ページトップ
  • 平成元年度|
  • 第1章 検査結果の概要|
  • 第2節 検査結果の大要

事項別の検査結果


第1 事項別の検査結果

 検査の結果、検査報告に掲記する事項には、次のとおり、「不当事項」、「意見を表示し又は処置を要求した事項」、「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」及び「特に掲記を要すると認めた事項」がある。

(ア) 「不当事項」とは、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項である。

(イ) 「意見を表示し又は処置を要求した事項」とは、会計検査院法第34条又は第36条の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項である。

(ウ) 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」とは、本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項である。

(エ) 「特に掲記を要すると認めた事項」とは、検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めた事項である。

 この検査報告に掲記した事項の総件数は220件であり、その内訳は、「不当事項」192件、「意見を表示し又は処置を要求した事項」11件、「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」17件となっている。
 これを、省庁等別にみると次表のとおりである。

事項
省庁又は団体名
不当事項 意見を表示し又は処置を要求した事項 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
会計検査院法第34条関係 会計検査院法第34条及び第36条関係 会計検査院法第36条関係
是正改善の処置を要求したもの 是正改善の処置を要求し及び改善の意見を表示したもの 改善の意見を表示したもの 改善の処置を要求したもの

総理府(防衛庁)

2

2
総理府(科学技術庁)           1 1
法務省    1         1
大蔵省 2           2
文部省 19 2   1     22
厚生省 91 1 1       93
農林水産省 11     1   2 14
通商産業省 8           8
運輸省           2 2
郵政省 29           29
労働省 7       1 1 9
建設省 8 1         9
自治省           1 1
農林漁業金融公庫 7           7
中小企業信用保険公庫   1         1
日本道路公団           1 1
阪神高速道路公団 1         1 2
住宅・都市整備公団           1 1
日本国有鉄道清算事業団 1           1
電源開発株式会社           1 1
日本私学振興財団 5           5
日本電信電話株式会社           3 3
北海道旅客鉄道株式会社           1 1
東日本旅客鉄道株式会社   1         1
西日本旅客鉄道株式会社 1           1
四国旅客鉄道株式会社           1 1
九州旅客鉄道株式会社           1 1
192 7 1 2 1 17 220

 上記の各事項について、その概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)

 検査の結果、「不当事項」として計192件掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。

1 収入に関するもの(計5件 23億7781万余円)

省庁名 租税 保険料 不正行為

大蔵省

1

1
厚生省   2   2
労働省   1 1 2
1 3 1 5

 

(1) 租税 1件 14億5015万余円

 <租税の徴収が適正でなかったもの>

○大蔵省

・租税の徴収に当たり、課税資料の収集や活用が的確でなかったなどのため、徴収額に過不足があったもの

(2) 保険料  3件 9億0753万余円

<保険料の徴収が適正でなかったもの>

○厚生省

・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの届出に対する調査確認及び指導が十分でなかったなどのため、徴収額が不足していたもの(1件 4億2555万余円)

・船員保険の保険料の徴収に当たり、船舶所有者からの届出に対する調査確認及び指導が十分でなかったなどのため、徴収額が不足していたもの(1件 6176万余円)

○労働省

・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告に対する調査確認が十分でなかったため、徴収額に過不足があったもの(1件 4億2021万余円)

(3) 不正行為  1件 2012万余円

<現金が領得されたもの>

○労働省

・労働基準局の収入官吏が労働保険料を領得したもの

2 支出に関するもの(計157件 76億0674万余円)

省庁又は団体名 予算経理 工事 物件 保険給付 補助金 貸付金 不正行為 その他

総理府(防衛庁)

1

1
大蔵省           1     1
文部省 1       18       19
厚生省       3 29     57 89
農林水産省   1     10       11
通商産業省         8       8
労働省       4     1   5
建設省         8       8
農林漁業金融公庫           7     7
阪神高速道路公団   1             1
日本国有鉄道清算事業団   1             1
日本私学振興財団         5       5
西日本旅客鉄道株式会社     1           1
1 4 1 7 78 8 1 57 157

 

(1) 予算経理  1件 409万余円

<架空の名目等により支払った旅費を別途に経理していたもの>

○文部省

・架空の名目や出張日数の付増しにより旅費を支払い、これを別途に経理して夜食代等に使用したり、職員に支給したりしていたもの  

(2) 工事  4件 4909万余円

<予定価格の積算が適切でなかったもの>

○総理府(防衛庁)

