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  • 昭和62年度|
  • 第1章 検査結果の概要

法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項等の概要


第2節 法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項等の概要

 検査の結果、この検査報告に掲記した「法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項」(以下「不当事項」という。)、「意見を表示し又は処置を要求した事項」及び「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」の各事項は、次表のとおり208件であり、また、これらのほか、検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認め、「特に掲記を要すると認めた事項」として掲記したものが1件あり、その総件数は209件である。

事項
省庁又は団体名
不当事項 意見を表示し又は処置を要求した事項 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
会計検査院法第34条関係 会計検査院法第36条関係
是正改善の処置を要求したもの 意見を表示したもの

総理府(防衛庁)

 

1

 

1

2
総理府(国土庁) 2       2
法務省       1 1
大蔵省 5       5
文部省 13     1 14
厚生省 64 3     67
農林水産省 5     3 8
通商産業省 12       12
運輸省       2 2
郵政省 35     1 36
労働省 5   1   6
建設省 3     1 4
農林漁業金融公庫 7       7
公営企業金融公庫 2       2
沖縄振興開発金融公庫       1 1
日本道路公団       3 3
首都高速道路公団       1 1
水資源開発公団 1       1
住宅・都市整備公団       2 2
雇用促進事業団       1 1
畜産振興事業団 1       1
国際協力事業団       1 1
中小企業事業団 7       7
日本国有鉄道清算事業団 1     2 3
日本私学振興財団 7     1 8
日本電信電話株式会社   1   3 4
北海道旅客鉄道株式会社       1 1
東日本旅客鉄道株式会社       1 1
東海旅客鉄道株式会社       1 1
西日本旅客鉄道株式会社       1 1
四国旅客鉄道株式会社       1 1
九州旅客鉄道株式会社       1 1
日本貨物鉄道株式会社   1     1

170 6 1 31 208

 上記の各事項について、その概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)

 検査の結果、「不当事項」として計170件を掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。

1 収入に関ずるもの(計4件 22億4363万余円)

省庁名 租税 保険料

大蔵省

1

 

1
厚生省   2 2
労働省   1 1

1 3 4

(1) 租税

1件

11億9665万余円

<租税の徴収が適正でなかったもの>

○大蔵省

・租税の徴収に当たり、課税資料の収集、活用が的確でなかったため収入金等を把握していなかったり、法令適用の検討が十分でなかったため税額計算等を誤っていたりなどして、徴収額に過不足を生じたもの

(2) 保険料 3件 10億4697万余円

<保険料の徴収が適正でなかったもの>

○厚生省

・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、保険料算定の基礎となる被保険者の資格取得年月日等の届出に対する指導及び調査確認が十分でなかったなどのため、徴収額に不足を生じたもの(1件 3億0611万余円)

・船員保険の保険料の徴収に当たり、保険料算定の基礎となる被保険者の報酬月額等の届出に対する調査確認及び指導が十分でなかったなどのため、徴収額に不足を生じたもの(1件 3192万余円)

○労働省

・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主が提出する確定保険料の申告に対する調査確認が十分でなかったため、徴収額に過不足を生じたもの(1件 7億0893万余円)

2 支出に関するもの(計131件 16億8813万余円)

省庁又は団体名 工事 物件 保険給付 補助金 貸付金 不正行為 その他

総理府(国土庁)

2

2
大蔵省         4     4
文部省   1   12       13
厚生省     3 35     24 62
農林水産省       5       5
通商産業省        12       12
労働省     3     1   4
建設省       3       3
農林漁業金融公庫         7     7
公営企業金融公庫         2     2
水資源開発公団 1             1
畜産振興事業団        1       1
中小企業事業団         7     7
日本国有鉄道清算事業団             1 1
日本私学振興財団       7       7

1 1 6 77 20 1 25 131

(1) 工事

1件

500万余円

<監督、検査が適切でなかったもの>

○水資源開発公団

・付替林道の法面保護工事の施行に当たり、コンクリート吹付工の施工が設計と相違していて、施工が不良となっているもの

(2) 物件 1件 1202万円

<受領検査が適切でなかったもの>

○文部省

・核磁気共鳴断層撮影システムの購入に当たり、受領検査が適切でなかったため、その一部が購入の目的を達していないもの

(3) 保険給付 6件 3億1367万余円

 <保険の給付が適正でなかったもの>

○厚生省

・健康保険の傷病手当金等の支給に当たり、傷病手当金等の請求に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 1162万余円)

