検査の結果、第3章及び第4章に掲記した事項等には、次のものがある。
上記(1)のア、イ及びウ並びに(2)のア、イ、ウ及びエの事項等の件数、金額は、次のとおりである。
事項等 | 件数 |
指摘金額 (背景金額) |
|
---|---|---|---|
不当事項 | 859件 | 377億1635万円 | |
意見を表示し又は処置を要求した事項 | 第34条 | (注2) 29件 |
<29件分> 92億7290万円
(39億4539万円) |
第34条及び第36条 | 1件 | 96億9389万円 | |
第36条 | (注2) 23件 |
|
|
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項 | (注2) 55件 |
|
|
事項計 | 967件 |
<951件分> 1253億6011万円
|
|
国会及び内閣に対する報告 | (注4) 7件 |
− | |
国会からの検査要請事項に関する報告 | 6件 | − | |
国会からの検査要請事項に関する検査状況 | 1件 | − | |
特定検査対象に関する検査状況 | 5件 | − | |
総計 | (注5) 981件 |
<951件分>
1253億6011万円
|
第3章の「個別の検査結果」に掲記した各事項のうち、不当事項、意見を表示し又は処置を要求した事項及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について、省庁等別にその件数、金額を示すと次のとおりである。
事項
\
省庁又は
団体名 |
不当事項 | 意見を表示し又は処置を要求した事項 | 本院の指摘に基づき当局において 改善の処置を講じた事項 |
計
(注2) |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
国会 (衆議院) |
件 |
件 〔34〕1 |
3億4601万円 | 件 |
件 1 |
3億4601万円 | ||
内閣 (人事院) |
1 | 186万円 | 1 | 186万円 | ||||
内閣府 (内閣府本府) |
〔34〕1 | 8688万円 | 1 | 8688万円 | ||||
同 (警察庁) |
(注3) 〔36〕1 |
(注3) (5億2160万円) |
(注3) 1 |
(注3) (5億2160万円) |
||||
総務省 | 12 | 4億6436万円 | 〔34〕1 〔34〕・〔36〕1 (注3) 〔36〕2 |
2億3229万円 96億9389万円 (注3) (5億2843万円) (188億6640万円) |
1 | 8億0982万円 | (注3) 17 |
(注5) 111億9548万円 (注3) (5億2843万円) (188億6640万円) |
法務省 | 15 | 3464万円 | 〔34〕1 〔36〕1 |
1億3559万円 313億5052万円 |
17 | 315億2075万円 | ||
外務省 | 1 | 1191万円 | (注4) 〔36〕1 |
(注4) (270億7279万円) |
1 | 3億9751万円 | (注4) 3 |
4億0942万円 (注4) (270億7279万円) |
財務省 | 7 | 12億2569万円 | 〔34〕1 (注3) 〔36〕1 |
7977万円 (注3) (1億9727万円) |
2 | 1億0973万円 | (注3) 11 |
(注5) 13億9164万円 (注3) (1億9727万円) |
文部科学省 | 17 | 1億0406万円 | 2 | 7807万円 | 19 | 1億8213万円 | ||
厚生労働省 | 660 | 132億2689万円 | 〔34〕1 〔36〕1 |
1億4237万円 (575億円) |
6 | 36億7928万円 | 668 | (注5) 169億9247万円 (575億円) |
農林水産省 | 43 | 4億2767万円 | 〔36〕3 | 18億0054万円 (194億2341万円) |
8 | 23億7401万円 | 54 | (注5) 45億8354万円 (194億2341万円) |
経済産業省 | 22 | 1億8895万円 | 〔36〕3 | 13億4381万円 (183億1236万円) (注7) (2491億円) |
25 | 15億3276万円 (183億1236万円) (注7) (2491億円) |
||
国土交通省 | 39 | 11億6701万円 | (注6) 〔34〕4 (注3) (注6) 〔36〕5 |
6億0677万円 (39億4539万円) 6億5953万円 (18億7911万円) (728億9095万円) (注3) (52億7235万円) (10億9403万円) |
(注6) 9 |
35億7935万円 (15億7349万円) (31億6417万円) (14億9680万円) |
(注3) (注6) 57 |
60億1266万円 (39億4539万円) (18億7911万円) (728億9095万円) (注3) (52億7235万円) (10億9403万円) (15億7349万円) (31億6417万円) (14億9680万円) |
環境省 | 2 | 2億5222万円 | 〔34〕1 〔36〕1 |
38億4728万円 (注7) |
4 | (注7) 40億9950万円 |
||
防衛省 | 1 | 21億8000万円 | 〔34〕4 | 24億4999万円 | (注6) 5 |
44億0873万円 (391億1360万円) (7億2810万円) |
(注6) 10 |
90億3872万円 (391億1360万円) (7億2810万円) |
国民生活金融公庫 | 〔34〕1 | 5668万円 | 1 | 5668万円 | ||||
農林漁業金融公庫 | ||||||||
中小企業金融公庫 | ||||||||
中小企業金融公庫 | 2 | 178億1593万円 | 1 | 119億6274万円 | 3 | 297億7867万円 | ||
日本私立学校振興・共済事業団 | 5 | 4300万円 | 5 | 4300万円 | ||||
日本銀行 | 1 | 324万円 | 1 | 324万円 | ||||
日本中央競馬会 | 〔34〕1 | 7億9163万円 | 1 | 7億9163万円 | ||||
日本郵政公社 | 12 | 2億2401万円 | 12 | 2億2401万円 | ||||
東京地下鉄株式会社 | 1 | 1990万円 | 1 | 1990万円 | ||||
成田国際空港株式会社 | 〔34〕1 | 9966万円 | 1 | 9966万円 | ||||
東日本高速道路株式会社 | 1 | 440万円 | 1 | 2858万円 | 2 | 3298万円 | ||
中日本高速道路株式会社 | 1 | 3065万円 | 1 | 3065万円 | ||||
西日本高速道路株式会社 | 1 | 3397万円 | 1 | 3397万円 | ||||
日本郵政株式会社 | 〔34〕1 | 9011万円 | 1 | 9011万円 | ||||
独立行政法人情報通信研究機構 | 1 | 403万円 | 1 | 403万円 | ||||
独立行政法人放射線医学総合研究所 | 1 | 260万円 | 1 | 260万円 | ||||
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 | 〔36〕1 | 12億9025万円 | 1 | 12億9025万円 | ||||
独立行政法人農業生物資源研究所 | 〔34〕1 | 2093万円 | 1 | 2093万円 | ||||
独立行政法人造幣局 | (注6) 〔36〕1 |
12億4397万円 (175億4784万円) |
(注6) 1 |
12億4397万円 (175億4784万円) |
||||
独立行政法人国立印刷局 | 1 | 2892万円 | 1 | 2892万円 | ||||
独立行政法人農畜産業振興機構 | 1 | 754万円 | 1 | 754万円 | ||||
独立行政法人国際協力機構 | (注4) 〔36〕1 |
(注4) | 1 | 9774万円 | (注4) 2 |
(注4) 9774万円 |
||
独立行政法人国際交流基金 | 1 | 400万円 | 1 | 400万円 | ||||
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 | 1 | 5475万円 | 1 | 5475万円 | ||||
独立行政法人科学技術振興機構 | 1 | 466万円 | 1 | 466万円 | ||||
独立行政法人日本学術振興会 | 1 | 429万円 | 1 | 429万円 | ||||
独立行政法人日本芸術文化振興会 | 1 | 1763万円 | 1 | 1763万円 | ||||
独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 | 2 | 1億2148万円 | 2 | 1億2148万円 | ||||
独立行政法人日本貿易振興機構 | 1 | 2654万円 | 1 | 2654万円 | ||||
独立行政法人水資源機構 | 1 | (11億5535万円) | 1 | (11億5535万円) | ||||
独立行政法人雇用・能力開発機構 | 1 | 1469万円 | 1 | 1469万円 | ||||
独立行政法人労働者健康福祉機構 | 〔34〕1 | 3856万円 | 1 | 3856万円 | ||||
独立行政法人国立病院機構 | 1 | 2542万円 | 1 | 2542万円 | ||||
独立行政法人中小企業基盤整備機構 | 1 | 8557万円 | 1 | 8557万円 | ||||
独立行政法人都市再生機構 | 〔34〕1 | 2792万円 | 1 | 2792万円 | ||||
独立行政法人奄美群島振興開発基金 | 1 | 610万円 | 1 | 610万円 | ||||
独立行政法人日本原子力研究開発機構 | 1 | 5億0721万円 | 1 | 5億0721万円 | ||||
独立行政法人住宅金融支援機構 | 1 | 2923万円 | 1 | 2923万円 | ||||
国立大学法人東北大学 | 2 | 3038万円 | 〔36〕1 | 2310万円 | 3 | (注5) 3038万円 |
||
国立大学法人筑波大学 | 1 | 2041万円 | 1 | 4022万円 | 2 | 6063万円 | ||
国立大学法人千葉大学 | 1 | 940万円 | 1 | 940万円 | ||||
国立大学法人東京医科歯科大学 | 1 | 7051万円 | 1 | 7051万円 | ||||
国立大学法人東京芸術大学 | 〔34〕1 | 922万円 | 1 | 922万円 | ||||
国立大学法人静岡大学 | 1 | 410万円 | 1 | 410万円 | ||||
国立大学法人三重大学 | 〔34〕1 | 1614万円 | 1 | 1614万円 | ||||
国立大学法人京都大学 | 〔34〕1 | 1億1206万円 | 1 | 1億1206万円 | ||||
国立大学法人京都工芸繊維大学 | 〔34〕1 | 1233万円 | 1 | 1233万円 | ||||
国立大学法人奈良女子大学 | 〔34〕1 | 726万円 | 1 | 726万円 | ||||
国立大学法人九州大学 | 〔34〕1 | 5371万円 | 1 | 5371万円 | ||||
大学共同利用機関法人自然科学研究機構 | 〔34〕1 | 970万円 | 1 | 970万円 | ||||
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 | 1 | 1106万円 | 1 | 1106万円 | ||||
首都高速道路株式会社 | 1 | 9255万円 | 1 | 9255万円 | ||||
阪神高速道路株式会社 | 1 | 3464万円 | 1 | 3464万円 | ||||
北海道旅客鉄道株式会社 | 1 | 1億8160万円 | 1 | 1億8160万円 | ||||
東日本電信電話株式会社 | 1 | 4億6309万円 | 1 | 4億6309万円 | ||||
西日本電信電話株式会社 | 1 | 3億9869万円 | 1 | 3億9869万円 | ||||
株式会社かんぽ生命保険 | (注6) 〔36〕1 |
3196万円 (1億4492万円) |
(注6) 1 |
3196万円 (1億4492万円) |
||||
関西国際空港施設エンジニア株式会社 | 1 | 14億8857万円 | 1 | 14億8857万円 | ||||
合計 | 859 | 377億1635万円 | (注4) 53 |
567億1047万円 | 55 | 310億5957万円 | (注4) 967 |
(注5) 1253億6011万円 |
以上の各事項計967件について、その概要を示すと次のとおりである。
検査の結果、「不当事項」として計859件掲記した。これを収入、支出等の別に分類して、態様別に説明すると、次のとおりである。なお、「不当事項」として掲記した事態については、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し若しくは是正改善の処置を求めた事項に係る事態及び「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」中会計経理に関し法令に違反し又は不当であると認める事態と併せて、会計検査院法第31条の規定等による懲戒処分の要求の要否、及び同法第32条の規定等による弁償責任の検定について検討を行うこととなる。
