平成17年次の検査の結果については、「第2章 決算の確認」並びに「第3章 個別の検査結果」、「第4章 国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」及び「第5章 会計事務職員に対する検定」に記載したとおりであり、このうち第3章及び第4章に掲記した事項等の概要は次のとおりである。
検査の結果、第3章及び第4章に掲記した事項等には、次のものがある。
ア 第3章の「個別の検査結果」に掲記した事項
(ア)「不当事項」(検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項)
(イ)「意見を表示し又は処置を要求した事項」(会計検査院法第34条又は第36条(注)
の規定により関係大臣等に対して意見を表示し又は処置を要求した事項)
(ウ)「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」(本院が検査において指摘したところ当局において改善の処置を講じた事項)
(エ)「特に掲記を要すると認めた事項」(検査の結果、特に検査報告に掲記して問題を提起することが必要であると認めた事項)
イ 第4章の「国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」に掲記した事項
(ア)「国会からの検査要請事項に関する検査状況」(国会法第105条の規定による会計検査の要請を受けて検査した事項についての検査の状況)
(イ)「特定検査対象に関する検査状況」(本院の検査業務のうち、検査報告に掲記する必要があると認めた特定の検査対象に関する検査の状況)
(注) | 会計検査院法 | |
第34条 | 会計検査院は、検査の進行に伴い、会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事項がある場合には、直ちに、本属長官又は関係者に対し当該会計経理について意見を表示し又は適宜の処置を要求し及びその後の経理について是正改善の処置をさせることができる。 | |
第36条 | 会計検査院は、検査の結果法令、制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認めるときは、主務官庁その他の責任者に意見を表示し又は改善の処置を要求することができる。 |
これらの事項等の件数、金額は、次表のとおりである。
事項等 | 件数 |
指摘金額 (背景金額) |
不当事項 | 296件 | 97億5257万円 |
意見を表示し又は処置を要求した事項 | 第34条
2件
|
35億8363万円 |
第36条
2件
|
5901万円 (1193億0685万円) |
|
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 | (注2)
59件 |
<47件分>
802億6245万円 3億9270万円
5085万円 10億0496万円 49億3730万円 143億4222万円 6億3019万円 13億9229万円 39億9011万円 6億5410万円 22億4172万円 4億8380万円 54億5551万円 11億1774万円 1億8934万円 7753万円 8億6238万円 |
特に掲記を要すると認めた事項 | 5件 | 798億円 423億円 1706億 1286億 385億円 |
事項計 | 364件 | <346件分>
936億5724万円 |
国会からの検査要請事項に関する検査状況 | 2件 | — |
特定検査対象に関する検査状況 | 20件 | — |
総計 | 386件 | <346件分>
(注3)
936億5724万円 |
(注1) | 指摘金額・背景金額 指摘金額とは、租税や社会保険料等の徴収不足額、工事や物品調達等に係る過大な支出額、補助金の過大交付額、計算書や財務諸表等に適切に表示されていなかった資産等の額などである。 背景金額とは、会計経理に関し不適切、不合理な事態が生じている原因が「法令」、「制度」あるいは「行政」にあるような場合や、政策上の問題等から事業が進ちょくせず投資効果が発現していない事態について問題を提起する場合などの、その事態に関する支出額や投資額等である。このような事態における支出等の額は、直ちに不適切な会計経理の額とは言い切れないため、「背景金額」として「指摘金額」と区別している。なお、背景金額は個別の事案ごとにその捉え方が異なるため、金額の合計はしていない。 |
(注2) | 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」には、指摘金額と背景金額の両方あるものが4件ある。 |
(注3) | 「不当事項」と「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」の両方で取り上げているものがあり、その金額の重複分を控除しているので、各事項の金額を集計しても計欄の金額とは一致しない。 |
第3章の「個別の検査結果」に掲記した各事項のうち、特に掲記を要すると認めた事項を除く不当事項等について、省庁等別にその件数、金額を示すと次表のとおりである。
事項 \ 省庁又は団体名 |
不当事項 | 意見を表示し又は処置を要求した事項 | 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 | 計 | ||||
国会 (衆議院) |
件 |
件 |
件 (注3) 1 |
1807万円 (3億9270万円) |
件 1 |
1807万円 (3億9270万円) |
||
裁判所 | 1 | 1835万円 | 1 | 1835万円 | ||||
内閣府 (内閣府 本府) |
1 | 5340万円 | 1 | 5340万円 | ||||
同 (防衛庁) |
4 | 880万円 | (注4)
3 |
(注4)
9430万円 (5085万円) |
7 | 1億0310万円 (5085万円) |
||
総務省 | 5 | 4020万円 | 2 | 1億1080万円 | 7 | 1億5100万円 | ||
外務省 | 1 | 330万円 | 1 | 16億0500万円 | 2 | 16億0830万円 | ||
財務省 | 3 | 6億3342万円 | 3 | 2億6220万円 (10億0496万円) |
6 | 8億9562万円 (10億0496万円) |
||
文部科学省 | 9 | 2億4554万円 | 〔36〕1 | (1193億0685万円) | (注3)
3 |
410億1282万円 (49億3730万円) (143億4222万円) |
13 | 412億5836万円 (1193億0685万円) (49億3730万円) (143億4222万円) |
厚生労働省 | 181 | 57億2288万円 | 〔34〕1 〔36〕1 |
33億9594万円 5901万円 |
(注3)
5 |
36億4338万円 (6億3019万円) (13億9229万円) |
188 | (注5)
128億2079万円 (6億3019万円) (13億9229万円) |
農林水産省 | 8 | 1億6683万円 | 〔34〕1 | 1億8769万円 | 6 | 32億7460万円 (39億9011万円) |
15 | 36億2912万円 (39億9011万円) |
経済産業省 | 18 | 1億6270万円 | 2 | 4億9137万円 | 20 | 6億5407万円 | ||
国土交通省 | 17 | 1億7657万円 | 10 | 109億8167万円 (6億5410万円) (22億4172万円) (4億8380万円) (54億5551万円) |
27 | 111億5824万円 (6億5410万円) (22億4172万円) (4億8380万円) (54億5551万円) |
||
国民生活金融公庫 | 1 | 4700万円 | 1 | 4700万円 | ||||
日本道路公団 | 2 | 5340万円 (11億1774万円) |
2 | 5340万円 (11億1774万円) |
||||
阪神高速道路公団 | 1 | 2820万円 | 1 | 2820万円 | ||||
日本原子力研究所 | 1 | 4100万円 | 1 | 4100万円 | ||||
日本郵政公社 | 38 | 16億0824万円 | 1 | 4億0630万円 | 39 | 20億1454万円 | ||
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 | 1 | (1億8934万円) | 1 | (1億8934万円) | ||||
独立行政法人農業生物資源研究所 | 1 | 534万円 | 1 | (7753万円) | 2 | 534万円 (7753万円) |
||
独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構 | (注4)
1 |
(注4)
6480万円 |
1 | 6480万円 | ||||
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 | 1 | 357万円 | 1 | 357万円 | ||||
独立行政法人日本学術振興会 | 1 | 499万円 | 1 | 499万円 | ||||
独立行政法人日本スポーツ振興センター | 1 | 154億0547万円 | 1 | 154億0547万円 | ||||
独立行政法人雇用・能力開発機構 | 1 | (8億6238万円) | 1 | (8億6238万円) | ||||
独立行政法人国立病院機構 | 1 | 194万円 | 1 | 194万円 | ||||
独立行政法人中小企業基盤整備機構 | 1 | 648万円 | 1 | 648万円 | ||||
独立行政法人都市再生機構 | 1 | 2510万円 | 1 | 2510万円 | ||||
国立大学法人秋田大学 | 1 | 5046万円 | 1 | 5046万円 | ||||
国立大学法人筑波大学 | 1 | 4億4923万円 | 1 | 4億4923万円 | ||||
国立大学法人千葉大学 | 1 | 7億2359万円 | 1 | 7億2359万円 | ||||
国立大学法人福井大学 | 1 | 5020万円 | 1 | 5020万円 | ||||
国立大学法人山梨大学 | 1 | 3億2066万円 | 1 | 3億2066万円 | ||||
国立大学法人広島大学 | 1 | 6億8991万円 | 1 | 5億0873万円 | 2 | 11億9864万円 | ||
国立大学法人佐賀大学 | 1 | 8181万円 | 1 | 2億6385万円 | 2 | 3億4566万円 | ||
日本放送協会 | 4 | 1億6489万円 | 4 | 1億6489万円 | ||||
東日本電信電話株式会社 | 2 | 1億7610万円 | 2 | 1億7610万円 | ||||
西日本電信電話株式会社 | 2 | 1億7230万円 | 2 | 1億7230万円 | ||||
合計 | 296 | 97億5257万円 | 4 | 36億4264万円 | (注4)
59 |
(注4)
802億6245万円 |
359 | (注5)
936億5724万円 |
(注1) | 「意見を表示し又は処置を要求した事項」の件数欄の〔34〕は会計検査院法第34条によるもの、〔36〕は会計検査院法第36条によるものを示している。 |
(注2) | ( )内の金額は背景金額であり、個別の事案ごとにその捉え方が異なるため金額の合計はしていない。 |
(注3) | 「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」には、指摘金額と背景金額の両方あるものが4件ある。 |
(注4) | 内閣府(防衛庁)のうち1件及び独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構の1件は、内閣府(防衛庁)及び独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構に係るものであり、件数及び金額の合計に当たっては、その重複分を控除している。 |
(注5) | 「不当事項」 と「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」 の両方で取り上げているものがあり(児童保護費等負担金に関するもの)、その金額の重複分を控除しているので、各事項の金額を集計しても計欄の金額とは一致しない。 |
また、特に掲記を要すると認めた事項は、5件(背景金額798億円、423億円、1706億円、1286億円、385億円)である。
以上の各事項計364件について、その概要を示すと次のとおりである。
検査の結果、「不当事項」として計296件掲記した。これを収入、支出等の別に分類し、態様別に説明すると、次のとおりである。
省庁又は団体名 | 租税 | 保険料 | 不正行為 | 計 |
財務省 | 件 1 |
件 |
件 |
件 1 |
厚生労働省 | 2 | 1 | 3 | |
独立行政法人 国立病院機構 |
1 | 1 | ||
計 | 1 | 2 | 2 | 5 |
(1)租税 | 1件 | 6億2776万余円 |
〇財務省
(2)保険料 | 2件 | 29億3619万余円 |
〇厚生労働省
(3)不正行為 | 2件 | 562万余円 |
〇厚生労働省
・公共職業安定所の職員が、雇用保険の雇用継続給付に係る回収等の事務に従事中、事業主から預かった過誤払回収金を出納員に引き継がずに領得したもの(1件 367万余円)
〇独立行政法人国立病院機構
・病院の職員が、収納金現金の受領及び預金口座への預入れ事務に従事中、収納担当者から受領した入院料等の収納金現金の一部を預金口座へ預け入れずに領得したもの(1件 194万余円)
