
農林水産省   1     14     15
通商産業省         23     23
運輸省   1     2     3
労働省       2 4     6
建設省         19     19
自治省             1 1
日本国有鉄道   2           2
日本電信電話公社     1         1
水資源開発公団   1           1
中小企業事業団           4   4
日本原子力研究所   1           1
日本私学振興財団         3     3
2 6 1 3 126 4 1 143

 

(1)予算経理 2件 910万余円
<架空の旅費を別途に経理していたものなど>

○文部省

・架空の名目により旅費の支出を受けこれを別途に経理して会食等の経費に使用していたものなど(1件567万余円)

・民間会社に就職し公務に従事する意思を全く放棄していた者に係る及び国家公務員共済組合負担金を支払っていたもの(1件342万余円)

(2)工事 6件 2億3940万余円
<設計が適切でなかったもの> 3件 1億6340万余円

○日本国有鉄道

・既設旅客ホーム改築工事の施行に当たり、既設の堅固な擁壁をそのまま利用する経済的な設計をすべきであったのに、これを取り壊すこととしたため、不経済になったもの(1件2750万余円)

○水資源開発公団

・ダム取付道路工事の施行に当たり、道路の土留工としての井桁(げた)組擁壁に裏込ぐり石を施工する設計としていなかったなどのため、擁壁の強度が著しく低下していたもの(1件6120万余円)

○日本原子力研究所

・核融合実験棟建家等工事の施行に当たり、鉄筋コンクリート用棒鋼の仕様が適切でなかったため、不経済になったもの(1件7470万余円)

<予定価格の積算が適切でなかったもの> 3件 7600万余円

○農林水産省

・頭首工工事の施行に当たり、仮設足場費の積算を誤ったため、契約額が割高になったもの(1件1400万余円)

○運輸省

・進入道路改良工事の施行に当たり、コンクリートブロック練り積み擁壁工費等の積算を誤ったため、契約額が割高になったもの(1件4360万余円)

○日本国有鉄道

・鋼高架橋新設工事の施行に当たり、ボルト孔のリーマー加工費の積算が適切でなかったため、契約額が割高になったもの(1件1840万余円)

(3)物件 1件 6170万余円
<計画が適切でなかったもの>

○日本電信電話公社

・顧客サービスシステムの増設用物品の購入に当たり、所要数量の見直しを行わなかったため、不要の物品を購入し不経済になったもの

(4)保険 3件 4億8592万余円
<医療給付費の支払が適切でなかったもの> 1件 783万余円

○厚生省

・医療給付費の支払に当たり、審査が適切でなかったため、支払の対象とならない基準看護に係る加算金を支払っていたもの

<保険給付金の支給が適正でなかったもの> 2件 4億7809万余円

○労働省

・雇用保険の失業給付金の支給に当たり、支給の原因となる事実についての調査が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件1億3470万余円)

・雇用保険の中高年齢者雇用開発給付金の支給に当たり、支給の原因となる事実についての調査が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件3億4338万余円)

(5)補助金 126件 7億0421万余円
<補助事業の実施及び経理が不当なもの>

○文部省

・公立文教施設整備事業等において、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたもの及び補助事業の適用を誤っていたもの(5件6598万余円)

○厚生省

・救急医療施設運営費等補助金、老人福祉施設保護費補助金及び児童保護措置費補助金に係る補助対象事業費を過大に精算していたもの(49件1億4471万余円)

・療養給付費補助金・財政調整交付金の交付に当たり、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたもの(1件811万余円)

・環境衛生等施設関係補助事業において、工事の契約処置が適切でなかったもの及び国庫補助金を他省所管のものと重複して受給していたもの(6件4098万余円)

○農林水産省

・農業構造改善事業、漁業振興施設整備事業等において、工事の施工が設計と相違していたもの、補助の目的を達していなかったもの、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたものなど(14件1億2116万余円)

○通商産業省

・補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、貸付けの対象とは認められないものを事業費に含めていたりなどして、補助の目的に沿わない結果になっていたもの(22件7724万余円)

・休廃止鉱山鉱害防止補助事業において、地質調査等を十分に行わなかったため、施工した捨石たい積場の表面保護工が崩壊し工事の目的を達していなかったもの(1件353万余円)

○運輸省

・地方バス路線維持費補助事業及び港湾環境整備事業において、事業費を過大に精算していたもの及び工事の設計が適切でなかったもの(2件450万余円)