省庁又は団体名 | 予算経理 | 租税 | 保険料 | 医療費 | 不正行為 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|
財務省 | 件 | 件 2 |
件 | 件 | 件 4 |
件 6 |
厚生労働省 | 4 | 2 | 4 | 9 | 19 | |
東日本高速道路株式会社 | 1 | 1 | ||||
独立行政法人国立病院機構 | 1 | 1 | ||||
計 | 5 | 2 | 2 | 4 | 14 | 27 |
省庁又は団体名 | 予算経理 | 予算経理・役務 | 工事 | 物件 | 役務 | 役務・補助金 | 保険給付 | 医療費 | 補助金 | 貸付金 | 不正行為 | その他 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
総務省 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 | 件 11 |
件 | 件 | 件 1 |
件 12 |
法務省 | 14 | 1 | 15 | ||||||||||
外務省 | 1 | 1 | |||||||||||
財務省 | 1 | 1 | |||||||||||
文部科学省 | 3 | 14 | 17 | ||||||||||
厚生労働省 | 1 | 27 | 1 | 4 | 2 | 585 | 20 | 1 | 641 | ||||
農林水産省 | 1 | 42 | 43 | ||||||||||
経済産業省 | 2 | 14 | 6 | 22 | |||||||||
国土交通省 | 1 | 1 | 1 | 1 | 33 | 1 | 38 | ||||||
環境省 | 2 | 2 | |||||||||||
防衛省 | 1 | 1 | |||||||||||
日本私立学校振興・共済事業団 | 5 | 5 | |||||||||||
日本銀行 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人情報通信研究機構 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人放射線医学総合研究所 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人農畜産業振興機構 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人国際交流基金 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人科学技術振興機構 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人日本学術振興会 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 | 1 | 1 | 2 | ||||||||||
独立行政法人日本貿易振興機構 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人雇用・能力開発機構 | 1 | 1 | |||||||||||
独立行政法人奄美群島振興開発基金 | 1 | 1 | |||||||||||
国立大学法人東北大学 | 2 | 2 | |||||||||||
国立大学法人千葉大学 | 1 | 1 | |||||||||||
国立大学法人静岡大学 | 1 | 1 | |||||||||||
計 | 21 | 1 | 4 | 2 | 36 | 1 | 4 | 2 | 710 | 7 | 22 | 5 | 815 |
省庁又は団体名 | 不正行為 | その他 | 計 |
---|---|---|---|
内閣(人事院) | 件 1 |
件 | 件 1 |
国土交通省 | 1 | 1 | |
中小企業金融公庫 | 2 | 2 | |
日本郵政公社 | 12 | 12 | |
国立大学法人筑波大学 | 1 | 1 | |
計 | 15 | 2 | 17 |
「意見を表示し又は処置を要求した事項」として計53件掲記した。
衆議院は、議員宿舎の建設、維持管理、運営支援等を目的とするPFI事業を事業者と契約を締結して実施しており、サービス対価の総額に100分の5を乗じた消費税相当額を契約金額に含めて契約金額としている。このうち、施設購入費は25年にわたり年2回の割賦支払となっていて、事業契約に基づいて支払う割賦金利は、施設購入費の割賦元本を分割して支払うことによる利子相当額と認められる。しかし、割賦金利の金額を契約書に明示するなど、割賦金利が消費税法に定める課税されない利子等に該当するように事業契約を定めていれば、割賦金利に係る消費税相当額を支払う必要はないのに、これを契約金額に含めて支払を継続している事態は適切とは認められない。したがって、衆議院において、事業の支払額の節減を図るために、契約相手方と協議の上、割賦金利に係る消費税相当額が契約金額に含まれないよう契約変更を求めるなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 3億4601万円)
財務省の関東、東海、近畿各財務局は、公務員宿舎の建設、維持管理等を目的とするPFI事業を事業者と契約を締結して実施しており、サービス対価の総額に100分の5を乗じた消費税相当額を契約金額に含めて契約金額としている。このうち、建設費相当分は年1回の割賦支払となっていて、事業契約に基づいて支払う割賦金利は、建設費相当分の割賦元本を分割して支払うことによる利子相当額と認められる。しかし、割賦金利の金額を契約書に明示するなど、割賦金利が消費税法に定める課税されない利子等に該当するように事業契約を定めていれば、割賦金利に係る消費税相当額を支払う必要はないのに、これを契約金額に含めて支払を継続している事態は適切とは認められない。したがって、各財務局において、事業の支払額の節減を図るために、契約相手方と協議の上、割賦金利に係る消費税相当額が契約金額に含まれないよう契約変更を求めるなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 7977万円)
海上自衛隊は、潜水艦救難母艦等に搭載されている深海救難艇等に電力を供給するために銀電池を使用している。そして、その廃電池から粗銀を回収して、この粗銀を精製したものを銀電池製作時の官給品として使用し、5か年分の官給所要量を超えた廃電池については、年度処分計画を定めて売り払うこととしている。しかし、年間の官給所要量から推計すると、銀は約10か年分に相当する量を、また、廃電池から回収が見込まれる粗銀は約17か年分に相当する量をそれぞれ保管していて、5か年分の官給所要量を超えているにもかかわらず、廃電池の売払いが行われていない事態が見受けられた。したがって、海上自衛隊補給本部において、銀及び廃電池の保管状況を勘案した銀回収サイクルを十分に検討した上で、5か年分の官給所要量を超える廃電池について全体保管数を対象とした処分計画を作成するなどして、これらの廃電池を速やかに売り払う処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 9億8060万円)
成田国際空港株式会社が所有する空港施設用地等の土地の貸付けについては、同会社の規程に基づき適正な対価によることとされている。しかし、同会社は新東京国際空港公団が国の官署と無償の貸付契約を締結していた土地を同会社設立後も引き続き無償で貸し付けていたり、平成16事業年度以降に新規に国の官署と無償の貸付契約を締結していたりしていて、同会社の規程に適合したものとはなっていない事態が見受けられた。したがって、成田国際空港株式会社において、無償の貸付契約の有償化に向けて、借受者である国の官署と速やかに協議を行うなどして、貸付契約を同会社の規程に適合したものとする要がある。
(1件 指摘金額 9966万円)
生活保護の実施に当たり、福祉事務所において、保護費等の支給事務等が適正に行われていなかったために現業員等による詐取等が発生して、その再発防止対策についても十分でなかったり、詐取等が発生していない福祉事務所においても同様に、事務処理が適正に行われていなかったりしている事態が見受けられた。また、厚生労働省において、現業員等による詐取等について直ちに報告を受ける体制が執られていなかったり、現業員等による詐取等に係る保護費等が国庫負担の対象とならないよう負担金の精算方法を明確にしていなかったりなどしている事態が見受けられた。したがって、厚生労働省において、詐取等を防止するために、事業主体における内部統制を十分機能させることなどにより保護費の支給事務等を適正に実施させるとともに、詐取等に係る事案の把握体制や負担金の精算方法等について整備するなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 1億4237万円)
環境省は、市町村が浄化槽設置整備事業又は浄化槽市町村整備推進事業を行った場合に、国庫補助金等を交付している。これらの事業について、設置された浄化槽が使用されておらずその効果が発現していない事態、事業実施年度の前年度以前に既に設置が済んでいる浄化槽を補助対象としている事態、設置された浄化槽が法定検査を受検しておらず適正に設置及び維持管理されているか確認ができていない事態が見受けられた。したがって、環境省において、設置した浄化槽の効果を早急に発現させるとともに、浄化槽が適正に維持管理されているか確認して、併せて浄化槽の使用開始期限等を要綱等に明記して、法定検査を受検しているか確認する体制を市町村が整備するよう指導するなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 38億4728万円)
海上自衛隊が部隊発注工事により取得した情報・通信設備等の財産について、部隊発注工事により新たに取得した財産を国有財産台帳等に記録して管理すべきであることについての認識が十分でなかったことなどのため、国有財産法又は物品管理法に従った国有財産台帳等への記録が行われていないなどの事態が見受けられた。したがって、海上自衛隊において、国有財産台帳等に記録されていない国有財産等を国有財産台帳等に正確に記録するために必要な措置を講じ、また、部隊発注工事により今後取得する財産について適切な管理を行うために国有財産台帳等への正確な記録が確実に行われる体制を整備する要がある。
(1件 指摘金額 12億9759万円)
平成20年10月1日に統合して株式会社日本政策金融公庫となる国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫は、それぞれの住宅規則等に基づき、所有住宅又は借上住宅を職員住宅として職員に貸与している。しかし、職員住宅の管理運営等が公庫ごとに行われていることなどのため、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫の所有住宅に1年以上の空室があるにもかかわらず、別途、借上住宅を職員に貸与している事態が見受けられた。したがって、農林漁業金融公庫及び中小企業金融公庫において、所有住宅に空室がある場合は当該所有住宅への入居を最優先することとして借上住宅の速やかな削減を図り、また、各公庫において、職員住宅の入居状況等の情報を共有するなどして各公庫が現在保有する所有住宅を全体で有効活用することを検討して、統合の効果の発現を期する要がある。
(1件 指摘金額 5668万円)
内閣府沖縄総合事務局は、沖縄振興計画推進調査委託費等により調査・検討業務を実施している。このうち委託契約により実施しているものについては、業務の実施過程を明らかにして、業務の完了後は精算報告書等に基づいて契約額の精算を行っている。一方、請負契約により実施しているものについては、委託契約と業務の内容及び調査方法に差異がないのに、業務の実施過程が把握されておらず、業務の完了後に契約額の精算が行われていない事態は適切とは認められない。したがって、内閣府沖縄総合事務局において、委託費により行う調査・検討業務の実施に当たっては、業務の実施過程を把握して、その実績に基づいて業務の完了後に契約額の精算を行う処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 8688万円)
テレビ会議装置について、平成14年の会計実地検査においてその利用が低調な事態等が見受けられたので、本院が指摘したところ、14年10月に総務省は事業主体に対して需要を的確に把握することを周知徹底するなどの改善の処置を講じた。しかし、その後の状況について検査したところ、これまでに整備されたテレビ会議装置の利用状況は全般的に極めて低調で事業目的が達成されていなかった。このため、テレビ会議装置の需要は限定的なものと認められ、テレビ会議装置の整備費を補助の対象とすることは適切とは認められず、総務省はテレビ会議装置の整備費を原則として補助の対象から除外するなどの処置を講じている。したがって、総務省において、これらの処置がより実効あるものとなるよう事業主体向け補助事業実施マニュアルを早急に改訂するなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 2億3229万円)