・屋外燃料タンク補修工事の施行に当たり、鋼板の材料費、工場加工費等の積算が適切でなかったため、契約額が割高になっているもの(1件 590万円)

○農林水産省

・治山工事の施行に当たり、鋼管杭打工費の積算を誤ったため、契約額が割高になっているもの(1件 1250万円)

<設計が適切でなかったもの>

○阪神高速道路公団

・立入防止柵のネットフェンスの設計に当たり、既設物を利用する設計としなかったため、工事費が不経済になっているもの(1件 1070万円)

<監督及び検査が適切でなかったもの>

○日本国有鉄道清算事業団

・コンテナホーム新設工事の施行に当たり、コンクリート舗装工の施工が設計と著しく相違していて、工事の目的を達していないもの(1件 1999万余円)

(3) 物件  1件 2117万余円

<土地を不当に処分して利益を得たもの>

○西日本旅客鉄道株式会社

・法律の規定により日本国有鉄道清算事業団に譲渡すべき土地を他に売却して利益を不当に得ていたもの

(4) 保険給付  7件 4億0418万余円

<保険の給付が適正でなかったもの>

○厚生省

・健康保険の傷病手当金の支給に当たり、被保険者等からの請求に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 2522万余円)

・厚生年金保険の老齢厚生年金等の支給に当たり、年金の受給権者が被保険者資格を取得した場合の届出等に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 4145万余円)

・国民年金の母子年金の支給に当たり、受給権者からの年金の裁定請求等に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 1209万余円)

○労働省

・雇用保険の失業給付金の支給決定に当たり、受給資格者からの申告等に対する 調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件1億1225万余円)

・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主からの申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 3713万余円)

・雇用保険の地域雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主からの申請に対す る調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 1億6349万余円)

・労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関からの請求に対する審査が十分でなかったため、支払が適正に行われていなかったもの(1件 1251万余円)

(5) 補助金  78件 63億7045万余円

<補助事業の実施及び経理が不当なもの>

○文部省

・義務教育費国庫負担金等の算定において、教職員の標準定数を過大に算定したり、諸手当について国家公務員の例に準じて定められたところによることなく算定したりしていたため、負担金等が過大に交付されていたもの(12件 2億9843万余円)

・公立中学校校舎増築事業等において、補助金を過大に交付していたもの及び補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたもの(6件1766万余円)

○厚生省

・国民健康保険の財政調整交付金の交付先において、交付額の算定の基礎となる保険料の調定額に対する収納額の割合を事実と相違した高い割合で交付申請を行っていたこと、これに対する府県の審査が十分でなかったことなどのため、交付金が過大に交付されていたもの(6件 58億0284万余円)

・生活保護事業、老人福祉施設保護事業及び保育所措置事業において、事業の実施が適切でなかったもの及び国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの (23件 5522万余円)

○農林水産省

・一般造林事業、農業用施設災害復旧事業等において、事業の一部を実施してい なかったなどしているもの、工事費の積算又は工事の施工が適切でないもの、補助の対象とは認められないものなど(10件 4613万余円)

○通商産業省

・補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、設備を貸付対象事業費より低額で設置したり、前年度に設置したりなどしていて補助の目的 に沿わない結果になっていたもの(8件 2970万余円)

○建設省

・住宅事業、道路事業及び河川事業において、工事の設計が適切でなかったもの、工事の施工が設計と相違していたもの及び補助金を過大に交付していたもの(8件 7540万余円)

○日本私学振興財団

・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、補助金の額の算定の対象とはならない教職員を含めるなどした資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大になっていたもの(5件 4504万余円)

(6) 貸付金  8件 3億9145万余円

<貸付金の経理が不当なもの>

○大蔵省

・資金運用部資金の貸付けにおいて、貸付けの対象と認められないものに貸し付けていたため、貸付金額が過大になっていたもの(1件 1億3601万余円) 

○農林漁業金融公庫

・農地等取得資金等の貸付けにおいて、貸付対象とならない事業に対して貸し付けていたもの、貸付金額を過大に算定していたものなど(7件 2億5544万余円)

(7) 不正行為 1件 1879万余円

<現金等が領得されたもの>

○労働省

・障害補償給付等の審査事務に従事していた職員が障害補償一時金等を領得したもの

(8) その他  57件 3億4749万余円

○厚生省

・看護料、診察料、注射料等の診療報酬の支払に当たり、請求に対する審査点検が十分でなかったことなどのため、医療費の支払が適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるもの

3 収入支出以外のもの(計30件 2億8392万余円)

省庁名 不正行為

総理府(防衛庁)

1
郵政省 29

 

