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  • 平成10年度|
  • 第1章 検査の概要

検査結果の大要


第2節 検査結果の大要

 平成11年次の検査の結果については、「第2章 決算の確認」 並びに「第3章 個別の検査結果」、「第4章 特定検査対象に関する検査状況」及び「第5章 会計事務職員に対する検定」 に記載したとおりであり、このうち第3章及び第4章に掲記した事項等の概要は次のとおりである。

第1 事項等別の検査結果

1 事項等別の概要

 検査の結果、第3章及び第4章に掲記した事項等には、次のものがある。

ア 第3章の「個別の検査結果」に掲記した事項

(ア)「不当事項」(検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項)

(イ) 「意見を表示し又は処置を要求した事項」(会計検査院法第34条又は第36条(注) の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項)

(ウ)「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」(本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項)

(エ)「特に掲記を要すると認めた事項」(検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めた事項)

イ 第4章に掲記した「特定検査対象に関する検査状況」(本院の検査業務のうち特にその検査の状況を報告する必要があると認めたものの記述)

(注)  会計検査院法

第34条 会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。

第36条 会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。

 これらの事項等の件数、金額は、次表のとおりである。

事項等 件数 指摘金額(注)
〔背景金額〕
不当事項 229件 117億8569万円
意見を表示し又は処置を要求した事項 第34条2件 3億1409万円
第36条4件 506億1565万円
208億5809万円
116億7100万円
13億8336万円
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 32件
<29件分>
22億0938万円
28億3865万円
5億7464万円
70億9280万円
特に掲記を要すると認めた事項 2件 14億4456万円
359億8847万円
事項計 269件 <260件分>
143億0916万円
特定検査対象に関する検査状況 10件 -
総計 279件 <260件分>
143億0916万円

(注)  指摘金額・背景金額 指摘金額とは、租税や社会保険料等の徴収不足額、工事や物品調達等に係る過大な支出額、補助金の過大交付額等である。

 背景金額とは、会計経理に関し不適切、不合理な事態が生じている原因が「法令」、「制度」あるいは「行政」にあるような場合や、政策上の問題等から事業が進ちょくせず投資効果が発現していない事態について問題を提起する場合などの、その事態に関する支出額や投資額等である。このような事態における支出等の額は、直ちに「過大な支出額」などとは言い切れないため、「背景金額」として「指摘金額」と区別している。なお、背景金額は個別の事案ごとにその促え方が異なるため、金額の合計はしていない。

2 事項別の検査結果の概要

 第3章の「個別の検査結果」に掲記した各事項のうち、特に掲記を要すると認めた事項を除く不当事項等について、省庁等別にその件数、金額を示すと次表のとおりである。

事項
省庁又は団体名
不当事項 意見を表示し又は処置を要求した事項 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

裁判所

1

736万円



1

736万円
総理府
(防衛庁)
1 5145万円 〔36〕
1
(506億1565万円) 2 9180万円 4 1億4325万円
(506億1565万円)
法務省 2 1010万円



2 1010万円
大蔵省 3 22億7496万円 〔36〕
1
(208億5809万円)

4 22億7496万円
(208億5809万円)
文部省 31 2億7573万円 〔34〕
1
6900万円

32 3億4473万円
厚生省 101 76億5691万円 〔34〕
1
2億4509万円 3 1億2830万円
(28億3865万円)
105 80億3030万円
(28億3865万円)
農林水産省 26 1億4708万円 〔36〕
2
(116億7100万円)
(13億8336万円)
4 4億7302万円 32 6億2010万円
(116億7100万円)
(13億8336万円)
通商産業省 9 4754万円



9 4754万円
運輸省 1 2億0425万円

3 1億4320万円 4 3億4745万円
郵政省 28 4億3490万円

1 1億9480万円 29 6億2970万円
労働省 6 4億5082万円



6 4億5082万円
建設省 9 7472万円

3 2億8649万円
(5億7464万円)
12 3億6121万円
(5億7464万円)
自治省



1 7235万円 1 7235万円
首都高速道路公団



2 8490万円 2 8490万円
森林開発公団



1 1億9710万円 1 1億9710万円
阪神高速道路公団



1 5060万円 1 5060万円
住宅・都市整備公団



1 (70億9280万円) 1 (70億9280万円)
簡易保険福祉事業団



1 5813万円 1 5813万円
日本下水道事業団



1 2040万円 1 2040万円
社会福祉・医療事業団 2 2522万円



2 2522万円
日本私立学校振興・共済事業団 7 4007万円



7 4007万円
電源開発株式会社



1 9459万円 1 9459万円
理化学研究所 1 7455万円



1 7455万円
日本電信電話株式会社



3 1億6200万円 3 1億6200万円
日本体育・学校健康センター 1 996万円



1 996万円
西日本旅客鉄道株式会社



1 3080万円 1 3080万円
四国旅客鉄道株式会社



1 3710万円 1 3710万円
九州旅客鉄道株式会社



1 5080万円 1 5080万円
日本貨物鉄道株式会社



1 3300万円 1 3300万円
総合計 229 117億8569万円 6 3億1409万円 32 22億0938万円 267 143億0916万円

(注1) 「意見を表示し又は処置を要求した事項」の件数欄の〔34〕 は会計検査院法第34条によるもの、〔36〕 は会計検査院法第36条によるものを示している。

(注2) ( )内の金額は背景金額であり、個別の事案ごとにその捉え方が異なるため金額の合計はしていない。

 また、特に掲記を要すると認めた事項は、2件(背景金額14億4456万円、359億8847万円)である。
 以上の各事項計269件について、その概要を示すと次のとおりである。

(不当事項)

 検査の結果、「不当事項」として計229件掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。

1 収入に関するもの(計25件 65億9579万余円)

省庁名 租税 保険料 医療費 不正行為

大蔵省

2

2
文部省

20
20
厚生省
1
1 2
労働省
1

1
2 2 20 1 25

 

(1) 租税
2件 22億2876万余円

<租税の徴収等が適正でなかったもの>

○大蔵省

・租税の徴収に当たり、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤っているのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったり、これを見過ごしたりなどしていたため、納税者401人からの徴収額に過不足があったもの(1件 12億7181万余円)

・法人税の過納金の還付に当たり、法令に基づく還付加算金の計算の始期を誤ったため、還付加算金を過大に支払っていたもの(1件 9億5695万余円)

(2) 保険料
2件 41億5598万余円

<保険料の徴収が適正でなかったもの>

○厚生省

・健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、派遣労働者を使用している派遣元の事業主等が常用的に使用している派遣労働者等について、被保険者資格取得届の提出を怠るなどしていたのに、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、1,850事業主からの徴収額が不足していたもの(1件 38億9153万余円)

○労働省

・労働保険の保険料の徴収に当たり、事業主からの申告書における賃金総額の記載が事実と相違するなどしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、437事業主からの徴収額に過不足があったもの(1件 2億6444万余円)

(3) 医療費
20件 2億0658万余円

<診療報酬の請求が適切でなかったもの>

○文部省

・大学病院における診療報酬の請求に当たり、手術において使用した特定保険医療材料の費用を算定していなかったり、麻酔料に加算を行っていなかったり、難病患者等入院診療料を算定していなかったりなどしたため、20大学病院で請求額に過不足があったもの

(4) 不正行為
1件 445万余円

<現金が領得されたもの>

○厚生省

・社会保険事務所の分任収入官吏が国民年金保険料の収納事務に従事中、被保険者から受領した同保険料を国庫に払い込まずに領得したもの

2 支出に関するもの計173件 47億3752万余円

省庁又は団体名 予算経理 工事 物件 保険給付 医療費 補助金 貸付金 不正行為 その他

総理府(防衛庁)

1

1
大蔵省
1






1
文部省




11


11
厚生省


1 1 93
4
99
農林水産省
1


18 7

26
通商産業省




9


9
運輸省
1






1
労働省


3 1 1


5
建設省




9


9
社会福祉・医療事業団





2

2
日本私立学校振興・共済事業団




7


7
理化学研究所

1





1
日本体育・学校健康センター







1 1
1 3 1 4 2 148 9 4 1 173

 