省庁又は団体名 | 予算経理 | 予算経理・不正行為 | 工事 | 物件 | 役務 | 保険給付 | 医療費 | 補助金 | 貸付金 | 不正行為 | その他 | 計 |
内閣府(防衛庁) | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 1 |
件 | 件 1 |
総務省 | 5 | 5 | ||||||||||
外務省 | 1 | 1 | ||||||||||
財務省 | 2 | 2 | ||||||||||
文部科学省 | 8 | 8 | ||||||||||
厚生労働省 | 8 | 6 | 1 | 3 | 2 | 157 | 1 | 178 | ||||
農林水産省 | 1 | 7 | 8 | |||||||||
経済産業省 | 1 | 17 | 18 | |||||||||
国土交通省 | 1 | 16 | 17 | |||||||||
日本郵政公社 | 1 | 1 | ||||||||||
独立行政法人農業生物資源研究所 | 1 | 1 | ||||||||||
独立行政法人新エネルギ−・産業技術総合開発機構 | 1 | 1 | ||||||||||
独立行政法人日本学術振興会 | 1 | 1 | ||||||||||
独立行政法人中小企業基盤整備機構 | 1 | 1 | ||||||||||
独立行政法人都市再生機構 | 1 | 1 | ||||||||||
国立大学法人広島大学 | 1 | 1 | ||||||||||
国立大学法人佐賀大学 | 1 | 1 | ||||||||||
日本放送協会 | 4 | 4 | ||||||||||
計 | 12 | 6 | 2 | 1 | 4 | 3 | 2 | 212 | 1 | 6 | 1 | 250 |
(1)予算経理 | 12件 | 13億9051万余円 |
〇財務省
〇厚生労働省
〇国立大学法人広島大学、国立大学法人佐賀大学
(2)予算経理・不正行為 | 6件 | 7807万余円 |
〇厚生労働省
(3)工事 | 2件 | 3044万余円 |
〇独立行政法人都市再生機構
〇独立行政法人農業生物資源研究所
・埋設温水管改修工事の実施に当たり、カルバート等を設置する際、安全な施工を確保するために義務付けられた山留工が施工されていなかったもの(1件 534万余円)
(4)物件 | 1件 | 3373万余円 |
〇日本郵政公社
・販売終了が予定されていたゆうパック包装用品の調達に当たり、郵便局等に販売期間分に相当する在庫があるのに、これを考慮しなかったため購入数量が過大となっているもの(1件 3373万余円)
(5)役務 | 4件 | 4862万余円 |
〇国土交通省
・海上交通情報処理システムの保守委託契約に当たり、保守作業の対象となっていない機器に係る保守作業費を含めて予定価格を積算したため、契約額が割高になっているもの(1件 359万余円)
〇厚生労働省
〇農林水産省
〇経済産業省
・調査委託契約に係る委託費の支払に当たり、調査員が他の業務に従事していた日数等を含めて人件費を算定していたため、支払額が過大となっているもの(1件 3398万余円)
(6)保険給付 | 3件 | 4億3888万余円 |
〇厚生労働省
(7)医療費 | 2件 | 9億6569万余円 |
〇厚生労働省
(8)補助金 | 212件 | 13億9310万余円 |
〇総務省
〇文部科学省
・科学研究費補助金の経理において、研究者が業者に虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより補助金の管理を行う大学に購入代金を支払わせていたため、補助金が過大に交付されているもの(4件 5789万余円)
〇厚生労働省
・医療施設等施設整備費補助金等の経理において、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(4件 813万余円)
・緊急地域雇用創出特別基金事業の実施に当たり、建設・土木事業でないことなどの基金事業としての要件に反するなどしていて、基金事業の対象とは認められないもの(3件 1339万余円)
・生活保護費負担金の算定において、保護を受ける世帯における就労収入等の額を過小に認定するなどして保護費の額を決定していたため、負担金が過大に交付されているもの(13件 7811万余円)
・精神保健対策費補助金の経理において、入所者から徴収していた居室利用料等の収入を計上していなかったなどのため、補助対象事業費が過大に精算されているもの(1件 355万余円)
・介護保険事業費補助金の算定において、補助対象とならない後年度のシステムの保守経費を含めていたため、補助金が過大に交付されているもの(1件 220万余円)
・介護保険の普通調整交付金の算定において、介護給付費等の額に誤って利用者負担額を含めるなどして調整基準標準給付費額を算出していたため、交付金が過大に交付されているもの(2件 1334万余円)
・国民健康保険の療養給付費補助金の交付に当たり、国民健康保険組合において、組合員の家族分の高額療養費を過大に計上するなどしていたため、補助金が過大に交付されているもの(2件 973万余円)
〇農林水産省
・卸売市場施設整備事業の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(1件 3142万余円)
〇経済産業省
・新事業支援施設整備事業の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(1件 895万余円)
・エネルギー使用合理化技術開発事業の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(2件 545万余円)
〇国土交通省
・都市公園事業の実施に当たり、排水管の種類及び基礎形式について誤った選定図を適用していて、設計が適切でなかったため、排水管等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの(1件 162万余円)
・公営住宅家賃収入補助金の経理において、収入超過者の基準額を誤り、収入超過者入居戸数を過小に算出していたため、補助金が過大に交付されているもの(2件 1914万余円)
・道路改築事業の実施に当たり、用地費を算定する際、利用実態等からみて共用私道に該当する土地を誤って宅地として評価したため、用地費が過大となっているもの(1件 111万余円)
〇独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
・地域新エネルギー導入事業等の実施に当たり、消費税の申告により補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合、その金額を返還しなければならないのに返還していないもの(1件 357万余円)
〇独立行政法人日本学術振興会
・科学研究費補助金の経理において、研究者が業者に虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより補助金の管理を行う大学に購入代金を支払わせていたため、補助金が過大に交付されているもの(1件 499万余円)
(9)貸付金 | 1件 | 648万余円 |
〇独立行政法人中小企業基盤整備機構
(10)不正行為 | 6件 | 1億7163万余円 |
〇内閣府(防衛庁)
・航空自衛隊の職員が、教材用機内食等の調達要求等の事務に従事中、業者に数量及び単価を水増しさせるなどして代金を会計隊に請求させ、水増し分等を領得したもの(1件 344万余円)
〇外務省
〇日本放送協会
・職員が、本部及び放送局において、番組制作費の支払決定等に関する事務に従事中、知人と共謀し知人の銀行口座に番組制作費を振り込ませるなどして領得したもの(4件 1億6489万余円)
(11)その他 | 1件 | 3090万余円 |
〇厚生労働省
省庁又は団体名 | 不正行為 |
内閣府(防衛庁) | 件 3 |
文部科学省 | 1 |
日本郵政公社 | 37 |
計 | 41 |
不正行為 | 41件 | 15億9486万余円 |
〇内閣府(防衛庁)
〇文部科学省
・国立大学の職員が、委任経理金の出納保管事務に従事中、出納官吏名義の定期預金を不正に解約して払出しを受け領得したもの(1件 1500万余円)
〇日本郵政公社
「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計4件掲記した。
〇厚生労働省
・データ通信サービス契約に係るソフトウェア使用料のうちの利子相当額について
社会保険庁では、社会保険オンラインシステムについてのデータ通信サービス契約に係るソフトウェア使用料の毎月の支払額を算出するに当たり、元金と利子がそれぞれ一定の額となるアドオン方式を採用しており、また、ソフトウェア使用料のうちの利子相当額を算出する率として長期プライムレートの平均値を採用している。アドオン方式を採用した場合、借入利子率と同一の率を用いて利子を計算すると、元利均等返済等の方式に比べて利子負担が割高となるため、借入利子率を一定の算式により変換して算出した率を用いる必要があるが、同庁では、その率を用いることなく長期プライムレートの平均値をそのまま採用して利子相当額を算出していて、適切を欠く事態となっている。したがって、同庁において、アドオン方式による場合の率を適切に設定するなどして、ソフトウェア使用料における利子相当額を適正に算出する要がある。
(指摘金額 33億9594万円)
〇農林水産省
林野庁では、国有財産である国有林野を適正に管理及び処分するため、各森林管理局に国有財産台帳を備えているが、沖縄の国有林野については、沖縄が復帰してから現在に至るまで長期にわたり国有財産台帳が適正に整備されていない。このため、これを基に毎年度作成される国有財産増減及び現在額報告書等が現況を正しく反映したものとなっていなかったり、普通財産について、有効活用を十分に図ることができないこととなっていたり、適正な額による国有資産所在市町村交付金の交付ができないこととなっていたり、誤って国以外の者から第三者に売り払われているものがあったりなどしている事態が見受けられた。したがって、林野庁において、国有財産台帳が正当な権利関係や現況の面積等に基づく適正なものとなるよう、沖縄における特殊性を考慮しつつ関係機関と十分調整して、普通財産について、実態調査における調査事項等を具体的に定めた国有財産台帳の整備方針を策定し、これに基づく実態調査を促進して、同台帳の整備を図るなどの処置を講ずる要がある。
(指摘金額 1億8769万円)
(ア)改善の意見を表示したもの
〇文部科学省
・国立大学法人の賃借物品等及び診療報酬債権に係る会計経理について
国立大学法人が法人化に伴って国から承継した各種の権利及び義務が財務諸表等に資産、負債、資本等として適正に計上されているか、法人化後、初年度の期中における会計経理が適正なものとなっているかなどに着眼して検査した。その結果、同種、同様の賃貸借契約によって調達された教育研究用等のコンピュータ機器の資産への計上、利用目的が同じ教育研究用のソフトウェアの資産への計上、同種の債権である未請求の診療報酬債権の資産及び収益への計上について、それぞれ計上している国立大学法人がある一方、計上していない法人もあり、会計経理が統一的な取扱いとなっていない状況が見受けられ、国立大学法人会計基準等が求めている各国立大学法人間における会計情報の比較可能性が十分に確保されていないと認められる。したがって、文部科学省において、指針等の整備を行うことも含め、統一的な取扱い及び適切な処理を行うための情報提供を積極的に行うなどして、今後の国立大学法人の適正かつ健全な会計経理を一層推進する要がある。
背景金額 | 1193億0685万円 |
(財務諸表等における会計経理が統一的な取扱いとなっていなかった資産等の額) |
(イ)改善の処置を要求したもの
〇厚生労働省
・国民健康保険組合の組合員の被保険者資格手続の適正化について
政府管掌健康保険の適用を受けることとなる事業所に使用される者が国民健康保険組合の被保険者になるためには、社会保険事務所等から政府管掌健康保険の適用除外の承認を受けなければならないこととされ、また、適用除外の承認を受けた者に係る療養給付費補助金は、一般の被保険者よりも低い補助率により算定することとされている。しかし、36国民健康保険組合では、適用除外の承認を受けないまま国民健康保険組合の被保険者となっている事態が見受けられ、これに係る療養給付費補助金が一般の被保険者に係る補助率により算定されている。したがって、厚生労働省において、本制度の周知徹底を図るとともに、国民健康保険組合に対し、適用除外承認を受ける必要のある事業所であるか否かの状況を的確に把握させたり、適用除外の承認を受けていない事業所の組合員に対して所要の手続を勧奨させたりするなどの処置を講ずる要がある。
(指摘金額 5901万円)
「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計59件掲記した。
〇国会(衆議院)
電話関係業務に係る契約について、契約事務を所掌する会計課による審査が十分に行える体制になっていなかったり、予定価格の積算手順が整備されていなかったりなどしていたため、競争に付するべきものを随意契約としていたり、予定価格の積算を誤り契約額が割高となっていたりするなどしていて、契約事務が適切なものとなっていなかった。
(指摘金額 1807万円)
背景金額 | 3億9270万円 |
(一般競争等に付することが適切であると認められた契約金額) |
〇裁判所
・家庭裁判所における常勤医師の外部研修に係る給与の支払について