刑務所、拘置所等の刑事施設は、診療所等として被収容者に対する診療を行うために多額の医薬品を調達している。医薬品の調達に当たり、これを随意契約で行っていたり、取得請求書に商品名を記載して調達品目が限定されたりしていたために、調達額が割高となっている事態が見受けられた。したがって、法務省において、会計法令に基づき原則として一般競争入札による契約を行うとともに、医師が医療上の必要により特定の医薬品を使用する場合以外は、同等品を含めて医薬品を広く選定できる方法を採ることなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 1億3559万円)
国庫補助事業に係る下水道の管きょ築造工事におけるセグメントの材料単価の決定に当たり、特別調査を行うことにより製造原価等の調査が可能であり、実勢の価格により近い経済的なものとすることができるのに、事業主体である県市において、製造会社からの見積りを基に決定していて、材料費の積算額が過大となっている事態が見受けられた。したがって、国土交通省において、各都道府県等に対して、セグメントの材料単価の決定に当たっては、特別調査を活用するなどして、より実勢の価格に近づけるための検討を十分に行い、適切な積算を行うよう助言するとともに、この旨が各都道府県等管内の関係各機関等に周知徹底され、適切な工事費の積算が行われることの処置を講ずる要がある。
国土交通省及び各県は、地盤改良工事の設計に当たり、施工現場が民家に隣接するなど周辺環境等に配慮する必要がある場合に、地盤改良材に発じん抑制型のセメント系固化材を使用してスタビライザ等により地盤改良材と軟弱土を混合する工法で設計している。しかし、国土交通省が積極的な活用を進めている新技術の中には、発じん抑制型のセメント系固化材よりも安価な一般軟弱土用のセメント系固化材を使用しても、粉じんの発生を抑制できる移動型土質改良用機械による工法があり、この工法によると地盤改良工費が安価となる場合があるのに、経済比較等の検討を十分行っておらず、経済的な設計となっていない事態が見受けられた。したがって、国土交通省において、粉じんの発生を抑制する必要がある地盤改良工事の実施に当たり、工法の選定を適切なものとして経済的な設計を行うことなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 2750万円)
国土交通省は、港湾整備事業における港湾施設の設計等に先立って、国の直轄事業又は補助事業として、土質調査、測量等の調査等業務を実施している。調査等業務において調査技師が乗船する交通船等の借上費の積算に当たっては、国土交通省港湾局が制定した「港湾請負工事積算基準」等において、計2名の船員が乗船することとして算定することなどとされている。しかし、調査等業務においては、交通船等に実際に乗船している船員数は1名となっているものが多数を占めており、その主な作業内容は調査技師の指示に従って岸壁と海上の調査現場の間を移動するための操船作業となっていて、積算基準が実態を反映していない事態が見受けられた。したがって、国土交通省において、調査等業務で使用する交通船等について、作業の実態に合わせて積算基準を改め、国土交通省及び港湾管理者等が積算を適切に行うことができるよう処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 9910万円)
国土交通省及び各県は、トンネル工事における粉じん対策として集じん機を使用しており、集じん機の機種及び規格については、トンネルの規模等から処理容量を算出するなどして選定している。集じん機の機種にはフィルタ式と電気式があり、フィルタ式の集じん機を選定している工事の中には、損料が安価で電力使用量が少ないなどのため運転経費が安価となる電気式の集じん機を選定できるのに、経済比較等の検討を十分行っておらず、経済的な設計となっていない事態が見受けられた。したがって、国土交通省において、トンネル工事において使用する集じん機の機種及び規格の選定に当たり、近年の電気式集じん機の普及等を考慮するなどして、フィルタ式と電気式との比較検討を適切に実施して経済的な設計を行うことなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 1億8170万円)
防衛省は、全国に所在する部隊等の間でデータ及び音声通信を行うために、NTT各社が契約約款に基づき提供する専用サービスを利用しており、各自衛隊ごとにNTT各社から高額利用割引の適用を受けていた。しかし、専用サービスの高額利用割引制度においては、割引対象基本額のうち高額の部分ほど高い割引率が適用されることから、各自衛隊ごとに割引の適用を受けるよりも、防衛省全体で割引の適用を受けることとすれば、専用料をより節減することが可能であると認められる。したがって、防衛省において、防衛省全体でNTT各社から高額利用割引の適用を受けることとする要がある。
(1件 指摘金額 5780万円)
陸上自衛隊は、駐屯地における会計業務の効率化及び合理化を図るために、35駐屯地に所在する会計隊に会計業務システムを導入している。会計業務システムは、駐屯地に所在する会計隊が契約、支払等のデータを端末から入力して、機器に蓄積されたデータから、関係帳簿及び帳票を作成するものである。しかし、会計業務システムを使用して行うべき会計業務が同システムの運用及び管理のための要領に規定されていないことなどから、端末が会計業務に使用されていなかったり、データを端末から入力していないために機器にデータが蓄積されていなかったりなどしていて、会計業務システムが利用されていない事態が見受けられた。したがって、陸上自衛隊において、会計業務システムの機器についてその必要性の再検討を行い、陸上幕僚監部において、会計業務システムの運用及び管理のための要領に会計業務システムを使用して行う会計業務を明確に規定するなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 1億1400万円)
日本中央競馬会は、有料駐車場の運営に当たり、駐車場用地等を随意契約により関連公益法人に貸し付ける賃貸方式を一部を除いて採用している。関連公益法人が競馬会に対して支払う貸付料に比べて多額の駐車場利用料金を収受して収入としているのに、競馬会が有料駐車場用地等の貸付料を実情に沿って見直したり、駐車場内の車両整理等の業務を外部に委託することにより自ら運営を行う委託方式を採用したりすることについて十分な検討を行うことのないまま賃貸方式を続けている事態が見受けられた。また、駐車場の運営という業務内容からみて、関連公益法人と随意契約を締結する合理的な理由があるとは認められない。したがって、日本中央競馬会において、有料駐車場運営業務の実態、関連公益法人が収入としている駐車場利用料金、運営業務に要する経費を勘案して、賃貸方式による場合であっても競争契約として貸付料を見直したり、委託方式にする場合には競争契約によることとして、併せて駐車場利用料金を自らの収入としたりする処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 7億9163万円)
日本郵政株式会社は、マイクロソフト社製ソフトウェアの使用権を日本郵政公社から承継して自ら使用するほか、日本郵政グループ各社にも使用させている。これらの使用権の大半は、GEAと呼ばれる政府機関向けの購入方法によって購入されており、GEAには、購入したソフトウェアの新バージョンが通常3年間の契約期間中に発売された場合、これを使用する権利(SA)が含まれている。そして、SAを行使できる期間は使用権の契約更新により延長できるが、これに要する費用は使用権をGEAにより新規に購入するよりも安価となっている。しかし、日本郵政公社において、ソフトウェアの使用権の内容を十分に把握していなかったことなどのため、平成14年3月にGEAにより購入した使用権の契約期間が満了する17年3月に契約の更新を行わず、17、18年度に新規にGEAによりソフトウェアを購入したため不経済となっているなどの事態が見受けられた。したがって、日本郵政株式会社において、使用権の内容を十分に把握して日本郵政グループ各社にも周知を図るとともに、ソフトウェアを中長期的に使用した場合の経済性を検討する体制を整えるなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 9011万円)
独立行政法人農業生物資源研究所は、統合データベースシステムの運用支援業務等に係る労務費の積算に使用するシステムエンジニアの時間単価について、当該業務はすべて生命情報科学の高度な専門性を必要とするとして、市販の積算参考資料に掲載されている高度な専門性を必要としない業務を対象とした時間単価を用いないで、それより高い大手メーカー6社の技術者料金を平均した時間単価を使用していた。しかし、仕様書の内容には、生命情報科学の高度な専門性を必要とする業務内容のものがある一方、高度な専門性を必要としない業務内容のものも含まれており、このような仕様書の業務内容を十分に精査することなく積算していることは適切とは認められない。したがって、独立行政法人農業生物資源研究所において、仕様書の業務内容について十分に精査、検討した上で、業務の内容に適合した経済的な積算を行うよう処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 2093万円)
独立行政法人労働者健康福祉機構は、職員の通勤手当について、給与規程等に基づいて、1か月定期券の価額等を基にして支給している。しかし、国及び他の独立行政法人においては、経済的な6か月定期券の価額を基に通勤手当を支給しているのに、事務手続が煩雑となるなどの理由で、1か月定期券の価額等を基に通勤手当を支給している事態は適切とは認められない。したがって、独立行政法人労働者健康福祉機構において、給与システムの改修等の所要の準備を的確に進め、経済的な6か月定期券の価額に基づく通勤手当を支給することを確実に行う要がある。
(1件 指摘金額 3856万円)
独立行政法人都市再生機構は、管理している賃貸住宅等に緊急連絡員及び管理連絡員を配置しており、これらの連絡員が行う業務と連絡員を採用するなどの業務を緊急連絡員業務及び管理連絡員業務として、それぞれ随意契約により委託して実施している。委託業務の契約に当たり、連絡員を採用するなどの業務に係る委託先の人件費及び物件費の実態を調査して直接経費を算出することなく、連絡員の報酬額に経費率を乗じて得られた額を、連絡員を採用するなどの業務に係る経費として算定している事態が見受けられた。したがって、独立行政法人都市再生機構において、委託業務の契約における連絡員を採用するなどの業務に係る経費については、その業務の実態等を十分調査して、これらの結果に基づいた算定方法に改めるなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 2792万円)
7国立大学法人等は、職員への通勤手当を1か月定期券の価額を基に支給している。しかし、国及び大多数の国立大学法人等においては経済的な6か月定期券の価額に基づいて通勤手当を支給しており、1か月定期券の価額を基に通勤手当を支給している事態は適切とは認められない。したがって、7国立大学法人等において、6か月定期券の価額に基づいて通勤手当を支給する処置を講ずる要がある。
総務省は、地方団体に対して、市町村合併に係る財政需要額として、合併後のまちづくりのために都道府県が交付する補助金等の経費、市町村が合併準備のために必要とする経費及び合併関係市町村が合併市町村の一体性の速やかな確立を図るために必要とする経費に係る額などを地方団体から報告させて、その報告額の2分の1に相当する額等を特別交付税で措置している。この特別交付税の額の算定において、これら三つの経費に係る財政需要が適切に報告されていなかったり、それぞれ報告額が決算額を上回り多額の開差が生じたりするなどして、特別交付税が地方団体の財政需要の決算額に基づいて算定した金額と比べて過大に措置されるなどしている事態が見受けられた。したがって、総務省において、適正な財政需要に基づき特別交付税を交付できるようにするための規定を整備するとともに、地方団体に対して、事業費等を精査して可能な限り適切な報告額を報告して、報告後に報告額に変動が生じたものについてはその額を翌年度に報告するよう要請するなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 96億9389万円)
独立行政法人情報通信研究機構は、平成15年4月1日に通信・放送機構が基盤技術研究促進センターから承継した産業投資特別会計からの出資金188億6640万余円等を16年4月1日に承継している。承継した政府出資金等は、承継した株式処分業務及び債権管理回収業務に必要な資金に充てるべきものとされている。そして、株式処分業務は18年6月に終了して、債権管理回収業務についても承継時38億0360万円の貸付金元本残高が19年度末時点で5億2809万円まで減少している。このように承継した業務の規模が年々縮小して、出資金の額は承継した業務量に比べて過大となっていくことが明らかであるにもかかわらず、多額の出資金を投資有価証券の形で保有して承継業務の経常費用を大きく上回る財務収益を計上し続けている事態は、現下の財政状況等にかんがみると、国の資産の有効活用の面から適切とは認められない。したがって、総務省において、独立行政法人情報通信研究機構の通信・放送承継勘定における保有資金について、不要財産かどうかの見極めを行うなどして、出資金の額の適切な規模を検討して、出資金の減資を行うことにより生ずる資金の国庫返納を可能とする検討を行う要がある。