(1) 予算経理
1件 5145万円

<会計制度の基本原則を逸脱していたもの>

○総理府(防衛庁)

・海上自衛隊が運用している地域通信処理システムの整備に当たり、海上幕僚監部が業者に要請して、調達手続を開始する前に電子計算装置を搬入させ、据付調整等に着手させるなどしていて、国の会計制度の基本原則を逸脱していたもの

(2) 工事
3件 2億5806万余円

<設計又は積算が適切でなかったもの>

○大蔵省

・宿舎新築工事の施行に当たり、外部足場費の材料費を積算する際に、構成部材のりース料金の基本料に誤った使用割合や使用日数を乗ずるなどして材料費を過大に算出したため、契約額が割高となっていたもの(1件 4620万円)

○農林水産省

・道路建設工事の施行に当たり、横断暗きょ管の設計計算において適用する計算式を誤って、管に作用する土圧を過小に計算していて、設計が適切でなかったため、横断暗きょ管の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 761万余円)

○運輸省

・閘門築造工事の施行に当たり、基礎杭詳細図に強度の劣る規格の鋼管杭を使用することと記載されていて、設計が適切でなかったため、基礎工の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 2億0425万余円)

(3)物件
1件 7455万円

<調達計画及び経理処理が適切を欠いていたもの>

○理化学研究所

・大型超精密加工装置の調達に当たり、設置場所の検討が十分でなく納期までに決定できなかったため、装置を製造会社の工場に保管させたままとし、また、搬入、据付け・調整等が完了していないのに契約代金の全額を支払うなどしていて、調達に係る計画及び経理処理が適切を欠いていたもの

(4) 保険給付
4件 12億3556万余円

<保険の給付が適正でなかったもの>

○厚生省

・厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給に当たり、受給権者が事業所に常用的に使用されていて、年金の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに、被保険者資格取得届が提出されず、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったため、1,341人に対して支給停止の手続が執られず不適正に支給されていたもの(1件 11億1012万余円)

○労働省

・雇用保険の失業等給付金の支給決定に当たり、受給者が、再就職していながらその事実を申告書に記載していなかったり、事実と相違する再就職年月日を記載したりしていたのに、これに対する調査確認が十分でなかったため、339人に対する支給が適正に行われていなかったもの(1件 5145万余円)

・雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書において既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったなどのため、58事業主に対する支給が適正に行われていなかったもの(1件 5751万余円)

・雇用保険の地域雇用開発助成金の支給決定に当たり、事業主が申請書において、既に雇用している者を新たに雇用したこととしているなど、その記載内容が事実と相違していたのに、これに対する調査確認が十分でなかったなどのため、8事業主に対する支給が適正に行われていなかったもの(1件 1647万余円)

(5) 医療費
2件 18億6869万余円

<医療費の支払が適切でなかったもの>

○厚生省

・特定入院料、入院環境料、看護料等の診療報酬の支払に当たり、医療機関から不適正な診療報酬の請求があったのに、これに対する審査点検が十分でなかったなどのため、308医療機関に対する医療費の支払が適切でなく、これに対する国の負担が不当と認められるもの(1件 18億1131万余円)

○労働省

・労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払に当たり、医療機関が手術料、入院料、リハビリテーション料等を誤って算定し請求していたのに、これに対する審査が十分でなかったため、395医療機関に対する支払が適正に行われていなかったもの(1件 5738万余円)

(6) 補助金
148件 11億3389万余円

<補助事業の実施及び経理が不当なもの>

○文部省

・義務教育費国庫負担金等の算定において、国庫負担の対象にならない教員等に係る給与費等を国庫負担対象額に含めたり、教職員定数の算定を誤ったりなどしていたため、負担金が過大に交付されていたもの(8件 5860万余円)

・公立学校施設整備費補助金の算定において、補助の対象とは認められない面積を補助対象面積に含めて補助対象事業費を算定していたため、補助金が過大に交付されていたもの(2件 492万余円)

・民間スポーツ振興費等補助金の交付に当たり、事業主体がその加盟団体に委託して実施する選手強化事業について、加盟団体が事業の一部を実施していなかったり、実際には支出していない経費を支出したこととしたりなどしていたため、委託費が過大となっていて、補助金が過大に交付されていたもの(1件 562万余円)

○厚生省

・社会福祉施設等施設整備事業等の実施に当たり、社会福祉法人が、建築工事の入札において著しく高率な最低制限価格を設定し、これを下回る価格で入札した業者を排除して割高な契約を締結していたり、設備の整備において補助の対象とならないリース契約によるなどしていたりしたため、補助金が過大に交付されていたもの(3件5423万余円)

・生活保護費補助金の交付に当たり、県において、生活保護の運営と関係のない業務に要した旅費を補助対象事業費に含めていたため、補助金が過大に交付されていたもの(1件 2189万余円)

・生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における年金等の額を過小に認定するなどして保護費の額を決定していたため、負担金が過大に交付されていたもの(5件 3123万余円)

・老人医療給付費負担金の算定に当たり、老人医療費を区分集計する際、一般医療費として区分すべきものを、国の負担割合が高率となる老人保健施設療養費等に区分集計していたため、負担金が過大に交付されていたもの(3件 8990万余円)

・老人福祉施設保護費負担金の算定において、老人の収入を誤認するなどして対象収入を過小に算定したり、主たる扶養義務者の所得税額等を誤認して実際の額より少ないとしたりなどして、徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの(25件 3251万余円)

・児童保護費等負担金の算定に当たり、児童の扶養義務者の所得税額等を誤認するなどして徴収金の額を過小に算定していたため、国庫負担対象事業費が過大に精算されていたもの(18件 1732万余円)

・児童育成事業費補助金の算定に当たり、延長保育を利用した児童数が6人を超える場合に加算される額の算定の基礎となる平均利用児童数について、延長保育を実際に利用した児童数を用いずに、延長保育の希望を受けて登録した児童数を基にして計算するなどしていたため、補助金が過大に交付されていたもの(7件 5560万余円)

・国民健康保険の財政調整交付金の交付に当たり、市町村において、交付額算定の基礎となる調整対象収入額を過小に算定したり、保健事業費対象額を過大に算定したりなどして交付申請を行っていたため、交付金が過大に交付されていたもの(31件 4億7101万余円)

○農林水産省

・中国青年農業指導者育成事業の実施に当たり、事業主体が事業のために支出したとしていた経費の一部は、実際は当該経費として支出した事実がないのに、この架空の支出額を補助事業に要した経費に含めていたため、国庫補助対象事業費が過大に精算されていたもの(1件 5273万余円)

・卸売市場流通高度化事業の実施に当たり、設置した設備等の仕入れに係る消費税の還付を受けていたのに、その補助金相当額を返還していなかったため、国庫補助対象事業費が過大に精算されていたもの(1件 663万余円)

・復旧治山事業の実施に当たり、アンカー工費等を積算する際、誤って、同一現場で過年度に施工した作業量の異なるアンカー工の機械の作業日数等をそのまま採用して施工単価を算出するなどしたため、工事費が割高となっていたもの(1件 512万余円)

・農業用施設災害復旧事業の実施に当たり、ため池の復旧工法としてドレーンを設置する工法を採用すべきであったのに軽量法枠工を採用していて、設計が適切でなかったため、堤体の後法面が滑落していて、工事の目的を達していないもの(1件 759万余円)

・地域農業生産再編特別対策事業の実施に当たり、自動制御製茶機械を設置する事業について、国庫補助対象事業費から控除することとされている既存の製茶機械の売却額を控除していなかったため、国庫補助対象事業費が過大に精算されていたもの(3件 859万余円)

・精米施設又は水稲育苗施設を設置する事業の実施に当たり、補助の対象とならない経費を事業費に含めていたため補助金の交付が過大になっていたり、補助事業で設置した処分制限期間の経過していない施設の用途を廃止したため補助の目的を達成していなかったりしていたもの(3件 882万余円)

・水環境整備事業の実施に当たり、鉄筋コンクリート水路に生ずる地下水位による浮力について安定計算を行っておらず、設計が適切でなかったため、鉄筋コンクリート水路等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 378万余円)