・厚生年金保険の老齢年金等の支給に当たり、事業主から提出された届出に対する調査確認等が十分でなかったり、事務処理が適切でなかったりしたため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 2872万余円)

・国民年金の母子年金の支給に当たり、年金の裁定請求等に対する調査確認及び指導が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件5568万余円)

○労働省

・雇用保険の失業給付金の支給に当たり、失業認定の申告等に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 1億4769万余円)

・雇用保険の雇用調整助成金の支給に当たり、事業主の申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 6103万余円)

・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給に当たり、事業主の申請に対する調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 890万余円)

(4) 補助金 77件 4億7027万余円

<補助事業の実施及び経理が不当なもの>

○総理府(国土庁)

・小笠原諸島振興事業において、補助の目的を達していないもの及び造成した資金を貸付けの対象とならないものに貸し付けていたもの(2件 3454万余円)

○文部省

・義務教育費国庫負担金等の算定において、事実と相違する過大な児童数に基づく教職員の標準定数を用いて教職員の国庫負担限度定数を算定したり、国庫負担の対象とはならない教職員を含めて教職員定数を算定したなどのため、負担金等が過大に交付されていたもの(7件 8682万余円)

・公立小学校校舎増築事業等において、補助の対象とは認められないものを事業費に含めていたもの、補助事業の目的を一部達していなかったものなど(5件 4689万余円)

○厚生省

・へき地中核病院運営事業、へき地診療所運営事業、老人福祉施設保護事業等において、事業費を過大に精算していたもの、補助金を不正に受給していたものなど(35件 1億7413万余円)

○農林水産省

・畜産総合対策事業、山村等振興対策事業等において、補助の対象とは認められないもの、補助の目的を達していないものなど(5件 2445万余円)

○通商産業省

・補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、設備を貸付対象事業費より低額で設置したり、中古品を設置したりしていたものなど補助の目的に沿わない結果になっていたもの(12件 3909万余円)

○建設省

・道路事業において、工事の設計又は工事費の積算が適切でなかったもの(3件 3226万余円)

○畜産振興事業団

・ミートフェア開催事業の補助金の交付に当たり、事業主体において、委託先から提出された実績報告書が事実と異なっていたため、事業費を過大に計上しており、これに基づいて交付した事業団の交付額が過大になっていたもの(1件 1925万余円)

○日本私学振興財団

・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、補助金算定の対象とはならない教職員を含めた資料に基づき補助金の額を算定したなどのため、交付額が過大になっていたもの(7件 1280万余円)

(5) 貸付金 20件 6億3909万余円

<貸付金の経理が不当なもの>

○大蔵省

・資金運用部資金の貸付けにおいて、貸付先が、貸付けの対象とならない事業費を貸付対象事業費に含めていたもの及び貸付対象事業の財源として受け入れた負担金を貸付対象事業費の財源に算入していなかったもの(4件 4081万余円)

○農林漁業金融公庫

・農業基盤整備資金等の貸付けにおいて、貸付対象事業の一部が実施されていなかったもの、貸付金額を過大に算定していたものなど(7件 2861万余円)

○公営企業金融公庫

・公営企業金融公庫資金の貸付けにおいて、貸付先が、貸付けの対象とならない事業費を貸付対象事業費に含めていたもの及び貸付対象事業の財源として受け入れた負担金を貸付対象事業費の財源に算入していなかったもの(2件 1401万余円)

○中小企業事業団

・中小企業高度化資金の貸付けにおいて、貸付けの対象とならないものに貸し付けていたもの、貸付対象施設が貸付けの目的外に使用されていたものなど(7件 5億5564万余円)

(6) 不正行為 1件 6044万余円

<現金を領得されたもの>

○労働省

・労働基準監督署の職員が、架空又は実在の労働者名を使用して書類を偽造し、療養補償給付等を領得したもの

(7) その他 25件 1億8761万余円

○厚生省

・児童扶養手当の支給に当たり、手当の請求に対する指導及び調査確認が十分でなかったため、支給が適正に行われていなかったもの(1件 6976万余円)

・国の負担の対象となる医療費の支払に当たり、誤った室料、特定患者収容管理料等の診療報酬の請求に基づいて支払っていたもの(23件 7033万余円)

○日本国有鉄道清算事業団

・固定資産税等の納付に当たり、課税対象とされた土地の一部が非課税扱いとされている公共の用に供する道路となっているのに、その旨を課税当局に申し入れなかったため、納付額が過大になっていたもの(1件 4751万余円)