法務省が国有財産の取扱いに関して定めている訓令に規定されている登記の嘱託についてみると、訓令において、登記の嘱託に係る必要性や具体的手続が明確になっていなかったため、土地又は建物を購入、交換又は所管換により取得した場合や、借地に建物を新築したなどの場合に、登記の嘱託が行われていないなどの事態が見受けられた。したがって、法務省において、国有財産部局長が管理することになっている国有財産について、訓令に基づいた適切な登記の嘱託を行い、適正な管理を行えるよう、登記の嘱託に係る必要性や具体的手続を明確にする訓令の改正を行い、各国有財産部局長に対して改正後の訓令の周知徹底を図る要がある。
(1件 指摘金額 313億5052万円)
外務省、独立行政法人国際協力機構等の援助実施機関が行う政府開発援助について、〔1〕無償資金協力において、資材調達型の援助により相手国が建設した施設の安全性及び耐久性が損なわれていたり、我が国による改修は完了したが他の援助国等による改修が遅れていて、施設が十分に効果を発揮していなかったりしている事態、〔2〕円借款において、建設された施設の稼働実績が計画を大幅に下回っていたり、建設された施設が稼働していなかったりしている事態が見受けられた。これらは、相手国側の事情等もあるが、外務省及び独立行政法人国際協力機構においては、援助の効果が十分に発現するよう、資材調達型の援助については、相手国が行う工事の完成時に出来型の確認を行ったり、相手国の事業計画に対して多数の国等が関係する場合に相手国及び関係国との調整を綿密に行い、事業の早期完了に向け進ちょくが一層図られるよう努めたり、事後評価及び事後モニタリングで得られた教訓及び提言が十分活かされるよう積極的な事後監理に取り組んだりするなどの要がある。
林野庁は、林業及び木材産業経営の健全な発展等に資することを目的として、林業従事者等が林業経営の改善等のために必要とする資金の貸付事業を行う都道府県に対して資金の一部を国庫補助金として交付している。本件事業において都道府県の特別会計で多額の繰越金が発生して、財政資金が効果を発現することなく滞留している事態について、平成13年に、林野庁は本院の指摘を受けて、都道府県において資金を貸付需要に対応した適切な資金規模として、貸付けが見込まれない額を国へ自主納付できることとするなどの処置を講じている。しかし、その後も、多くの県において依然として資金が貸付需要に対応した適切な資金規模となっておらず、多額の繰越金を発生させている事態が見受けられた。林野庁は今回の本院の検査結果に基づいて、都道府県に対して、自主納付の検討対象とすべき額の算定方法についての指針を示すなどしている。したがって、林野庁において、都道府県に対して自主納付の検討対象とすべき額の算定方法についての指針の周知徹底を図るとともに、資金の運営状況についてより一層把握に努め、その状況に応じた的確な指導を行う要がある。
(1件 指摘金額 9億6528万円)
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構は、平成15年4月1日に新エネルギー・産業技術総合開発機構が基盤技術研究促進センターから承継した産業投資特別会計からの出資金183億1236万余円等を同年10月1日に承継している。承継した政府出資金等は、承継した株式処分業務及び債権管理回収業務に必要な資金に充てるべきものとされている。そして、株式処分業務は19年6月に終了して、債権管理回収業務についても承継時100億0465万余円の貸付金元本残高が19年度末時点で17億0085万余円まで減少している。このように承継業務の規模が年々縮小していることなどから、政府出資金の大部分を投資有価証券等の形で保有し続けている事態は、現下の財政状況等にかんがみると、国の資産の有効活用の面から適切とは認められない。したがって、経済産業省において、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の鉱工業承継勘定における保有資金について、不要財産かどうかの見極めを行うなどして、出資金の額の適切な規模を検討して、出資金の減資を行うことにより生ずる資金の国庫返納を可能とする検討を行う要がある。
石油石炭税等を財源として燃料安定供給対策及びエネルギー需給構造高度化対策を行っているエネルギー需給勘定において、剰余金が依然として高い水準で推移している。剰余金が生じている要因を分析したところ、主として、歳出における不用額等が要因になっていて、しかも、特定の費目において継続して多額の不用額が発生している状況が見受けられた。そして、過年度の実績を十分考慮しないまま予算額を見積もっていることなどにより、予算額と実績額との間でかい離が生じて不用額が継続して発生するなどしていて、エネルギー需給勘定で実施する事業に充てるために一般会計から繰り入れられるなどした財源が有効に活用されておらず、その結果、多額の剰余金が生じているものと認められる。したがって、経済産業省及び環境省において、エネルギー需給勘定の剰余金を極力減少させるよう、不用額の発生要因を見極めて、この要因が予算額と執行実績との継続的なかい離等に起因する場合は、歳出の見積りに当たり、それらを十分考慮した適切なものにするなどの要がある。
国土交通省は、シルバーハウジング・プロジェクトによる公営住宅整備事業を実施する地方公共団体に対して、高齢者の生活特性に配慮した公営住宅及び附帯施設の整備に要する費用について補助金等を交付している。附帯施設として整備した高齢者生活相談所及びLSA専用住戸の利用状況について、高齢者生活相談所221か所が平成19年度において十分利用されていなかったり、LSA専用住戸14戸が1年以上空き家となっていたりしている事態が見受けられた。したがって、国土交通省において、事業主体に対して、住宅供給者と福祉提供者が高齢者生活相談所の利用方法等について十分協議を行い、策定した事業計画に従って高齢者生活相談所の供給を行うよう周知徹底を図るとともに、高齢者生活相談所及びLSA専用住戸を有効に利活用するための方策を示すなどの要がある。
(1件 指摘金額 5億0504万円)
国土交通省の平成19年度のタクシーの使用に関して、タクシー乗車券に使用時間等の記入欄がなかったり、タクシー会社から使用済みタクシー乗車券が返却されなかったりして、タクシー乗車券の管理及び使用の確認が十分に行われていない事態が見受けられた。20年度以降は20年3月に発した通知等に基づいたタクシー乗車券の管理等が行われているが、国土交通省において、タクシー乗車券の記入欄が同省が例示している記入事項に対応していない場合の記入方法等を明記したり、使用済みタクシー乗車券が返却されない場合の使用金額等の確認が確実にできる方策を検討したりして、より適切な管理等を行う要がある。
道路整備特別会計における支出の状況について、連絡用車両の車両管理業務の発注において、長期にわたって指名業者が特定の少数の業者で占められているなどしていたり、広報広聴業務の発注において、応札(応募)者数が限られることとなるなど契約方式の見直しの効果が十分現われていないなどしていたり、観光資源の活用等地域に密着した調査研究業務において、成果物等をホームページ等により地域に周知するなど、より効果的な取扱いとなっていなかったりしている事態が見受けられた。また、公益法人に発注する調査研究業務等において、公益法人が外部の業者に業務の一部を再委託している契約があるが、これらの中には再委託の承認申請を行っていなかったり、成果物の照査が十分でなかったりしている事態が見受けられた。したがって、国土交通省において、道路関係業務の適正かつ効率的な予算の執行を図る要がある。
国土交通省、警察庁、総務省、国税庁等は、自動車の検査・登録、自動車保管場所証明の申請等の手続を関係各機関に赴いて行う申請者等の負担を軽減して、行政事務の効率化を図るために、平成17年12月から、インターネット上で一括して手続を行うことのできるワンストップサービスの供用を開始している。しかし、自動車の購入時にサービスの利用を選択することで代理申請手数料を節減し得ることが購入者に十分周知されていないこと、自動車販売事業者等はサービスを利用することで登録予定日を想定しづらくなることなどから、サービスの開発費及び維持関係費用が多額に上っているにもかかわらず、サービスの利用率が低迷していてサービスの効果が十分発現していない事態が見受けられた。したがって、4省庁において、自動車の購入者へサービスの周知を図り、利用者等の意見等を的確に捉えた方策を講じて、システムの改善を図るなどして利便性を向上させるとともに、その利用状況等を勘案して、システム機器等を的確な性能及び構成としたり、深夜の時間帯等における運用休止時間を適切に設定したりするなどして、維持管理費用の節減を図るなどの要がある。
国立大学法人東北大学の東北大学病院において、会計規程等に定められた契約事務を行うことなく工事を発注して、工事完了後に予定価格を設定したり、契約書を作成したりするなどしていて、会計規程等が遵守されていない事態が見受けられた。このことから、病院の内部統制等の状況についてみたところ、内部牽(けん)制が十分機能していなかったり、各監査機関等において内部統制についての監査が適切に行われていなかったりするなどしていた。したがって、国立大学法人東北大学において、内部統制等が十分機能するよう、各監査機関等が、個別の契約事務等についても厳正に監査するなど的確な監査を実施していくなどの要がある。
(1件 指摘金額 2310万円)
株式会社かんぽ生命保険における保険金等の支払について、被保険者が死亡した後の年金の速やかな支払停止や支払事由が発生している保険金等に係る適切な請求勧奨が行われておらず、過払いや未払が生じている事態が見受けられた。したがって、株式会社かんぽ生命保険において、年金の過払いを防止するために、死亡保険金の支払時において同一被保険者の年金保険契約を調査して年金保険契約に係る死亡通知書の提出を受けるなど、年金の速やかな支払停止を行うことができる事務手続を検討したり、保険金等の未払を減少させるために、保険金の支払時において同一被保険者のその他の保険契約を調査することや死亡還付金について支払案内書を送付することなど、情報システム上のデータを基に効果的な請求勧奨を行うことができる事務手続を検討したりなどする要がある。
財政安定化基金は、都道府県が管内の市町村の介護保険財政の財源に不足が生じた場合に資金の貸付け・交付を行うために設置するもので、国は、その造成額の3分の1を拠出することとなっている。検査を実施した24都道府県における造成額に対する貸付け・交付額の割合は、第1期は0.0%から88.0%、第2期は0.0%から76.6%と都道府県間で相当のばらつきが生じていて、第1期では17都道府県、第2期では19都道府県で、実際の貸付け・交付額の割合が30%を下回っているなど、基金の保有額は多くの都道府県で基金需要に対応した規模を大きく上回るものとなっている。しかし、現行制度においては、基金規模に余裕があっても、拠出者に返還するなど基金規模を適切な規模に調整する仕組みとなっていないため、このまま推移すると、国等が拠出した財政資金が効果を十分発現することなく保有されることとなる。したがって、厚生労働省において、介護保険における財政安定化基金を適切な規模に保つために、都道府県が基金の一部を拠出者に返還することが適切と判断した場合に、基金規模を縮小できるような制度に改めるなどの処置を講ずる要がある。
[本件については、会計検査院法第30条の2の規定により、平成20年5月21日に、国会及び内閣に報告している。]
農林水産省は、農業水利システムを担い手中心の省力的システムに再構築することが必要であるとして、新農業水利システム保全対策事業の一環として、農業水利システム保全計画策定事業を実施している。この事業において策定された農業水利システム保全計画が、合理的な水利用等の実現に資するものとなっているかなどについてみたところ、農業水利施設の機能診断等により判明した制約要因及びその除去の手段を十分に反映したものとなっていないなどの事態が見受けられた。したがって、農林水産省において、保全計画を適切なものに修正させるなどするとともに、計画策定事業の事業効果が発現するよう、事業主体に対して計画策定事業の趣旨の周知徹底及び指導を行い、事業主体が策定した保全計画に対する審査を確実に行うなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 8億3526万円)
農林水産省は、農業集落におけるし尿、生活雑排水等の汚水を処理する施設を整備する農業集落排水事業を実施する市町村等に対して、国庫補助金等を交付して事業の推進を図っている。市町村等が事業計画策定の際に行う合併処理浄化槽との経済比較についてみたところ、年経費の算出に用いる耐用年数として、地域の実情等特段の事情がないにもかかわらず法令等に基づく年数を用いているなどのため、農業集落排水施設に比べて合併処理浄化槽の経済性がその使用実態にかかわらず低く評価されるものとなっている事態が見受けられた。したがって、農林水産省において、都道府県に対して、耐用年数として使用実績による年数を用いるなどして年経費の算出を行うことについて、事業主体に周知徹底を図ることなどについて助言するとともに、経済比較が適切に行われているかなどの点について十分に審査を行うなどの処置を講ずる要がある。