・広域基幹林道開設事業の実施に当たり、排水施設工を施工する際、排水処理が適切でなかったり、基礎地盤の転圧が十分でなかったりなど、施工が著しく粗雑であったため、ヒューム管及び基礎コンクリートが沈下するなどしていて、工事の目的を達していないもの(1件 313万余円)

・農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業の実施に当たり、橋りょう張出し床版のうち引張り応力が減少する端部寄り部分などについて、安全性を確認することなく鉄筋量を減らしていて、設計が適切でなかったため、張出し床版の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 595万余円)

・農林漁業用揮発油税財源身替農道整備事業の実施に当たり、ボックスカルバートの底版の上面側に配置する主鉄筋について、誤って、配筋図に示されている間隔の2倍の間隔で配置していて、施工が設計と著しく相違していたため、ボックスカルバート等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 340万余円)

・国庫補助金を原資とする林業改善資金の貸付けにおいて、借受者が、貸付決定前に既に納入させていた機械を対象として貸付けを受けていたり、機械を購入していなかったりなどしていて、補助の目的に沿わない結果となっていたもの(4件 1933万余円)

○通商産業省

・地域産業創造技術研究開発費補助金の交付に当たり、事業主体が、補助対象の機械装置等を購入していなかったり、補助の対象とならない経費を事業費に含めていたりしていたため、補助金が過大に交付されていたもの(3件 1833万余円)

・国庫補助金を原資とする中小企業設備近代化資金の貸付けにおいて、借主が、設備を貸付対象事業費より低額で設置したり、設備を設置していなかったりなどしていて、補助の目的に沿わない結果となっていたもの(6件 2920万余円)

○労働省

・認定職業訓練の実施に当たり、職業訓練法人が訓練に要したとして県に報告した事業費の中に、事業目的外に費消されていたものが含まれていたため、国庫補助対象事業費が過大に精算されていたもの(1件 355万余円)

○建設省

・道路災害復旧事業の実施に当たり、ブロック積護岸等を施工する際、測量誤りにより護岸の根入れ深さが著しく不足していたり、護岸上部の盛土の締固めを全く行っていなかったりしていて、施工が設計と著しく相違していたため、護岸等が工事の目的を達していないもの(1件 596万余円)

・公営住宅整備事業費補助金の交付額の算定に当たり、燃料庫の床面積を重複して計上したり、全戸で平均床面積を算出すべきなのにタイプごとで算出したりして1戸当たり平均床面積を過大に算出していたため、補助金が過大に交付されていたもの(1件 223万余円)

・公共下水道改築事業の実施に当たり、終末処理場の沈砂池設備については補助率2分の1を適用すべきであったのに、誤って、処理場の他の設備を対象とする補助率10分の5.5を適用したため、補助金が過大となっていたもの(1件 690万円)

・公共下水道事業の実施に当たり、下水道管を布設する際、安全な施工を確保するために義務付けられた土留工が施工されていなかったもの(1件 326万余円)

・道路改良事業の実施に当たり、橋脚の柱部に配置する鉄筋を施工する際、中間帯鉄筋の両端部は帯鉄筋にかけることとされているのに、誤って主鉄筋にかけていて、帯鉄筋及び中間帯鉄筋が一体的な構造となっておらず、施工が設計と相違していたため、橋脚の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 2669万余円)

・道路改良事業の実施に当たり、トンネル内の道路照明設備を施工する際、設計では照明の中心軸が対向車線の中央を指すようにしていたのに、誤って、すべての照明灯具の支持金具を上部と下部を逆に取り付けていたため、照明の中心軸が真下の車線の方向を指すようになっていて、路面の明るさが照明基準に定める路面輝度を満足していないもの(1件 1220万余円)

・公共下水道事業の実施に当たり、土地開発公社が先行取得した土地を事業主体が取得する際、公社における利子支払額を、借換え後の実際の利率によらず当初の利率のままで算定していたため、補助金が過大に交付されていたもの(1件 716万余円)

・公営住宅整備事業費補助金の交付額の算定に当たり、高齢者向け住宅の特別加算額を算定できる緊急通報システムの設置費については限度額が定められているのに、これを超過した実際の工事費で特例加算額を算定していたため、補助金が過大に交付されていたもの(1件 625万余円)

・道路改良事業の実施に当たり、土砂の掘削運搬費を積算する際、10m3 当たりの掘削積込費と10m3 当たりの運搬費の合計額を10で除して1m3 当たりの施工単価を算出すべきであったのに、誤って、運搬費について100m3 当たりの金額を入力していたため、工事費が割高となっていたもの(1件 403万余円)

○日本私立学校振興・共済事業団

・私立大学等経常費補助金の交付に当たり、学校法人から提出された資料に、補助金の算定の基礎となる教育研究経費支出等の額に含めないこととされている建物の工事費等の支出額が計上されるなどしているのに、この資料に基づいて補助金の額を算定したため、交付額が過大となっていたもの(7件 4007万余円)

(5) 貸付金
9件 3958万余円

<貸付金の経理が不当なもの>

○農林水産省

・国の貸付金等を原資とする農業改良資金の貸付けにおいて、借受者が、機械等を貸付対象事業費より低額で購入するなどしたり、貸付けの対象とならない事業について貸付けを受けたりしていて、これに係る国の貸付金等相当額が貸付け等の目的に沿わない結果になっていたもの(7件 1435万余円)

○社会福祉・医療事業団

・福祉貸付資金の貸付けにおいて、借入者が、事業実施のために交付された補助金等を貸付対象事業費の財源に算入していなかったため、貸付金が過大に貸し付けられていたもの(2件 2522万余円)

(6) 不正行為
4件 6575万余円

<現金が領得されたもの>

○厚生省

・社会保険事務所の職員が国民年金の支給決定事務に従事中、端末装置を使用して架空の国民年金障害基礎年金受給者の原簿を作成し、自ら開設した同受給者名義の口座に振り込ませるなどして同年金を領得したものなど

(7) その他
1件 996万余円

<助成金の経理が不当なもの>

○日本体育・学校健康センター

・国の出資金を財源とするスポーツ振興基金助成金の交付に当たり、助成先のスポーツ団体が事業を実施していなかったり、別途国庫補助事業の事業主体から委託された事業で負担対象とした経費を二重に計上したりなどしていたため、助成金が過大に交付されていたもの

3 収入支出以外のもの (計 31件 4億5237万余円)

省庁名 不正行為
裁判所
1
法務省 2
郵政省 28
31

 

不正行為
31件 4億5237万余円

<現金が領得されたもの>

○裁判所

・裁判所の職員が、破産事件に係る送達等の事務に従事中、換金する目的で郵便切手類販売者から郵便切手等を受領し、その代金を出納官吏が保管している破産予納金から支払わせる方法により、保管金を領得したもの(1件 736万余円)

○法務省

・地方検察庁の職員が、夜間、休日に宿直員等から金庫の鍵を借り出すなどして、刑事事件の証拠品として保管されていた現金を領得したもの、及び、刑務所の職員が、保管金の出納事務に従事中、被収容者から預かった領置金を出納官吏に払い込まなかったりするなどして領得したもの(2件 1010万余円)

○郵政省

・郵便局の出納員等29名が、契約者から受領した保険料、預金者から受領した定額郵便貯金預入金、保管に係る資金等を領得したもの(28件 4億3490万余円)

(意見を表示し又は処置を要求した事項)

「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計6件掲記した。

1 会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を要求した事項
2件

○文部省

・看護料の夜間勤務等看護加算に係る診療報酬の請求について

北海道大学医学部附属病院において、看護料の夜間勤務等看護加算の算定の可能性を検討するに当たり、平均夜勤時間数の計算期間の設定が適切でなかったため、同加算の算定に必要な知事への届出の要件を満たしていないとして届出を行っておらず、実際に夜間看護業務に従事している看護婦等について診療報酬上の評価がされていない事態が見受けられた。したがって、同大学病院において、計算期間を改めることなどにより夜間勤務等看護加算の届出を行い、適切な診療報酬を請求するための処置を講ずる要がある。

(指摘金額 6900万円)