不正行為  30件 2億8392万余円

<現金等が領得されたもの>

○総理府(防衛庁)

・不用物品の解体保管等の事務に従事していた職員が銀くずを領得したもの(1件 133万余円)

○郵政省

・郵便局の出納官吏、出納員等が、郵便貯金の預入金、簡易生命保険の保険料等を領得したもの(29件2億8258万余円)

(意見を表示し又は処置を要求した事項)
「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計11件掲記した。
1 会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した事項 7件
○法務省
 ・宅地建物取引業を営む者が現金で供託した営業保証金のうち時効完成したものを歳入として徴収するための処理について
宅地建物取引業を営む者が供託所に現金で供託した営業保証金のうち、時効完成より取戻請求権が消滅したものは、歳入として徴収することとなっている。しかし、供託原因消滅の有無について、これを把握する事務処理手続や主務官庁に対する照会に関する指針を定めていなかったことなどのため、時効が完成したのに歳入として徴収するための処理が行われていないものが多数見受けられた。したがって、法務省は、それらについては歳入徴収の処理を行うとともに、供託原因消滅の有無を把握して時効完成した供託金を歳入として徴収できるよう所要の措置を講ずる要がある。
○文部省
 ・医学部附属病院特殊救急部が行った救命救急医療に係る診療報酬の請求について
大阪大学医学部附属病院は、重篤患者に対して行った救命救急医療について高額な救命救急入院料を請求できる厚生省告示の施設基準を実質的に充足している。しかし、同病院で、施設基準を充足しているか否かについての検討が十分でなかったことなどのため、施設基準に係る承認申請を行っておらず、一般の保険医療機関と同様の診療報酬しか請求できない事態になっていた。したがって、速やかに承認申請を行い、救命救急医療の実態に適合した適正な診療報酬を請求するための措置を講ずる要がある。
 ・国立大学医学部附属病院等の診療棟、病棟等の建築工事における鉄筋の加工組立の積算について
国立大学医学部附属病院等の診療棟等の建築工事において、鉄筋の加工組立費の積算に用いている歩掛かりは、文部省が定めた積算指針に基づいている。これは、一般の建築物における鉄筋の径別の使用割合を基に設定されている。しかし、実際には、大型の機器を設置するなどの構造となっている診療棟等の場合には、これとは著しく異なる割合で鉄筋を使用しているため、積算額が過大になっていた。したがって、同省は、診療棟等のような大規模な建築工事の鉄筋の加工組立費について、実態に即して積算するよう積算指針の改正を行うなどして、予定価格積算の適正を期する要がある。
○厚生省
 ・医師看護婦等が標準人員に対して著しく不足している病院等の把握について
厚生省では、診療報酬のうち入院時医学管理料等については、医師及び看護婦が省令で定める標準の人員に対し著しく下回っている場合には減額するなどの取扱いにより、診療報酬の合理化とともに診療の適正化を図ることとしている。しかし、病院において診療報酬の請求に当たり算定の基準についての認識が十分でなかったこと、都道府県において医師等の配置に関する資料の活用が十分でなかったことなどのため、診療報酬が不適正に支払われていた。したがって、同省は、都道府県に対し、医師及び看護婦が標準の人員に対し著しく不足している病院等を的確に把握するよう指示するなどして、診療報酬の支払の適正化を図る要がある。
○建設省
 ・住宅新築資金等貸付事業における宅地取得資金の貸付けについて
建設省では、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域の環境の整備改善を図るため、宅地の取得に必要な資金の貸付事業を行う市町村に対し、事業に必要な財源の一部として補助金を交付している。しかし、市町村は貸付対象土地の取得及び住宅建設の状況把握等を十分行わなかったり、同省が市町村に対する指導監督を十分に行っていなかったりなどしていた。このため、自ら居住する住宅の用に供する土地の取得に要する資金として貸し付けるものであるのに、借受人が土地を取得していなかったり、住宅の建設に着手していなかったりなどしている不適切な事態が多数見受けられた。したがって、同省は、市町村に対し、これらの事態については是正措置を執らせるとともに、土地取得及び住宅建設の状況などを把握できる措置を執らせるよう指導監督を行うことにより、貸付事業の適正な運営を確保する要がある。
○中小企業信用保険公庫
 ・機械類信用保険の回収金の公庫納付について
機械類信用保険においては、被保険者が保険金の支払を受けた後に損害額を回収した場合には、それを公庫に報告したうえ所定の額を公庫に納付することとなっている。しかし、公庫において、債権管理の体制が十分でなかったことなどのため、被保険者からの回収報告漏れが多数生じ、多額の納付金が公庫に納付されていない状況であった。したがって、公庫は、納付金の確保に努め、保険事業の適正な運営を図るための措置を講ずる要がある。
○東日本旅客鉄道株式会社
 ・私鉄等の定期乗車券の委託販売に係る手数料の収受について