経済産業省は、地域の新産業の創出に貢献しうる製品等の開発を目的とした地域新生コンソーシアム研究開発委託事業を実施している。委託事業終了後にコンソーシアムの構成員が行う製品等の開発のため、委託事業で取得した物品が有効活用されているかを検査したところ、物品の改造等が必要なのに原状のまま使用されていたり、製品開発等に有効活用するため買取りの希望があるのに売却されていなかったりなどしていて、物品が十分有効に活用されていない事態が見受けられた。したがって、経済産業省において、物品の改造等の承認や売却処分等を円滑に行うことにより、これらの物品が事業の目的に照らして十分有効に活用されるよう処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 13億4381万円)
国土交通省は、港湾整備事業等に係る工事の監督等の業務を行うために監督測量船を所有している。監督測量船には年間運航日数の少ないものがある一方、同じ目的で使用するために船舶等を借り上げている用船契約の中には年間運航日数の多いものもある状況となっていて、監督測量船が効率的に運用されていないのに、各港湾事務所等の業務量、業務内容等に応ずるなどして、監督測量船の配置を計画的に見直すことなどが十分に行われていない事態が見受けられた。したがって、国土交通省において、監督測量船の全国的な配置を見直すことを含めた運用等に関する基本的な方針を策定するなどの要がある。
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構は、産学官の連携による共同研究を行うために整備された共同研究施設及び共同研究機器を保有して、運営している。しかし、共同研究施設の運営、利用が設置目的に沿って十分に行われていなかったり、共同研究機器の利用状況の把握が十分に行われていなかったりしており、また、機構本部がそのような状況を十分に把握しておらず、適切な対応等を執っていない事態が見受けられた。したがって、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構本部において、共同研究施設の効果的、効率的な活用を図るための方針や計画の策定を行い、各研究所の共同研究施設の運営状況や共同研究機器の利用状況を把握する体制を整備するとともに、各研究所において、研究機器の利用状況等を把握して、それを踏まえて適切に利用促進を図る体制を整備することなどの処置を講ずる要がある。
(1件 指摘金額 12億9025万円)
独立行政法人造幣局は、独立行政法人への移行時に、造幣局特別会計で保有していた宿舎、庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地を承継しているが、宿舎用地の有効な利用が十分に図られていなかったり、宿舎の入居戸数が人員削減や宿舎の老朽化等により減少していたり、庁舎分室等の利用人員数が大幅に減少したりしている状況が見受けられた。したがって、独立行政法人造幣局において、老朽化が進んでいたり、入居率が低くなっていたりしている宿舎の建物及びこれらに係る用地については、具体的な廃止・集約化計画を作成するとともに、利用状況が著しく低迷している庁舎分室等の建物及びこれらに係る用地については、具体的な廃止・処分計画を作成して、これらの計画で保有の必要のなくなった資産については、確実に国庫への返納を行えるよう備える処置を講ずる要がある。
「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」として計55件掲記した。
年金記録確認第三者委員会の運営経費に係る経理について、第三者委員会を年度途中に急きょ設置した際にその運営経費に係る処理方針等がなく、経費を適正に経理して支弁するための適切な対応が速やかに執られなかったことなどのため、本来経理するための「目」ではない「目」から支出したとして経理しており、財政法の規定に照らして適切なものとなっていなかった。
(1件 指摘金額 8億0982万円)
国際機関の信託基金の閉鎖に伴う拠出残余金の返還等について、具体的な事務手続を定めていなかったことなどのため、国連からの信託基金の閉鎖に係る照会等を長期にわたり回答しないままにしていたり、信託基金が閉鎖状態になっていたことを把握していなかったりしていて、拠出残余金の有効な活用が図られていなかった。
(1件 指摘金額 3億9751万円)
中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却又は税額控除の適用に当たり、納税者が申告において適用対象に該当しない医療機器と思料される資産の名称を明細書に記載するなどしているのに、税務署等において医療機器が適用対象資産とならないことについて理解や認識が不足していたり、適用対象資産についての審査が十分に行われていなかったりなどしていたため、誤って税の軽減が行われて、納税者38人からの徴収額が不足していた。
(1件 指摘金額 1億0460万円)
合同宿舎における駐車場の使用料の徴収に当たり、駐車場の専用を開始した被貸与者等から貸与申請書が提出されていない場合に駐車場の専用状況を把握、確認する体制が整備されておらず、貸与申請書の提出の有無を確認していないなど駐車場の貸与事務が適切に行われていなかったため、使用料が適正に徴収されていなかった。
(1件 指摘金額 513万円)
日本語教育機関の質的向上の推進に資する事業の実施に当たり、日本語教育機関の審査を行う審査委員会の実施経費は、日本語教育機関から徴収する審査料収入で賄うことができるのに、これを補助対象とする必要があるかどうかの検討を行っていなかったことなどのため補助の対象としていた。
(1件 指摘金額 5184万円)
アジア太平洋地域世界遺産等文化財保護協力推進事業を請け負わせて実施するに当たり、仕様書の作成及び予定価格の算定段階においては研修の開催期間や研修生の使用言語等が確定していないことなどから、契約金額と実績額に大きなかい離が生ずることが十分予測されるにもかかわらず、このことを調査・把握せずに確定契約として締結していたため、実績額が契約金額を下回った場合にもその差額が精算されていなかった。
(1件 指摘金額 2623万円)
社会保険病院等の経営受託団体が行政財産である病院の建物等を使用させて、食堂等6施設等を第三者に委託して運営させているにもかかわらず、社会保険庁が病院内の施設等の運営についてどのような場合に使用許可が必要となるかを具体的に定めて社会保険事務局等に周知していなかったことなどのため、社会保険事務局等において、これらの施設等について使用許可を行っていなかったり、食堂の運営に際して厨(ちゅう)房部分のみを使用許可の対象としたりしていて、適正な使用料を徴収していなかった。
(1件 指摘金額 1億4555万円)
生活保護事業の実施に当たり、課税調査の実施時期等を明確に定めていなかったり、査察指導員等の点検体制が十分でなかったりなどしていたため、課税調査が速やかに行われなかったり、その後の事務処理が適切でなかったりなどしていて、被保護者の未申告の就労収入等が適正に収入認定されておらず、生活保護費負担金の交付が過大となっていた。
(1件 指摘金額 6億1105万円)
国民健康保険の療養給付費負担金の交付に当たり、退職被保険者及びその被扶養者に係る医療費については負担金の交付の対象となっていないが、退職被保険者の被扶養者の資格取得に係る届出を省略した適用についての制度が整備されていなかったことなどのため、保険者である市区において、退職被保険者の被扶養者の適用が的確に行われておらず、負担金が過大に交付される結果となっていた。
(1件 指摘金額 18億8219万円)
[本件については、会計検査院法第30条の2の規定により、平成20年7月25日に、国会及び内閣に報告している。]
労働者災害補償保険給付を不正受給した職員に対する返還請求に当たり、労働者災害補償保険法に基づく返還請求のみを行う取扱いとしていたことなどのため、不正受給が発覚した時点において既に2年が経過していたことなどから同法に基づく費用徴収請求権が時効消滅しているとして、民法の損害賠償請求権に基づく返還請求を行っていなかった。
(1件 指摘金額 4702万円)
民間教育訓練機関等に委託して実施する職業訓練に係る委託費のうち、訓練修了者等の就職率に応じて支給される就職支援経費の算定に当たり、職業訓練の目的である職業の安定等の点からの検討が十分でなく、就職者等の範囲については雇用形態及び雇用期間の定めの有無又は長短を問わないこととして就職者等に短期雇用者を含めていたため、就職支援経費の算定方法が適切なものとなっていなかった。
(1件 指摘金額 7億4291万円)
国民年金・健康保険及び厚生年金保険の共同処理業務の請負契約に係る予定価格の積算に当たり、経済的な積算となるような統一的な取扱いを示すなどの指導が十分でなかったことなどのため、作業時間に対する手作業での業務割合を勘案せずに、すべての業務従事者が電子計算機等の操作等を行うとして人件費単価を決定するなどしていて、人件費の積算額が過大となっていた。
(1件 指摘金額 2億5056万円)
地域バイオマス利活用交付金に係る施設整備事業等において、事業実施の確実性に係る審査等の具体的な方法が示されておらず、事業実施計画作成時における関係者に対する意向調査の実施状況等に係る審査等が必ずしも十分行われていなかったことなどから、事業実施計画で予定したバイオマス資源の受入量が確保できずに運営初年度の利用率が低調となっていた。
(1件 指摘金額 15億1719万円)
森林環境保全整備事業等の実施に当たり、森林組合等が事業主体として実施する受託造林の採択に係る判断基準が明確に定められていなかったことなどのため、森林所有者が、所有する森林に係る作業のみを自ら実施していて、他の森林所有者が所有する森林に係る作業を全く実施しておらず、森林組合等により効率的・計画的に事業を実施するという受託造林の趣旨に沿わないものとなっていた。
(1件 指摘金額 3億5880万円)
沿岸漁業改善資金の貸付けにおいて、的確な審査及び確認を十分に実施していなかったため、借受者が貸付対象となった機器等をほとんど沿岸漁業以外の経営に使用していたり、また、貸付対象の範囲を明確に示していなかったため貸付けの対象とならない周辺機器等を貸付対象事業費に含めていたりなどしていた。
(1件 指摘金額 4110万円)
国営土地改良事業所等において使用する固定電話の通話料について、各種の割引制度等を利用することにより通話料の節減を図ることが可能であるにもかかわらず、これに対する認識が十分でなかったことなどのため、これらの制度等を適切に利用することなく割高な通話料を支払っていた。
(1件 指摘金額 1735万円)
農林水産省所管の委託事業の実施に当たり、委託費の区分経理等について委託契約書に明示していなかったり、委託費の区分経理等の必要性について都道府県に対して周知徹底していなかったりしていたことなどのため、委託費について区分経理が行われていないなどしているのに、このような会計経理の実態を十分把握することのないまま委託費の交付、精算等を行っていた。
(1件 指摘金額 2億1406万円)
政府所有米穀の委託変形加工において、近年の加工数量の増加に伴って、加工会社の生産性が向上しているにもかかわらず、その把握が十分でなかったため、基準変形加工単価及び指示歩留りを改定していなかったり、基準変形加工単価に加算する額を適切に算出しておらず、加算額が過大に算定されたりなどしていた。
(1件 指摘金額 5621万円)
牛に係る家畜共済事業の運営に当たり、農林水産省が共済金の算定基礎となる基準単価の設定方法を要領等に適切に定めていなかったことなどのため、農業共済組合連合会が著しく低額な基準単価を設定していて、共済金が過大に算定されていた。
(1件 指摘金額 7171万円)
被災職員に対する離職後における休業補償等の支給に当たり、支給額の算定の対象となる通院時間について、取扱いを明確にしていなかったり、審査、確認が十分でなかったりなどしていたため、実態に基づく通院時間とは異なる時間数を用いて休業補償等の額を算定して支給していた。
(1件 指摘金額 9759万円)
国営公園における臨時駐車場の占用許可に係る土地使用料の算定に当たり、臨時駐車場の運営に係る収支状況を把握していなかったことなどのため、占用許可の相手方において収入が支出を大幅に上回っているのに、土地使用料の徴収額に反映されていなかった。
(1件 指摘金額 1870万円)
国土交通省所管の委託事業の実施に当たり、委託費の区分経理等について委託契約書等に明示していなかったり、委託費の区分経理等の必要性について都道府県に対して周知徹底していなかったりしていたことなどのため、委託費について区分経理が行われていないなどしているのに、このような会計経理の実態を十分把握することのないまま委託費の交付、精算等を行っていた。
(1件 指摘金額 5721万円)
まちづくり交付金事業の実施に当たり、交付要綱等で交付対象の範囲に係る明確な基準等を示していなかったことなどのため、市町村の間で交付対象事業の適否に対する理解が異なり、交付対象の範囲に差異が生ずるなどしていて、まちづくり交付金事業の公平かつ効率的な執行が確保されないものとなっていた。
まちづくり交付金等による事業の実施に当たり、国土交通省において、土地開発公社等が先行取得した用地を地方公共団体が取得する場合の交付対象事業費の範囲についての検討が十分でなかったなどのため、地価が下落した際の差額等を国が負担する必要がないのに、その差額等を交付対象事業費に含めていて、交付金が過大となっていた。