○厚生省

・看護職員確保対策費等補助金(看護婦等養成所運営事業分)の算定について

看護職員確保対策費等補助金の算定に当たり、総事業費に施設整備に伴う経費等を含めていたり、総事業費から控除する寄付金その他の収入額に養成所の経常的な経費に充てる生徒納付金等の収入を計上していなかったりなどしていた。このため、7府県において国庫補助金が過大に算定されている事態が見受けられた。したがって、厚生省において、総事業費に計上する経費の範囲や総事業費から控除する収入の範囲を具体的に示すとともに、その周知徹底を図るなどの処置を講ずる要がある。

(指摘金額 2億4509万円)

2 会計検査院法第36条の規定によるもの
4件

(ア) 改善の意見を表示した事項

○大蔵省

・消費税の滞納の防止策について

消費税の新規発生滞納額は、近年、景気低迷の影響等により著しく増加しており、これが滞納処分の執行による整理済滞納額を上回ることから、消費税の滞納が増加し多額に上っている。そして、滞納事業者のうち調査対象とした808事業者が滞納に至った原因は、資金繰りに問題が生じ消費税相当分の資金を事業の運転資金に回すなどしていたことによると推測されるが、その背景には、消費税が消費者からの預り金的な性格を有する税であるという認識が希薄であることなどがあると認められた。これに対し、国税庁では、滞納の防止策を講じているものの、なお十分でないと認められた。したがって、同庁は、消費税の性格についての広報活動を更に徹底するとともに、入札の資格審査の際に納税証明書の添付等を求めていない地方公共団体等に対して引き続き協力要請をしたり、納税貯蓄組合等に対して消費税の納税資金の備蓄を行う旨を事業者に働きかけるよう更に一層の協力要請をしたりなどして、消費税の滞納の防止を図る要がある。

背景金額 208億5809万円
 (調査した808事業者の9年度における消費税の滞納額)

○農林水産省

・農業経営改善促進資金の貸付け及び全国低利預託基金の活用について

全国低利預託基金を原資とする農業経営改善促進資金の貸付けが極めて低調で、国からの出資により造成された基金の大部分が活用されていない事態が見受けられた。したがって、農林水産省において、資金の預託金利、貸付方式等について、金融情勢等の変化並びに認定農業者及び融資機関双方のニーズに対応したものとなるよう制度の改善を検討することにより、同資金のより一層の利用を促進し、もって基金の有効な活用を図る要がある。

背景金額 116億7100万円
 (農業経営改善促進資金として貸し付けられていない全国低利預託基金相当額)

(イ) 改善の処置を要求した事項

○総理府(防衛庁)

・自衛艦の検査・修理の契約について

海上自衛隊では、自衛艦の検査・修理に係る103件の契約に当たり、指名競争入札に付して契約を締結することとしている。しかし、すべての契約において契約業者以外のすべての指名業者が入札を辞退したため、辞退しなかった1社と随意契約を締結していた。このため、本件契約の締結に当たっては競争性が確保されず、国は競争入札による利益を得られない状況となっていた。また、1社と随意契約を締結することとした段階で契約予定業者の実績に基づく総利益率等により予定価格を算定していて、競争入札を前提とした予定価格は算定されておらず、その算定方法も明確にされていなかった。したがって、防衛庁において、指名業者の辞退の原因を究明して事態打開の方策を検討し実行するとともに、競争入札を前提とした予定価格の算定方法を明確にすることなどにより、競争入札の機能を十分発揮させる要がある。

背景金額 506億1565万円
 (検査した103件の契約額)

○農林水産省

・並型魚礁設置事業における事業計画の策定及び魚礁の管理・活用について

並型魚礁設置事業は、コンクリートブロック等を海底に設置して生産性の高い魚礁漁場を造成し、漁船漁業の生産量の増大を図ることを目的として補助事業により実施するものである。この事業について検査したところ、97事業主体が実施した212事業において生産効果期待量に達していなかった。そして、このうち93事業主体が実施した204事業においては、漁獲量の推移を十分把握していないなどのため、漁獲量が減少しているにもかかわらず、その原因を十分調査、検討することなく事業を繰り返し実施していたり、魚礁の設置位置を漁業者に十分周知していなかったり、設置後の魚礁の状況を十分把握しておらず、資源管理の面から必要な利用調整を図っていなかったりなど事業計画の策定及び魚礁の管理・活用が適切を欠いている事態が見受けられた。したがって、水産庁において、事業計画策定の際に用いる増加見込量や魚礁設置後の漁獲量の把握方法、設置後の利用方法等を確立するなどして、事業計画の策定及び設置後の魚礁の管理・活用が適切に行われ、事業効果の発現が図られるよう処置を講ずる要がある。

背景金額 13億8336万円
 (事業計画の策定及び魚礁の管理・活用が適切を欠いている事業に係る国庫補助金交付額)

(本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項)

「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計32件掲記した。

○総理府(防衛庁)

・給汽業務の部外委託に係る予定価格の積算について

ボイラー運転等の給汽業務の部外委託費の積算に当たり、契約部局に対して標準となる積算基準や労務単価の適用について周知していなかったことなどのため、相手方から提出された見積資料を基に算出した高い労務費を用いるなどして積算していて、5基地分の5契約において予定価格の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 5530万円)

・労務借上等契約の予定価格に適用する総利益率の算定について

労務借上等契約の予定価格に適用する総利益率の算定に当たり、審査及び監査の体制が十分でなかったなどのため、相手方から提出された一般管理費及び販売費の経費見積額には消費税額相当額が含まれていたのに同額を控除しないまま総利益率を定め、これを基に算出した価格に消費税額を加えて予定価格としていて、877契約において労務借上等の費用が過大となっていた。

(指摘金額 3650万円)

○厚生省

・診療報酬明細書の点検に係る特別調整交付金の算定について

国民健康保険の財政調整交付金のうち診療報酬明細書の点検に係る特別調整交付金の交付に当たり、保険者の経営努力の評価に用いる指標の見直しが十分でなかったなどのため、1,298保険者に対する交付金の配分が保険者の点検に対する取組を的確に反映した効果的なものとなっていなかった。

背景金額 28億3865万円
 (効果的な配分をする要があると認められた交付金の交付額)

・建築保全業務委託契約における直接労務費の積算について

国立病院等での建築保全業務委託契約における直接労務費の積算に当たり、深夜割増額を算出する際、割増しの基礎となる賃金には算入しないこととされている手当、賞与を含んだ労務単価に割増率を乗じるなどしたり、所要時間数を算出する際、業務に従事していない休憩時間を含めたりしていたため、3病院で直接労務費の積算額が過大となっていた。 

(指摘金額 3270万円)

・国立病院等の建設工事、外壁改修工事における外部足場費の積算について

外部足場費の積算に当たり、外部足場の設置期間の取扱いを積算基準に明確に定めていなかったため、工期が数年度にわたる建設工事において外部足場の設置期間を工期とほぼ同期間としたり、外壁改修工事において建設工事の場合の設置期間を適用したりなどしていて、42工事において外部足場費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 9560万円)

○農林水産省

・農業構造改善事業における農業協同組合連合会の手数料の算定について

農業構造改善事業において、農業協同組合連合会が事業主体を代行して施設の設置に係る業務を行う場合の手数料の算定について、農林水産省においてその取扱いを定めていなかったため、手数料の算定が業務の実態に適合したものとなっておらず、150工事における手数料が過大となっていた。

(指摘金額 2億0767万円)

・糖業振興臨時助成金の交付について

糖業振興臨時助成金の交付に当たり、助成金の算定方法が要領等で明確に定められていなかったため、実際の損益額によらず見込額により助成金の額を確定していて、助成金が過大に交付されていた。

(指摘金額 9355万円)

・林道開設工事等の機械土工における軟岩押土積込費の積算について

林道開設工事等の機械土工における軟岩押土積込費の積算に当たり、掘削後の緩められた状態の軟岩は小塊や土砂状になることから押土・積込作業が効率的になるのに、この旨を設計要領等に明確に定めていなかったため、631工事において軟岩押土積込費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 7110万円)