家庭裁判所の常勤医師に外部の医療機関等で勤務時間中に研修を行わせるに当たり、必要な基準等を定めていなかったなどのため、研修に係る勤務の実態の把握が十分でなく勤務時間の管理が適切に行われておらず、そのため、医療機関等から報酬を得ていたり兼業の許可を与えていたりしていた一部の常勤医師について給与の減額措置を執っていなかった。
(指摘金額 1835万円)
〇内閣府(内閣府本府)
・水上において設置・撤去する仮設足場に係る費用の積算について
水上において設置・撤去する大規模で連続した仮設足場に係る費用の積算に当たり、施工の実態を検討しないで、設置面積が比較的小さい仮設足場を対象としている市場単価を適用していたため、1日当たりの施工量及び作業員の職種が施工の実態に適合しておらず、仮設足場費の積算額が過大となっていた。
(指摘金額 5340万円)
〇内閣府(防衛庁)
公務災害補償に係る傷病について、療養の現状報告書に記載されている医師の証明の中に傷病の状態が既に治癒に該当していることを示唆する記述のあるものが多数見受けられるのに、これに対する調査確認が十分でなかったなどのため、治癒の認定手続が開始されないまま、長期にわたりこれらに係る診療費等を対象として公務災害補償費を支出していて、療養補償が適正に行われていなかった。
背景金額 | 5085万円 |
(治癒の認定手続を開始する必要がある療養補償に係る支出額) |
・護衛艦における主発電機用原動機のガスタービンパワーセクション予備機の調達について
護衛艦における主発電機用原動機のガスタービンパワーセクション予備機の調達に当たり、作業の実態等からみて原動機の製造メーカーから別途に調達することができたのに、その調達方法についての検討が十分でなかったため、艦艇製造請負契約に含めて造船会社から調達していて、経済的な調達が行われていなかった。
(指摘金額 2950万円)
〇内閣府(防衛庁)及び独立行政法人駐留軍等労働者労務管理機構
駐留軍等労働者に対する定期健康診断を委託により実施するに当たり、医療機関が健康保険法等に基づき医療給付を行った場合の報酬を算定するために定められた診療報酬点数表の点数を、医療給付の対象とならない定期健康診断において適用して契約単価を設定していて市場価格が考慮されていなかったため、委託費が不経済となっていた。
(指摘金額 6480万円)
〇総務省
新世代地域ケーブルテレビ施設整備事業における光ケーブルの敷設に係る補助対象経費の算定において、補助の対象とならない増心敷設を併せて実施した場合の補助対象経費の算定方法を規定していなかったり、交付申請書、実績報告書等に増心敷設の内容等を記載させることとしていなかったりなどしたため、光ケーブルの敷設に係る補助対象経費が過大に算定されていた。
(指摘金額 4420万円)
アナログ周波数変更対策業務の実施に当たり、受信者の受信状況等を調査する業務やテレビ、ビデオデッキ等のチャンネルプリセットの変更などを行う受信対策に係る労務単価の算定に用いる歩掛かりについて、作業の実態を調査するなどして、これを適切に見直していなかったため、調査業務に係る支払額及び受信対策に係る支給額が過大となっていた。
(指摘金額 6660万円)
〇外務省
日本人学校の校舎等の建設又は購入に対する援助に当たり、援助額の算定の基礎となる援助基礎額の算出手順が明確なものとなっていなかったなどのため、援助基礎額に開差が生じていたり、援助金と金融機関への償還金とのかい離の状況を把握していなかったなどのため、交付した援助金の総額が償還金の総額を上回っていて援助金が過大に交付されていたりしており、援助額の算定及び援助金の交付が適切なものとなっていなかった。
(指摘金額 16億0500万円)
〇財務省
貸付財産に係る国有資産等所在市町村交付金の交付に当たり、合同宿舎で廃止決定され居住者の退去が完了しており交付金の対象から除外すべきものや交付金の対象とならない無料宿舎部分を交付金の対象としていたり、物納財産の引受け等により管理している住宅用地等について軽減措置が適切に適用されていないものが多数見受けられたりしていて、交付金が適切に交付されていなかった。
(指摘金額 2億5324万円)
給与所得に係る源泉所得税の徴収義務者に対する納付指導等に当たり、源泉所得税額が長期にわたって未納となっているのに、未納の源泉所得税額の把握に長期間を要するなど効率的な納付指導を行っていなかったり、給与等の支払金額、源泉所得税額などに関するデータが納付指導に十分活用されていなかったり、納期の特例の承認の見直しが十分行われていなかったりしていた。
背景金額 | 10億0496万円 |
(未納の徴収義務者685人に係る推計未納税額) |
確定申告説明会における指導業務に従事した税理士に対する謝金の支払について、単価の適用条件の検討及び申告説明会業務以外の業務等に係る謝金との比較検討を十分行っていなかったことなどのため、業務の実態等に適合した支払がなされていなかった。
(指摘金額 896万円)
〇文部科学省
私立の高等学校等及び専修学校における私立学校施設整備事業等の実施に当たり、学校法人において認識が十分でなかったなどのため、整備された施設又は設備を文部科学大臣の承認を受けずに処分するなど、補助事業が適切に執行されていなかったり、文部科学省において、補助事業を適切に執行する認識が欠けていたため、当該会計年度内に事業に着手していれば内定通知前に学校法人が既に自力で事業完了等したものについても補助の対象としていて、国庫補助金の交付決定等の手続が適切に行われていなかったりしていた。
(指摘金額 5億6071万円)
背景金額 | 49億3730万円 |
(交付決定等の手続が適切に行われていなかった国庫補助金交付額) |
埋蔵文化財の発掘調査事業の実施に当たり、事業主体において認識が十分でなかったことなどのため、出土品について整理作業が行われていないなど、埋蔵文化財の保存に係る取扱いが適切に行われておらず、ひいては埋蔵文化財の活用が図られなくなるおそれがあったり、実績報告書で作成したとしていた発掘調査報告書が実際には作成されていないなど、補助事業が適正に執行されていなかったりしていた。
(指摘金額 3252万円)
背景金額 | 143億4222万円 |
(埋蔵文化財の保存に係る取扱いを適切に行っていなかった事業主体に係る国庫補助金交付額) |
国立大学法人の成立の際に政府から国立大学法人に出資があったものとされる承継財産について、これに該当する建物、工作物、物品等が計上漏れとなっていたり、価額が過小又は過大になっていたりしていて、承継財産の数量及び価額が適正なものとなっていなかった。
(指摘金額 404億1959万円)
〇厚生労働省
医療施設等施設整備事業等の実施に当たり、事業主体である公益法人等の支部で消費税の取扱いについての理解、認識が十分でなかったこと、補助金の交付要綱が全国的に支部等を有している公益法人等の状況を考慮したものとなっていなかったことなどのため、補助金に係る消費税仕入控除税額を厚生労働省又は府県に報告し当該金額を返還する取扱いがなされておらず、その国庫補助金が交付されたままとなっていた。
(指摘金額 4342万円)
市町村は、必要な保育士数に応じた国庫負担金等の交付を受けているのに、延長保育等の特別保育事業を実施する場合に必要な保育士数や非常勤保育士を配置した場合の常勤保育士数への換算方法が明確に規定されていなかったり、保育士の配置状況を確認する方法が整っていなかったりしたなどのため、市町村の委託等を受けた民間保育所において必要となる保育士数を確保することなく保育を実施していた。
(指摘金額 11億2638万円)
生活保護費に係る負担金の算定に当たり、事業主体において、返還金等の算出方法等の理解が十分でなく、また、返還金等の管理の事務処理体制が十分に整っていなかったことなどのため、返還金等のうち当該年度に納入が可能な額についてのみ調定しこれを費用の額から控除して負担金を過大に算定していたり、不納欠損処理を行うまでの返還金等の管理を十分に行っていなかったりなどしていて、負担金の算定が適正に行われていなかった。
(指摘金額 9億7107万円)
背景金額 | 6億3019万円 |
(生活保護費の返還金等の管理が十分でない事業主体における不納欠損額に係る国庫負担金相当額) |
国民健康保険の療養給付費負担金の交付に当たり、退職被保険者の資格取得の届出を省略した適用の具体的な方法について明確に示していなかったことなどのため、保険者である市において、届出を省略した適用を行っておらず、一般被保険者から退職被保険者への資格異動が行われていない被保険者が多数に上っていて、負担金が過大に交付される結果となっていた。
(指摘金額 15億0251万円)
失業等給付金の基本手当の受給資格者に対して訓練延長給付の支給を伴う公共職業訓練等の受講指示を行うに当たり、公共職業安定所において訓練の必要性を判断するために必要な職業相談を十分行わないまま受講指示を行うなどしていて、訓練延長給付の支給がその趣旨に沿った適切なものとなっていなかった。
背景金額 | 13億9229万円 |
(受講指示が適切に行われたとは認められない受給資格者に対する訓練延長給付の支給額) |
全国農業協同組合連合会等が事業主体に代わって施設整備に係る事務を行う系統施行により生産振興総合対策事業等を実施するに当たり、連合会等において業務の対価であり補助の対象となる製造請負管理料の額を事業主体に明示することの重要性について認識が十分でなかったことなどのため、同管理料の額が明示されず事業主体がその妥当性を検討できなかったり、所定の上限額を超えて支払っていたり、系統施行による施設整備を条件に連合会等から奨励金が支払われていたりなどしていた。
背景金額 | 39億9011万円 |
(事業主体に明示していないなどしていた製造請負管理料等に対する国庫補助金相当額) |
新山村振興等農林漁業特別対策事業等により整備した直売所等の施設について、適切な評価指標等を含めて事業効果を評価していなかったり、事業効果の発現状況を継続して把握できる仕組みが構築されていなかったりしていたなどのため、施設の利用実績が計画目標を超えていても、所得の向上、雇用の創出等の事業効果が十分に発現していないなどしていた。
(指摘金額 14億7796万円)
農業集落排水事業により整備した肥料化施設等について、臭気対策などの所要の対策を実施したり、製造した肥料の受け入れ先を確保したりするなど汚泥の循環利用に対する取組等が十分でなかったなどのため、肥料化施設等が稼働していなかったり、汚泥の農地還元が計画どおり実施されていなかったりなどしていて、補助事業の効果が十分発現していなかった。
(指摘金額 10億2713万円)
築いそ整備事業の計画策定に当たり、過去に整備した築いその実績漁獲量が把握できたのに、実績を反映していない漁獲増加見込量により計画漁獲量を算定するなどしていたため、事業による便益が過大に算定されていて、費用対効果分析が適切に実施されていなかった。
(指摘金額 6億0580万円)
配合飼料用米穀の販売に当たり、政府売渡価格から控除する販売経費の算定において、包装容器の種類について実態を調査せずにすべて割高な紙袋として入庫料及び荷役料を算定したり、売買契約の締結において運送経費等が経済的となる中継基地を選定していなかったりしていて、販売経費等が不経済なものとなっていた。
(指摘金額 3613万円)
牛に係る家畜共済事業の運営に当たり、共済に加入した農業者が飼養する共済対象の牛は、すべて共済に付されることになっているが、農業共済組合等において、共済対象の牛の頭数確認等が十分でなかったため、引受頭数が実際の飼養頭数とかい離していて、共済金が過大又は過小に支払われていた。
(指摘金額 1億2758万円)
〇経済産業省
博覧会開催に係る会場建設事業等の補助事業のうち、事業主体が地方公共団体等に負担金を支払って実施する事業について、経済産業省において負担金の精算方法等を取扱要領等で明確に示していなかったなどのため、事業主体において各年度ごとの実際の事業費の確認をしていなかったり、概算額の事業費を基に支払った負担金について実際の事業費に基づいた精算をしていなかったりしていて、実績報告が適切に行われていなかった。
(指摘金額 4億5769万円)
省エネルギー設備等導入促進情報公開対策等事業における総合エネルギー展の開催経費のうち会場設営費について、その取扱いに係る明確な方針を定めるなどの措置を執っていなかったなどのため、事業主体が出展者から徴収していて事業主体には費用負担が生じていない出展者コーナーに係る会場設営費を補助対象経費としていて、補助金の交付額が過大となっていた。
(指摘金額 3368万円)
〇国土交通省
・民間事業者等が事業主体として実施している補助事業における消費税の取扱いについて
民間事業者等が事業主体である補助事業の実施に当たり、消費税の確定申告により補助の対象となった建物等の取得に係る消費税額のうち仕入税額控除できる額が確定した場合、事業主体がこの額を実質的に負担しないこととなるのに、補助要領等において消費税の取扱いを明確にしていなかったことなどのため、仕入税額控除した消費税額に係る国庫補助金が事業主体に交付されたままとなっていた。
(指摘金額 2億4076万円)
船員労働委員会における委員手当の支給に当たり、同一の委員が同一日に複数の会議に出席したり関連業務に従事したりした場合において、それぞれ独立した別の職務に従事したものと解釈して委員の勤務日数を管理していたため、一日の勤務に対して出席した会議の数と関連業務に従事した数に応じた日数分の手当が支給される状況となっていて、勤務日数の管理及びこれに伴う委員手当の支給が適切に行われていなかった。
(指摘金額 1億3613万円)
プログラム改修に係る委託費の積算に当たり、コンサルティング業務の内容を明確にした積算基準等を策定していなかったため、委託業務にコンサルティング業務が含まれていないにもかかわらず含まれているとして積算していて、委託費の積算額が過大となっていた。
(指摘金額 3290万円)
・鋼橋製作・架設工事の間接工事費の積算におけるゴム製支承の材料費の取扱いについて