東日本旅客鉄道株式会社では、私鉄等との間で、それぞれ相手方の路線のみに係る定期乗車券の一括販売業務を無償で相互に委託している。しかし、販売の実態をみると、同会社では多額の経費を要して私鉄等の路線のみに係る定期乗車券を販売している一方、私鉄等では、同会社の路線のみに係る定期乗車券を販売する体制がなく、取扱いの実績も全くないため、同会社の一方的な役務提供となっていた。したがって、同会社は、私鉄等の路線のみに係る定期乗車券の販売に見合う手数料を私鉄等から収受できるよう委託販売契約を改めるなどの要がある。
2 会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求し及び同法第36条の規定により改善の意見を表示した事項
1件
○厚生省
 ・母子福祉資金及び寡婦福祉資金の貸付事業の運営について
厚生省では、母子福祉資金及び寡婦福祉資金の貸付事業を行う都道府県等に対して、必要な資金の一部を無利子で貸し付けている。しかし、同省が都道府県等から提出された貸付事業計画等の審査が十分でなかったことなどのため、母子福祉資金で相当の貸付財源を保有しているのに国から貸付けを受けて余剰資金を生じていたり、両資金の余裕金の運用益が貸付財源に適正に充てらていなかったりしている事態が見受けられた。また、寡婦福祉資金の活用が十分でなかったこと、法律で両資金の融通を図ることとなっていないことなどのため、寡婦福祉資金に多額の余剰資金が滞留している一方で、貸付財源が不足している母子福祉資金では国から貸付けを受けている事態が見受けられた。したがって、同省は、国庫貸付金の交付必要額を的確に把握したり、都道府県に対して運用益を適正に計上させたりするとともに、両資金の間で資金の融通が図られるようにするなどの処置を執って、両資金の貸付事業の適切な運営を図る要かある。
3 会計検査院法第36条の規定によるもの 3件
 (ア) 改善の意見を表示した事項
○文部省
 ・高等学校定時制課程に在学する生徒への教科書の給与事業及び夜食費の補助事業について
文部省では、勤労青少年の修学の促進を目的として、都道府県が行う高等学校定時制課程に在学する生徒に対する教科書の給与事業及び夜食費の補助事業に対して補助金を交付している。しかし、両事業の対象となっている生徒について、「勤労青少年」の範囲を仮に「経常的収入を得る職業に就いている者」と設定して調査したところ、これに該当しないものが大部分を占めており、補助金交付の目的からみて適切でないと認められた。したがって、同省は、定時制課程に在学する生徒が多様化していることに対応して、補助制度の見直しを行い、事態を改善する要がある。
○農林水産省
 ・国営木曽岬干拓事業により造成された干拓地について
国営木曽岬干拓事業により造成された干拓地370haは、昭和49年度に陸地化したが、愛知、三重両県の境界が確定されずに事業効果が発現しない事態が長年月にわたり継続していたので、55年度決算検査報告に「特に掲記を要すると認めた事項」として掲記した。しかし、その後の同事業の進ちょく状況を調査したところ、愛知、三重両県の境界問題について両県間での実質的交渉が未だ行われていないまま約9年が経過しているのに、この間、農林水産省も有効な対策を講じておらず、事業完了の手続が執れない状況となっていた。また、事業費の増こうや農業情勢の変化などにより、今後、事業が完了したとしても農業収支には欠損が生じたり、必要な労働力確保が困難な状況が予想される。したがって、同省は、早急に県境を確定するよう関係機関に強く要請し、その解決を図るとともに、干拓地での営農の可能性を十分検討するとともに将来の農業情勢等を考慮するなどして、多額の国費を投じて造成された予拓地の有効利用を多角的に検討する要がある。
 (イ) 改善の処置を要求した事項
○労働省
 ・労働者災害補償保険の診療費の算定について
労働省では、労働者災害補償保険の診療費の算定方法について区々とならないよう統一的な算定基準を定めている。しかし、同省において、労働基準局における算定の実態を十分に把握しておらず、指導・監督を適切に行っていなかったことなどのため、多数の労働基準局において、算定基準と異なる割高な料金を設定して診療費を算定している事態が見受けられた。したがって、同省は、労働基準局における算定の実態について調査し、具体的な方策を指示するなどして、事態の解消を図る要がある。
(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項)
 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計17件掲記した。
○総理府(科学技術庁)
 ・廃棄物処理設備の運転等の作業請負契約における労務費の積算について
実験施設における廃棄物処理設備の運転等の作業請負契約において、労務費の積算が作業の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○農林水産省
 ・輸入麦の買入経費について
輸入麦の買入れに当たり、買入代金の概算払の割合を海上輸送途中における事故品の発生などの実態に応じた適切な水準に引き上げていたとすれば、買入経費を節減できたと認められたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
