近年、行政においては、財政健全化に向けて、安定的な財源確保、財政赤字の縮減、歳出の見直しなどを行うこととして、歳出の無駄の排除に資するため、事務・事業の執行状況の的確な把握及び開示による透明性の確保等の取組がなされている。また、国会においては、国会による財政統制を充実・強化する視点から、予算の執行結果を把握して次の予算に反映させることの重要性等が議論されている。
このような中、本院は、その使命を的確に果たすために毎年次策定している会計検査の基本方針に従って、我が国の社会経済の動向、財政の現状、行政における様々な取組等を踏まえて国民の期待に応える検査に努めており、特に、国会等で議論された事項、新聞等で報道された事項その他の国民の関心の高い事項については、必要に応じて機動的・弾力的な検査を行うなど、適時適切に対応することとしている。
国民の関心の高い事項等に関する検査の結果、「第3章個別の検査結果」及び「第4章国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等」に掲記した主なものを示すと、次のとおりである。
ア 資産、基金等のストックに関するもの
国や独立行政法人等が保有している資金や土地・建物等の資産、補助金等によって地方公共団体等に造成された基金等については、国会等において、保有資産の有効活用の促進が求められたり、保有資産の処分や基金等の保有規模の見直しにより一般会計の財源等として活用する必要性が議論されたりするなど様々な問題が指摘されている。
本院は、経済性、効率性、有効性等の観点から、未利用となっていて今後も利用される見込みのない資産はないか、社会情勢の変化等を踏まえた資産の活用が図られているか、国庫納付することが可能な資金等はないか、補助金等により造成された基金等の規模が適切なものとなっているかなどに着眼して、検査を実施している。
上記に関する平成24年次の検査結果としては、次のような事項を検査報告に掲記した。
(農林水産省)
(日本銀行)
( 独立行政法人国立青少年教育振興機構、 独立行政法人水産総合研究センター、 独立行政法人海技教育機構、 独立行政法人北方領土問題対策協会、 独立行政法人科学技術振興機構、 独立行政法人日本貿易振興機構、 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、 独立行政法人日本原子力研究開発機構 )
(独立行政法人国民生活センター)
(独立行政法人国立病院機構)
(独立行政法人中小企業基盤整備機構)
(国会からの検査要請事項に関する報告)
イ 特別会計及び独立行政法人に関するもの
特別会計については、多額の剰余金等が存在し財政資金の効率的な活用が図られていないのではないか、国民による監視が不十分となって無駄な支出が行われやすいのではないか、固有の財源により不要不急の事業が行われているのではないかなどの問題が指摘されるなど、社会的関心が高いものとなっている。
また、独立行政法人についても、国から補助金や交付金の交付を受けたり、国と契約を締結したりして実施している事務・事業に関して、業務運営が非効率となっているのではないか、不要不急の事業が行われているのではないかなど様々な問題が指摘されている。
本院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、特別会計において行われている事務・事業及び独立行政法人が実施する事務・事業が効率的・効果的に実施されているかなどに着眼して検査を実施している。
上記に関する24年次の検査結果としては、次のような事項を検査報告に掲記した。
(国会からの検査要請事項に関する報告)
(独立行政法人日本スポーツ振興センター)
(独立行政法人都市再生機構)
(独立行政法人日本原子力研究開発機構)
(独立行政法人住宅金融支援機構)
(独立行政法人国立成育医療研究センター)
(再掲 国会からの検査要請事項に関する報告)
(特定検査対象に関する検査状況)
ウ 社会保障に関するもの
社会保障関係費は、我が国の予算の大きな割合を占めており、少子高齢化の進展等によりその額は増加してきている。そして、受益と負担の均衡がとれた持続可能な社会保障制度の確立を図るため、年金、医療、介護等の各分野において、制度改革の取組が行われている。また、生活保護費等の不正受給が社会的な問題となっており、制度に対する国民の信頼を保ち、給付の適正性や公平性を確保することが重要な課題となっている。
本院は、合規性、有効性等の観点から、保険料の徴収や給付金等の支給は適正か、国の負担金等の算定は適正か、事業の効果が十分発現しているかなどに着眼して、検査を実施している。