国庫補助事業で実施する鋼橋製作・架設工事における架設工事原価の間接工事費の積算に当たり、国土交通省における取扱いを確認した上で積算すべきであったのに、事業主体である都県において、これを確認しないままゴム製支承の材料費を架設工事原価の間接工事費の算定対象額に含めて積算していたため、架設工事原価の間接工事費の積算額が過大となっていた。
(指摘金額 6940万円)
・橋りょう上部工工事において使用するゴム製支承の材料費の積算について
橋りょう上部工工事におけるゴム製支承の材料費の積算に当たり、特別調査を行って単価を決定すれば市場価格をより的確に把握できるのに、事業主体である府県において、支承メーカーからの見積りだけによって単価を決定していて、特別調査等による市場価格の把握、検討が十分でなかったため、ゴム製支承の材料費の積算額が経済的なものとなっていなかった。
背景金額 | 6億5410万円 |
(見積単価で積算していたゴム製支承のうち、特別調査単価を仮定することができたものについて推計した支承材料費の開差額に係る国庫補助金相当額) |
浚渫等工事の積算に当たり、高精度の測位システムの利用などにより工事の施工精度等が向上し、検測後に請負業者が再浚渫等を行っている実態がほとんどないのに、これを積算に反映させていなかったため、作業船団の待機のための費用として検測待ちの拘束費を工事費に計上していて、積算額が過大となっていた。
(指摘金額 4350万円)
港湾諸手続を電子申請化するための港湾EDIシステム等について、船舶代理店等の要望等に対応した改善に対する取組や港湾管理者、船舶代理店等に対する電子申請化の重要性及び港湾EDIシステム等の利便性についての周知徹底が十分でなかったなどのため、重要港湾の港湾管理者が加入していなかったり、重要港湾及び特定港において利用されていなかったりなどしていて、利用率が低い状況となっていた。
背景金額 | 22億4172万円 |
(港湾EDIシステム等の開発、改修等及び管理・運営、保守等に係る経費) |
委託先の独立行政法人との委託契約によって購入された研究用機器について、委託業務終了後に返還することとされているのに返還されず、引き続き委託先で管理されていて、国の物品として管理されておらず、また、これらが返還された後の取扱方法や手続も定められていないため、研究用機器の有効活用が図られる体制となっていなかった。
背景金額 | 4億8380万円 |
(平成16年度末までに終了している委託研究に係る研究用機器(取得価格50万円以上のもの)の取得価格総額) |
独立行政法人水資源機構が建設したダム等を利用して流水をかんがいの用に供する者に係る受益者負担金について、かんがい工事の実施状況を十分把握していなかったことなどのため、工事の完了時期等に合わせて徴収を開始していなかった。
背景金額 | 54億5551万円 |
(徴収を開始することとした受益者負担金) |
滑走路に係る国有財産台帳の価格改定に当たり、延長部分等は既設の滑走路の耐用年数の経過状況に関係なく価格改定を行うべきであるのに、既設の滑走路の耐用年数が満了している場合は、価格改定を行わないこととするなどしていたため、台帳価格が過大に計上されていて、また、これを基に算定される国有資産等所在市町村交付金も過大に交付されていた。
(指摘金額 104億5898万円)
〇国民生活金融公庫
小企業等経営改善資金の貸付けに当たり、初回借入申込者に対する企業実在の確認に関する審査の具体的な方法が明確にされていなかったなどのため、審査が十分でないまま、企業実体のない借入申込者に対して貸付けが行われていた。
(指摘金額4700万円)
〇日本道路公団
・高速道路等の未納通行料金等及び不正通行に係る通行料金等の管理及び徴収の確保について
高速道路等の未納通行料金等及び不正通行に係る通行料金等について、未納通行料金等の金額を適切に把握していなかったり、未納通行料金等の督促等を適切に行っていなかったり、また、不正通行者を特定するために設置したビデオカメラ設備の撮影記録等を有効に活用していなかったりなどしていて、管理及び徴収の確保が適切に図られていなかった。
背景金額 | 11億1774万円 |
(平成16年度末の適切な未納通行料金等の残高) |
雪氷対策作業に係る巡回車に乗務する者の職種の組合せ及び労務費の積算に当たり、作業の実態等を積算に適切に反映させるための検討が十分でなかったなどのため、乗務する者2名のうち1名の職種を自動車運転手としていなかったり、自動車運転手の拘束時間を作業時間と待機時間に区分していなかったりしていて、労務費の積算額が過大となっていた。
(指摘金額 5340万円)
〇阪神高速道路公団
公団所有の建物施設等を受託業者等へ貸与した場合の受託業者等が負担すべき光熱水費の算定に当たり、負担方法を内部規程として定めていなかったり、施設の用途や利用実態等を十分に反映していなかったりしていて、公団の専用面積を過大に算定していたため、公団の光熱水費の負担額が過大となっていた。
(指摘金額 2820万円)
〇日本原子力研究所
燃料試験施設を外部利用させた場合の利用料金の徴収に当たり、点検作業中は試験を実施できないという当該施設の作業の実態を適切に料金単価に反映させていなかったため、利用料金の徴収額が不足していた。
(指摘金額 4100万円)
〇日本郵政公社
郵便局で使用する郵便用車両について、車両の稼働状況の把握が十分でなく、配備に当たって、職員の勤務体制、作業の実態を考慮した必要台数の算定を行っていなかったことなどのため、車両の配備台数が必要とする台数を上回るなどしていて、過大に配備されている一方で、新たな車両を購入したり、これに係る保守管理費等の負担が生じたりしていた。
(指摘金額 4億0630万円)
〇独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構、独立行政法人農業生物資源研究所
研究用機器の購入契約に当たり、納入が可能な製造メーカーの販売代理店等が県内に複数社あるか又は県外にもあるかについての調査や公正性及び競争性の確保についての検討が十分でなかったなどのため、競争契約に付することが可能なのに随意契約によっていたり、1社からしか見積書を徴取していなかったりしていて、契約事務が適切なものとなっていなかった。
背景金額 | 1億8934万円及び7753万円 |
(適切な契約事務を実施する要があると認められた契約金額) |
スポーツ振興投票に係る財務諸表の作成に当たり、各事業年度に発生した業務委託料は、その全額を当該事業年度に費用及び負債として計上するのが適正であるのに、運営費の限度額に関する法令の趣旨を十分理解していなかったなどのため、運営費の限度額を超えたことにより支払を翌事業年度以降に繰り延べた額を費用及び負債に計上しておらず、多額の欠損金が財務諸表上明らかになっていなかった。
(指摘金額 154億0547万円)
〇独立行政法人雇用・能力開発機構
技能者育成資金の貸付事業において、回収すべき貸付金に多額の滞納が生じているのに、具体的な事務手続を定めたマニュアル等が作成されていなかったことなどのため、借受者全体の要回収額の把握や督促、居所調査等の回収業務が十分に行われておらず、債権管理が適切なものとなっていなかった。
背景金額 | 8億6238万円 |
(平成16年末における滞納額) |
作成等に時間を要することから審査支払機関への送付を保留しているレセプト等に係る診療報酬債権を資産及び収益に計上するに当たり、保険者等に診療報酬を請求する事務の実態等を踏まえた会計経理についての認識・理解が十分でなかったため、会計経理が適切に行われずに重複計上や未計上となっていて、資産及び収益が過大又は過小に計上されていた。
(指摘金額計 計23億6672万円)
〇東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社
・加入者収容モジュールに搭載する基板収容ユニットの購入について
新型交換機システムの加入者収容モジュールに搭載する基板収容ユニットの購入に当たり、利用されていない基板収容ユニット等の所在情報の把握についての認識が十分でなかったなどのため、これを転用しておらず、基板収容ユニットの購入費が不経済となっていた。
(指摘金額 計1億1190万円)
ビルの清掃作業の委託費を算定するに当たり、作業員の移動の実態等を十分に把握していなかったなどのため、作業員が自宅から無人ビルに直接出向いて清掃作業を行っているのに移動費を計上するなどしていたり、作業員が経済的、効率的にビル間を移動している実態等に基づかずに移動費を算定していたりしていて、委託費が不経済となっていた。
(指摘金額 計2億3650万円)
「特に掲記を要すると認めた事項」として5件掲記した。
(1)中堅事業者に係る破綻金融機関等関連特別保険等の利用が低調となっているため、制度の在り方について検討することが必要な事態について
破綻金融機関等関連特別保険等は、破綻金融機関の融資先である中堅事業者(資本の額又は出資の総額が5億円未満で中小企業信用保険の対象とならない会社)に対する事業資金の融通を円滑にするため、平成10年12月に創設されたが、その後、金融機関の不良債権問題の解決に向けた「金融再生プログラム」等による取組などが行われ、また、中小企業者の定義が拡大され中堅事業者の範囲が縮小されていて、制度創設当時とは状況が大きく異なってきている。検査したところ、保険引受額が極めて低調な状況となっていることなどから、中小企業金融公庫における保険金の支払額や全国信用保証協会連合会における出えんが少なく、制度を運営するために公庫及び連合会に設置された基金(出資等の計800億円)は、そのほとんどが使用されないままとなっている。また、金融機関の破綻は、15年11月以降発生しておらず、主要行における不良債権処理が16年度末にその目標を達成するとともに、中小・地域金融機関における不良債権問題についても解決に向け進みつつある状況となっている。このため、金融機関が破綻するおそれは、今後の経済動向にもよるが、本件特別保険制度が創設された当時に比べ少なくなると認められる。しかも、中堅事業者の範囲が縮小していることもあって、本件特別保険等の対象となる中堅事業者は、制度創設当時に比べ相当程度少なくなっていると認められる。したがって、今後、本件特別保険等に係る公庫の保険引受額はもとより、保険金支払額や連合会からの出えんが大幅に増加するとは認められない。ついては、経済産業省において、今後の経済情勢や中小・地域金融機関の動向、中堅事業者に対する支援の必要性、関係者の意見等を総合的に勘案しつつ、両基金の縮小等も含め、本制度の在り方について適切な対応を図るよう検討することが必要である。
背景金額 | 798億円 |
(平成16年度末破綻金融機関等関連特別保険等準備基金残高及び16年度末特定中堅企業金融円滑化特別基金残高の合計) |
(2)地震災害時に防災拠点となる官庁施設の耐震化対策が重点的、効率的に実施されていない事態について
国土交通省では、災害を防除し、公衆の利便と公務の能率増進とを図るための官庁営繕事業を実施しており、その一環として、既存の官庁施設の耐震化対策を実施している。地震災害時に防災拠点となる官庁施設については、施設の重要度を考慮し、大地震動に対してもその機能が確保できるように、耐震性能に余裕を持たせることとされており、国土交通省においても、重要度、緊急度等を考慮して耐震化対策を実施することとしている。検査したところ、耐震診断については、構造体はほぼ終了しているが、建築非構造部材及び建築設備には未診断の施設が相当数見受けられた。そして、診断の結果、耐震改修が必要とされた施設の耐震改修状況は、大規模な地震による著しい災害が想定されている強化地域及び推進地域において、防災拠点官庁施設の中でも地震災害時に災害対策の指揮及び情報伝達の中枢的な機能を担うI類施設における改修率がII類施設よりも低く、緊急度の高い施設の耐震改修が優先されていない事態が見受けられた。また、耐震改修を実施した施設において、所要の耐震性能が確保されていない施設が約3分の1あり、さらに未改修施設においてはI類施設の約半数は緊急度が高い状況となっていた。これらの結果、構造体、建築非構造部材及び建築設備の耐震性能が総合的に確保されている施設が防災拠点官庁施設の32%となっており、地震災害時において、災害対策の指揮及び情報伝達等の災害応急対策活動に対応できないおそれがあると認められる。したがって、国土交通省において、防災拠点官庁施設の耐震化対策について具体的な中長期計画を定め、特に強化地域、推進地域でより重要度が高いI類施設及びI類施設で緊急度の高い施設の耐震化対策を実施するとともに、各省各庁及び管理官署等においては、耐震化対策の必要性を今まで以上に強く認識するなどして、防災拠点官庁施設としての耐震性能を確保するための耐震化対策を確実に推進することが肝要である。
背景金額 | 423億円 |
(防災拠点官庁施設の平成7年度から16年度までの耐震改修に係る事業費) |
(3)電線共同溝整備事業の実施における占用予定者の入溝が計画的になっていなかったり、管理が十分行われていなかったりなどしている事態について
国土交通省では、安全で快適な通行空間の確保、都市災害の防止、情報通信ネットワークの信頼性の向上等を目的として、道路の無電柱化の推進を図るため電線共同溝整備事業を実施している。そして、国土交通省防災業務計画等の各種防災計画においては、災害発生時におけるライフライン確保の重要性から計画的かつ重点的な電線共同溝の整備を推進することとし、道路管理者は電線共同溝整備計画に基づき電線共同溝の整備を行っている。そこで、電線共同溝の入溝状況及び管理状況等を検査したところ、電線共同溝の整備箇所における電力事業者、通信事業者等の占用予定者に対する計画的な入溝の促進や電線共同溝を適正かつ円滑に管理するための管理台帳の整備等が十分とはいえない状況となっており、電線共同溝整備の効果が早期に発現しないおそれがあると認められた。したがって、国土交通省において、無電柱化推進検討会議や電線類地中化協議会を活用するなどし、適時、適切な整備計画の策定に一層努めるとともに、占用予定者等の入溝状況等を正確に把握するよう、管理台帳等の整備を行い、整備した電線共同溝の利用が計画的に促進されるよう一層努めることが望まれる。