 ・素材生産請負事業における労務費の積算について
素材(丸太)の生産を民間林業事業者に請け負わせて行う事業において、労務費等の積算が作業の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○運輸省
 ・岸壁築造工事等における揚土費の積算について
岸壁の築造、浚渫等の工事において、揚土のみを行う作業船を使用する場合の揚土費の積算が、浚渫と揚土を行う作業船を使用する場合の積算方法を参考にしていたため施工の実態に適合しておらず、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
 ・住宅騒音防止工事に用いるアルミサッシの仕様について
航空機騒音による障害を防止するための補助事業において、防音工事に用いるアルミサッシは、近年、所要の遮音性を有する廉価なものが市販されてきているのに仕様の見直しを行っていなかったため、製品費の積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○労働省
 ・雇用保険の地域雇用特別奨励金の支給について
地域雇用特別奨励金の支給に当たり、支給額算定の基礎となる事業所の設置又は整備に要した費用の確認等の方法が適切でなかったり、既に他の省庁の補助の対象となった建物等の取扱いについて適切な配慮を欠いていたりなどしていたため、奨励金の支給が不適切なものになっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○自治省
 ・衛星通信用無線通信設備の電力増幅管の交換方法について
衛星通信用無線通信設備に使用している電力増幅管について、その性能の劣化を把握することにより、寿命を十分に生かして使用すれば調達費用の節減を図ることができるのに、取付け後1年経過したものを一律に取り外すこととしていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○日本道路公団
 ・橋りょう床版上の舗装の設計について
高速道路等の舗装工事において、舗装工事区間にある橋りょうを工事用道路として使用する場合、舗装の取扱いについて明確な基準がなかったことなどのため、橋りょう床版上に仮舗装し、その後本舗装する設計により工事費を積算していて、工事費が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○阪神高速道路公団
 ・高架橋建設工事に使用する鉄筋の加工組立費の積算について
高架橋建設工事において、橋脚の主鉄筋として使用する極太径の鉄筋の加工組立費の積算が施工の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○住宅・都市整備公団
 ・住宅等建築工事における鉄筋の加工組立費の積算について
壁式ラーメン構造による高層住宅等の建築工事において、細物の鉄筋の加工組立費を一般の建築物に適用される歩掛かりにより積算していたため、積算が鉄筋の径別使用割合の実態に適合しておらず、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○電源開発株式会社
 ・定期点検工事等に係る現場従業員の人件費等の積算について
火力発電所の発電設備の定期点検工事等において、現場従業員の人件費等の積算の基準が施工の実態を反映したものとなっていなかったことなどのため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○日本電信電話株式会社
 ・交換機遠隔保守システムの機器構成について
交換機遠隔保守システムの設計等において、システムのプログラムの機能を活用した機器構成とする設計を行うことなどにより、機器の購入経費を節減できたのに、その具体的な設計方法を示していなかったことなどのため、経費の節減が図られていなかったので、指摘したところ改善の処置が執られた。
 ・パーソナルコンピュータ等のプリンタで使用するリボンカセットのリサイクルについて
パーソナルコンピュータ等のプリンタで使用するリボンカセットについて、使用済みのリボンを詰め替えてリサイクルを行うことにより、購入経費の節減を図ることができるのに、指導が十分でなかったことなどのため、1回の使用で廃棄していたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
 ・公衆電話委託手数料の支払について
公衆電話委託手数料の支払に当たり、定額で支払う手数料は毎月回収する通話料と相殺して支払うことが容易に可能であるのに、口座振込により支払っていて振込費用が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。
○北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社
 ・自動車線の委託駅における乗車券類の発売について
部外に委託している自動車線の駅における乗車券類の発売業務について、発売枚数が減少している事態などからみて、自動車内等で同業務を行える状況にあることから、同業務の委託を廃止し経費の節減を図る要があると認められたので、指摘したところ改善の処置が執られた。