上記に関する24年次の検査結果としては、次のような事項を検査報告に掲記した。
(厚生労働省)
(国会からの検査要請事項に関する報告)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
(厚生労働省)
エ 国民生活の安全性の確保に関するもの
23年3月に発生した東日本大震災により、国民生活の安全性の確保についての国民の関心が一層高まっている。
本院は、従来、合規性、有効性等の観点から、工事の設計が適切に行われているか、工事が設計どおりに施工されているか、施設が機能を十分に発揮できるよう適切に管理・運用されているかなどに着眼して検査を実施してきており、構造物の所要の安全度が確保されていない事態、耐震施工が適切でなく地震時における機能の維持が確保されていない事態、耐震化対策が効率的に実施されていない事態等を検査報告に掲記してきた。そして、24年次においても、多角的な観点及び着眼点から、引き続き検査を実施している。
上記に関する24年次の検査結果としては、次のような事項を検査報告に掲記した。
(農林水産省)
(国土交通省)
(国土交通省)
(国土交通省)
(国会及び内閣に対する報告)
(国会からの検査要請事項に関する報告)
(国会からの検査要請事項に関する報告)
オ 東日本大震災からの復旧・復興に向けた施策等に関するもの
東日本大震災に伴い、東北地方を中心に甚大な被害が生じたことから、被災地域の復旧・復興が我が国の喫緊の課題となっており、行政等にはこうした課題への対応が求められている。
本院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、被災の状況はどのようになっているか、事業の計画は適切に策定されているか、事業の実施状況はどのようになっているか、事業の実施等について改善すべき問題点はないかなどに着眼して検査を実施している。
上記に関する24年次の検査結果としては、次のような事項を検査報告に掲記した。
(農林水産省)
(独立行政法人原子力安全基盤機構)
(国会及び内閣に対する報告)
(国会からの検査要請事項に関する報告)
(特定検査対象に関する検査状況)
(特定検査対象に関する検査状況)
カ 行政経費の効率化、事業の有効性等に関するもの
本格的な人口減少社会の到来、少子高齢化に伴う社会保障費の増大や、内外経済の構造的な変化、地球環境問題等の難しい課題に直面している社会経済状況の中、行政においては、事務の簡素・効率化による行政経費の低減や事業の効率的・効果的な執行が求められている。
本院は、このような認識の下、経済性、効率性、有効性等の観点から、事務が効率的に執行されているか、事業が目的を達成しているか、予算執行の効果が上がっているかなどに着眼して検査を実施している。
上記に関する24年次の検査結果としては、前記のアからオまでに掲げたもののほか、次のような事項を検査報告に掲記した。
(外務省 、独立行政法人国際協力機構 )
(農林水産省)
経済産業省 | |
関連事項 | |
特定検査対象に関する検査状況 |
(防衛省)
(郵便事業株式会社)
(国会及び内閣に対する報告)
(国会及び内閣に対する報告)
国会及び内閣に対する報告 | |
関連事項 | |
内閣 、内閣(人事院) |
キ その他
以上のアからカまでのほか、本院は、会計検査に関連する問題が国会で取り上げられるなどした際には、必要に応じて関係府省等に対する会計実地検査を行い、関係者から説明を受けたり、資料を徴したりするなどの方法により検査を実施している。
上記に関する24年次の検査結果としては、次のような事項を検査報告に掲記した。
文部科学省 、文部科学省 、独立行政法人日本スポーツ振興センター | |
関連事項 | |
特定検査対象に関する検査状況 |
(国会及び内閣に対する報告)
(国会及び内閣に対する報告)
(国会からの検査要請事項に関する報告)
上記の検査の結果検査報告に掲記したもののほか、国会法第105条の規定に基づく検査要請が行われた「裁判所における会計経理等の状況について」及び「東京電力株式会社に係る原子力損害の賠償に関する国の支援等の実施状況について」について、検査を実施している。
本院は、今後も我が国の社会経済の動向、財政の現状等を踏まえて国民の期待に応える検査に努めるために、国会等で議論された事項等の国民の関心の高い事項については、必要に応じて機動的・弾力的な検査を行うなど、適時適切に対応するとともに、我が国の財政の健全化に向けた様々な取組について留意しながら検査を行っていくこととする。