背景金額 | 1706億円 |
(検査した21事業所及び29都道府等の平成7年度から16年度までの伝染共溝の整備に係る国費の額) |
(4)中小企業高度化事業における不良債権が多額に上っていて、その解消を図るため、より一層の債権管理態勢を整備することが必要な事態について
高度化事業の貸付けは、中小企業者が組合等を設立して工場団地、ショッピングセンター等を建設する事業等に対し、中小企業基盤整備機構と都道府県が協力して長期・低利(特別の場合は無利子)の融資を行うものである。検査したところ、延滞債権の管理期間が長期化していて、その保全も十分とはいえない状況になっていた。加えて、後年延滞債権となる可能性が高い条件変更債権も増加傾向にある。都道府県の債権管理の体制は、十分な経験や知識を有する職員が充てられておらず、少人数で増加する一方の業務を処理している状況であり、貸付先の経営状況等についての把握や機構に対する報告が不十分であるなどの例もあった。一方、機構の債権管理の体制は、必ずしも都道府県との連携が十分に図られていない状況であり、また、機構が定める対応基準の内容やその運用等に関し、都道府県に対する周知徹底が十分でない状況である。したがって、機構においては、より一層態勢を整備し、不良債権の解消を図っていくことが必要である。また、都道府県においても、貸付先や保証人等に関する必要な情報を十分に把握したり、対応基準に則った回収措置を講じたりするとともに、機構の支援や助言を受けるなどして、適切な債権の管理・回収を行うことのできる態勢の充実を図ることが肝要である。
背景金額 | 1286億円 |
(検査した18都道府県に対する平成16年度末貸付金残高のうち不良債権となっている債権残高合計) |
独立行政法人都市再生機構が施行している住宅建設事業については、政府の特殊法人等整理合理化に関する方針に伴い、分譲住宅及び新規賃貸住宅の供給は行わないこととされるなど事業の絞り込みが行われているとともに、賃貸住宅の建替事業及び建替調査の実施に当たっては、効率的実施が求められているところである。そこで、建替事業実施団地37地区及び建替調査団地25地区について検査したところ、建替事業実施団地の中には事業着手後相当長期化しているものが、建替調査団地の中には空家住宅の補充停止の開始以降、長期間経過しても事業着手に至っていないものがある。そして、事業着手していないものの中には、賃貸住宅需要の低迷から当該団地の整備や土地利用等の方針等を定める個別基本方針の作成が著しく遅延しているものもある。このような状況が継続すると、事業効果の発現が遅延するばかりではなく、投資額に係る間接経費等の経費負担を年々増加させることとなる。したがって、機構において、建替事業の実施に当たっては、早期の事業完了に努めることはもとより、建替調査団地について、〔1〕個別基本方針の作成及び補充停止の開始時期の決定については、当該地区及びその周辺の立地状況に応じて、同一地域に所在する複数の地区を一体的に捉えての計画について検討すること、〔2〕個別基本方針の作成が遅延している地区については、部分的な補充停止の解除を含め、既存の賃貸住宅を活用することについて検討するとともに、上記と同様に同一地域に所在する複数の地区を一体的に捉えての計画についても検討すること、〔3〕補充停止をしている区域については、需要動向、収支計画等を勘案した上で可能な限り定期借家契約の導入促進を図ることなどにより効率的な実施を図り、もって賃貸住宅事業を改善させることが望まれる。
背景金額 | 385億円 |
(指摘の背景となった建替事業実施団地17地区における平成16年度末の建設仮勘定の額、建替調査団地13地区の補充停止住宅に係る固定資産の額及び補充停止による保守、管理等費用の合計額) |
3 第4章の「国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」の概要
第4章の「国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」に掲記したものは次の22件である。
(国会からの検査要請事項に関する検査状況)
国会から検査の要請を受けて検査を実施しその結果を報告したものは2件である。
(1)国が公益法人等に補助金等を交付して設置造成させている資金等に関する会計検査の結果について
本院は、参議院からの検査要請を受け、国が公益法人等に補助金等を交付して設置造成させている資金等に関し、〔1〕資金の設置、保有の状況、〔2〕「平成12年度決算検査報告」で検査対象とした資金の見直しの状況、〔3〕〔2〕以外のものも含めた各資金の運営の状況、〔4〕資金の制度の見直し体制の整備状況について検査を実施した。検査したところ、平成12年度決算検査報告で検査対象とした94資金については、多くの資金において何らかの見直しがなされ、事業を終了したり、余裕資金を国に返納したり、事業の運営状況を好転させたりしている資金も見受けられる一方、見直しを行ったとしているものの依然として事態が好転していないものも見受けられた。そして、16年度末現在において設置されている116資金(保有額1兆5409億円)をみると、資金事業の内容、実績、資金の保有量及び管理に関して、検討すべき事態が見受けられたものが33資金あり、また、見直しの時期の設定、目的達成度を測るための基準の策定、サンセット方式の導入等見直し体制の整備に対する取組などが十分でない状況も見受けられた。
したがって、今後の資金事業の実施に当たっては、資金事業として実施することの必要性の検討、受益者のニーズに即した事業内容等の検討、資金需要に対応した資金規模の検討等を行い、必要に応じて資金事業の終了も含めた所要の措置を積極的に講ずるほか、資金設置の趣旨に沿った資金管理に留意するとともに、定期的な見直し時期の設定や目的達成度を測るための基準の策定等見直し体制を整備し、さらに、より効果的なディスクロージャーや審査、検査による透明性の向上を図ることが重要と考えられる。
(2)独立行政法人の業務運営等の状況に関する会計検査の結果について
本院は、参議院からの検査要請を受け、独立行政法人の業務運営等に関し、〔1〕組織運営の状況、〔2〕財務の状況、〔3〕業務実績の状況、〔4〕情報の公表状況について、45独立行政法人を対象に検査を実施した。検査したところ、〔1〕組織運営の状況については、多くの法人において、役職員の報酬・給与の支給額等は国家公務員に準拠したものとなっていて、業績等の給与への反映も限られた状況となっている。〔2〕財務の状況については、運営費交付金の算定の際に自己収入を控除している法人がある一方で、同種の自己収入を控除していない法人が見受けられたり、控除した自己収入の額が実績額とかい離している法人が見受けられたりしている。運営費交付金債務の収益化の方法として大部分の法人は費用進行基準を採用しており、運営費交付金を効率的に使用した場合、節減分は運営費交付金債務に残され、各年度の財務諸表には利益として計上されない状況にある。また、会計処理において自己収入の全額を費用に充てたこととした場合には、自己収入からも利益が計上されないこととなり、法人の経営努力の成果が表示されない状況となっている。そして、運営費交付金債務に占める「効率化により生じた額」をみても少額にとどまっている。〔3〕業務実績の状況については、試験研究法人では、人件費の伸び率に比して発表論文数の伸び率が低くなっている法人が見受けられ、学校施設法人では、既に民間、国立大学法人等において同様の業務が実施されているものもあり、研修施設法人では、ナショナルセンター等としての役割を担っているが、法人の目的には直接関係がないと思料される利用者が多い法人も見受けられる。また、業務運営の効率化に関して定められた目標に対する実績値の算出方法が区々となっていて、各法人の効率化の状況をそのまま比較することができない状況となっている。〔4〕情報の公表状況については、法律等により公表することとされている情報について公表していない法人が見受けられる。
ついては、〔1〕中期計画に定める人件費総額に留意しつつ、一層、自主的かつ機動的な組織運営に努めること、〔2〕運営費交付金の算定に当たり、自己収入の控除の適否について自己収入の種類等を勘案して十分に検討するとともに、適切な自己収入の額を設定するよう努めること、また、法人経営の効率化の成果をより明確化する方策がないか検討すること、〔3〕試験研究法人では研究の質を一層高めることに努めること、学校施設法人では社会的なニーズや同種学校の状況等を十分考慮すること、研修施設法人ではナショナルセンター等としての役割を果たすよう努めること、また、業務運営の効率化に関する目標の達成度について、法人間の比較が可能となるような方策を検討すること、〔4〕業務の透明性を一層高めるため、情報の公表を適切に行うことが望まれる。
(特定検査対象に関する検査状況)
特定検査対象に関する検査状況として20件掲記した。
(1)都道府県警察における捜査費及び活動旅費の経理の状況について
捜査費及び活動旅費の経理について、不適正経理事案に関する警察当局の最終的な調査結果が報告された北海道警察及び福岡県警察を含む9道県警察を対象として検査を実施した。このうち北海道警察及び福岡県警察を除く7県警察においては、捜査員等の関係者から聴き取りを行ったり、利用したとされる店舗等の施設を確認したりするなどして検査した。その結果、本院が検査した範囲では、特に問題と認められる事態は見受けられなかった。また、北海道警察及び福岡県警察においては、捜査費等に関する不適正な経理が組織的、慣行的に行われてきたことが内部調査によって判明しており、この警察当局の調査結果の内容を検証した。その結果、客観的な資料がないなどのため、関係者からの聴き取りによらざるを得ないなどの状況の下で本院が検査した範囲では、当局の調査結果と異なる事態は認められなかった。
上記のように、一部の道県警察において、会計経理の基本原則が長年にわたり軽視されていたことは、極めて遺憾な事態である。今後このような事態が再発しないよう、警察庁においては、関係者の再認識を促すとともに、改善策の実効性を高めるために内部監査の充実を図るなど、より一層の努力が求められる。また、今後新たに同種の事態が発覚した場合には、徹底的な調査及び速やかな対処が行えるような体制の構築も肝要である。
本院としては、事態の重大性及び都道府県警察における制度の共通性にかんがみ、改善策が確実に実施されているか引き続き確認していくとともに、今後とも捜査費等の検査を厳正に実施していく。
防衛庁では、昭和60年度から平成16年度までの20年間に2兆2510億円の研究開発費を投じ、自衛隊等が使用する109品目の装備品等の自主開発、国産化を行っている。検査したところ、防衛庁技術研究本部が取り組んだ研究開発は、一部に装備化に向けての歩みが停滞しているものがあるものの、基礎的な研究で取得した技術上の知識が装備品等の開発に利用され、おおむね装備化につながる結果となっていると思料される。ただ、装備化に至ったものについては、見積量産単価及び調達単価並びに見積量産単価前提数量及び調達数量の間にかい離が生じているものが多数見受けられる状況となっている。防衛庁では、かい離が生じていることについて、装備化後の装備品等の仕様変更や中期防衛力整備計画の見直しなどが原因となって生じ得るものであるとしているが、見積量産単価は、研究開発を実施するか否かの判断を行う重要な要素の一つであるから、その算出や前提となる数量の算出は、実際の装備化を十分考慮して行われる必要があると認められる。また、見積量産単価前提数量と実際の調達数量のかい離が大きくなると、研究開発と装備品等の調達に一貫性がもたらされないこととなることから、かい離が生じた原因を十分分析し、今後の研究開発の見直しに反映させる必要があると認められる。
したがって、防衛庁においては、厳しい財政状況の下、計画的な防衛力整備を行うため、実際の装備化を十分考慮した上で集中すべき研究開発項目の選択を行い、今後の技術研究開発のより一層の効果的かつ効率的な実施に努めることが望まれる。
(3)株式会社日本長期信用銀行及び株式会社日本債券信用銀行に係る特別公的管理の終了に伴い実施された措置及び預金保険機構の財務の状況について
日本長期信用銀行及び日本債券信用銀行の破綻処理については、両銀行の特別公的管理期間中のみならず特別公的管理終了後、現在に至るまでの間に多額の公的資金(12兆6670億円)が投入され、瑕疵担保条項に基づく貸出関連資産の引取り及び特別公的管理銀行保有株式の買取り等が行われた。そして、これらの措置により預金保険機構の金融再生勘定には多額の欠損金(16年度末現在8496億円)が生じており、今後、同勘定で経理されている瑕疵担保資産の回収並びに特別公的管理銀行保有株式及び既存優先株式の処分等が当該欠損金の状況に影響を与えることとなる。
瑕疵担保資産については、回収額が支払額を上回ることは困難な状況となっており、預金保険機構では、回収方針を策定し回収を実施することとしているが、各債務者の状況に応じて回収の極大化を図るよう債務者の分類及び回収方針を見直す必要がある。また、経済合理性の観点から整理回収機構が自ら回収に努めるよりも有利と認められる場合等には、一括売却等回収方法の多様化にも取り組んでいく必要がある。特別公的管理銀行保有株式及び既存優先株式については、国民負担の極小化の観点から適切に処分し、金融再生勘定の有利子負債の削減及び欠損金の縮小に努めることが肝要である。