・土運船による浚渫土砂等の運搬費の積算について

漁港整備事業における土運船による浚渫土砂等の運搬費の積算に当たり、標準歩掛に小規格のグラブ浚渫船に対応した土運船の規格が定められていなかったり、浚滞積込量に見合った土運船の規格選定が行われるようになっていなかったりしていたため、過大な規格の土運船が選定されており、96工事において運搬費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 1億0070万円)

○運輸省

・桟橋等の築造工事における鋼管杭の防食対策について

補助事業に係る桟橋等の築造工事に使用する鋼管抗の設計に当たり、杭の上部の防食対策についてはポリエチレンなどで鋼管杭を被覆するのみで十分であるのに、更に腐食分を見込んで杭の厚さを増した設計としていたため、16工事において鋼管杭の材料費が不経済となっていた。

(指摘金額 4560万円)

・照明灯工事における共通費の積算について

空港等の照明灯工事における共通費の積算に当たり、受配電機器等の工場で製作される製品であって積算基準等に示す特定材料について製品名を明確に示していない材料があったなどのため、共通費の対象金額の補正を適切に行っていなかったり、計算方法を誤ったりなどしていて、22工事において共通費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 4710万円)

・無停電電源装置に組み込まれる蓄電池の設計について

航空衛星システムの地上局設備のうち無停電電源装置に組み込まれる蓄電池の設計に当たり、通信設備が後年度に増設されることや蓄電池の更新時期などを考慮して、容量を逐次増加させる設計とすべきであったのに、当初から増設後の通信設備に対応した容量で設計していたため、2地方航空局において蓄電池の製造費が不経済となっていた。

(指摘金額 5050万円)

○郵政省

・資金輸送業務における委託費の積算について

郵便局間の資金輸送業務の委託費の積算に当たり、使用する輸送車の積載量等の決定方法を標準仕様書で明確にしていなかったなどのため、実際の積載量に比べて過大な輸送車を使用することとしていたり、業者の見積価格をそのまま採用していたりなどしていて、83契約において積算額が過大となっていた。

(指摘金額 1億9480万円)

○建設省

・市街地再開発事業等の設計業務に係る国庫補助金の算定について

市街地再開発事業等の設計業務に係る国庫補助金の算定に当たり、建築物の用途等による類別区分、設計業務の外注方法等設計業務の実態に即して設計料を算定すべきであるのにその算定方法が明確でなかったため、31件の設計業務委託契約において設計料が過大となっていた。

(指摘金額 1億8130万円)

・歩道の車両乗入れ部における、歩行者、特に車いす利用者等の安全かつ円滑な通行の確保について

補助事業に係る道路整備事業の実施に当たり、79事業主体が実施した255工事においては、車道との段差がある歩道に設けた車両乗入れ部の半数以上が、横断勾配2%の平坦部分が幅1m以上確保されていない構造となっていて、歩行者、特に車いす利用者等の安全かつ円滑な通行にとって支障を生じるおそれがあるものとなっていた。

背景金額 5億7464万円
 (車いす利用者等の通行に支障を生じるおそれがある歩道に係る直接工事費に対する国庫補助金相当額)

・下水道整備事業における水道管等の移設補償費の算定について

下水道整備事業の実施に当たり、道路を掘削するなどの際に障害となる水道管等の管理者に対して支払う移設補償費の算定において、既存の水道管等の財産価値の減耗分を控除していなかったなどのため、32事業主体において補助対象経費が過大となっていた。

(指摘金額 1億0519万円)

○自治省

・消防施設整備事業における現場打ち防火水槽の設計について

補助事業に係る消防施設整備事業における現場打ち防火水槽の設計に当たり、構造計算の必要性を周知していなかったことから、構造計算を行っておらず、9事業主体で建設された防火水槽35基において所要の安全度が確保されていない状態となっていた。

(指摘金額 7235万円)

○首都高速道路公団

・道路用地の防じん処理の設計について

道路用地を建設工事着工までの間適切に管理するために防じん処理として実施するアスファルト舗装の設計に当たり、若干の不陸の整正で足りるのに整地用の砂を使用することとしたり、自動車等による荷重がかからないのに荷重を考慮した路盤厚としたりしていたため、2契約において工事費が不経済となっていた。

(指摘金額 3000万円)

・トンネル内配線路の電気設備改修工事における労務費の積算について

トンネル内配線路の電気設備改修工事における労務費の積算に当たり、積算基準に配線路内のケーブル移設等に関する歩掛かりがないため、簡易な作業であるのに、新しくケーブルを配線する場合の歩掛かりを準用したり、作業員の職種についてもすべて電気工事を主体的に行う電工としたりしていて、労務費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 5490万円)

○森林開発公団

・大規模林道の関係地方公共団体への移管について

大規模林道の地方公共団体への移管に当たり、両端が公道に接続することを移管の要件としていたなどのため、舗装工事が完成し供用が可能となっていた24区域について移管が速やかに行われず、長期間にわたって公団が維持補修費を負担していて不経済となっていた。

(指摘金額 1億9710万円)

○阪神高速道路公団

・高速道路の清掃作業における排水桝清掃費及び排水管清掃費の積算について

高速道路の清掃作業における排水桝清掃費及び排水管清掃費の積算に当たり、排水設備の設置状況が従来と異なってきたことなどから、1日当たりの作業箇所数が地区によって区々となっているのに、積算基準が作業の実態を反映していなかったため、16契約において排水桝清掃費及び排水管清掃費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 5060万円)

○住宅・都市整備公団

・土地区画整理事業等において確保した公益施設用地の処分について

土地区画整理事業等において、地方公共団体との協議に基づき教育施設等のための公益施設用地として確保している土地が、少子化などの要因により確保しておく必要がなくなっているのに、事業計画等を見直さないまま保有していて、10地区・団地内の同用地15箇所について投下した事業費の効果が発現していなかった。

背景金額 70億9280万円
 (確保しておく必要がなくなった土地に係る取得費、造成費等の額)

○簡易保険福祉事業団

・労働保険の保険料の申告及び納付手続について

加入者福祉施設における労働保険の保険料の申告及び納付に当たり、各施設の事業を本部の事業に一括して申請すればメリット制の適用が受けられたのに、その体制を整えていなかったため、109施設において労災保険の保険料が不経済となっていた。

(指摘金額 5813万円)

○日本下水道事業団

・終末処理場の機械設備工事における機材費の積算について

終末処理場の沈殿池に設置する汚泥かき寄せ機のチェーン等の機材費の積算に当たり、設計におけるチェーンの周長を積算基準に反映させていなかったため、79工事において機材費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 2040万円)

○電源開発株式会社

・発電所等における機械装置の予備品について

機械装置の購入、製造請負等の契約において予備品を取得するに当たり、契約時にその仕様が確定していないことから、その後の詳細設計の段階で既に保有している予備品と共用できるものの有無を検討する取扱いとすべきであったのに、契約上明確にしていなかったことなどのため、同じ予備品を重ねて取得していて、予備品の取得費が不経済となっていた。

(指摘金額 9459万円)

○日本電信電話株式会社

・遠隔加入者収容モジュールに搭載する電話回線用パッケージの枚数について

光信号と電気信号を変換する遠隔加入者収容モジュールヘの電話回線用パッケージの搭載に当たり、既設の電話回線の収容先を同モジュールに切り替える作業時にその数を把握することができたのに、設置工事の際に、パッケージの搭載枚数を見直していなかったため、購入したパッケージが有効に使用されず、経済的な調達が行われていなかった。

(指摘金額 5610万円)

・通信用アンテナの増設等に応じた鉄塔の賃貸料の収受について

通信用アンテナを設置するための鉄塔の賃貸に当たり、賃借者が通信用アンテナの増設等を行っていたのに、契約担当部門がその事実を知らなかったり契約変更手続が遅延したりしていて、適切な契約変更が行われていなかったため、35箇所の鉄塔に係る賃貸料が適切に収受できていなかった。

(指摘金額 2820万円)

・公衆電話機への電話帳の配備について

連接して設置している公衆電話機への電話帳の配備に当たり、電話帳の利用状況等からみて、2台ごとに1組の電話帳を配備しても利用者の利便に支障は生じないのに、加入電話契約者等への配布に準じて公衆電話機への配備を行っていたため、電話帳の配備等に要する経費が不経済となっていた。