(1件 指摘金額 28億1274万円)
高速道路料金を割引する社会実験に伴う高速道路株式会社の減収分を補てんする国の負担額の算定に当たり、社会実験の料金割引に誘発されて一般道路から高速道路に乗り換える車両により交通量が増加することが想定されるのに、これを考慮することなく、社会実験がなかった場合に想定される料金収入の算定を行っていたため、負担額が過大となっていた。
(1件 指摘金額 3億2301万円)
工事等の入札において談合等の不正行為を行った受注者に対して、請負代金額等の一定割合に相当する額を違約金として支払わせる違約金条項について、損害の速やかな回復に資するための見直しがより重要であることについての認識が十分でなかったことなどのため、課徴金減免制度の適用を受けて課徴金の納付を免除された事業者との契約については、違約金条項に基づく速やかな損害の回復ができない状況となっていた。
[本件については、会計検査院法第30条の2の規定により、平成20年7月25日に、国会及び内閣に報告している。]
道路管理データベースシステムのデータ更新業務の実施に当たり、システムに登録する対象を明確にしていなかったことなどから、国道事務所等で管理している道路管理に必要な電気通信設備が登録されず、道路管理データベースシステムが効率的、効果的に運用されていなかった。
航空交通管制機器等に係る保守業務費の積算に当たり、拠点空港ごとに保守請負を契約しているのに、労務単価について地域ごとに設定せずに全国で一律の単価を使用して積算していたため、保守業務費の積算額が過大となっていた。
(1件 指摘金額 3480万円)
航空管制用レーダーの定期整備請負契約における部品材料費の積算に当たり、定期整備において同一規格の部品が多数交換されているのに、部品の積算単価を統一的かつ適正に設定する仕組みを構築していなかったことなどのため、地方航空局等の間で積算単価に開差が生じていて、部品材料費の積算額が過大となっていた。
(1件 指摘金額 2234万円)
陸上自衛隊の給食の実施に当たり、糧食費については配賦予算額等と前年度繰越在庫の調達額との合計額の範囲内であれば総使用可能額を超えても使用できると誤解していたことなどのため、定額管理が適切に行われておらず、総使用可能額を超過して糧食費を使用していた。
(1件 指摘金額 5億1121万円)
海外を納地とする艦船用燃料油の調達において、外国為替取引の実態や諸費用の取扱いについての認識等が十分でなかったことなどのため、契約相手方の取引の実態に応じた為替レートを適用して精算する仕組みが十分でなかったり、入札時等において為替レートの条件を入札予定者に示していなかったために契約の透明性及び競争性が確保されていなかったり、諸費用について実績額を証する書類の提出を求めないまま支払額を確定していたために価格の適正性を担保することが困難となっていたりしていて、為替レートや諸費用の取扱いが適切なものとなっていなかった。
航空自衛隊が調達している救難機等搭載用の救難火工品等の管理・運用に当たり、補給処で保管中に有効期限が超過した救難火工品等を救難隊等が訓練用として使用するために払い出す手続が定められていなかったことなどのため、供用先の救難隊等は有効期限が超過したものも訓練用として引き続き使用しているにもかかわらず、補給処で保管中のものを廃品としていて、救難火工品等が効率的に運用されていなかった。
(1件 指摘金額 2901万円)
昭和63年度から用地の取得等を開始した送信所の建設事業について、地元の反対などのため建設のめどが立たないのに、地元の理解を得て送信所の建設を行うとの方針を見直さなかったことなどのため、取得等した用地が長期間にわたり遊休していて、投資効果が発現していなかった。
(1件 指摘金額 36億2661万円)
住宅防音工事の助成事業の実施に当たり、審査体制が十分でなかったことなどのため、防音工事の直前に助成対象となる住宅に転入した者が防音工事実施期間中に直前転入の前と同じ住宅に転出しているなどの事態が多数見受けられ、補助対象居室数を増やすために意図的に直前に転入を行っている補助事業者等が存在する可能性を排除し得ないなど、住宅防音工事の助成事業が適切に実施されていなかった。
信用保証協会の債務保証の引受限度額を増額する変更契約において、信用保証協会の債務保証の実績額が引受限度額を超える前日まで効力発生日をそ及させるなどしていたのに、信用保証協会の引受限度額に対する債務保証の実績額の状況を各月末時点でしか把握していなかったことなどのため、実績額が引受限度額を超えている期間に保険を引き受けていた。
(1件 指摘金額 119億6274万円)
駅改良工事に使用する土留仮設鋼材の材料費の積算に当たり、会社内において、鋼材の統一的な積算の運用がなされていなかったため、埋殺し鋼材について中古品の使用を考慮しなかったり、引抜き鋼材について賃料による積算を行わなかったりしていて、材料費の積算額が過大となっていた。
(1件 指摘金額 1990万円)
高機能舗装工事における排水桝(ます)の改良及び突起型路面標示の設置について、標準的な仕様及び仕様を反映した積算の基準を定めていなかったなどのため、仕様及び施工単価に事務所等ごとの差異が生ずるなどしていて、適切かつ経済的に実施されていなかった。
インキ用材料の購入に当たり、契約の相手方が製造会社に製造委託等しているのに、製造会社と直接契約することを長期間にわたって検討することなく、契約を継続していたため、契約金額が過大となっていた。
(1件 指摘金額 2892万円)
専門家等の派遣手続を処理するための派遣システムの開発に当たり、必要な仕様が基本設計書に記載されているか十分確認を行っていなかったことなどのため、システムを改修しなければならなくなるなどしており、改修に伴う追加的な費用や新たな開発費用が多額に上っていて、同システムの開発が経済的、効率的なものとなっていなかった。
(1件 指摘金額 9774万円)
広報誌の日本芸術文化振興会ニュースの調達に当たり、作成の実態等からみて、同誌を振興会自らが発行することとした上で、印刷・製本業務については業者に請け負わせるなどする必要があったのに、経済的な調達を図る認識が十分でなかったため、発行者の財団法人から定価で購入していて、経済的な調達となっていなかった。
(1件 指摘金額 1763万円)
[本件については、会計検査院法第30条の2の規定により、平成20年7月25日に、国会及び内閣に報告している。]
工事等の入札において談合等の不正行為を行った受注者に対して、請負代金額等の一定割合に相当する額を違約金として支払わせる違約金条項について、損害の速やかな回復に資するための見直しがより重要であることについての認識が十分でなかったことなどのため、課徴金減免制度の適用を受けて課徴金の納付を免除された事業者との契約については、違約金条項に基づく速やかな損害の回復ができない状況となっていた。
[本件については、会計検査院法第30条の2の規定により、平成20年7月25日に、国会及び内閣に報告している。]
自動車運行管理業務契約等における労務費の積算に当たり、給与月額の算出の基となる実労働時間の取扱いに対する認識及び健康保険料等の事業主負担額の算出についての理解が十分でなかったため、休憩時間を含めずに算出した時間単価に休憩時間を含めた業務従事時間を乗じて給与月額を算出したり、賞与に係る健康保険料等の事業主負担額を重複して計上したりしていて、労務費の積算額が過大となっていた。
(1件 指摘金額 8557万円)
一般競争契約によるリース契約の締結に当たり、リース契約の入札前に、納入業者及び調達価格を見積合わせによりあらかじめ決定していたため、公正性及び透明性が確保されておらず、競争の利益が十分に享受できない事態となっていた。
(1件 指摘金額 5億0721万円)
法人登記に係る登記事項証明書の交付の請求に当たり、法務省オンライン申請システムを利用して行うと、窓口での交付の請求を行うのと比べて手数料が安価となるが、同システムの利用についての検討が十分でなかったため、同システムの利用が可能であったにもかかわらず、窓口での交付の請求を行っていて、手数料の支払が不経済となっていた。
(1件 指摘金額 2923万円)
職員への通勤手当の支給について、国及び大多数の国立大学法人等が、経済的な6か月定期券の価額を基に通勤手当を支給しているのに、これに対する認識が十分でなく職員給与規則等を見直していなかったため、1か月定期券の価額を基に通勤手当を支給していて、通勤手当の支給が不経済となっていた。
構造物点検業務における大型橋りょう点検車の運転経費の積算に当たり、経済的な積算の検討が十分でなかったことなどのため、大型橋りょう点検車の仕様を踏まえれば2作業班で作業を行うことができるのに、積算基準において1作業班による作業を前提とした日業務量しか設定していなかったことから、運転経費の積算額が過大となっていた。
(1件 指摘金額 9255万円)
高速道路の清掃業務費の積算に当たり、作業の実態等に適合した積算を行うための検討が十分でなかったことなどのため、清掃作業員の平均労務単価が軽作業員の労務単価と同程度の水準であるのに、普通作業員の単価を採用していて、積算額が過大となっていた。
(1件 指摘金額 3464万円)
複線区間での踏切除雪作業において、安全を確保するための見張業務に専念する列車見張員の配置に当たり、示方書等の遵守を保線所等及び除雪業者に対して十分に周知徹底していなかったことなどのため、示方書等に定められた列車見張員を上下線それぞれに適切に配置しておらず、契約が示方書等に基づき十分に履行されていなかった。
(1件 指摘金額 1億8160万円)
回収したADSLモデムを再利用できるか否かを判断するための利活用判断基準や、再利用できる場合に行うクリーニング作業等の業務仕様書が明確になっていなかったため、部品交換をすれば再利用できるADSLモデムを廃棄して、新規購入していた。
空港施設の維持管理等に係る契約の実施に当たり、競争性を確保することの重要性についての認識が十分でなかったことなどのため、旅客ターミナルビルの清掃等の業務について、仕様書又は作業マニュアル等を整備することなどにより他の業者でも履行できるものであるのに、契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして随意契約を締結していて、競争性が確保されていなかった。
(1件 指摘金額 14億8857万円)
本院は、昭和21年度から平成18年度までの決算検査報告に掲記した不当事項に係る20年7月末現在の是正措置の状況について検査を行った。
検査の結果、是正措置が未済となっているものは29省庁等における465件131億8040万余円であり、このうち金銭を返還させる是正措置を必要とするものは28省庁等における462件130億7878万余円となっている。
是正措置が未済となっているものの中には、債務者等の資力が十分でなかったり債務者等が行方不明であったりしていることなどのために、その回収が困難となっているものも存在するが、省庁等において適切な債権管理を行うことなどにより、是正措置が適正かつ円滑に行われることが肝要である。
本院は、是正措置が未済となっているものの状況について今後とも引き続き検査していくこととする。
本院は、平成14年度から18年度までの過去5か年の決算検査報告に掲記した本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項に係る改善の処置の履行状況について検査を行った。
検査の結果、改善の処置が一部履行されていなかったものが7件あり、このうち、特に、2件については、不当事項として掲記した。
改善の処置が一部履行されていなかったものについては、関係省庁等において当該改善の処置について更なる周知徹底を図るなどして、当該改善の処置が確実に履行されることが肝要である。
本院は、平成19年度決算検査報告に掲記したものも含め、改善の処置の履行状況を継続して検査していくこととする。
会計検査院法第30条の2の規定により国会及び内閣に対して報告したものは7件である。このうち、「第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等」にその概要を記載したものは、「第3章 個別の検査結果」に掲記した5件(注)を除く次の2件である。
最高裁判所及び法務省が、裁判員制度広報の一環として実施したフォーラム等において、運営担当の新聞社が人材派遣会社に金銭を支払うなどして参加者を募集していたり、最高裁判所が契約書未作成の間に契約を履行していたりするなどの事態が発覚したことを踏まえて、裁判員制度広報に係る企画競争による随意契約について検査を実施した。
検査したところ、〔1〕検査した範囲では最高裁判所又は法務省が新聞社を通じて不適切な募集に係る経費を負担している事態は見受けられなかった。〔2〕最高裁判所において、事業の実施を先行させて、事後に契約書等の作成を行うなど会計法令に反する処理が14件のすべての契約で行われていた。法務省において、平成17年度の契約の中に競争入札が可能であるものが見受けられた。最高裁判所及び法務省において、業者選定に係る審査基準の設定等が区々となっているなどしていたり、予定価格の算定に当たり複数の者からの見積書の徴取が十分でなかったりしていた。また、最高裁判所において、積算方法が統一されていなかったり、積算誤りがあったり、積算が実態を反映していなかったりなどしていた。〔3〕最高裁判所において、契約後の内容変更等が適切に契約変更に反映されていない事例や、仕様が明確でないまま検査調書を作成している事態、監督と検査の職務が明確に区別されていない状況が見受けられた。また、制作物がほとんど使用されていないものも見受けられた。〔4〕最高裁判所において速やかに仕様書を確定させる体制となっていなかったり、内部牽制が機能していなかったりしていた。〔5〕企画の実施に当たり、最高裁判所と法務省の間でより一層の連携をとることが可能な状況が見受けられた。