政府開発援助について、外務省等の援助実施機関に対して検査を行うとともに、12箇国の106事業について現地調査を実施した。その結果、草の根・人間の安全保障無償資金協力において機材が計画どおり調達されていなかったり、施設が完成していなかったり、また、技術協力プロジェクトにおいて移転された技術が十分活用されておらず、最終の目標達成の目途が立っていなかったりしていて、援助の効果が十分発現していないと認められるものがあった。
草の根・人間の安全保障無償資金協力については、在外公館において、事業を実施する団体側の事業実施能力の有無等についての検討や贈与契約の内容、援助の趣旨の周知等をより一層行ったり、技術協力プロジェクトについては、機構において、最終の目標を達成するための検討を十分に行ったりする必要がある。
(5)技術協力プロジェクトにおける事業実施前の調査の状況について
独立行政法人国際協力機構は、「技術研修員受入」、「専門家派遣」、「機材供与」を組み合わせた技術協力プロジェクトを実施している。この技術協力プロジェクトの終了後は、相手国が、移転された技術を自力で継続的に活用し、事業を実施することにより、効果が持続的に発現することが求められる。技術協力プロジェクトについて、特に、プロジェクトの効果発現を確保するために留意すべき点はないかなどに着眼して検査したところ、効果発現のための前提となる外部条件が満たされておらず援助の効果が十分発現していないものが4事業あり、これらに係る同機構の事前の調査において、上記の外部条件が将来満たされるかなどについて、十分な調査が行われたかどうか確認できなかった。その後機構は、事前の調査に関し制度の改善を図っているが、事前の調査を適切に行っていくことが必要である。
(6)租税特別措置(肉用牛売却所得の課税の特例及び農地等についての相続税の納税猶予の特例)の実施状況について
租税特別措置は、特定の政策目的の実現のための政策手段として、公平・中立・簡素という税制の基本理念の例外措置として設けられているものであり、また、厳しい財政状況の下で減収をもたらすものである。そこで、肉用牛売却所得の課税の特例(平成16年分免税金額96億円)及び農地等についての相続税の納税猶予の特例(15年分納税猶予税額1107億円)について、その適用状況、検証状況などについて検査したところ、〔1〕適用状況については、肉用牛の特例において、農業所得金額が300万円未満の者が37.3%となっているなど、効率的かつ安定的な農業経営にはなっていないような適用者が見受けられた。そして、特例所得金額が1000万円以上の者が6.2%となっているなど、高額な適用者も見受けられた。また、納税猶予の特例において、農業所得金額が100万円未満の者が80%強となっているなど、効率的かつ安定的な農業経営にはなっていないような適用者が見受けられた。〔2〕検証状況については、税制改正の要望の際の検証では、肉用牛の特例について、他の政策の効果と区分して評価することは困難であるとして同特例のみの効果の分析を行っていないなどの課題等が見受けられた。また、政策評価による検証では、肉用牛の特例、納税猶予の特例のいずれも政策評価体系上の政策手段としておらず、検証を行っていなかった。農林水産省においては、両特例の検証について、その内容をより一層充実することにより、政策の実効性を高めていくことが望まれる。財務省においては、関係省庁に対して要望書における検証等について指導するなどとともに、特別措置について今後とも十分に検証していくことが望まれる。〔3〕課税の執行状況については、確定申告書等における特例適用牛に係る経費の配賦方法等が適切とは認められない適用者がいる状況となっていることから、国税庁においては、特別措置に係る課税の執行について、より適正に行うことが望まれる。
保険者等が行う診療報酬明細書等の審査、点検業務(レセプト点検)は、国民医療費が増加傾向にあり、これに係る国の負担額も多額に上っている状況の中で、適正な診療報酬等の請求・支払に寄与し、医療費の適正化に直接つながるものとしてその重要性が高まっている。そこで、国民健康保険の保険者で、かつ、老人医療の実施者である市町村において、レセプト点検が的確に、また、効果的に実施されているかなどに着眼して検査した。その結果、レセプト点検のうち内容点検について、相当数の市区町において、委託業者に点検を任せきりにしていたり、介護保険との給付調整等に関し保険者等の保有する情報を活用して行う点検が十分に実施されていなかったり、都道府県等との連携による点検結果の活用がほとんど行われていなかったりしていた。
したがって、厚生労働省においては、レセプト点検の実施について都道府県や市町村に指導等を行うに当たり、〔1〕市町村は委託業者による点検の実施状況を十分に把握し、必要に応じて指示を行うことなどにより、的確で効果的な点検を実施するよう努めること、〔2〕保険者等の保有する情報を活用して点検を的確に実施するため、情報の提供について市町村の関係部局や都道府県等相互の連携体制を整備するよう努めること、〔3〕点検結果に基づく情報が市町村から医療機関等の指導・監査を行う都道府県等に報告される体制を整備するとともに、都道府県等においてそれらの情報を指導・監査に活用することに留意することが望まれる。
本院では、広島、兵庫両労働局の不正経理を念頭に置き、都道府県労働局の会計経理について重点的な検査を行った。その結果、物品の購入等に係る経理について、意図的に関係書類を偽造するなどして国庫金を不正に支出し目的外に使用していたものが見受けられたほか、架空の取引により支出を行い業者に預け金を積み立てているなどの事態が多数見受けられた。これらは契約、検収事務等の会計経理が著しくびん乱していたこと及び会計経理に関する労働局の内部統制が機能していなかったことによる。謝金等及び旅費に係る経理について、労働局管下の公共職業安定所において組織的な不正経理の事実が多数認められた。その主な目的は公共職業安定所における別途経理金のねん出であり、長年行われてきた不適切な慣習行為によるものと思料される。労働局における会計経理の適正化はもちろんであるが、労働局の公共職業安定所等に対する内部監査の徹底と会計法令の遵守についての一層の指導強化が必要と認められる。
本院としては、厚生労働省及び労働局による上記事態に対する再発防止策の実効性について総合的な評価を行うとともに、本年次の検査において発見された事態について、更に詳細な検討を行うなどして発生原因等の一層の解明を行うこととする。また、都道府県労働局に対し、引き続き不正経理の有無を念頭に置いた検査を実施し、全国の労働局の会計経理の状況について改めて総合的な検証を行うこととする。
近年、年金に対する関心が高まる中で、健康保険、厚生年金保険の新規適用届を提出していないことなどによる未適用事業所が数多くあるとの指摘がなされており、また、未適用事業所を少なくすることが、被保険者等となるべき者に対する医療保障や年金受給権の確保、事業主間の公平性の確保及び制度の信頼性の確保のために重要と考えられることなどから、両保険の適用促進の実施状況について検査した。その結果、〔1〕社会保険事務所等の中には、適用促進への取組が十分でないものなどがある、〔2〕各省庁との連携強化が図られているのは、貨物自動車運送事業者の未適用情報提供のみである、〔3〕雇用保険と厚生年金保険の各適用事業所データを突合したリストを活用した適用促進を行っていなかった社会保険事務所が見受けられるなど社会保険庁の指導内容が必ずしも統一的に実施されていない、〔4〕制度の周知による勧奨のみでは適用に至る可能性は低いと考えられる、〔5〕平成16年度から適用実績等を把握していたが、その評価や活用の方法は明確とはなっていない状況となっていた。
したがって、社会保険庁において、今後、両保険事業の健全な運営を図るため、〔1〕各社会保険事務所等において適用促進に積極的に取り組むよう努めるなどする、〔2〕各省庁等との協力連携を十分に図り、適用促進の推進体制の拡充強化を図る、〔3〕リストの活用について、社会保険事務所等の間で取扱いに差異が生じないよう指導するとともに、これまでのリストの活用の実態について再検討した上で今後の改善策を検討する、〔4〕職権適用の積極的な実施を前提に、適用促進対象事業所に対する重点的加入指導の一層の強化を図る、〔5〕適用実績等を十分に把握・分析し、今後の実施方法の選択、評価等に活用するなどの点を検討するなどして、適切な実施を図ることが必要であると考えられる。
(10)社会保険オンラインシステムに係る契約金額の算定方法等の状況について
社会保険庁では、年金、健康保険等の業務を迅速かつ正確に処理し、膨大な記録を長期にわたり管理するため、社会保険オンラインシステムを運用しており、平成16年度の運用経費(支払額)は約1108億円と巨額なものとなっている。そこで、社会保険オンラインシステムに係る契約金額の算定方法等や刷新可能性調査におけるシステム費用の妥当性についての記述内容などについて検査した。その結果、ソフトウェア使用料等の算定において、ソースプログラムや開発に従事した技術者の作業日報等の提出を受けていないため、開発規模、開発効率、人件費単価等の妥当性について事後の検証が行われていないなどの事態が見受けられ、また、刷新可能性調査において、受託業者は、システム費用はおおむね妥当であるとの結果が得られたとしているが、その内容についてみると、システム費用のすべてについて検証したものではないなど、受託業者として実施可能な範囲で行われた概括的な調査となっているなどしていた。
したがって、社会保険庁では、〔1〕ソフトウェア使用料等の算定に当たり、開発規模の事前及び事後の検証に努めるとともに、ソフトウェア開発に係る稼働人数等の的確な把握と検証に努め、適切な人件費単価及び経費等を設定することによって経済的・効率的な調達を行うこと、〔2〕ハードウェア使用料については、市場の動向等も踏まえ、更に経済的・効率的な調達となるよう努めること、なお、いわゆる契約外のハードウェアについては、有償無償を問わず契約に含めることにより、システム全体として管理すること、〔3〕刷新可能性調査は概括的なものとなっていることを踏まえ、今後ともソフトウェア使用料、ハードウェア使用料等を含めたシステム費用全体の節減を図るよう努めることに留意する必要があると考えられる。
(11)農業経営基盤強化措置特別会計における決算剰余金等の状況について
農業経営基盤強化措置特別会計は、農地保有合理化措置、農業改良資金の貸付け及び就農支援資金の貸付けに関する経理を行っている。検査したところ、近年、農業改良資金貸付金の貸付実績が著しく低調となってきていて、その歳出予算額と決算額が著しくかい離していることなどから、毎年度多額の決算剰余金が発生し、平成16年度には807億円に上り、貴重な財政資金が効果を発現することなく滞留している事態となっている。この決算剰余金は、13年度から16年度までの間に計423億円減少しているが、その主な要因はこの間に全国農地保有合理化協会に対し、都道府県公社が農用地等を買い入れる際に必要な資金の一部を貸し付けるための基金の造成に要する経費等を対象として交付している補助金の額が、13年度の52億円から16年度の238億円へと大幅に増加していることなどによる。しかし、交付先である同協会において多額の資金を保有する事態となっていて、基金における預金及び債券の保有額は16年度末で494億円となっている。
ついては、同特別会計における各事業の運営状況、同協会における資金の保有状況等を的確に把握した上で、資金規模の縮小も含め、同特別会計における資金の効率的活用を図るための方策を検討する必要があると考えられる。
(12)牛肉等に係る関税収入を特定財源とする肉用子牛等対策の実施状況について
農林水産省では、牛肉の輸入自由化が肉用子牛の価格等に及ぼす影響に対処するため、牛肉等に係る関税収入(牛関収入)を特定財源として、多額の経費を投じて肉用子牛生産者補給金制度を中心とする肉用子牛等対策を実施(平成3年度〜16年度計1兆6675億円)している。しかし、牛関収入は減少傾向にあり、消費者の食品に対する価値観が安全・安心面を重視したものになるなど、畜産をめぐる情勢が変化している。そこで、肉用子牛等対策が肉用子牛生産の安定等を図るという目的を達成しているかなどに着眼して検査した。その結果、肉用子牛等対策は生産対策に重点を置いて実施されてきており、生産費の低減には一定の効果が認められたが、安価な輸入牛肉に価格面で対抗できる状況とはなっていなかった。また、売買価格が高値で安定している黒毛和種においては国からの助成金を受けて積み立てられている生産者積立金が生産者に補給金として交付された実績がない一方で、乳用種においては毎年度交付される補給金が品質向上努力を阻害している面も懸念される状況となっていた。そして、牛関収入額は米国でのBSEの発生により米国産牛肉の輸入が停止されていることなどから、先行きが不透明となっている。
したがって、農林水産省において、〔1〕生産対策を継続しつつ、輸入牛肉との差別化を図るため、品質の向上や生産履歴情報の提供に一層努めるなど、流通・消費を含めた各段階が連携した総合的な施策を展開すること、〔2〕黒毛和種に係る生産者積立金の積立額を見直すなど運用方法を検討し、また、乳用種の保証基準価格の算定方法を適時適切に見直すなどにより、補給金の効果をより高めること、〔3〕特定財源の減少により、継続的な事業の効果が損なわれることがないよう、実施すべき事業をより一層精査し、また、消費者に対して、肉用子牛等対策の事業内容等について積極的な情報開示を行うことが望まれる。
(13)電源開発促進対策特別会計における剰余金の状況について