(指摘金額 7770万円)

○西日本旅客鉄道株式会社

・ボックスカルバート工事等に使用する鋼管の選定について

線路下を横断するボックスカルバート工事等の設計に当たり、パイプルーフ材等として使用する鋼管の種類、材質等の選定について明確な基準が定められていなかったことなどのため、15工事において高価な鋼管を選定するなどしていて、鋼管の材料費が不経済となっていた。

(指摘金額 3080万円)

○四国旅客鉄道株式会社

・電気工事、土木工事における諸経費の積算について

電気工事、土木工事における諸経費の積算に当たり、工事の内容が同種である10件の一連の工事を43工事に分割して同一の請負業者に発注する際、分割しない場合の諸経費率に比べて高い率を適用して諸経費を積算していたため、諸経費の積算額が過大となっていた。

(指摘金額 3710万円)

○九州旅客鉄道株式会社、日本貨物鉄道株式会社

・電気需給契約における経済的な契約種別の適用について

業務用電力等の電気需給契約において、夜間時間に使用する電力量の割合が一定割合以上であったのに、夜間時間の料金が大幅に安価となる季節別時間帯別電力の適用を受けていなかったため、九州旅客鉄道株式会社の駅等33箇所及び日本貨物鉄道株式会社の駅等17箇所において電気料金が不経済となっていた。

(指摘金額 5080万円、3300万円)

(特に掲記を要すると認めた事項)

「特に掲記を要すると認めた事項」として2件掲記した。

・不動産の所有権の移転の登記に係る登録免許税について

不動産の所有権の移転の登記に係る登録免許税は、共有物の分割を登記原因とする場合、売買等に比べて低い税率が適用される。今回、32法務局等において検査したところ、当初に不動産のわずかな持分を売買等で移転して共有状態とした後、残りの持分を共有物の分割として移転するという、通常の所有権の移転の登記とは認め難い方法をとっている事例が655件見受けられた。これらは登録免許税の軽減を目的としたとみなさざるを得ないものであり、税負担の公平を欠くと認められた。したがって、登録免許税の税額の認定及び納付の確認を行う法務省、租税に関する制度の調査、企画及び立案を所掌する大蔵省等において検討、協議を行い、本件事態の是正に向けた適切な処置が執られることが望まれる。

背景金額 14億4456万円
 (売買等による所有権の移転の登記をした場合との開差額)

・河川改修事業の実施について

国の直轄事業又は地方公共団体の国庫補助事業により実施している河川改修事業について検査したところ、市街地等で人口が集中し資産価値が高い地区で、河川改修事業に必要な用地の買収等ができなかったり、河川を横断して設置されている橋りょうの架け替えが進まなかったり、関連する街づくり計画が具体化していなかったりして、計画上必要な堤防等の整備に着手できない箇所が7河川において7箇所見受けられた。このまま推移すると、これらの箇所で計画高水位に達する洪水等が発生した場合には、これに対応することができない状況になり、国民の生命、財産を守るために実施している河川改修事業の目的が十分に達成できないことになると認められる。ついては、建設省において、計画の見直しを検討したり、関係者となお一層積極的に交渉したりするなどの対策を講ずるとともに、地方公共団体を指導するなどして、事態の早期解消を図ることが望まれる。

背景金額 359億8847万円
 (堤防等の整備に着手できない箇所がある7河川の改修のために平成9、10両年度に国が支出した額)

3 特定検査対象に関する検査状況の概要

第4章の「特定検査対象に関する検査状況」に掲記したものは次の10件である。

(ア) 金融システムの安定化のための緊急対策の実施状況について

 平成10年度に我が国では、多数の金融機関の経営破綻が相次ぎ、金融の機能に対する内外の信頼が大きく低下し、信用秩序の維持に重大な支障が生ずることが懸念される事態となった。国は、10年2月、預金保険法の改正により、破綻した金融機関の合併等に対し預金等の全額保護を図るため、預金保険機構が行う特別資金援助等の業務に対して7兆円の国債を交付し、また、同機構のこの業務のための借入れ等に対して10兆円までの債務保証を行うこととした。そして、これに加え、10年10月に成立した「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」及び「金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律」により、破綻し又は破綻するおそれのある銀行等の特別公的管理等に係る業務及び金融機関等に対する資本増強に係る業務のための同機構の借入れ等に対して、それぞれ18兆円及び25兆円までの債務保証を行うこととした。

 この金融システムの安定化のための緊急対策の実施状況について検査したところ、国は、各法律の枠組みに沿い、10年度末現在1兆1992億余円の国債を償還し、預金保険機構の計15兆0897億円の借入れに対して債務保証を行っていた。

 今後は、特別公的管理下に置かれた日本長期信用銀行及び日本債券信用銀行に対して実施される金銭の贈与等に加え、金融システムの安定化のために引き続き公的資金を用いた多額の資金援助等が実施される予定である。そして、特別資金援助等に対して交付された7兆円の国債については不足する可能性もある。

 このような状況を踏まえて、本院としては、今後とも金融システムの安定化のための緊急対策の実施状況について、事態の推移を引き続き注視していくこととする。

(イ) 政府開発援助について

 我が国は、開発途上国の健全な経済発展を実現することを目的として、その自助努力を支援するため、無償資金協力やプロジェクト方式技術協力、円借款などの政府開発援助を実施している。

 この政府開発援助については、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、8箇国の101事業について現地調査を実施したところ、4事業においては、相手国における事業環境の変化、予算の不足などのため、援助の対象となった施設や機材、移転された技術が十分活用されていないなどしていて、援助の効果が十分発現していないと認められた。これは、主として相手国の事情によるものであるが、我が国援助実施機関としては、今後も相手国の自助努力を絶えず促すとともに、相手国が実施する事業に対する支援のための措置をより一層充実させることが重要である。また、無償資金協力において、無断で調達機材が変更されているなどの事態があり、外務省が調査し再発防止策を講じたが、必ずしも十分対応できるとは言い難く、同省において今後とも実施体制の改善策に積極的に取り組み、再発防止に努める要があると認められる。

(ウ) 物納不動産の管理及び処分について

 国税の納付として金銭に代えて物納された不動産の管理及び処分について検査したところ、その処分件数が引受件数を下回っていることから保有件数等が毎年増加している。そして、これらの中には、利用に対して法的規制を受けていたり、借地権者等の権利者の購入意欲が低かったりするものがあることなどから、保有の長期化が懸念されたり、その管理や処分が相当困難であると思料されたりするものが見受けられた。このように今後の物納不動産の管理及び処分については、昨今の経済環境や不動産市況の推移等から厳しい状況にある。

 このような状況にかんがみ、大蔵省においては今後とも物納不動産のより一層の処分の促進及び適正な管理に努めていくことが必要であると認められる。

(エ) 少子化と義務教育費国庫負担金の現状等について

 近年における少子化傾向を反映して児童生徒数が減少する一方、義務教育費国庫負担金の決算額は2兆8000億円前後で推移し、国庫負担金額が高止まりとなっている。その背景としては、〔1〕教員の年齢構成について、児童生徒数の減少に伴う教員定数の減少や、教員の退職者数の減少などにより新規採用者数が減少し、大都市圏を中心に、その不均衡・高年齢化が進行していること、〔2〕教員定数について、定数改善計画に基づき教員定数の加配が行われていること、〔3〕多数存在する小規模校について、学級編成及び教育課程等の関係から一定数の教員配置を要することなどが挙げられる。

 上記〔1〕 教員の年齢構成の不均衡・高年齢化については、我が国社会の少子・高齢化等という構造的問題を反映している側面があり、また、現下の財政状況の下で、教員の新規採用者数の大幅な増加などによりその是正を図ることには様々な制約が伴っている。また、〔2〕教員の定数改善については、義務教育内容の充実改善のための重要な施策である。本院の検査においては、定数加配等の運用について国庫負担制度の趣旨に沿わない不適切な事態が見受けられる。そして、〔3〕小規模校について、その統廃合等を進めるに当たっては、児童生徒の教育を受ける権利に対する配慮等も欠かせないものである。