したがって、最高裁判所においては予定価格の算定を含めて適切な事務処理を行う必要がある。また、法務省においては引き続き、企画競争による随意契約の手続や予定価格の算定等について、競争性、透明性の確保に向けた取組がなされる必要がある。
本院としては、裁判員制度の実施に向けて、広報業務がより重要性を増していくことにかんがみて、改善策が確実に実施されているか確認していくとともに、裁判員制度広報について引き続き検査していくこととする。
近年、国の機関等が発注する工事や物品の購入、役務の提供等において、談合等が数多く発生している状況にかんがみて、国及び国が資本金の2分の1以上を出資している法人における談合等に係る違約金条項の導入状況等について会計実地検査を行った。
検査したところ、〔1〕談合等が発生してその事実が確定するなどした場合は、契約相手方は違約金を支払わなければならないとする違約金条項の導入等の状況については、全部又は一部の契約種類についてこれを導入していない機関がある。また、違約金条項に係る請求条件が平成17年4月の独占禁止法の改正に対応したものとなっていないことなどにより、課徴金の納付命令が行われない場合などには、基本的に違約金の支払を受けられないことになるものがある。〔2〕違約金等の請求状況等については、談合事件が発生していた事実を把握しておらず談合等により生じた損害が回復されていないものがある。また、違約金条項が付されていない契約は、違約金条項が付されているものに比べて、損害の回復に時間を要している状況である。
したがって、違約金条項を導入していない機関においては、適切に違約金条項を導入することが必要である。また、違約金条項に規定する内容については、談合等の発生に対応して的確に違約金条項を適用し、損害の回復を行うことができるものにすることが必要である。さらに、談合事件が発生していた事実を適時適切に把握するとともに、違約金条項が付されていない契約等で、談合等により生じた損害の回復がなされていない契約については、早期の損害回復に努めることが必要である。
本院としては、今後とも違約金条項の導入及び見直しの状況並びに談合等により生じた損害の回復状況等について引き続き注視していくこととする。
国会から国会法第105条の規定による会計検査の要請を受けて検査を実施し、会計検査院法第30条の3の規定により検査の結果を報告したものは次の6件である。
本院は、参議院からの検査要請を受けて、平成19年10月に、各府省等が締結している随意契約に関し会計検査の結果を報告した。そして、同報告において引き続き検査を実施することとした各府省等における随意契約の見直し状況の検証を中心に、契約事務が適切に行われ、公正性、競争性及び透明性が確保されているかなどについて会計実地検査を行った。
検査したところ、〔1〕随意契約の割合は減少しているが、競争契約や企画随契における1者応札(応募)の割合が増加しており、また、競争契約の1者応札の平均落札率は2者以上応札を上回っていた。〔2〕随意契約から競争契約等に移行し1者応札(応募)となっている契約等の中には、競争性の確保に関して検討の必要があったものなどが見受けられた。〔3〕公益法人を相手方とする契約については、1者応札(応募)となっている契約の割合が契約全体でみた場合より高くなっていた。〔4〕契約の監視を行う第三者機関については審議の概要をホームページ上に公表していない省庁があるなどしていた。〔5〕所管府省退職者の再就職者が在籍している随契先公益法人は、そうでない法人に比べ、1法人当たりの随意契約件数、支払金額が上回るなどしていた。
したがって、各府省等において、〔1〕真に随意契約によらざるを得ないもの以外は競争契約への移行を図り、競争契約が可能なものを安易に企画随契としないこと、〔2〕競争契約や企画随契を行うに当たっては実質的な競争性の確保に努めるとともに、企画随契や公募の実施に当たっては公正性及び透明性の一層の向上を図ること、〔3〕公益法人との随意契約を競争契約等に移行する場合にも実質的な競争性の確保に努めること、〔4〕第三者機関の運営について審議内容の公表の透明性の向上を図ること、〔5〕契約発注元府省等退職者の再就職者が在籍している法人を随意契約の相手方とする場合には特に透明性の確保に留意し、十分な説明責任を果たせるようにすることなどにより、契約の公正性、競争性及び透明性の確保に努める必要がある。
本院としては、今後とも、各府省等の契約について、多角的な観点から引き続き検査していくこととする。
本院は、参議院からの検査要請を受けて、独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「センター」という。)が実施しているスポーツ振興くじについて、〔1〕スポーツ振興くじに係る制度や運営の見直し状況、〔2〕スポーツ振興くじの売上げ、債務、繰越欠損の推移、〔3〕販売システムの運用経費及び開発規模、〔4〕繰越欠損の解消に向けての取組の状況について会計実地検査を実施した。
検査したところ、〔1〕文部科学省は、平成17年度以降、多様なくじの発売が可能となるように組合せの総数の制限を廃止するなど、制度の見直しを行った。また、センターは、第A期は売りさばきなどの業務を一括して委託していたが、第B期は民間企業のノウハウを得て直接運営することにした。〔2〕14事業年度以降、売上げが減少し続けて、実効性を持った改善策を早期に執ることができなかったことなどにより、17事業年度末に、センターは292億円もの多額の繰越欠損金を計上していた。〔3〕第A期は、実際の売上金額が想定をはるかに下回ったことにより、運用経費及び開発規模が相対的に大きなものとなった。したがって、第B期は開発規模を見直して、販売システムの運用経費を大幅に減少させた。〔4〕18年9月から発売開始した新たなくじ「BIG」の売上げが急激に増加したことにより、繰越欠損金が大幅に減少した。
センター及び文部科学省は、販売システムの運用経費及び開発規模について、事後の確認・検証を可能とする体制を構築して、事後的検証を行う必要があり、損失が発生する場合も想定して、その措置に係る制度上の整備を検討することも課題になると考えられる。そして、繰越欠損金を早期に解消するとともに、国庫納付を引き続き着実に行いながら、スポーツ振興のために必要な資金を確保して、もってスポーツの振興に寄与するという制度本来の目的の達成に努めることが肝要である。
本院としては、今後とも、スポーツ振興投票の運営が経済的、効率的に行われて、法律で定める目的が達成されているかなど多角的な観点から、引き続き検査していくこととする。
本院は、参議院からの検査要請を受けて、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省所管の政府開発援助に関して、〔1〕技術協力の実施状況、〔2〕技術協力に係る援助の効果について、会計実地検査を行うなどして検査及び調査を実施した。
検査したところ、ODA事業予算がODAとは直接関係のない目的に使用されていたり、会計経理が適切でなかったり、委託・補助等の相手方を決定するに当たり競争性、透明性等が十分でなかったり、援助の効果が必ずしも十分に上がっていなかったり、効果の確認が十分になされていなかったりするものなどが見受けられた。
したがって、5省においては、外務省等との連携を図りつつ、予算執行に当たってODA事業予算とODA以外の予算との区分を明確にして両者を混こうしたような執行を行わないこと、会計経理を適切に行うこと、団体等に対する委託・補助等により事業を実施する場合、透明性、公平性の向上を図るなどのため、引き続き競争契約等の拡大に努めるなどすること、相手国側の需要を的確に把握するとともに技術協力の効果が十分なものとなるよう事業を実施すること、また、その効果を十分に確認することなどの点に留意することにより、技術協力の適切な実施及び効果の確保に努める必要がある。
本院としては、今後とも、技術協力が適切に実施されて、援助の効果が十分に上がっているかについて、多角的な視点から引き続き検査していくこととする。
本院は、参議院からの検査要請を受けて、平成19年10月に、我が国政府開発援助における無償資金協力において被援助国が実施する施設の建設や資機材の調達等の契約に関する会計検査の結果を報告した。そして、20年次は、同報告において引き続き検査することとした技術協力を中心に、契約の競争性・透明性の向上に向けた我が国援助実施機関の取組の状況、落札率の状況について、13府省庁、独立行政法人国際協力機構及び各府省が所管する公益法人を対象として検査を実施した。
検査したところ、被援助国政府や13府省庁が実施する技術協力において、海外での施設の建設や海外向け資機材の調達等の契約は見受けられなかった。一方、独立行政法人国際協力機構及び各府省が所管する公益法人のうち財団法人海外漁業協力財団が実施する技術協力において、それらの契約が、それぞれ2,343件、167件見受けられた。このうち独立行政法人国際協力機構においては、〔1〕予定価格を設定して入札に付した契約323件の平均落札率をみると、本邦調達においては資機材の調達等で83.73%、現地調達においては施設の建設で91.52%、資機材の調達等で90.27%となっていた。価格競争性を高めるとしている指名見積競争等の見積競争の落札率をみると、競争入札に付した契約の落札率と大きな差は見受けられなかった。〔2〕現地調達に係る契約の一部には、会計規程に基づく事務手続をとることなく予定価格の設定を省略しているものが見受けられた。財団法人海外漁業協力財団においては、随意契約において予定価格の設定を省略しており、また、平均落札率は年々高くなる傾向にあった。
したがって、独立行政法人国際協力機構においては、20年から予定価格を公表しているが、契約の競争性・透明性の向上に向けて、落札率の状況について引き続き公表するなどの努力を行っていく必要がある。また、現地調達を行う際の事務は、適正な手続をとるなどして、適切な処理を行う必要があると認められる。財団法人海外漁業協力財団においては、一定金額以上の調達に当たっては予定価格を設定するなど、契約の競争性・透明性の向上に向けた一層の努力等が望まれる。
本院としては、今後とも、無償資金協力及び技術協力における施設の建設や資機材の調達等の契約の適切な実施などについて、多角的な観点から引き続き検査していくこととする。
本院は、参議院からの検査要請を受けて、平成18年9月及び19年9月に、政府開発援助(ODA)に関し会計検査の結果を報告した。そして、同報告において引き続き検査を実施する必要があるとしたスマトラ沖地震の緊急援助の実施状況について、会計実地検査を行うなどして検査及び調査を実施した。
検査したところ、被災国に対するノン・プロジェクト無償資金協力事業において、資金供与後3年余りが経過して工事が進ちょくしたことなどから、資金供与額に対する支払済額の割合である支払率は、20年3月末現在、インドネシア共和国で91.3%、モルディブ共和国で87.7%、スリランカ共和国で89.4%となっていた。また、当初の契約見込額と契約締結額との間に差額が生じたことなどにより、最終的には供与額に未使用額が生ずることになる。外務省は、3か国が実施した津波復興事業の費用の一部にこの未使用額を充てる案等について、相手国政府と協議を行っているとしている。一方、中止又は解除した契約のうちに、請負業者に支払った前払金等が返還されていない事態が見受けられたことから、外務省は、早期の返還が実現するよう相手国政府に対する働きかけを継続して行う必要がある。本件事業で建設された施設や調達された機材は、被災地等における災害復旧・復興のため、今後とも有効に活用されることが望まれる。
本院としては、外務省が事業完了後に行うとしている本件事業に対する事後評価を踏まえた上で、未使用額の具体的な活用結果を含めて、中長期的な事業効果について引き続き検査していくこととする。
本院は、参議院からの検査要請を受けて、独立行政法人の業務、財務、入札、契約の状況に関して、〔1〕業務及び財務の状況、〔2〕各独立行政法人における契約制度、落札率等入札、契約の状況について会計実地検査を行った。
検査したところ、〔1〕については、主務大臣の見直しに基づいて統廃合された法人が行っていた業務は、統合先法人に承継されるなどしていた。また、交付された運営費交付金のうち業務運営の財源に充てられなかった金額(計3億円)や、政府出資又は政府出資見合いの資産の処分等により得た資金等(計370億円)が国庫に納付されず、法人内部に留保されているものがあった。〔2〕については、随意契約の割合が全体の7割以上を占めており、平均落札率も競争契約より7ポイント以上高くなっていた。また、随意契約の理由の妥当性に関して検討すべきであったと認められた契約が多数見受けられた。さらに、再就職者在籍の公益法人等は、在籍していない公益法人等に比べて、1法人当たりの随意契約件数や支払金額が多くなっていた。