電源開発促進対策特別会計電源立地勘定及び電源利用勘定では、電源開発促進税を財源として、電源立地対策及び電源利用対策に関する経理を行っている。また、法改正により平成15年10月1日以降、電源立地勘定に原子力発電施設等の立地に伴う将来の財政需要に対応し得るよう周辺地域整備資金が新たに設置されるなどしている。両勘定における剰余金の状況について検査したところ、電源立地勘定における剰余金は16年度で979億円と依然として多額に上っている。その主な要因は、電源立地地域対策交付金等において、相当部分が執行されず、歳出予算現額と支出済歳出額等との間に大幅なかい離が生じ、減少しつつもなお、多額の不用額が生じる事態が依然として継続していることによるものであった。また、原子力発電施設等の立地については、必ずしも順調に進んでいるとはいえない状況になっており、今後とも厳しい状況が継続するものと思料され、周辺地域整備資金に積み立てられた資金について使用の目途が立たない事態に至るものが生じれば、同資金に積み立てられた当該資金は剰余金と同様のものとなるおそれがある。電源利用勘定における剰余金は、電源開発促進税の組入額が減少しているにもかかわらず増加傾向にあり、16年度で893億円に上っている。その主な要因は、地域エネルギー補助金等の相当部分が執行されずに不用額となっていることによるものであった。
このようなことなどから、両勘定における剰余金について、今後どのように対処していくこととするか、不用額の発生に対する歳入歳出両面を視野に入れた幅広い観点からの方策の検討を行い、上記の事態を本質的に解決するための方策の構築に努めることが望まれる。
国土交通、農林水産両省及び都道府県知事等の海岸管理者においては、従来から多額の事業費を投入して津波・高潮等による被害から海岸を防護することなどを目的に海岸事業を実施している。そこで、津波・高潮対策の実施状況について検査したところ、想定される津波の高さに対し堤防・護岸等の高さは75%が整備されているものの、このうち耐震性が確保されているものは24%となっており、さらに耐震性の調査が行われていないものが68%に上っていた。また、高潮等の高さに対応している堤防・護岸等は74%となっていた。そして、ハザードマップについては、市町村により作成・公表がされていないものが80%(津波)、97%(高潮)と多数見受けられ、このうち東海地震等に係る強化地域等において、堤防・護岸等の高さや耐震性の確保が十分ではないにもかかわらず、ハザードマップを作成していない市町村がなお多く見受けられた。また、海岸保全区域の状況等を把握するための海岸台帳の整備や海岸保全施設の開口部に整備した陸閘等を閉鎖する体制等は、必ずしも適切なものとはなっていなかった。
したがって、海岸保全施設の整備には今後長期間及び多額の事業費を要することが見込まれることから、これらの制約の下で、両省において、被害の軽減等のため均衡あるハード対策及びソフト対策等により、海岸事業の効果を早期かつ最大限に発現させ、減災に資するよう、海岸管理者に助言するなどして、〔1〕海岸保全施設の耐震性調査を進めるなどして、より計画的、重点的な対策を着実に実施すること、〔2〕浸水予測区域図を作成するよう都道府県を支援し、市町村がハザードマップを作成できるようにすること、また、海岸利用者に対する防災情報の提供について対策を講ずること、〔3〕海岸台帳の整備を適切に行い計画的な海岸事業の実施に資するようにすること、また、陸閘等については緊急時に迅速、確実に閉鎖するための体制を整備することなどについて対策を実施することが望まれる。
(15)国の事業許可を受け貸付金等により整備した地方道路公社の有料道路事業の状況について
有料道路事業は、無料で公開すべき道路について緊急に整備するために採用されている特別の措置であり、道路関係四公団民営化の議論もあって、その利用状況、採算性や財務情報に対する関心が大きく高まっている。そこで、国の無利子貸付金の貸付けを受けて整備した指定都市高速道路4道路及び一般有料道路80道路(16年度末の国の貸付金残高8340億円)を対象として、交通量、建設費の償還状況、決算表示の状況に着眼して検査した。その結果、〔1〕指定都市高速道路については、実績交通量が計画交通量に比べて低くなっているものや、建設中で建設費がどのくらいになるのか不透明であるものがあり、建設費の償還が計画された料金徴収期間内に終了するか予測することは困難である。〔2〕一般有料道路については、多くの道路で交通量の実績が計画を下回っていることから、料金収入の実績も計画を下回っており、その状態が将来にわたって継続することが予測されていて、このような道路について当初計画のままで事業を継続することは適切とはいえない。また、決算表示については、建設費償還状況の計画対比が明示されていない部分や各道路公社において統一がとれていない部分があり、国民にとって理解しやすいものとなっていない。
したがって、各道路公社において、経営改善や計画修正、理解しやすい決算表示を行うほか、国において、経営改善や計画修正についての指導・啓発を積極的に行い地方における議論を活性化させること、会計基準改善に向けた検討を行うなどして有料道路事業の決算状況について明瞭な表示に寄与することが重要である。
(16)住宅金融公庫における延滞債権の実態及びその管理状況について
住宅金融公庫の個人融資(貸付累計額161兆1955億円)は、ほとんどが財団法人公庫住宅融資保証協会が連帯保証人となっていて、平成19年4月に独立行政法人住宅金融支援機構が設立される際に、保証協会の権利及び義務は新機構に承継されることとなっている。そして、昨今、償還の継続が困難な状況に至った貸付債権が急増し、保証協会の代位弁済が多額となり、保証協会の財務内容が悪化している。そこで、その要因等について検査及び調査したところ、ゆとり償還や8割超融資は公庫の融資戸数の拡大等に寄与したと思料されるが、延滞債権の増加との相関も見られた。そして、公庫では、従来自然人が保証している債権のみを償却処理の対象としていたが、保証協会の保証料収入及び求償権の回収が減少しているなどして財務内容が悪化していることから、協会保証の債権に係る任意売却後の回収が見込めない部分について償却を行うため、17年度予算において貸倒引当金を358億円積み増しており、これは国からの補給金の算定要因として初めて計上したものである。また、受託金融機関等では、返済困難者対策として、返済方法の変更や任意売却等を働きかけているが、返済相談ができなかったり、面談や現地調査に至っていないものもあった。
ついては、公庫は、新機構移行後においても、その経営の安定や債務者の居住の安定を図る上で、債権の不良化を抑制することが重要であることから、適切な償還計画が立てられるよう住宅資金の借入者への償還方法、償還額等に関する情報提供の充実を図り、返済困難者への返済条件の変更についての周知徹底等、きめ細やかな対応を行うとともに、債権の回収業務等債権管理については、公庫で定めた延滞債権に対する督促基準等に沿って早期の面談や現地調査等を適時適切に実施するとともに、延滞状況を適宜的確に見極めた上、任意売却を活用するなどの回収の取組をより積極的に行うことに留意していく必要がある。
(17)第3セクターに対する社会資本整備促進融資の状況について
日本政策投資銀行が昭和62年度から行っている社会資本整備促進融資は、第3セクターが行う施設整備事業のうち周辺の相当程度広範囲の地域に対して適切な経済的効果を及ぼすと認められるものなどに対して無利子融資及び低利子融資を行うものである。また、日本政策投資銀行は、社会資本整備促進融資を補完するために併せて有利子融資を行っているほか、一部の第3セクターに対して出資を行っている。これらの貸付金等の実績は、平成16年度末までの累計で、無利子融資7301億円、低利子融資49億円、社会資本整備促進融資計7351億円、有利子融資7114億円、合計1兆4465億円、出資269億円となっている。そして、社会資本整備促進融資については、16年度末現在計画されている案件が終了した時点で廃止されることとなった。そこで、社会資本整備促進融資等の償還状況及び日本政策投資銀行の財務に与える影響について、平成11年度決算検査報告の掲記後の状況を含めて総括的に検査した。検査したところ、日本政策投資銀行が償却を行った貸付金377億円(うち社会資本整備促進融資31億円)及び出資金5億円は、日本政策投資銀行の財務に影響を与えている。また、返済に延滞を生じているものに対する貸付金810億円(うち社会資本整備促進融資209億円)、貸付条件を緩和しているものに対する貸付金1460億円(うち社会資本整備促進融資400億円)及び投資価値が著しく下落した出資金の含み損99億円があり、今後、償却に至った場合には日本政策投資銀行の財務に影響を与えることとなる。また、約定どおりの返済を行っている第3セクターの中には、直近の償還原資により計算したところ約定最終期限までには日本政策投資銀行に対して計算上債務の償還が終わらないものも見受けられた。
ついては、日本政策投資銀行においては、更に一層適切な債権管理を行うとともに、社会資本整備促進融資と対象が同様な同融資以外の第3セクターに対する有利子の融資制度について、社会資本整備促進融資の経験を踏まえることが肝要である。
日本郵政公社では、窓口での郵便貯金の払戻し、簡易保険の支払等に充てるため、全国の郵便局において現金を保有(平成16年度末保有高2兆2237億円)している。そこで、金融機関としての公社の運営にとって重要である資金管理が適切に行われているかという点に着眼して、資金の保有状況、現金の受払状況等について検査した。その結果、定められた基準高や実際の現金の払出高を大きく上回る支払準備現金を保有している郵便局が多数に上っている事態が見受けられた。公社においてもこのような状況を認識し、郵便局の保有する資金を一元的に管理するシステムを17年6月から運用している。しかし、同システムにおいても、現金の基準高は、窓口における現金の受払いを伴わない取引を含めた額を基として算出されることとなっていることから、各郵便局の保有高を決定する際に必要な補正を行うこととしているが、この取引の正確な把握は今後の課題となっている。
したがって、民営化・分社化を控えた公社においては、資金管理システムの運用に当たり、当面、必要となる補正を確実に実施するとともに、今後、現金の正確な把握を可能とするオートキャッシャーの配備等の郵便局の窓口における事務処理システムの進展をみながら、より実態に合った効率的な資金管理を実現することが望まれる。
(19)日本放送協会における放送受信料の契約・収納状況について
日本放送協会の放送受信料については、平成16年7月に協会職員による番組制作費の着服が発覚して以来、この不祥事を理由とした受信料の支払拒否・保留が発生するとともに、受信契約を締結していない者及び以前からの受信料未払者が多数に上っていることが明らかとなり、国民の受信料に対する不公平感が拡大してきている。このため、17年度の受信料収入が大幅に減少することが見込まれ、今後、協会が公共放送の使命を果たしていく上で支障を来す事態も予想される。このようなことから、受信料の徴収は効率的かつ公平に行われているかについて検査した。その結果、協会では、契約促進に努めているものの、契約対象者が不在であったり、事業所が明らかに事実と異なる設置状況を報告するなど未契約者の把握が困難な状況となっていた。また、協会では信頼回復活動等を行ってきているが、支払拒否・保留の増加は続いており、その効果は現状では必ずしも十分なものとなっていなかった。このため、協会において、更に一層の不祥事の再発防止の徹底や経費の削減を図るとともに、受信料負担に対する国民の不公平感を払拭していくことが肝要であり、受信料制度の趣旨について国民に更なる周知を図っていくとともに、〔1〕未契約者について、その実態を効率的に把握する方策を検討すること、〔2〕未払者について、更に効果的に受信料を収納する方策を検討すること、〔3〕事業所について、受信機の設置状況の的確な把握に引き続き努めること、〔4〕このほか、真に止むを得ない場合は、最後の手段として法的措置の検討も視野に入れることなどの取組を進めていく必要がある。
国が、各種の施策等を推進していくためには、行政の透明性を高め、国民の理解と協力を得ることが極めて重要であり、広報業務の役割の重要性も高まっている。そこで、国の広報業務の実施状況について、各省庁を横断的に検査したところ、契約方式については、競争契約の割合及び随意契約の中で企画競争を実施している契約の割合がともに低く、また、企画競争において公平性、透明性が十分に確保されていないものがあった。予定価格の算定については、単一の資料のみに基づいて積算を行っているものも少なくなかった。効果的な広報への取組については、印刷広報において配布先の利用状況の把握をしていないものや、ホームページにおいて利便性の向上について十分な取組を行っていないものなどがあり、また、広報業務の検証については、半数以上において実施していなかった。
したがって、各省庁においては、〔1〕「契約の性質又は目的が競争を許さない」ことを理由として随意契約を締結してきた契約については、随意契約によらざるを得ない理由の妥当性を再検討して競争契約の拡大を図り、また、随意契約によらざるを得ない場合には、企画競争の可能性を検討し、企画競争を実施する場合には、恣意的な業者選定を行うおそれがないような実施方法を採用すること、〔2〕予定価格の算定に当たっては、できるだけ複数の者から参考見積書を徴するとともに、公表資料との比較検討を行って、積算の合理性の向上に努めること、〔3〕印刷広報について配布先ごとの配布部数を見直したり、ホームページについて利便性の一層の向上を図ったりするなど効果的な広報を実施するための取組を進めるとともに、実効性のある検証を行うことなどに留意することが望まれる。
会計検査院は、前節に記載した「平成17年次会計検査の基本方針」のとおり、正確性の観点、合規性の観点、経済性・効率性の観点、有効性の観点といった多角的な観点から検査を実施した。その結果は「第1 事項等別の検査結果」で述べたとおりであるが、このうち「第3章 個別の検査結果」に掲記した事項について、検査の観点に即して事例を挙げると次のとおりである。