 しかし、前記のような事態が継続すると、義務教育に関する教育諸条件の改善施策の弾力的な実施等にも支障を来すおそれがあると認められる。

 今後、義務教育に関する教育諸条件の改善施策等を巡る論議に当たっては、このような義務教育費国庫負担制度の現状も踏まえ、幅広い見地から論議されることが望まれる。

(オ) 廃棄物処理施設整備事業による焼却処理施設等の建設に係る工事請負契約について

 厚生省では、廃棄物焼却施設等からのダイオキシン類の排出など深刻な環境問題に対応しつつ、地方公共団体が実施する廃棄物処理施設整備事業に対して多額の財政援助を実施している。このうちごみの焼却処理施設等の建設工事に当たり、事業主体では、工事費の積算体系が確立していないことから、施設に必要な性能等を発注仕様書に示し、施設の実施設計及び施工を同一の業者に委ねる性能発注方式を採用している。その入札・契約状況等を検査したところ、〔1〕他の事業主体の実施例等を参考にして予定価格を算定している事業主体では、予定価格が見積平均額に対し低めに設定されている、〔2〕予定価格が見積平均額に対して広範に分布している中で、落札比率が99%以上のものが半数を占めている、〔3〕入札参加者が少数のものに落札比率の高いものが多くなる傾向が見受けられ、競争原理が十分に機能していないおそれがある、〔4〕最低制限価格制度の運用如何によっては、契約の内容に適合した履行が期待できる価格で入札した業者を排除する結果となる場合があると認められる。したがって、厚生省において、事業主体に対して入札・契約手続の透明性、競争性の向上を図らせるため、工事請負契約関係業務に関する通知等の見直しを行い、その趣旨を周知するとともに、全国的な実施例等の収集・整理を行い活用させるなどの施策の推進が望まれる。

 本院としては、環境問題への対応の基盤をなす廃棄物処理施設整備事業の実施について、引き続き注視していくこととする。

(カ) 社会福祉法人が実施した老人福祉施設の整備事業について

 厚生省では、高齢社会の進展に対応するため、特別養護老人ホーム等の老人福祉施設の整備事業を計画的に推進しているが、平成8年に一部の社会福祉法人が実施した事業において疑惑が生じたことに対処して全国的な実態調査を行い、施設整備事業の適正な実施を図るため、一括下請負契約の禁止、入札契約手続の適正化等の制度的な改善措置を講じた。

 本院では、都道府県及び市等が、厚生省が講じた改善措置の趣旨に沿って適切に対応しているか、また、社会福祉法人が都道府県及び市等の対応措置を受けて適切に事業を実施しているかに着眼して検査を実施した。

 検査したところ、国の制度的な改善措置は施設整備事業の適正な実施に一定の効果を上げていると認められた。しかし、一方で新たに、建築工事の請負契約に当たり最低制限価格の設定が適切でないなどの事態が見受けられたので、厚生省においては、老人福祉施設の整備事業について広く点検を行うとともに、都道府県及び市等並びに社会福祉法人に対し、改善措置の趣旨を更に周知徹底し、その実効性の確保に努める要がある。また、都道府県及び市等においても、社会福祉法人の事業実施について的確な審査・確認になお万全を期す要がある。

(キ) 民間能力活用特定施設緊急整備事業の実施について

 民間事業者の機動的、効率的な経営能力を活用して地域活性化等を図ることを目的として、地方公共団体と民間企業が協力・連携して多様な施策の展開を図るために設立された民間事業者の中には、近年の景気低迷等社会経済情勢の変化により、経営が不安定になっているものも見受けられるなど、施設の運営や事業経営を巡って社会的関心が高まっている。

 本院が民活プロジェクトのうち通商産業省所管のものを対象として、その事業者21社について検査したところ、経済状況の悪化などにより、20社で累積損失を計上しており、このうちの6社では債務超過の状況に陥っていた。また、累積損失の額を計画額と比較すると10社において計画額との開差が拡大していて、経年ごとに悪化している状況にある。

 民活プロジェクトによって整備された施設の効果を整備後速やかに発揮させるためには、開業後の経営をいかに安定的に推移させるかが重要である。したがって、民活プロジェクトを既に実施している認定事業者においては、経営の合理化、運営方法の改善等による財務体質の一層の改善を図ること、今後事業を行おうとする者においては、適切な計画を策定し安定した経営が行えるよう努めること、支援する地方公共団体等の関係機関においては、事業者の経営安定のために連携を図りながら多方面から協力していくことが望まれる。そして、通商産業省においては、他省とも協調を図り、事業者に対して適切な計画の策定及び適時適切な見直しの重要性を周知するとともに、施設の運営状況について実態を的確に把握するなどして事業者における安定的な経営に資するよう努めることが肝要である。

(ク) 中小企業金融安定化特別保証制度の実施状況について

 中小企業金融安定化特別保証制度は、信用保証協会による信用保証と中小企業信用保険公庫(平成11年7月以降は中小企業総合事業団)による信用保険からなる信用補完制度の枠組みの中で、金融機関の貸し渋り等により必要な事業資金の調達に支障を来している中小企業者に対して積極的な保証を実行すべく、10年10月から12年3月までの臨時異例の措置として創設されたものである。本制度では、保証規模は20兆円とされ、従来の制度より高い事故率を想定して総額1兆円の資金を確保することが必要な設計となっており、国の負担も大きいことなどから、国民の関心も高い。

 検査したところ、10年度の保証承諾は75万件、14兆4223億円、代位弁済は111件、27億円などとなっており、制度の実施後の企業倒産件数が対前年同期に比べて減少していることなどから、本制度は中小企業者の事業資金の融通の円滑化に効果があったと推測される。

 本院としては、引き続き厳しい経済情勢のまま推移することが想定される中で、本制度においては、保証要件を緩和していること、担保を取らない保証の比率が9割を超えていることなどから、今後ともその実施状況について引き続き注視していくこととする。

(ケ) 本州四国連絡道路の計画及び実績について

 本州四国連絡道路は、児島・坂出ルートが供用後10年を経過し、神戸・鳴戸ルートに続く尾道・今治ルートの全線供用により道路の建設がほぼ完了したことから、その建設、管理の計画及び実績に着眼して検査したところ、建設費は、物価上昇に加え、工法の変更、施設の追加、道路負担の割合の変更等の要因により当初計画に比べ大幅に増加し、借入金等に金利を含めた償還を要する金額も大幅に増加している。一方、償還財源である料金収入は、当初の推定交通量を見直しその引下げを行っているにもかかわらず実績交通量が推定交通量を下回っていることから、支払利息を賄えないものとなっている。これらのことなどから償還期間の延長を余儀なくされている。したがって、本州四国連絡道路のような大規模プロジェクトの計画策定時には、できるだけ正確に建設費を見込むことが肝要であり、また、交通量推定の精度の向上を図るとともに、利用の拡大等のため割引料金を活用するなどして需要の喚起を図り、交通量を増大させて料金収入の増収に努める要がある。また、現行の償還計画における償還期間は平成58年度までの長期にわたっており、その間の社会経済情勢の変化などを考えると、公団において償還計画の達成状況を絶えず把握するとともに、状況の変化に応じて適時適切な見直しを行う要があると認められる。

 本院としては、償還計画の達成状況について引き続き注視していくこととする。

(コ) 東北新幹線の建設に伴い取得された都市施設用地について

 旧日本国有鉄道が東北新幹線の建設に伴い沿線の市からの要望に基づき新幹線沿いに取得した都市施設用地約27万m2 について、本院は昭和59年度決算検査報告において、旧国鉄と関係市等の協議が進展せず利用されない状況等が継続している事態を掲記し問題を提起したところである。今回これについて検査したところ、譲渡を受けた東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)では、事態の解消に向けて関係者等と協議を重ねるなど様々な努力を行っており、平成10年度末までに一部が売却されている。

 この結果、JR東日本が保有する都市施設用地は10年度末現在約24万m2 (帳簿価格1220億4655万余円、固定資産税課税評価額184億0235万余円)で、そのほとんどは更地のままとなっており、また、JR東日本の年間の維持管理料は租税公課を含め約1億7000万円になっている。