3 収入支出以外のもの(計35件 2億0822万余円)

省庁名 不正行為


郵政省


35


不正行為


35件


2億0822万余円

<現金を領得されたもの>

○郵政省

・郵便局の出納官吏、出納員等が、郵便貯金の預入金、簡易生命保険の保険料等を領得したもの

(意見を表示し又は処置を要求した事項)

 会計検査院法第34条又は第36条の規定により昭和63年中に関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項を「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計7件掲記した。

1 会計検査院法第34条の規定によるもの

6件


○総理府(防衛庁)

・海上自衛隊の船舶(艦船)の国有財産台帳価格について

船舶の国有財産台帳価格の登録に当たり、FMS調達により購入した装備品等について、物品管理簿には取得時の支出官レートで記載しているのに、当該物品を国有財産に編入する際には、これによらず前金払時の支出官レートにより登録しているなどのため、原則として一致する物品管理簿価格と国有財産台帳価格とがかい離している事態が見受けられるので、FMS調達に係る装備品等を国有財産に編入する場合に適用すべき円貨換算レート等
に関する基準を設けるなどの措置を講じ、もって国有財産台帳価格の適正化を図る要がある。

○厚生省

・医学実験用サルの飼育管理業務の実施について

医学実験用サルの飼育管理業務において、関係部局間の連絡調整が適切に行われていなかったり、繁殖交配方式が需要に応じたものとなっていなかったりなどしているため、老齢などにより、実験用又は繁殖用としての使用が当面困難なサルを多数飼育している一方で、実験用サルの供給不足を生じ、別途実験用サルを輸入しているなどの事態が見受けられるので、実験用サルの中長期の需給計画を策定するなどの措置を講じ、医学実験用サルの飼育管理業務の効率的な実施を図る要がある。

・老人医療における特例許可外老人病院の把握について

老人保健事業において、都道府県による病院に対する指導が十分でなく、また、老人収容比率を把握するための調査がほとんど行われていないなどのため、老人収容比率の平均値が一定値以上であるなど特例許可外老人病院に該当する病院であるのに、診療報酬の請求に当たり、一般病院であるとして医療費を過大に請求していた不適切な事態が見受けられるので、特例許可外老人病院に係る老人収容比率の具体的な把握の方法を都道府県に示すなどして、老人保健法等の適正な運用を図る要がある。

・厚生年金保険の老齢厚生年金等に係る加給年金額の支給について

厚生年金保険の老齢厚生年金等の支給に当たり、配偶者を対象とする加給年金額が加算された老齢厚生年金等について、配偶者が死亡したり、配偶者と離婚したりなどしたときには年金額の改定等の必要があるのにこれを行っていないため、年金が過払となっている事態が見受けられるので、対象配偶者の生存等の現況の確認を行い、確認のできないものについては加給年金額相当額の支給の一時差止めを行う体制の整備を図るなどの措置を講じ、年金支給の適正化を図る要がある。

○日本電信電話株式会社

・有線音楽放送線に係る添架料の徴収等について

有線音楽放送線が電柱へ無断で添架されていることについて、有線音楽放送業者の業界団体や有線音楽放送業者とその解消について十分折衝を行っていなかったり、添架状況の調査、記録の整備等が適切に行われていなかったりなどしていたため、有線音楽放送線の無断添架が毎年度増加し、これに係る添架料相当額が多額に上っているなどの事態が見受けられるので、業界団体と無断添架の解消についての協議を行うなどの措置を講じて、添架料の徴収の確保等に努める要がある。

○日本貨物鉄道株式会社

・コンテナの管理、運用について

コンテナの管理、運用に当たり、その個数を正確に把握していなかったり、通運事業者によるコンテナの搬出入を確実に把握していないことなどのため、多数のコンテナが所在不明となっていて現物の確認ができず、ひいてはその回収が不能となるおそれが生じていたり、コンテナの使用料を収受できないままとなっていたりしている事態があるので、コンテナの所在把握、所在不明のコンテナの発生防止及び解消等のための体制を整備し、コンテナの適切な管理及び効率的な運用を図る要がある。