1 主に予算執行や財産管理の状況が計算書や財務諸表に正確に表示されているかに着眼したもの
検査対象機関は、その執行した予算や管理する財産について、法令や各種会計基準に従って、適正に経理処理を行うとともに、その状況を適切に計算書や財務諸表に表示しなければならない。この経理処理が適正に行われ、予算執行や財産管理の状況が計算書や財務諸表に適切に表示されているかに着眼した検査の結果として次のようなものがある。
(ア)国の所有する財産は国有財産台帳に適切に計上されているかを検査した。その結果、「延長工事等を行った滑走路に係る国有財産台帳の価格改定を延長部分等の耐用年数満了時まで行うことにより、台帳価格を適正なものとし、国有資産等所在市町村交付金の交付額を適切なものとするよう改善させたもの」 を掲記し、「沖縄の復帰に伴う国有林野に係る国有財産台帳の整備について」 として是正改善の処置を要求した。
(イ)国の出資法人において、発生した費用の損益計算書への計上や所有する資産又は負債の貸借対照表への計上が適切に行われ、その現況が適切に表示されているかを検査した。その結果、「国立大学法人に帰属する承継財産の数量及び価額を適正なものに是正させたもの」 や「スポーツ振興投票に係る財政状態及び運営状況を適切に開示するために財務諸表を正確かつ明瞭な表示に改めるよう改善させたもの」 を掲記した。
2 主に業務が予算、法令等に従って適正に実施されているかに着眼したもの
検査対象機関は、予算、法令等に従って適正に業務を実施しなければならない。この業務の執行に際し、予算、法令等が守られているか、さらには予算、法令等の趣旨に適合した制度の運用が行われているかに着眼した検査の結果として次のようなものがある。
(ア)会計に関する事務を処理する職員は、予算や会計法令等の定めるところに従って、収入金の受入、支出金の支払、契約手続等の事務を適正に行うとともに、その経理処理を確実に行うべきものであるので、これらが予算や会計法令等に従って適正確実に行われているか、また、適正確実に行うような事務処理体制が執られているかを検査した。その結果、「航空機を利用した出張等に係る旅費の支給が過大となっているもの」 や「関係書類を偽造するなどして庁費、謝金、旅費等を不正に支出し、これを業務の目的外の用途に使用したり、職員が国庫金を領得したりなどしていたもの」 、「同一日に複数の会議に出席するなどした委員の勤務日数を適切に管理することにより、委員手当の支給を適切なものとするよう改善させたもの」 、「医薬品、診療材料等の購入などに当たり、当該年度の予算の額を超えて購入等を行い、翌年度等において事実と異なる不適正な会計経理を行って代金を支払っているもの」 を掲記した。
(イ)租税及び保険料は法令等に従って適正に徴収すべきものであるので、個々の徴収額に過不足がないかを検査した。その結果、「租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」 や「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」 及び「労働保険の保険料の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの」 を掲記した。
(ウ)老齢厚生年金等の支給は適正なものとなっているかを検査した。その結果、「厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの」 を掲記した。
(エ)雇用対策のための給付金や助成金の支給が適正なものとなっているかを検査した。その結果、「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」 や「雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったもの」 を掲記した。
(オ)医療機関からの診療報酬や労災診療費の請求に対する支払が適正かを検査した。その結果、「医療費に係る国の負担が不当と認められるもの」 、「労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの」 を掲記した。
(カ)介護サービスを提供する事業者からの介護給付費の請求に対する支払が適正かを検査した。その結果、「介護給付費に係る国の負担が不当と認められるもの」 を掲記した。
(キ)物品、役務の調達に当たり、支払額が適正なものとなっているか、また、公正性、競争性が確保されるよう契約事務が適切に行われているかを検査した。その結果、「研究調査事業に係る委託費の支払に当たり、当該事業に要した経費に架空の消耗品費が含まれていたため、支払額が過大となっているもの」 や「鰻ふ化仔魚育成技術の開発等に係る委託事業の実施に当たり、委託事業の経費に架空の出張旅費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの」 、「研究用機器の購入契約に当たり、公正性及び競争性の確保を図るため、競争に付するなど契約事務を適切に実施するよう改善させたもの」 を掲記した。
(ク)補助金の交付申請や実績報告に係る経理が適正に行われているか、また、補助事業が適正に実施されているかを検査した。その結果、「科学研究費補助金の経理が不当と認められるもの」 や「国民健康保険の財政調整交付金の交付が不当と認められるもの」 、「生活保護費に係る返還金等の調定額の算出を適切に行わせることなどにより、生活保護費国庫負担金の算定が適正なものとなるよう改善させたもの」 、「中小企業経営革新支援対策費補助金等の経理が不当と認められるもの」 、「公営住宅家賃対策補助金の経理が不当と認められるもの」 、「民間事業者等が事業主体として実施している市街地整備の促進や高齢者向けの賃貸住宅の供給等を目的とした補助事業における消費税の取扱いを適切に行うよう改善させたもの」 を掲記した。
(ケ)貸付金が貸付目的に従って適正に使用されているかを検査した。その結果、「中小企業高度化事業に係る資金の貸付けが不当と認められるもの」 を掲記した。
3 主に業務が経済的・効率的に実施されているかに着眼したもの
検査対象機関の業務は、その事業目的を達成する上で、経済的・効率的に実施されなければならない。すなわち、経費は節減できないか、同じ費用でより大きな成果が得られないかという観点であるが、この点に着眼した検査の結果として次のようなものがある。
(ア)多額かつ長期にわたりソフトウェア使用料を支払っている社会保険オンラインシステムのデータ通信サービス契約について、ソフトウェア使用料に係る利子相当額が適正に算出されているかに着眼して検査した。その結果、「データ通信サービス契約に係るソフトウェア使用料のうちの利子相当額について」 として是正改善の処置を要求した。
(イ)工事費の積算は経済的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「磁気探査のため、水上において設置・撤去する仮設足場に係る費用の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの」 や「浚渫等工事の積算に当たり、高精度の測位システムを利用することなどにより施工精度等が向上した工事について、検測待ちの拘束費を計上しないよう改善させたもの」 を掲記した。
(ウ)物件の調達は経済的・効率的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「護衛艦における主発電機用原動機のガスタービンパワーセクション予備機の調達に当たり、艦艇製造請負契約とは別途に調達することにより、経済的な調達を図るよう改善させたもの」 や「郵便局で使用するオートバイ等の郵便用車両について、集配業務の作業の実態に応じて適切に配備するとともに効率的に運用するよう改善させたもの」 、「加入者収容モジュールに搭載されている基板収容ユニットの転用を促進し、購入費の節減を図るよう改善させたもの」 を掲記した。
(エ)役務の仕様や積算は経済的・効率的なものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「プログラム改修に係る委託に当たり、コンサルティング業務の内容を明確にするなどして委託費の積算を適切なものとするよう改善させたもの」 や「駐留軍等労働者に対する定期健康診断を委託により実施するに当たり、契約単価の設定を診療報酬点数表によることなく市場価格等を考慮することにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの」 、「ビルの清掃作業について、作業員の移動の実態等に基づいて移動費を適切に算定することなどにより、委託費の節減を図るよう改善させたもの」 を掲記した。
(オ)国等からの補助金や助成金等が合理的に算定されているか、事務・事業の実施に対して必要以上に交付されることとなっていないかに着眼して検査した。その結果、「地上デジタルテレビジョン放送の開始に伴うアナログ周波数変更対策業務について、調査業務及び受信対策の労務単価の算定を適切なものとするよう改善させたもの」 や「国民健康保険における退職被保険者の適用の適正化を図るよう改善させたもの」 を掲記した。
(カ)謝金の支払が業務の実態に適合したものとなっているかに着眼して検査した。その結果、「確定申告説明会に係る謝金の支払が業務の実態等に適合したものとなるよう改善させたもの」 を掲記した。
(キ)国の出資法人の施設の利用料が適切に徴収されているかに着眼して検査した。その結果、「燃料試験施設を外部利用させるに当たり、作業の実態を適切に反映した料金単価とするよう改善させたもの」 を掲記した。
(ク)給与所得に係る源泉所得税が未納となっている徴収義務者に対する納付指導が効率的に行われているかに着眼して検査した。その結果、「給与所得に係る源泉徴収義務者に対する納付指導を効率的に行うことなどにより、源泉徴収制度が適切に実施されるよう改善させたもの」 を掲記した。
4 主に事業が所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼したもの
検査対象機関の事業の中には、一定の目的の下に、社会資本を整備したり、財政援助・助成措置を講じたり、財産を保有・活用したりなどしているものがあるが、これらが所期の目的を達成しているか、また、効果を上げているかなどに着眼した検査の結果として次のようなものがある。
(ア)地震時に防災拠点となる官庁施設の耐震化が、施設の重要度、緊急度等を考慮し計画的に実施されているかに着眼して検査した。その結果、「地震災害時に防災拠点となる官庁施設の耐震化対策が重点的、効率的に実施されていない事態について」 を掲記した。
(イ)近年の雇用情勢の悪化に伴い雇用保険財政がひっ迫する中、手厚い給付が行われている雇用保険の訓練延長給付について、職業訓練に係る受講指示が適切になされているかなどに着眼して検査した。その結果、「適切な職業相談を十分行うなどして求職者に対する公共職業訓練等の受講指示を行うことにより、訓練延長給付の支給を適切なものとするよう改善させたもの」 を掲記した。
(ウ)中小企業高度化事業において、近年延滞債権や条件変更債権が増加傾向にある中、債権の管理が適時適切に行われているかなどに着眼して検査した。その結果、「中小企業高度化事業における不良債権が多額に上っていて、その解消を図るため、より一層の債権管理態勢を整備することが必要な事態について」 を掲記した。
(エ)金融システム不安に対し政府が累次にわたる対策を講じてきた中、破綻金融機関との金融取引を行っていた中堅事業者を対象とする破綻金融機関等関連特別保険等の実施状況やそのために出資等された資金の利用状況に着眼して検査した。その結果、「中堅事業者に係る破綻金融機関等関連特別保険等の利用が低調となっているため、制度の在り方について検討することが必要な事態について」 を掲記した。
(オ)国の補助事業の採択に当たり、費用便益比率の算定が適切に行われているかなどに着眼して検査した。その結果、「築いそ整備事業の計画策定に当たり、過去に整備した築いその実績漁獲量を把握するなどして、費用対効果分析を適切に実施することにより、事業の採択等が的確に行われるよう改善させたもの」 を掲記した。
(カ)国の補助事業について、適切な事業評価が行われ、事業効果が的確に把握されているかに着眼して検査した。その結果、「新山村振興等農林漁業特別対策事業等により整備した直売所等の施設について、適切な事業評価を実施するとともに、事業効果の発現状況を継続的に把握できる体制を整備することにより、事業効果の十分な発現を図るよう改善させたもの」 を掲記した。
(キ)国の直轄事業又は補助事業若しくは出資法人の事業による整備事業が計画どおり進ちょくしているか、また、整備した施設や設備が適切に管理され、計画に沿って利用されているかなどに着眼して検査した。その結果、「農業集落排水事業により整備した肥料化施設等において、施設を適切に利用し、汚泥を農地に還元することにより、事業効果の発現を図るよう改善させたもの」 、「港湾EDIシステム等について、利活用の促進を図るよう改善させたもの」 や「電線共同溝整備事業の実施における占用予定者の入溝が計画的になっていなかったり、管理が十分行われていなかったりなどしている事態について」 、「賃貸住宅建替事業において、事業着手後長期化していたり、事業着手までに長期間を要したりしている事態について」 を掲記した。
なお、上記のほか、第4章の「国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況」においても、有効性の観点から検査を実施しその状況を掲記したものがある。