 そして、11年11月、都市施設用地の都市計画事業等への編入及び当面土地利用の予定がない箇所の暫定利用について関係市等との間で確認書及び合意書の締結に至っている。一方、都市計画事業等への編入に伴う売却については、事業主体である関係市等の財政事情によるところが大きく、また、暫定利用についても同様に市の負担により緑地等の整備を行うとしていることから、事態の早急な進展についてはなお流動的である。

 このような状況にかんがみ、本院としては、今後上記確認書等の履行の状況等に留意しながら、都市施設用地の有効利活用について、引き続き注視していくこととする。

第2 観点別の検査結果

 会計検査院は、前節に記載した「平成11年次会計検査の基本方針」のとおり、正確性の観点、合規性の観点、経済性・効率性の観点、有効性の観点といった多角的な観点から検査を実施した。その結果は「第1 事項等別の検査結果」で述べたとおりであるが、このうち「第3章 個別の検査結果」に掲記した事項について、検査の観点に即して事例を挙げると次のとおりである。

1 主に業務が予算、法令等に従って適正に実施されているかに着眼したもの

 検査対象機関は、予算、法令等に従って適正に業務を実施しなければならない。この業務の執行に際し、予算、法令等が守られているか、さらには予算、法令等の趣旨に適合した制度の運用が行われているかに着眼した検査の結果として次のようなものがある。

(ア) 租税及び保険料は法令等に従って適正に徴収すべきものであるので、個々の徴収額に過不足がないかを検査した。その結果、「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」「法人税の過納金の還付に当たり、計算の始期を誤ったため還付加算金を過大に支払っていたもの」「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」 及び「労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」 を掲記した。

(イ) 物件等の調達手続は、会計法令等に従って適正に行われているかを検査した。その結果、「地域通信処理システムの整備に当たり、調達手続の開始前に電子計算装置を搬入し、据付調整等に着手させるなどしていたもの」 及び「大型超精密加工装置の調達に当たり、設置場所の検討が十分でなかったため、搬入、据付け・調整等が完了していないのに契約代金の全額を支払うなどしていて適切を欠いているもの」 を掲記した。

(ウ) 特別支給の老齢厚生年金の裁定を受けその全額を支給されている受給権者等について、その支給が適正に行われているかを検査した。その結果、「厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの」 を掲記した。

(エ) 医療機関からの診療報酬や労災診療費の請求に対する支払が適正かを検査した。その結果、「医療費に係る国の負担が不当と認められるもの」 及び「労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの」 を掲記した。

(オ) 看護婦等養成所運営事業において補助金の算定が適正に行われているかに着眼して検査した。その結果、「看護職員確保対策費等補助金(看護婦等養成所運営事業分)の算定について」 として是正改善の処置を要求した。

(カ) 補助事業や助成事業の執行及び経理処理が適正に行われているかを検査した。その結果、「中国青年農業指導者育成事業の実施に当たり、支出した事実がない額を事業費に含めていたため、国庫補助対象事業費の精算が過大となっているもの」「民間スポーツ振興費等補助金の経理が不当と認められるもの」 及び「スポーツ振興基金助成金の経理が不当と認められるもの」 を掲記した。

(キ) 構造物の設計の適否はその安全性に直接関わる重要な問題であるので、その設計が所定の安全基準を満たしているかを検査した。その結果、「閘門築造工事の施行に当たり、設計が適切でなかったため基礎工の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの」 を掲記した。

(ク) 登録免許税の税率の適用が適正かに着眼して検査した。その結果、「不動産の所有権の移転の登記に係る登録免許税について」 を特に掲記を要すると認めた事項として掲記した。

2 主に業務が経済的・効率的に実施されているかに着眼したもの

 検査対象機関の業務は、その事業目的を達成する上で、経済的・効率的に実施されなければならない。すなわち、経費は節減できないか、同じ費用でより大きな成果が得られないかという観点であるが、この点に着眼した検査の結果として次のようなものがある。

(ア) 入札・契約に当たり、競争性が十分確保されているか、また、予定価格の算定は適切に行われているかに着眼して検査した。その結果、「自衛艦の検査・修理の契約について」 として改善の処置を要求した。

(イ) 診療報酬の請求が医療サービスに応じた適切なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「看護料の夜間勤務等看護加算に係る診療報酬の請求について」 として是正改善の処置を要求した。

(ウ) 物品の調達が適切かつ経済的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「無停電電源装置に組み込まれる蓄電池の設計を経済的なものとするよう改善させたもの」 及び「発電所等における機械装置の予備品について、標準購入仕様書等を変更することなどにより、経済的に取得できるよう改善させたもの」 を掲記した。

(エ) 役務契約の仕様は適切なものとなっているか、また、予定価格の積算は仕様書に基づいて適切に行われているかに着眼して検査した。その結果、「郵便局間の資金輸送業務を委託するに当たり、仕様の決定方法を明確にするなどして委託費の積算を適切に行うこととするよう改善させたもの」 を掲記した。

(オ) 工事費の積算は作業の実態を反映した適切なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「トンネル内配線路の電気設備改修工事における労務費の積算を作業の実態に適合するよう改善させたもの」 を掲記した。

(カ) 施設の維持管理は適切なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「大規模林道の関係地方公共団体への移管を舗装工事等の完成後速やかに行うことにより、維持補修費の低減を図るよう改善させたもの」 を掲記した。

(キ) 公衆電話機への電話帳の配備が効率的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「連接して設置している公衆電話機に係る電話帳の配備を効率的なものとすることにより、電話帳の配備等に要する経費を節減するよう改善させたもの」 を掲記した。

(ク) 電気需給契約が経済的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「電気需給契約において、電力消費の実態を把握して経済的な契約種別に変更を行い、電気料金の節減を図るよう改善させたもの」 を掲記した。

3 主に事業が所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼したもの

 検査対象機関の事業の中には、一定の目的の下に、財政援助・助成措置を講じたり、社会資本を整備したり、財産を保有・活用したりなどしているものがあるが、これらが所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼した検査の結果として次のようなものがある。

(ア) 消費税の新規発生滞納額が増加していることから、当局における滞納防止策が効果的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「消費税の滞納の防止策について」 として改善の意見を表示した。

(イ) 保険者における医療費の適正化に資する取組を評価して交付する交付金が、その取組を的確に反映して交付され効果的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「国民健康保険の診療報酬明細書の点検に係る特別調整交付金の算定が、保険者の取組を的確に反映させた効果的なものとなるよう改善させたもの」 を掲記した。

(ウ) 効率的かつ安定的な農業経営体の円滑な育成を金融面から支援するために、国の出資金を財源とする基金を原資として貸し付ける資金の利用が図られているかに着眼して検査した。その結果、「農業経営改善促進資金の貸付け及び全国低利預託基金の活用について」 として改善の意見を表示した。

(エ) 漁船漁業の生産量の増大を図るため実施されている魚礁設置事業において、事業計画の策定及び設置後の魚礁の管理・活用が適切に行われ、事業効果の発現に資するものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「並型魚礁設置事業における事業計画の策定及び魚礁の管理・活用について」 として改善の処置を要求した。

(オ) 道路整備事業において整備された歩道が高齢者、障害者等の利用に配慮した適切な構造となっているかに着眼して検査した。その結果、「歩道の車両乗入れ部について、歩行者、特に車いす利用者等の安全かつ円滑な通行が確保できる構造となるよう改善させたもの」 を掲記した。

(カ) 少子・高齢化など社会経済情勢が変化している中で、教育施設等の用地を計画どおりの利用が見込めないまま保有していないかに着眼して検査した。その結果、「土地区画整理事業等において教育施設等のため確保している公益施設用地の用途を変更して早期に処分するよう改善させたもの」 を掲記した。

(キ) 豪雨等による水害は毎年度発生しており、その被害額は多額に上っていることから、水害の発生を防止し、国民の生命、財産を守るために実施されている河川改修事業の進ちょく状況に着眼して検査した。その結果、「河川改修事業の実施について」 を特に掲記を要すると認めた事項として掲記した。