2 会計検査院法第36条の規定によるもの

1件


意見を表示した事項

○労働省

・労働者災害補償保険の遺族補償年金等の受給資格者の認定について

遺族補償年金等の受給資格者の認定に当たり、死亡労働者との同居の事実を住民票等により確認するだけで受給資格者と認定しているため、必ずしも生計維持関係があったとは認められない孫又は祖父母が受給資格者となっている事態が見受けられるので、死亡労働者によって真に生計が維持されていた遺族を対象とするよう制度の見直しを行い、この年金の趣旨に沿った支給を行う要がある。

(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項)

 本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項を「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計31件掲記した。

○総理府(防衛庁)

・F−15型要撃戦闘機用エンジンの構成品の運用について

航空自衛隊において、オーバーホール等を実施する基準となる定期交換時間が定められている主燃料ポンプ等のエンジン構成品をエンジンから取り外し寄託保管している間に、定期交換時間の延長があったのに、この場合の取扱いを明確に定めていなかったため、延長前の定期交換時間を適用したままこれらのオーバーホール等を実施する契約を締結していたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○法務省

・契約電力の基礎となる変圧器の容量について

法務局等において、変圧器ごとの使用電力を把握し、変圧器の総容量を適切なものとする配慮が十分でなかったため、契約電力が過大で電気料金が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○文部省

・国立大学医学部附属病院等における患者給食の委託料の算定について

患者給食委託契約において、文部省が委託料の具体的な算定方法を示していなかったため、患者が給食を1日1食又は2食しかとらない日も1日3食とるときと同一の単価を適用して委託料を算定していて、委託料が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○農林水産省

・重要野菜に係る野菜価格安定対策等事業について

重要野菜に係る野菜価格安定対策等事業において、計画どおりの出荷が行われているかどうかの認定が適切に行われていなかったり、産地の生産、出荷の実状等を十分把握していなかったりなどしているため、事業効果を発現していない生産者補給交付金が交付されていたり、支払の要がなかった生産者補給交付金が交付されていたりなどしていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・水路トンネル工事における覆工コンクリート打設費の積算について

水路トンネルの覆工コンクリートの打設工事に覆工型枠として使用する鋼製スライディングフォームについて、近年、構造、材質、性能等の向上などによって、さらに他のトンネル工事現場に転用することが可能となっているのに、これを積算の基準に反映させていなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・蚕糸砂糖類価格安定事業団による沖縄県産甘しゃ糖の売戻価格について

農林水産省では、蚕糸砂糖類価格安定事業団に、国内産糖の売買業務を、その製造事業者との間で当該事業者が製造した国内産糖を買い入れ直ちに当該事業者に売り戻すという方法で行わせている。このうち、沖縄県産甘しゃ糖の売戻価格について、農林水産省では、県外の精製糖製造業者等に販売されることを予定した売戻価格だけを定めていたため、本島内販売分等の買入れ及びその売戻しに当たり、売戻価格が適切でなく、売買差額が過大に支払われていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○運輸省

・ケーソン製作工事の積算について

防波堤、岸壁等の築造に使用するケーソンの製作工事の積算の基準において、型枠及び外足場の損料対象期間に関する規定が不備であったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・航空保安施設等の警備費の積算について

航空保安施設等の警備費の積算が警備業務の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○郵政省

・ファクシミリの借料について

郵便局等で業務連絡用に使用するファクシミリの借入れにおいて、郵政本省が地方郵政局等に対し予算を示達するに当たり示した機器の借料の月額単価が高額に過ぎたことなどのため、借料月額が割高になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○建設省

・特定賃貸住宅の賃貸条件等について

特定賃貸住宅建設融資利子補給補助事業において、利子補給を行う地方公共団体が賃貸人等に対する賃貸条件等の趣旨及び内容の周知徹底を十分図っていなかったり、建設省が地方公共団体に対する指導を十分行っていなかったりなどしているため、利子補給の対象となる融資を受けて建設された賃貸住宅について、建設後、制度上定められた家賃その他の賃貸条件等に違反して賃貸されているものなどが多数見受けられたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○沖縄振興開発金融公庫

・マンション購入資金の貸付けを受けて購入したマンションの第三者への賃貸等の防止について

公庫貸付けを受けて自ら居住するものとして購入したマンションについて、借入申込みに対する審査が十分でなかったり、貸付後のマンションの居住状況の把握をしていなかったりなどしていたため、第三者に賃貸されているなどしていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○日本道路公団

・トンネル工事で計測作業に使用するリフト車の運転に要する経費の積算について

トンネル工事で計測作業に使用するリフト車の運転に要する経費の積算の基準が施工の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・可変標示板設備工事における予備品の調達について