したがって、〔1〕各法人が行っている事務・事業が国民にとって真に不可欠であるかの検討を一層厳格に行うこと、上記のように運営費交付金が内部に留保されることとなっている法人について適切な取扱いを検討すること、資産の処分等により得た資金等を国庫に納付することが可能になるよう減資に係る立法措置を速やかに講ずること、〔2〕競争契約を拡大して契約の透明性の向上を図ること、再就職者在籍の法人との随意契約は、特に透明性の確保に留意することなどが必要である。
本院としては、本報告の取りまとめに際して、平成19年12月に策定された随意契約見直し計画に基づく個別の随意契約の見直し状況に係る検証を終えるに至っていない部分があることなどから、これを中心に引き続き検査を実施して、検査の結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。
国会から国会法第105条の規定による会計検査の要請を受けた事項のうち、検査要請を受ける前から国民の関心が極めて高い問題となっていたものについては、本院として重大な関心を持って検査に取り組んでいたところである。このうち、「第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等」にその検査状況を記載したものは、「第3章 個別の検査結果」に掲記した4件(注)を除く次の1件である。
防衛省は、防衛装備品の調達を国内調達及び輸入調達により行っており、輸入調達のうち一般輸入調達は、平成19年度の調達額が1326億円、調達額総額に占める割合は約6%となっている。一般輸入調達については、商社の過大請求事案の発覚が続き、国の契約の適正性が損なわれている状況にある。本院は、このような状況を踏まえて、一般輸入調達の契約手続、予定価格の算定等の状況等について会計実地検査を行った。
検査したところ、〔1〕商社等との契約方式について、商社等は外国製造会社の日本国内における販売権を有している場合が多いことから、1者応札であったり、実質的な競争が行われていなかったりしている状況が見受けられた。〔2〕契約相手方から徴取する価格を証明する書類は、原則として外国製造会社が発行する見積書としているが、そうでないものも見受けられた。〔3〕米国における防衛装備品の調達価格を基に国防省が制定した標準価格等の情報が集積されているインターネット上のウェブ・フリスを用いて、過大請求が判明している契約における防衛装備品の価格と国防省が制定した標準価格を比較すると、国防省が制定した標準価格より高い価格となっているものが見受けられた。〔4〕防衛省は、過大請求事案の調査を継続しており、一般輸入調達問題に対する対応もとっている。
以上より、〔1〕一般競争契約の競争性を高めるための方策等、〔2〕防衛省に提出される見積書の妥当性の検証方法等、〔3〕ウェブ・フリスの有効な活用方法並びに〔4〕防衛省の過大請求事案の調査の状況及び一般輸入調達問題に対する対応の実施状況について引き続き検査を実施する。
また、本院は20年6月に、国会から防衛装備品の一般輸入による調達について、〔1〕一般輸入を含めた防衛装備品調達全般の状況、〔2〕一般輸入による調達の契約方法、契約手続、予定価格の算定などの状況並びに〔3〕一般輸入に係る過大請求事案の状況及びこれに対する防衛省の対応策の実施状況の各事項について、会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けている。
本院としては、20年次の検査を踏まえつつ、国会からの検査要請について引き続き検査を実施して、取りまとめが出来次第報告することとする。
特定検査対象に関する検査状況として5件掲記した。
本院は、金融機能安定化法及び金融機能早期健全化法に基づく資本増強措置に投入された公的資金計10兆4209億円を対象に、金融庁、預金保険機構等において会計実地検査を行った。この公的資金の返済状況をみると、平成19年度末では計8兆9940億円が返済されて、返済が行われていない公的資金の残高は計1兆4268億円となっている。そして、公的資金未返済行の中には、返済原資となり得る剰余金の実績額が公的資金の残高を下回っている金融機関も見受けられる。預金保険機構は、資本増強行の経営の健全性の維持や市場への悪影響の回避を前提としつつ、取得価額以上での優先株式の処分が図られるよう、引き続き資本増強措置に係る業務を適切に実施していく必要がある。そして、金融庁は、早期に経営の健全化が図られ、公的資金が完済されるよう、引き続き公的資金未返済行に対する監督を適切に実施する必要がある。
新生銀行については、預金保険機構及び整理回収機構が保有していた優先株式はすべて普通株式に引き換えられた。この結果、両機構は、優先株式に付与されていた残余財産の分配等における優先性を喪失したが、返済されるべき公的資金がき損することのないよう、普通株主としての議決権を適切に行使していく必要がある。
預金保険機構の金融機能早期健全化勘定は、公的資金の返済に伴い処分益が生じていることから利益剰余金が増加しており、この結果、19年度末に流動資産の額が有利子負債の額を初めて上回ることになった。今後、同勘定において多額の資金需要が生ずる可能性は高くないものと思料される。金融庁及び預金保険機構は、同勘定で保有している資金について、今後の状況に応じて適切に対処していくことが望まれる。
本院としては、今後の金融機関を取り巻く状況の変化も踏まえつつ、返済が行われていない公的資金の返済等の状況、預金保険機構の財務の状況等について今後も引き続き検査していくこととする。
租税特別措置は、特定の政策目的を実現するための手段として、公平・中立・簡素という税制の基本理念の例外として設けられているものである。そこで、平成20年次においては、租税特別措置(青色申告特別控除)等の適用状況、検証状況等について会計実地検査を行った。検査したところ、青色申告特別控除の適用状況については、高額営業等所得者の青色申告割合は93.4%、65万円控除の適用率は83.8%である一方、一定数の白色申告者が見受けられた。青色申告者(青色申告特別控除の適用者)の必要経費の状況については、確定申告において、高額な青色事業専従者給与を支払っている者、高額な接待交際費を支払っている者などが見受けられた。
また、青色申告特別控除の検証状況については、経済産業省が税制改正の要望を行う際の検証においては、政策の達成目標が明確になっていないなどの課題が見受けられた。経済産業省の政策評価においては、青色申告特別控除は、19年度までは施策目標を実現するための具体的措置として位置付けられていなかった。
経済産業省は、青色申告特別控除の検証の内容を一層充実することにより、政策の実効性を高めていくとともに国民に対する説明責任を果たしていくことが肝要である。また、財務省は、申告納税制度が適正に機能するよう、青色申告特別控除等について今後とも十分に検証していくことが肝要である。そして、国税庁は、正確な記帳による正確な申告を実現するための取組を一層充実していくことが肝要である。
本院としては、今後とも特別措置の適用状況等について、引き続き注視していくこととする。
本院は、平成19年次の検査において、自ら内部調査を行い不適正経理があったことを明らかにしている府県を対象として、不適正経理と国庫補助金等との関連等について検査を行い、その検査状況を平成18年度決算検査報告に掲記した。そして、本20年次は、〔1〕内部調査を実施していない道県も含めた12道府県に対して、農林水産省及び国土交通省所管の国庫補助事業に係る事務費等について会計実地検査を行い、〔2〕内部調査により新たに不適正な経理処理が明らかになった3県市に対し、不適正経理と国庫補助金等との関連性等について、会計実地検査又は関係資料等により検査を行った。
検査したところ、〔1〕12道府県において、虚偽の内容の関係書類を作成するなど不適正な経理処理を行って需用費を支払ったり、補助の対象とならない用途に賃金又は旅費を支払ったりしていて、これに係る国庫補助金相当額は、両省所管分計5億5600万円となっていた。〔2〕3県市において、内部調査により明らかになった不適正経理の対象になった公金の中に国庫補助金等相当額が6116万円含まれていた。
ついては、不適正な経理処理等の事態が明らかとなった各道府県市においては、不適正な事態に係る国庫補助金等相当額について返還等の所要の措置を執るとともに、予算執行の適正化、会計事務手続に係る内部牽制機能の充実強化を図るなどの再発防止策を推進することが重要である。関係省庁においては、上記について返還等の所要の措置を執るとともに、都道府県等に対して国庫補助事業に係る事務費等の経理の適正化について引き続き指導の徹底を図ることが重要である。そして、道府県市及び関係省庁は、都道府県等の会計経理の適正化及び規律の確保に努めるなど、その透明性の向上を図ることが重要である。また、財政当局においても、引き続き、補助金等に係る予算執行の適正化に留意することが望まれる。
本院は、国庫補助事務費等の経理について、本年次、会計実地検査を行ったすべての道府県において不適正な会計経理が行われていたことを踏まえ、その他の県等についても既に検査に着手しており、引き続き会計実地検査を順次実施していくこととする。
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構の特例業務勘定は、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)の職員であった者等に係る年金の給付に要する費用等の支払、及びその支払の資金に充てるために国鉄から承継した土地、株式等の資産の処分を行うなどの業務に係る勘定である。
本院は、特例業務勘定の利益剰余金が平成19年度末において1兆3441億円に上っており、国鉄の債務処理のため国の一般会計が承継して償還することとなった債務の額が24兆0166億円及び10年度から18年度までの間に一般会計から交付された国庫補助金が5525億円と多額に上っていることにかんがみて、特例業務勘定の財務状況の推移等について、国土交通本省及び機構において会計実地検査を行った。
検査したところ、特例業務勘定は、今後50年以上の長期にわたり年金等の支払を確実に行っていくために、日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律の規定により損益計算後の残余の全額を積立金として整理することとされており、国庫納付の規定はない。しかし、国庫の厳しい財政状況、一般会計が負担した多額の債務等及び現在多額の積立金を計上している状況にかんがみれば、年金の支払等を確実に行っていく上での不確定要素の状況を見極めつつ、長期収支見込みを作成して特例業務勘定の積立金の適正水準について検討して、仮にその結果残余が見込まれる場合には、当該残余を機構が国庫に納付することが可能となるようにすることが肝要であり、そのため、国土交通省及び機構において今後、特段の取組が必要とされる。
本院としては、これまで国鉄の債務処理のため一般会計が負担した多額の債務等にかんがみて、特例業務勘定の積立金に関して、国土交通省及び機構における今後の取組状況について引き続き検査していくこととする。
平成19年9月26日、我が国政府開発援助(円借款)によるベトナムの事業において建設中のカントー橋の橋桁(けた)の一部(桁長40m、連続する2径間、総延長80m分)等が崩落する事故が発生して、死傷者が多数に上るなどの被害が発生した。ベトナム政府は20年7月に、国家事故調査委員会の調査結果として、事故の主原因は仮設工事の支柱の基礎が不等沈下したことによるとした最終報告書の要旨を公表した。このような状況を踏まえ、本院は、外務本省等に対して会計実地検査を行うなどして検査及び調査を実施したが、ベトナムから最終報告書や最終報告書に至るまでの基礎資料、設計図書等の提示が受けられなかったため、最終報告書の要旨に関して本院としてその妥当性について検証することはできなかった。
一方、我が国外務省が設置したカントー橋崩落事故再発防止検討会議は、同年同月に「円借款事業にかかる案件監理の改善点及び事故再発防止のための提言」を取りまとめ公表した。独立行政法人国際協力機構においては、この提言に対して、本件事業において実行が可能な安全対策等の項目が確実に実施されていることを確認したり、同年8月に再開した工事に関して相手国事業実施機関等が安全の管理に万全を期すよう引き続き注視したりする必要がある。
本院は、本件事業において、工事の再開に伴う工事費の増額、工期の延長等の契約変更や事業実施期間の延長等の事業変更の手続が速やかに行われているか、安全体制に最大限配慮するよう相手国事業実施機関に対して働きかけが行われているか、また、今後の円借款事業の実施において、安全性を一層確保するための方策が執られて事業が適切に実施されているか、引き続き検査していくこととする。
国民の関心の高い事項等に関する検査の結果、「第3章 個別の検査結果」等に掲記した主なものについて、〔1〕各府省等が締結している随意契約に関するもの、〔2〕特別会計、独立行政法人等が保有している剰余金、資産等に関するもの、〔3〕独立行政法人、公益法人等の会計に関するもの、〔4〕年金事業の運営に関するもの、〔5〕政府開発援助に関するもの、〔6〕その他に区分して整理した。
また、上記のほか、国民の関心の高い事項のうち主なものについて検査の状況を示した。
本院は、今後も我が国の社会経済の動向、財政の現状等を踏まえて国民の期待にこたえる検査に努めるために、国会等で議論された事項、新聞等で報道された事項その他の国民の関心の高い事項については、必要に応じて機動的・弾力的な検査を行うなど、適時適切に対応するとともに、我が国の財政の健全化に向けた様々な取組について留意しながら検査を行っていくこととする。