○労働省

・職業転換訓練事業等において、補助対象事業費を過大に精算していたもの及び補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたもの(4件1146万余円)

○建設省

・小集落地区改良事業、下水道事業、道路事業等において、補助金を不正に受給していたもの、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったもの、工事の施工が設計と相違していたものなど(19件2億0524万余円)

○日本私学振興財団

・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、事実と異なる内容が記入された資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大となっていたもの(3件2126万余円)

(6)貸付金 4件 1億2649万余円
<貸付金の経理が不当なもの>

○中小企業事業団

・中小企業高度化資金の貸付けにおいて、共同利用施設として貸し付けた施設が、貸付けの目的外に使用されていたものなど

(7)その他 1件 1億9881万余円
<交付金の交付が不当なもの>

○自治省

・地方交付税交付金の交付に当たり、事実と異なる内容が記載された資料に基づいて交付税額を算定したため、交付額が過大となっていたもの

3 収入支出以外のもの(計32件 1億8817万余円)

省庁名 物件 不正行為

文部省

1

1
郵政省   31 31
1 31 32

 

 
(1)物件 1件 4301万余円
<国有財産の管理が適切でなかったもの>

○文部省

・国有地について、国以外の者に対し不正に所有権の移転登記が行われ占有使用されていたのにこれを放置していたもの

 
(2)不正行為 31件 1億4516万余円
<現金が領得されたもの>

○郵政省

・郵便局の出納官吏又は出納員が、郵便貯金の預入金、簡易生命保険の保険料等を領得したもの

(意見を表示し又は処置を要求した事項)

 会計検査院法第34条の規定により、昭和57年中に関係大臣等に対して処置を要求した事項を「意見を表示し又は処置を要求した事項」として、計8件を掲記した。

○食糧庁

・輸入麦の売渡しに関するもの

○水産庁

・沿岸漁業構造改善事業等の実施に関するもの

○郵政省

・郵政事業特別会計の機械器具に係る経理に関するもの

○建設省

・下水道終末処理場の機械設備の整備に関するもの

○自治省

・地方交付税(普通交付税)交付金に関するもの

○日本道路公団

・潜函工事用コンプレッサ運転電気料の積算に関するもの

○住宅・都市整備公団

・民営賃貸用特定分譲住宅に関する業務運営に関するもの

○雇用促進事業団

・総合高等職業訓練校の転換計画及びその実施に関するもの

(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項)

 本院が検査において指摘したところ、当局において改善の処置を講じた事項を「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として、計19件を掲記した。

○大蔵省

・電子計算機の出力用紙のレイアウトに関するもの

○厚生省

・国立病院等における受託研究に係る経理に関するもの

○通商産業省

・中小企業設備近代化資金貸付事業の経理に関するもの

○運輸省

・航空保安施設等における自家発電設備工事の据付費の積算に関するもの

○建設省

・下水道工事におけるマンホール用型枠費の積算に関するもの

○日本国有鉄道

・軌道整備工事における脱線防止ガードの撤去、復旧工事費の積算に関するもの

・トンネル工事における労務費の積算に関するもの

・新幹線用トンネル巡回車の仕様に関するもの

・駅設備営業用クレーン等の稼働及び収支に関するもの

・業務委託駅の営業体制に関するもの

・機関車の運用表における燃料補給時期の指定等に関するもの

○日本電信電話公社

・街頭用ボックス形公衆電話の料金箱の取集に関するもの

○日本道路公団

・トンネル工事における労務費の積算に関するもの

○阪神高速道路公団

・道路標識柱の製作費の積算に関するもの

○本州四国連絡橋公団

・鋼板の1次素地調整費の積算に関するもの

○住宅・都市整備公団

・住宅建築工事における現場打ち鉄筋コンクリートぐい施工費等の積算に関するもの

○石炭鉱害事業団

・業務上の余裕金の運用に関するもの

○日本中央競馬会

・開催制服の貸付けに関するもの

○日本原子力研究所

・業務上の余裕金の運用に関するもの

(特に掲記を要すると認めた事項)

 以上の不当事項、意見を表示し又は処置を要求した事項及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項のほか、事業効果又は事業運営等の見地から問題を提起して事態の進展を図る要があると認めた事項を「特に掲記を要すると認めた事項」として、計3件を掲記した。

○農林水産省

・団体営草地開発整備事業によって開発した草地に関するもの

○日本国有鉄道

・荷物営業に関するもの

○日本鉄道建設公団

・上越新幹線建設に伴い取得した併設道路用地の費用の回収に関するもの