可変標示板設備工事において調達する予備品について、機器の信頼性が向上したなどの実態を仕様書に反映させていなかったため、調達が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・共同受信施設の維持管理費用の公団負担額の積算について

都市部の住宅密集地におけるテレビジョン電波受信障害を改善するための共同受信施設の保守費の公団負担額の積算に当たり、対象施設が集約化していることなどから作業が能率的に行われるなどしているのに、これを積算に反映させていなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○首都高速道路公団

・高架橋等の鋼床版の現場溶接費の積算について

高架橋等の鋼床版の現場溶接費の積算の基準が施工の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○住宅・都市整備公団

・道路工事における街渠工費の積算について

道路工事における街渠工費の積算の基準において、コンクリートの表面仕上げの費用が二重に計上されることになっていたため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・民営賃貸用特定分譲住宅の賃貸条件について

貸家経営を行おうとする土地所有者等に譲渡した民営賃貸用特定分譲住宅について、住宅を譲り受けて賃貸している者に対し制度の趣旨及び賃貸条件を十分周知徹底させていなかったなどのため、譲渡後、制度上定められた賃貸条件に違反して賃貸されているものが多数見受けられたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○雇用促進事業団

・契約電力の基礎となる変圧器の容量について

職業訓練施設において、変圧器ごとの使用電力を把握し、変圧器の総容量を適切なものとする配慮が十分でなかったため、契約電力が過大で電気料金が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○国際協力事業団

・国際航空運賃の支払方法について

国際航空運賃の支払に当たり、支払方法についての明確な基準が定められていなかったことなどにより、支払方法の選択が外国為替相場の動向等を反映したものとなっていなかったため、支払額が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○日本国有鉄道清算事業団

・廃棄物処理費に係る諸経費の積算について

廃棄物処理費に係る諸経費の積算の基準が処理の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・コンクリート舗装の取壊し費の積算について

コンクリート舗装の取壊し作業について、積算の基準が定められておらず、積算が作業の実態に適合していなかったため、積算額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○日本私学振興財団

・私立大学における臨床研修医に係る支出の補助金算定上の取扱いについて

私立大学等経常費補助金の交付に当たり、臨床研修医に係る支出の補助金算定上の取扱いを明確にしていなかったため、交付額が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○日本電信電話株式会社

・音声符号化多重変換装置の購入について

音声符号化多重変換装置の購入に当たり、同装置が通信網のディジタル化の進展に伴い、いずれは購入の必要がなくなり漸次廃棄するものであって、必要数の算定方法を明確にして可能な限りその購入を抑制すべきであるのに、それを示していなかったことなどのため、機器の購入量が過大になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・2件以上の加入電話を有する加入者に対する事前案内書の郵送について

通話料金等の事前案内書の郵送に当たり、2件以上の加入電話を有する加入者に対して一括して封書で郵送することの了解を得るための照会をほとんど行っていなかったなどのため、個別に郵送していて、郵便料金が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

・事前案内書及び料金明細サービスの意向照会書の郵送について

通話料金等の事前案内書の郵送に当たり、同一の相手方に郵送する料金明細サービスの意向照会書に同封して郵送することが可能であるのに、別々に郵送していたため、郵便料金が不経済になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

○北海道旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社

・自動車整理場の使用料金について

各会社において、自動車整理場の使用料金の設定に当たり、周辺の駐車場の料金と比較考量して妥当な金額に設定したり、適時見直したりしていなかったため、使用料金が周辺の駐車場の料金よりも低額になっていたので、指摘したところ改善の処置が執られた。

(特に掲記を要すると認めた事項)

 以上のほか、検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めたものが1件あり、これを掲記した。

・登録免許税の税率軽減の制度の運用について

住宅施策の一環として設けられている登録免許税の税率軽減の制度の運用において、所有権移転等の登記後に自ら居住することなく第三者に使用させていたり、当該家屋を事務所等の用に供していたりなどしている事態が多数見受けられ、登録免許税の課税が適正を欠いているばかりでなく、税率軽減により良質な住宅の取得を促進するという制度の趣旨に沿わないこととなっている。このような事態となっているのは、登記申請者の納税意識の欠如に起因するものであるとはいえ、本制度に関係する建設、法務両省間の連携や、居住の証明を依存している市町村に対する指導など同種事態の予防及び発生後の対応策等についての体制が必ずしも整備されていないことによると認められ、今後の推移になお注目の要がある。